日盲社協では、会員の専門分野に応じて、五つの「部会」を設けて活動しています。

点字出版部会

令和元年度点字出版部会職員研修会

点字出版部会は、令和元年(2019)11月28・29の両日、東京都杉並区の阿佐谷地域区民センターにおいて職員研修会を、19施設、56人の参加で開催した。

1日目(13〜17時)のプログラムは、

1.自動製版機技術交流ワークショップ

分科会@ 小林鉄工所製自動点字製版機「ブレイルシャトル」に関する分科会(座長:山本たろ氏)

分科会A 仲村点字器製作所製自動点字製版機「ZP メーカー」に関する分科会(座長:金子研一氏)

講演「ZPメーカー電子回路のリニューアルについて」(講師:金子研一氏)

2.日本点字図書館のふれる博物館の説明とルイ・ブライユの生家と日本点字図書館の立体模型に触る体験会(解説:日本点字図書館ふれる博物館川島早苗氏)

3.日本新聞インキ株式会社が開発中のインクジェット方式による点字プリンターの紹介と実演

2日目(9〜12時)のプログラムは、

4.講演『日本点字表記法2018年版準拠点字出版物製作基準』(講師:日本ライトハウス点字情報技術センター〔TeCTI〕福井哲也所長)

5.情報交換

ここでは「ワークショップ」の分科会@と分科会A、それに講演にしぼって以下に報告する。

 

分科会@

点字出版部会職員研修会

京都の小林鉄工所製ブレイルシャトルは、点字出版業界の中心的自動点字製版機だが、それゆえに不具合時の修理対応や機器改善などについての要望も多い。

そこで本部会では平成29年度に小林鉄工所社長に講演していただき、平成30年度にはメーリングリストを活用し、情報交換や要望の整理、小林鉄工所からの回答の発表を行い、課題の確認や修理技術の向上に努めた。そして令和元年度の分科会@に際しては、メーリングリストへの新規加入施設も含めた報告資料を更新し、(1)視覚障害者生活情報センターぎふ、(2)岡山ライトハウス、(3)名古屋盲人情報文化センター、(4)光の家栄光園、(5)佐賀ライトハウス六星館からの実践報告を元に16施設、31人の参加で、ブレイルシャトルの修理や調整等に関する情報交換を行った。

各施設のブレイルシャトルは、最古は昭和63年(1988)で、最新は令和元年(2019)導入と幅広く、使用OSもWindows 14台、MS-DOS 5台、F-BASIC 1台であった。

事例発表では、「点字原版のある行に『氏』しの1マスしか刻印しなかった場合、それ以降は一切作動しなくなる」等の不具合例が紹介された。また、打ち損じの原版を持ち込んでの発表等も行われ議論が沸騰した。

解決策も注油や清掃から、ネジの締め付け調整、製版速度の調整、クラッチブレーキパックやマイクロセンサーの交換など多様で3年間の技術の蓄積がみられたが、小林鉄工所との連携についての強い要望があり、修理体制の改善が大きな継続課題と考えられる。

 

分科会A

点字出版部会職員研修会2

仲村点字器製作所製自動点字製版機ZPメーカーは、製造元による修理等を受けることが極めて困難な状況にある。

2017年度に開催された職員研修会では、この状況を共通認識し、点字出版所は相互に協力をしながら自らの手で自動点字製版機のメンテナンスを実施しなければならないことを改めて確認した。

その後、メーリングリスト等を使い、関係者はZPメーカーの不具合や修理内容を互いに連絡し、トラブルに遭遇した施設からのSOSに対して、解決策を提示して問題を解決した事もあった。

今回のZPメーカーに関する分科会Aは、日頃メールや電話でやり取りをしている関係者が、直に顔を合わせて知見を披露する貴重な機会となり、誤作動によって打ち損じた見本や、交換したセンサー、モーター、ギアを持ち寄って、トラブル対処法の意見交換も行った。

この間の教訓は、清掃と注油を怠ると、すぐに症状が現れないが、徐々に部品を痛め、ある日突然音を出して壊れる。記録がないと、同じトラブルや実験的な試行を繰り返す結果となるということだった。

2年前に比べると、かなり立ち入ってZPメーカーを解体して、組み立てている施設もあり頼もしい限りだ。だが我々は機械技術者ではなく、あくまでも使う側であることを忘れず、安全第一で取り組んでほしいものである。

 

