日盲社協の関係者で、多年の業績が高く評価され、各賞を受賞された方々をご紹介して(順不同)、ここに深甚なる慶祝の意を表します。

◆岩井和彦氏に鳥居賞、田代安子氏に鳥居伊都賞

故鳥居篤治郎先生遺徳顕彰会(田尻彰代表)は、京都ライトハウスの創設者・鳥居篤治郎氏と同氏夫人・伊都氏の遺徳をしのび、視覚障害者福祉に貢献した人をたたえる第29回鳥居賞に岩井和彦氏(62歳・奈良市)、第15回鳥居伊都賞に田代安子氏(67歳・福岡市)を選びました。

伝達式は9月9日、京都市北区の京都ライトハウスで行われ、それぞれに賞状と記念品・副賞が贈られました。

岩井氏は、受賞当時日本ライトハウス常務理事で、長年にわたり視覚障害者への情報提供サービスの向上に取り組み、情報提供ネットワークシステム「サピエ」の立ち上げに多大な貢献をされました。

一方、田代氏は、福岡県点字図書館長や日本盲人会連合副会長などを歴任した田代浩司氏を妻として支え、自らも職に就いて視覚障害者福祉の充実に尽力した業績が高く評価されました。

◆斯波千秋氏に点毎文化賞

毎日新聞社(朝比奈豊社長)は、視覚障害者の文化や教育、福祉の向上に貢献した個人や団体を表彰する第48回点字毎日文化賞受賞者に、先駆的な視覚障害者作業所の開設と白杖作りなどを通して視覚障害者福祉に努めてきた特定非営利活動法人六星の理事長・斯波千秋氏(61歳・静岡県浜松市)を選びました。

斯波氏は、1996年に浜松市に全国でも珍しい視覚障害者を中心とした小規模作業所「ウイズ」を開設し、白杖作りや点字印刷、農作業など幅広く手がけています。

また、スリランカで視覚障害者支援事業を行うほか、留学生らへの白杖作り指導に取り組むなど、生活に根ざした視覚障害者支援活動と国際貢献の姿勢が高く評価されました。

表彰式は10月21日、毎日新聞東京本社で行われ、本賞(盾)ならびに副賞の中村京太郎賞(置き時計)と日盲委奨励賞が贈られました。

◆酒井久江氏にHKサリバン賞

東京ヘレン・ケラー協会(三浦拓也理事長)は、視覚障害者支援に功績があった人を表彰する第19回ヘレンケラー・サリバン賞の受賞者に、全国盲老人福祉施設連絡協議会(全盲老連)常務理事・事務局長の酒井久江氏(69歳・東京都青梅市)を選びました。
酒井氏は銀行勤務を経て、1968年に聖明福祉協会に就職。業務と並行して全盲老連(現在51法人・79施設加盟)の運営にかかわり、職員定数の増員を国に働きかけて実現するなど、盲老人の福祉向上に尽力されました。また、欧米の先進的な盲老人ホームを視察して国内に紹介するなど、国際的な交流も推進しました。

贈賞式は10月4日東京ヘレン・ケラー協会ホールで開催され、本賞(賞状)と副賞として、ヘレン・ケラー女史直筆のサインを刻印したクリスタルトロフィーが贈られました。

◆竹下義樹氏に本間一夫文化賞

日本点字図書館(田中徹二理事長)は10月7日、日本点字図書館を設立した本間氏を記念し、視覚障害者の文化の向上に関する分野で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する第8回本間一夫文化賞の受賞者に、点字受験で初めて司法試験に合格した弁護士の竹下義樹氏(60歳・京都市)を選びました。

竹下氏は中学3年生の時に視力を失い、大学卒業後、司法試験の点字受験の実現に奔走する一方、1981年に最初の合格者となりました。1994年に独立し、高齢者・障害者の権利擁護や犯罪被害者の支援活動に取り組んでいます。

表彰式は、11月10日に日本点字図書館で行われました。

◆新旧理事長と2施設に社会貢献賞

社会貢献支援財団(日下公人会長)は、9月8日、広く社会の各分野において、社会と人々の安寧と幸福のために尽くし顕著な功績を挙げた個人・団体を表彰する今年度の社会貢献者表彰に、視覚障害者関連では、日盲社協前理事長茂木幹央氏(75歳・埼玉県深谷市)、日盲社協理事長高橋秀治氏(68歳・東京都町田市)、社会福祉法人視覚障害者支援総合センター(高橋実理事長)、特定非営利活動法人六星(斯波千秋理事長)の2名・2団体を選びました。

