日本点字技能師協会理事長 込山光廣

21世紀の幕開けとともに、第1回点字技能検定試験は華々しいスタートをきった。18歳以上なら、誰でも受けられるということで、点訳者・点字使用者の間で注目を集め、受験申込者は600名を超えた。しかし、合格率が3%台だったこと、実技― 点字技能(校正問題、点字化問題)試験は点字器(点字タイプライターも可)で解答しなければならないことなどが理由と思われるが、受験者が毎年減り続け、100名を切るようになってしまった。

一方、第5回試験からは厚生労働大臣が認定する日盲社協の社内資格となり、第9回試験からは一部合格(学科か実技かどちらかに合格すれば、3年間はその試験を免除する)制度が導入された。また、点字指導員認定講習会については、点字技能師は優先的(推薦状なし、事前の課題文なし)に受講できるメリットも得た。にもかかわらず、受験者数はまだ三桁を回復していない。

2004年から3年間、私たちも協力して、視覚障害者支援総合センターは、点字技能師の資格をアピールすることと点字技能検定試験の事前準備として「チャレンジ講習会」を開催した。2007年からは、それを私たちが引き継ぐ形で「チャレンジ」を実施している。昨年からは実技(点字技能)の模擬試験を本試験と同じ形で行い、受講者からは高い評価を得ている。

現在、点字技能検定試験は東京・大阪の2会場で実施されている。多くの点字技能師の誕生を期待するならば、まず受験者を増やさなければならない。それには受験しやすさ、とくに試験会場へのアクセスの良さが決め手になると私たちは考える。そこで、思い切って今年は「チャレンジ」を3ヵ所で開催した。

その結果、九州・福岡では39名、北海道・札幌では36名、京都では28名、合わせて103名の方に受講していただいた。その際実施したアンケートによると、点字技能師について初めて知った、あるいは名前だけは聞いたことがある、と答えた人が意外と多く、残念ながら点字技能師の認知度は必ずしも高くはないことがわかった。また、「試験会場が近ければ受験してみたい」という声が少なからずあった。模擬試験では本番さながら、会場に受講者の熱気が溢れていたという。

私は、全国どこにいても、点訳・点字に関わる人々が点字技能検定試験を受験できる日が来ることを望むものである。その第一歩として、年ごとに場所を変えて、東京・大阪とともにその地で試験を行えないものだろうか。まず来年は、「チャレンジ」で開拓した、ある程度受験者数が予測できる福岡か札幌を第3の会場として試験を実施できないか、検討願いたい。

「量は質に転化する」という。質の高い多くの点字技能師の存在は、点字を「唯一の文字」とする視覚障害者の情報・生活環境の改善に寄与し、文化の豊かさを創り出すに違いない。

写真 (写真)チャレンジ講習会(札幌会場)

日盲社協通信63号目次ページへ戻る