講演「ZPメーカーの電子回路のリニューアルについて」

TeCTIでは平成15年(2003)からZPメーカーを使用しているが、7年ほど前から点字の位置が上下にずれる「行ズレ」、左右にずれる「マスズレ」が発生し、年々その頻度が増してきた。

この不具合の原因は「電子回路の劣化」という見解に至ったが、問題の電子回路に使用されている部品は非常に古く、修理や複製は不可能だった。そこで専門業者の協力を得て、平成30年(2018)から新しい電子回路の開発に着手。このたびTeCTIが保有する3 台の「ZP メーカー」すべての電子回路のリニューアルが完了し、正常な動作が確認できたのでここに発表した。

専門的技術的な話題は避け、リニューアル前のZPメーカーの動きを記録しておく方法、専門業者を見つけるまでの経緯、完成後修理不能に陥らないために汎用性の高い部品を使用する設計思想、開発中に遭遇したトラブルなどを報告した。

「電子回路の劣化」が原因だと推測できる不具合に悩まされている施設は多数あり、電子回路のリニューアルを希望する施設もある。当センターは、まだ開発した電子回路の実用検証段階を脱しきれておらず、すぐにお応えすることはできないが、今後は、開発した電子回路の外部提供の準備を整えたいと考えている。また、報告の中で紹介したWindowsのパソコンで動く、当センター製の点字編集・自動製版システム「WinBred10」を使用したいとの声も上がり、こちらについては有償だが、すぐにでも提供が可能である旨伝えた。

2017年度の職員研修会で、「電子回路のリニューアル」をZPメーカーの課題として挙げ、それから2年経ちようやく成果を報告することができた。残る課題は、原板に点字を刻印する凹型の「受け」と凸型の「ピン」の製作だ。これも開発の糸口を見つけ出し、今後開かれる職員研修会で報告したいものである。

 

情報サービス部会

令和元年度点字指導員講習会

点字指導員講習会の様子

日盲社協情報サービス部会(担当:点字指導員研修委員会)は、8月30日(金)〜31日(土)の二日間、東京の「大田区産業プラザPiO」4F コンベンションホールを会場に、「令和元年度点字指導員講習会」を実施しました。今年は、点字指導員有資格者対象の講習会で、点字表記法の改定や『点訳のてびき第4版』が発行されたこともあり、約160名の方が受講してくださり盛況でした。

研修内容は、下記のとおりです。

初日の講義1は、「『日本点字表記法2018年版』について」のテーマで、日本点字委員会金子昭副会長(『日本点字表記法2018年版』編集委員会委員長)を講師に行いました。

続いて、講義2は、「点字表記辞典について ―― 第7版の発行を中心に」のテーマで、『点字表記辞典』の発行元である視覚障害者支援総合センターの飯田三つ男氏を講師に行いました。

二つのテーマが、点字の新表記・点字の表記に悩んだときに使用される書籍に関する事柄だったため、受講者の真剣なまなざしが印象的でした。私個人としても、『表記法』と『表記辞典』について多くのことを再認識するよい機会となりました。

二日目の講義3は、一日を通して点訳に必須となる「『点訳のてびき第4版』の概要と第2章・第3章について」発行元の全視情協点訳委員会野々村好三委員長(京都ライトハウス情報ステーション)と同委員会脇野協子委員(滋賀県立視覚障害者センター)の二人の方に講義をしていただきました。

『点訳のてびき』を使用して点字指導している方がほとんどだったことから、「質疑応答・情報共有」では、「てびき」の解釈や点訳・講習の際の課題についてかなり突っ込んだ質疑もあり、熱気あふれる講義となりました。

今回は、初めての会場で行いましたが、環境も良く、充実した講習会となりました。

来年は点字指導員認定講習で、オリンピックとパラリンピックが東京で開催されることから大阪での開催を検討しています。

最後になりますが、講習会で講義を引き受けてくださった講師の皆様、支えてくださったスタッフをはじめ、講習会に参加してくださった皆様に感謝申し上げます。

ほんとうにありがとうございました。

 

令和元年度情報化対応支援者講習会

令和元年度情報化対応支援者講習会

日盲社協情報サービス部会は、7月31日〜8月2日、日本ライトハウス情報文化センター(大阪市)で、標記講習会を20 団体23人の参加で次のように実施した。

(以下、敬称略)

 

<第1日目>

・講義1「AIスピーカーの活用」品川博之

・講義2「最新機器の紹介」川崎市視覚障害者情報文化センター渡辺明

 