それぞれの受賞理由は以下の通りです。

茂木氏(日本失明者協会理事長)は、3歳で失明し盲学校卒業後、苦労の末点字受験により大学に入学。卒業後、国立東京視力障害センターに勤務。その後、自治体や団体等の協力を得て、盲老人施設のない埼玉県に初めて、養護盲老人ホームひとみ園を昭和54年に完成させます。以来35年、視覚障害者の就労施設や身体障害者のためのケアホームなど9種の社会福祉事業を営み、利用者245名と職員133名を擁し、地域福祉を支えています。

高橋氏(ロゴス点字図書館館長)は、点字出版一筋に情熱を注ぎ、常に点字の重要性と視覚障害者の読書の権利を守り、バリアフリーの普及に取り組んで、視覚障害者への一般社会の理解を深める活動を推進してきました。公共施設における点字表示をJIS化し、点字選挙公報全文発行への実現、点字図書給付事業の改善など約48年にわたって活動を続けてこられました。

視覚障害者支援総合センター(東京都杉並区)は、視覚障害者のための大学の門戸開放、学習支援や卒業後の就労促進を主な目的に昭和62年に結成。その後、奨学生制度を創設し300人を越える奨学生を支援してきました。また、点字教科書等を発行するかたわら、点訳者養成の講座を毎年開催し、正確な点訳を迅速に盲学生に届ける仕組みを発展させました。社会福祉法人認可後、就労訓練施設を開設し平成14年までに地方公務員や民間企業に29人を送り出しています。

六星(静岡県浜松市)は、盲人福祉研究会斯波千秋代表を中心に組織され、平成8年に浜松市半田町に視覚障害者中心の小規模授産所を、平成18年には市内の蜆塚にも開設し、現在、両作業所合わせて48人の利用者と職員11人を擁し、白杖の開発製造と点字印刷の作業を通し、視覚障害者の生活の質の向上や自立を促進してきました。また中途視覚障害者の社会復帰や盲重復障害者の社会参加を支援するとともに平成15年には、スリランカに支所を開設するなど、活動を広げています。

表彰式は、11月21日に東京都千代田区の帝国ホテルで行われます。

◆塙保己一賞大賞は茂木幹央氏、貢献賞は国際視覚障害者援護協会へ

埼玉県は10月7日、障害がありながらも不屈の精神により社会的に顕著な活躍をしてきた障害者を表彰する第5回塙保己一賞大賞に、日本盲人社会福祉施設協議会の前理事長で、社会福祉法人日本失明者協会理事長の茂木幹央氏(75歳・埼玉県深谷市)、障害者の支援者や貢献者を対象とする貢献賞には、社会福祉法人国際視覚障害者援護協会を選んだと発表しました。

茂木氏は、埼玉県で初の養護盲老人ホームを開園し、運営する養護盲老人ホームに本格的な演劇ホールを設置して、全国盲人演劇祭を開催するなど、文化芸術分野でも視覚障害者福祉の充実を図りました。また、全国220の施設や点字図書館などが加盟する日本盲人社会福祉施設協議会の理事長として、全国の盲人福祉施設をリードし、視覚障害者福祉の発展充実に努めたことが高く評価されました。

国際視覚障害者援護協会(石渡博明理事長・東京都板橋区)は、昭和46年に日本に留学中の視覚障害者4名によって設立された国際盲人クラブを前身に、昭和56年に奨学制度を創設しました。昭和57年からほぼ毎年、教育環境に恵まれない発展途上諸国の若い視覚障害者に、日本で理療の施術やIT技術などを勉学する機会を提供してきており、これまでにアジアを中心に17か国から72名の留学生を受け入れ、留学生は、その後、母国で障害者福祉を高め、指導者として活躍しています。

表彰式は、12月17日(土)、塙保己一の生家に近い本庄市児玉文化会館セルディで行われます。

◆田中徹二氏に経済産業大臣表彰

日本点字図書館の田中徹二理事長(76歳・東京都練馬区)は、10月17日、経済産業大臣表彰を受けました。

これは、視覚障害者用誘導ブロック(点字ブロック)の突起の形状、寸法、配列について、日本工業規格(JIS)原案作成の場面で、田中氏が視覚障害当事者の立場から貴重な役割を果たしたことが、高く評価されたためです。

1953年度から続く同表彰で、障害当事者が選ばれたのは初めてのことです。

国内では、アクセシブルデザイン分野のJISが複数生まれてきたほか、日本の働きかけがISO(国際標準化機構)の取り組みにもつながっています。

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