日本点字技能師協会 込山光廣

著者近影

日常生活は、とかくマンネリ化しがちなものです。同じ仕事に長年携わっていても同様の現象がみられます。しかし、人は良くしたもので「ケ」の中に「ハレ」を設けるなど、意識的に「節目」を作ることによってマンネリズムを克服してきました。

さて、点字使用者である視覚障害者や、点訳に携わっている皆さん、点字に漫然と向き合うことになってはいないでしょうか。わたしがそうでした。日本点字の基本的なルールである『日本点字表記法』すら読んだことがなかったのです。それが点字技能検定試験(以下、試験)を受験すると決めたことによって、目標ができ、点字のことを真剣に勉強するようになったのです。

そして、点字の歴史や規則を学ぶことでその奥深さを知り、視覚障害者福祉や生活状況を知り、改めて視覚障害者にとっての最大のバリアは「情報が十分得られないこと」なのだと気付きました。

試験は、学科も点字技能も、点字に関わるならば、最低限知っておいてほしい、基礎的なものが出題されます。わたしは9年間点字技能検定運営委員を勤めましたが、点字のベテランの方がなかなか合格できないという例がある反面、全く逆なこともありました。試験で求められているのは、点字の読み書き能力と基礎的な知識です。誤解を恐れずに言えば、点字技能師になること=点字使用者・点訳者として、一人前になることと言っても過言ではないでしょう。点字歴・点訳歴の長い方は、一つの節目として、試験を受けてみませんか。点字・点訳歴が数年の人も受験ができます。そして、それは必ずやキャリア・アップにつながることになるでしょう。

次に、試験に関する課題について簡単に述べてみます。主要な点は三つです。

1.受験者を増やすこと
点字に関わる者ならば、誰でも受けられることをPRし、受験への動機づけとなる学習会などを各地で実施してもらいたい。

2.試験会場を増やすこと
現在は東京と大阪の二つの会場で実施されているが、試験会場を増やして、受験者に物理的にアクセシブルな環境を整える必要がある。

3.点字技能の再検討
試験の点字技能は、点字化と校正とから成り立っている。そして、使用器具は点字器・点字タイプライターとなっている。だが、実際の点訳は、一般的にはパソコンで行われている。点字器で点字を書けるようになってほしいのは当然だが、パソコンでの点字を書く能力を無視することはできないだろう。点字化については、パソコンでの試験の導入も考えなければならない。

最後に、職員に試験を受ける環境を作っていただくことを各施設にお願いします。


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