日本ライトハウス 点字情報技術センター所長 福井哲也

2011年12月2日、点字出版部会職員研修会に引き続き、13時から17時まで「点字サイン基礎研修会―― JIS規格と監修業務を学ぶ」が、京都のザ・パレスサイドホテルで開かれた。

駅や公共施設等に設置される階段の手すりの点字表示、エレベータや券売機のボタンの点字表示、構内の触知案内図などを総称して点字サインと呼ぶ。社会のバリアフリーに対する意識の高まりと法律やガイドラインの整備により、街中で見られる点字サインは、この20年ほどの間に大幅に増えた。

ところが、実際には問題も多い。内容や表記に誤りがあったり、点字が上下逆さまだったり、しゃがみ込まなければさわれないような壁面の低い位置に付いていたり。駅の階段の手すりには「何番線」「どこ方面」といった情報を付けて欲しいのに、「上り階段」とか「踊り場」としか書かれていなかったり。中には、「女子トイレ」と「男子トイレ」の表示が入れ替わっていた(大阪の某病院)という例さえある。これは、点字や視覚障害者のことをまるで知らない業者が、多数この仕事に関わるようになったためと考えられる。

点字出版部会では、10年以上にわたりこの問題に取り組んできた。利用者アンケートに基づき、2002年に「点字表示等に関するガイドライン」を作成。それがベースとなり、2006年・2007年には点字サインに関する2つのJIS規格が発効された。だが、規格を作っただけでは、問題のある点字サインはいっこうに減らない。

そこで、点字のプロである私たちが点字サインの「監修」を業務として行えるようになることを目標に、この研修会が企画された。情報サービス部会・盲人用具部会の会員施設にも案内し、出版18施設、情報7施設、用具2施設から計50名が参加した。

内容は、JIS規格のポイント、監修業務の進め方、UVインクによるサインの製作方法など。JISには例えば、同じ手すりの表示でも、駅の階段ではそこを上った(下った)先の情報を優先し、福祉施設など建物内の階段では今いるフロアの情報を優先するとの規定がある。こういった知識もないと、監修はできない。

ところで、皆さんが外出先などで「これはまずい」と思う点字サインを見つけたら、どうされるだろうか。たいていは何もせず通り過ぎるのではないか。私は、皆がその施設の管理者に一言伝えることを実行していただきたいと願っている。メモ書きを渡せればなお効果的。視覚障害者福祉にたずさわる方々が、晴盲を問わず「放っておかない仲間達」になってくだされば、点字サインの改善につながると信じる。

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