<第2日目>

・講義3「パソコン音声操作の基本」日本ライトハウス情報文化センター松本一寛

・講義4「iOS の視覚障害者向け設定」徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センター阪井紀夫

・講義5「iOS アプリ・周辺機器いろいろ」福島県点字図書館野地美行

・講義6「電話サポートについて」日本ライトハウス情報文化センター松本一寛

 

<第3日目>

・講義7「ロービジョンあれこれ」日本ライトハウス情報文化センター 岡田弥

・講義8「情報交換会」司会:視覚障害者生活情報センターぎふ 山村友梨子

 

令和元年度情報化対応支援者講習会2

今年は新たな試みとして、話題になっているAIスピーカーを詳しく取り上げた。話しかけるだけでいろいろなことができるので機械操作が苦手な視覚障害者に有効だと思われるが、Wi-Fi環境が必要であったり、アカウント取得の上初期設定が必要であったりと意外に課題も多いことがわかった。

また、今年は基本に帰るというということで、パソコンの音声操作の基本やiOSの視覚障害者用設定を取り上げたが、「初めて知った」「もっと聴きたかったのに、時間が足りなかった」と好評であった。

本研修会も10回目となり、何度も参加している人と初めての人が入り交じる中、どのような内容が求められているかをしっかり把握した上で、講義内容を吟味して、参加者の増加に努めていきたい。また、ここ数年大阪での開催が続いているので新たな受講者を呼ぶべく、他地域での開催も検討していきたい。

 

令和元年度情報化対応支援者研修会報告
―― 相談支援コース ――

今年度も情報化対応支援者研修会の相談支援コースが無事に終了いたしました。

令和最初の研修会は基礎コースが11月28、29の両日に26名の方が参加して日本点字図書館で開催されました。

応用コースは年明けの2月13、14の両日に24名の方が参加し、日本ライトハウス情報文化センターを会場に実施しまし た。3年間で約50名の方が修了しました。開催・運営にご協力いただいた関係機関、関係職員の方に改めてお礼申し上げます。

この研修会は平成29年(2017)に開始して3年目の研修会です。まだよくご存じないという方も多いと思いますので、開始した経緯等について最初に書きたいと思います。

以前からよくいわれていることですが、視覚障害は情報障害ともいわれています。機器の発達や支援の充実で以前より情報へのアクセス環境はよくなったとはいえますが、まだ、なお必要な情報が十分届いていない「見えない・見えにくい方」が多いのが現状です。特に見えない・見えにくい状態になり生活が困った際に相談する場所は少なく、視覚障害関係の施設・団体があっても専門家と呼ばれる人たちは限られた施設にしかいないため十分な相談支援体制ができておりません。

一方で、充実させていくべき職員への対応はといえば、配置されている職員・教員等の多くは視覚障害についての情報や関連法律に関する知識について、また相談対応について十分な研修を受ける機会がほとんどないのが現状です。

そこで、この研修会では、職員の視覚障害に関する基礎知識の確認と相談支援体制の地域格差の解消を目指して、各施設、団体・学校の職員・教員等のスキルアップを目的に開始することとしました。

そのため、今までじっくり学んだことがない初心者の方、改めて学び直したいという方などを対象に、どなたでもご参加いただける基礎的な内容が強いものとなっています。

一人ひとりのレベルが異なる中、研修会にどの程度のプログラムを組み込むのか難しいところですが、なるべく基本的なことを組み込み、窓口や電話等ですでに実施していることの中に「相談」というシーンがあることを感じてもらうために研修内容を作っています。

研修会は基礎と応用の2回で構成をされており、基礎コースと応用コースのプログラムは下記の通りです。

 

基礎コースプログラム

視覚障害とは ―― 眼疾患(最新の研究、治療)・身体障害者手帳について

視覚障害リハビリテーションとは ―― 視覚障害者リハビリテーションの歴史と必要性

視覚障害者が利用できるサービス ―― 補装具・日常生活用具の申請、その他のグッズ

視覚障害者によくある困りごととその解決法 ―― 見え方・疾患での異なる問題点

相談の基本技術 ―― インテーク(障害を持つ人や家族から事情を聞き、問題点や要望を明確化し援助につなげること)の重要性、傾聴・時間管理、電話での相談ワークショップ

 

応用コースプログラム

相談者の身の守り方 ―― セルフケアについて、支援者の健康管理

最新機器 ―― 最新情報提供(拡大機器を中心に)

