常務理事・事務局長 岩上義則

著者近影

今年、日盲社協の大会が60回を迎えることもあり、和歌山で熱いテーマで議論を巻き起こす。大会の目玉は21日13時半〜16時半まで、3時間をかけて行う研修会『障害者総合支援法とサービスの費用負担を考える』。

内閣府に置かれた制度改革推進会議の障害者部会は自立支援法を廃止して総合福祉法を実現させたいとして、勢力的に議論を重ねてきたが、昨年8月にその骨格を提言した。しかし、厚労省は去る2月29日、障害者の期待を裏切るような内容に変更し、名称を「障害者総合支援法」に改めるとして政府に提出した。「総合福祉法」が「総合支援法」という風に、「福祉」から「支援」に一熟語置き替わるだけで内容が一変 するのだから恐ろしい。「福祉」には障害者の主体性や権利や平等が息づくが、「支援」には「おめぐみ」の要素が色濃く出てしまうのである。骨格の重点であるサービスの内容、障害程度区分の認定、支給決定などは施行後3年をかけて検討するとする、言わば懸案先送りの形で、去る3月13日に閣議決定されてしまった。障害者は「約束が違う」と怒り心頭。そして、不安と混乱を収拾できないまま今日に至っている。

大会では、障害者総合支援法はなぜ理想と願いを崩したのか、視覚障害者の今を見つめながら今後の運動をどのように修正するのかなどを研修する。また、法の改正にともなってサービスの費用が応益負担から応能負担に変更されるが、応能負担が本当に障害者にプラスなのかどうかも気にかかる。確かに応益負担は障害者のサービス利用を大きく阻害したが、応能負担にも問題があるのではないか。アハキの未来に光が見えず、年金も減額されるなどの悪条件の中で応能負担への移行は正しかったのか否かも確認したい。

一方、今回の法制度改正には見えないが、補助金削減に歯止めがかからない情報サービスにも危うさがある。点字図書の価格差補償や日常生活用具の支給に地域の足並みが乱れているし、情報サービスにも個人負担を求めなければやっていけない施設の厳しさが見え隠れする。国の施策の根本に財政削減の意図があるのは明らかなので、総合支援法の動向にからめて情報と利用負担についても5部会共通の課題としてテーマを設定した。

講演1.「障害者総合福祉法が実現しなかった事情と今後」
講師は、制度改革の最前線で奮闘する、弁護士で、日盲連新会長に就任した竹下義樹氏

講演2.「障害者サービスと利用負担」
電子図書館の構築と利用拡大にひた走る日点理事長の田中徹二氏

また、この講演を受けて二人の代表発言も予定しており、その後はフロアーからの活発なご意見をいただいて実のある研修にしたい。


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