理事長 橋秀治

著者近影

核家族化が言われて久しいが、街の暮らしぶりが変わってきたようだ。町内やマンションで隣にどんな家族がいて、なんの仕事をしているかさっぱり分からない。個人の暮らしを大事にし、他人とは最小限の関わりに止めて自由にしたいということか。街の不動産屋も「こういう時代だから、近所にあまり気を使わなくても」とさらりと言ってのける。

そんな思いで私たち日盲社協を見るとどうだろう。私が現職に就いて1年近くになるが、部会同士の関係となると、いささか心細い。五つの部会の現状はどうだろうか。

点字出版部会は、制度の変更により価格差補償制度が地方に移管され、事務手続きの簡素化を含めかなり苦戦している。加えて利用者の点字離れが広がり、点字図書は売れ行きがかんばしくない状態だ。録音図書をどう組み込んでいくのか、課題となっている。

情報サービス部会は、何かと全視情協のあおりを受けて独自性が発揮しにくい。全視情協との役割分担はあっても、目立たず慎ましい。しかもこの二つの団体に加わる会員は、同じメンバーときているからややこしい。このかったるい状況からどう抜け出していくのか、こちらも模索が続く。

自立支援施設部会は、これまた寄り合い所帯。リハ施設、授産施設、盲導犬、盲人ホームなど、本来ならいずれも1部会として自立できる内容の濃い施設が横並びしている。それぞれに課題を持ち、行政に訴えていくわけだが、どうすればそのパワーをまとめられるか。横の連携について手探り状態が続く。

生活施設部会は盲老人ホームが主体。全盲老連の加盟施設のうち、日盲社協に参加して、存在感を増しているのは、本間昭雄元理事長時代からのこと。全盲老連とどう連携し、独自性を発揮していくか、両者の協力関係がはずせない。高齢化社会の中での盲老人の暮らしのカギを握っていると言えよう。

盲人用具部会はパソコン、白杖、共用品など暮らしをリードする施設や福祉貢献企業の集まり。展示会を開いて視覚障害者と接するだけでは、浸透が弱いのではないか。ビジネスの背景に、利用者の生活水準をどう高めていくのかという「哲学」が求められる。その視点で他部会を見れば接点が出てくるはず。時代の先端を行くだけに期待は大きい。

さて、各部会をまとめる本部体制はどうか。正直言って各部会と大差ない。切実なスローガンを掲げて行動すべきだが、まだそういう体制にはない。本部は各部会の奉仕者であるべきで、それが逆転してはまずいという認識で、活動していきたい。お互いに隣人を配慮しつつ、活動を盛り上げていきたいものだ。


日盲社協通信64号目次ページへ戻る