相談者が求めること ―― ニーズの把握を事例報告から

記録の取り方、まとめ方 ―― 基本情報の収集と記載方法

演習 ―― 聞き上手になるための実践演習

盲導犬について ―― 申請方法、取得基準等について

実践演習 ―― ケースの情報をもとに演習を実施

 

基礎コースでは、視覚障害に関する病気の基礎的な知識、用具についてや見え方による困りごとの解決法などを学び、相談対応についてもインテーク部分を取り入れています。

応用コースでは、相談の対応に関することを中心にブログラムを組んでおり、情報として知っていてほしい最新機器や盲導犬に関する知識も取り入れるようにしています。

参加者アンケートを毎回とっていますが、講師の先生方の内容のおかげもあり、ほぼすべての方に満足とご回答いただいております。今年度の応用修了者感想では以下のようなものがありました。

視覚について特化した研修はなかなかなくすぐに現場での対応ということが多い中でこのような研修があることはありがたかったです。

視覚障害に関わる研修が少ない中、幅広く視覚障害の相談業務に関わる研修を聞くことができとてもありがたかったです。

基礎編、応用編とも非常に充実した内容で参加して本当によかったです。講師の先生方のお話はどれも心に留まるような印象的な内容でした。

2回×2日間通してすごい講師の方々のお話を聞けたのだなと思います。各地からたくさんの方が参加されていたのでぜひ開催地の数を増やしてもっと展開してほしいと思いました。

今後も参加者のご意見を伺いつつ、より良い研修にして、日盲社協として視覚障害者支援者のスキルアップに貢献していきたいと考えております。

なお、研修会は1年間に基礎と応用を1度ずつ開催しています。場所は基礎・応用を関東と関西で交互に入れ替えて開催をしています。次年度は10月29、20日に大阪で基礎コース、2月18、19日に神奈川で応用コースを予定しています。多くの皆様にご参加いただき、どこの地域でも必要な情報が届けられるようになればと思っています。ぜひご参加お待ちしております。

 

令和元年度音訳指導員講習会

1.音訳指導員講習会報告

令和元年(2019)11月27日から29日の3日間、大阪市の玉水記念館を会場に第38回音訳指導員講習会並びに音訳指導員認定試験を実施した。あらかじめ選考試験を行い、受講者は99人だった。今年度は認定試験の年で、従来通り3日間の日程で中身の濃い講習会となった。情報サービス部会監事の橋口勇男氏の挨拶から開会した講習会の概要は、以下の通りである。

 

1日目(11月27日)

@大阪府立中央図書館の杉田正幸氏より「改正著作権法の施行と障害者サービスについて」。録音資料をめぐり大きく動いた法律等について、資料の製作者が知っておくべき知識や、今後必要とされるサービスについて解説していただいた。

A音訳指導員研修委員会が担当した「利用者アンケート・利用者が求める録音資料とは」。結果報告を後段に記したのでそちらをお読み願いたい。

B音訳指導員・フリーアナウンサ―として活躍中の安田知博氏による「読みの指導法」。あらかじめ録音された音源を聞き、癖のある音訳者の指導法をグループで話し合った。

 

2日目(11月28日)

C元静岡県点字図書館副館長の熊谷成子氏に処理技術「写真・図」のご講義をいただいた。処理の手順、説明のポイント、作文の手法等具体例を交えての内容だった。

D音訳指導員研修委員会担当の「録音・デイジー編集の基本」。デイジー録音と編集の基本を、養成講習会等で取り上げたい内容に絞ってまとめた。

ENHK放送文化研究所の塩田雄大氏より平成28年(2016)に発行された「アクセント辞典の改訂と特徴」について、新しく採用されたアクセント記号やアクセントの変遷等についてご講義いただいた。

令和元年度音訳指導員講習会

F大阪市立中央図書館の松岡章子氏による「音訳に役立つ調査方法の基本」。自館でのレファレンス例を挙げながら、データベースやインターネットを使った最新の調査技術を学んだ。

G音訳指導員研修委員会担当の校正技術「選考課題の解説」。選考試験の課題として配布された校正問題を使って、校正研修を行う際に注意したいポイントをまとめた。

 

3日目(11月29日)

H日本ライトハウスの松本一寛氏に「視覚障害者を取り巻く先端技術」について、四つのカテゴリーで新しい読書方法をご紹介いただいた。

I金城学院大学教授の磯野正典氏に「発声・発音を中心に」のテーマで、楽しくできる発声発音練習や音訳活動の現状や課題についてご講義いただき、音訳の将来についても考えさせられた。

講習会終了後、認定試験を行い60名の方が合格された。

 

2.「利用者アンケート利用者が求める録音資料とは」の報告

今回の研修会では利用者に対して録音資料の質に関するアンケートを実施し、その結果を発表することにした。音訳者にとって録音資料の利用者からの意見はとても知りたい情報であるはずだが、これまでこうした本格的な調査は行われなかった。そこで、初めての試みとなる今回は録音資料全般にわたる質問を総合的に行うこととした。さらに踏み込んだ調査については、今回の調査で「モニター協力者」を募り、その人たちを対象に次回以降に行うこととした。

以下、主な結果を紹介したい。

調査期間中の約3か月の間に329人から回答があった。回答者の多くは60代以上で全体の71%(236人)を占め、10代〜30代の3.3%(11人)との差が際立った。

読書量は週に2〜3冊程度が33%(99人)、続いて週に4冊以上が21%(71人)と、合わせて半数を超え、多読の人が多いことがわかる。複数回答を求めたよく読む分野では小説・エッセイがもっとも多く、雑誌が続いた。他の分野への希望も多岐にわたり、マンガや美術書など処理の必要なものやニュースや新聞など、即時性のある資料のニーズも明らかになった。

再生機器はプレクストークが多く、マイブックなどのPCソフトを使っている人も目立った。それに対して、タブレットやスマートフォンを使っている人は今回の調査では少数派だった。回答者が比較的高齢の方が多かったことが関係しているかもしれない。

録音資料の質について、まず満足度の質問では満足が40%(132人)、おおむね満足が41%(138人)の合わせて81%だった。その後の質に関する質問は「不満」14%(49人)、「大いに不満」0.6%(2人)と答えた人(51人)に対して行った。以下は複数回答の結果である。

どのようなところに不満があるかという質問には「音訳者の読みの質に問題がある」とした人がもっとも多く、「音の大きさや雑音など録音の質に問題がある」などと続いた。「音訳者の読みに問題がある」と答えた人(39人)に今度は音訳者の読みのどのようなところに問題を感じるかを聞いた。その結果は「言葉がはっきりしない」「不自然なアクセントがある」が上位にきて、「読みが単調で、メリハリがない」などが続いた。

「音の大きさや雑音など録音の質に問題がある」と答えた人(25人)にどんな点に問題を感じるかを聞いたところ、「読みの後ろに聞こえる『ジー、ブーン』という電気ノイズのような音」がもっとも多く、「読み直しが明らかにわかる音質の違い」が続いた。音訳者が特に気にしがちな口中音は6人と下位にとどまった。「デイジー資料として編集の質に問題がある」とした人(16人)にどのような箇所に問題を感じるか聞いたところ、「製作施設・団体等で編集方法が違う」「目次通りの適切な見出しやレベルでないため移動ができない」が続いた。

自由記述で聞いた、今後録音図書に期待することとしては「多様なジャンルの図書を充実させてほしい」「完成までの期間を短くしてほしい」「将来にわたり、製作体制を安定させるため努力してほしい」「言葉をはっきりしてほしい」「会話部分の読み方への注文」等々、多岐にわたる意見が寄せられた。

最後にこのアンケートにご協力いただいた皆様に心よりお礼を申し上げる。

 

「録音資料についてのアンケート調査」の項目については、下記、日盲社協ホームページにてダウンロード後、ご覧いただけます。

URL:http://www.ncawb.org/osirase.html

音訳指導員講習会の様子

 

自立支援施設部会

令和元年度自立支援施設部会職員研修会の中止について

今年度における、自立支援施設部会職員研修会は、令和2年2月27日(木)から2月28日(金)の2日間にわたり、(福)東京ヘレン・ケラー協会本部(東京都新宿区)にて開催予定で準備を進めていたところでございますが、新型コロナウィルスの現時点における影響と状況を鑑み、中止とさせていただくことになりました。

 

みなさまには、期末のお忙しい中、ご予定の調整や交通手段、宿泊先の確保等のご準備とお手数をおかけしていたところと存じます。誠に申し訳ありません。

 

本年度中の実施には無理があることから中止とさせていただきますが、来年度における職員研修会も、下記のとおり、今年度の内容にて計画する予定です。

 

 

生活施設部会

令和元年度生活施設部会施設長並びに職員研修会

令和元年度の生活施設部会の研修会は社会福祉法人東京光の家の皆様のご協力を得て、令和2年(2020)1月23日から24日にかけて東京都内で実施した。1月23日はマロウドイン八王子で、1月24日は日野市所在の東京光の家で行った。

 

1月23日(木)

講演1の演題は「光道園の現状と課題、そして将来に向けて」、講師は光道園常務理事で、同第二光が丘ハウス施設長の荒木博文氏。

光道園は昭和32年(1957)に発足。最初は授産施設として出発し、盲重複障害者の施設として発展してきた。

現在経営する施設数は17で、職員は常勤と非常勤を合わせて436人の大規模法人となっている。

講演2の演題は「山梨ライトハウスの概要と青い鳥老人ホームの運営状況について」、講師は山梨ライトハウス青い鳥老人ホーム施設長三富学氏。最初に山梨ライトハウスの創立者である長谷部薫氏の紹介あり。

山梨ライトハウスは昭和28年(1953)10月に点字図書館を設立しているところから発足。現在は6施設を経営する他、青い鳥奉仕団、白い杖愛護運動、地域との交流事業などを展開している。

以上、2名の講師による講演会終了後は、参加者による食事会の他に情報交換とカラオケ発表会を行なった。

 

1月24日(金)

講演3の演題は「視覚障害者と就労」、講師は東京光の家救護施設光の家神愛園施設長の藤巻契司氏と同施設相談員の鈴木英征氏。講演が始まる前に、石渡健太郎理事長より「東京光の家は盲目の人秋元梅吉により大正8年(1919)4月1日に創立された施設である」という話と施設の基本理念と経営の基本方針についての感銘深い話があった。

生活施設部会施設長並びに職員研修会

鈴木講師からは、盲人の職業の歴史等についての話があり、藤巻講師からは、人間は誰かの役に立ちたいという思いがあるので、神愛園では入園者78名中70名は作業に参加しているとの話があった。

施設見学では、立派なレストランを経営されていることに驚いた。東京光の家では現在の7施設の他にまもなく2つのグループホームをオープンさせるとの事だった。

今回の研修会には12施設から26名の職員が参加した。

終わりに、関係の皆様に深く感謝申し上げるしだいである。

 

盲人用具部会

令和元年度盲人用具部会研修会

盲人用具部会研修会

令和2年(2020)2月6日(木)、東京都新宿区高田馬場の日本点字図書館において、令和元年度盲人用具部会研修会を開催しました。

まず「障がい福祉サービスの実情と現場の想い」というテーマで、名古屋ライトハウス専務理事・法人本部長の山下文明氏に講演をお願いしました。

盲人用具部会(岡村原正部会長)では、機器の開発、販売を通して、多くの視覚障害者に関わりを持っています。展示会等では、一日に30人以上の視覚障害者と話をすることも、珍しくはありません。しかし、それは展示会に来る、盲人用具に強い興味と関心を持っている一部の視覚障害者に接しているだけであり、全体を知っていることにはなりません。

私自身、視覚障害当事者ではありますが、ものを作ったり、販売したりするためには、より踏み込んだ視覚障害者の実態を知る必要があるのではないかと思い、このテーマに至りました。

講演はいきなり「自立って何だろう?」から始まりました。

これを聞いて頭に思い浮かんだのは、「単独歩行ができる」、「身の回りのことはなんでも自分でできる」、「仕事をしている」……。私が描いたのはそのようなことでした。

そして、自立をしていないという大きなポイントは、「評価・判断・選択・実行・反省」をしないことであると続きます。

よく展示会で見られる光景ですが、視覚障害当事者が「この機器はすごい、ぜひほしい」というと、ガイドさんが「そんなことぐらい、いつでも手伝いますよ」と口を開くので、興味が一挙にさめ、その場から視覚障害当事者がそそくさと立ち去ります。

まさに、「実行」に結びつかないわけです。

そして、支援者側に立った時には、「訓練、しつけ、説教、いじめ、しごき、虐待、拷問」の違いについての話となります。心が通じていない訓練は「しごき」かも知れないのです。

山下氏の話を拝聴する中で、視覚障害当事者、支援者は様々な葛藤の中で日々生活していることを感じることができました。

日盲社協に在籍していなかったら、このような話を聞くことはありません。「日盲社協」という専門家組織の重要性、そして、様々な分野の方々が加盟しているこの組織の素晴らしさに改めて感歎した次第です。




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