常務理事・事務局長 岩上義則

著者近影

2013年(平成25年)は、日盲社協が還暦を迎える年にあたる。そのため、創立60周年の式典と祝賀会に向けてのプランが着々と進行中であるが、概略を「事務局だより」で紹介するのでそれを参照されたい。

日盲社協が産声をあげた1952年(昭和27 年)当初の会員施設数は32だったと記録されているから、200有余の大所帯に成長した今日の姿は驚きであり感慨深いものがある。

しかもその頃は、点字図書館や点字出版所がまだまだ少なかったうえに、リハビリテーション・盲人ホーム・盲導犬・用具などの施設は皆無に等しかったのだから、60年間の福祉発展の目覚ましさと歴史の重みをしみじみと感じさせられる。

ただ、会員施設の増加と多様化は活況を呈しているように見える反面、法人がめざす方向や施設間の連携をかなり難しくしているのも確かなことである。それについても触れたいが、歴史の成果と今後の課題を優先して書かせていただくことにする。

昭和20年代は戦後処理と敗戦の混乱から脱し切れていない時期であり、いわば障害者福祉も夜明け前だったのである。しかしながら、国自体が復興に苦しんでいる中で、福祉の闇を切り裂こうとするいくつものうねりが見られたことは敬意に値することであり、今日の繁栄の基を築いた先人の努力に心からの謝意を表したい。

その一つとして誕生したのが日盲社協であるが、施設間の親睦を図りつつ、当面する課題に取り組む団体として徐々に力をつけていった。一方では他団体と協調・連携して点字図書の価格差補償の実現や日常生活用具の指定などに寄与し、他方では独自の事業として研修活動の充実、点字サインのJIS化、選挙情報の提供など、視覚障害者の情報提供や生活向上に大きな成果を挙げてきた。

そのような歴史の中で、昨年、永年の念願だった自前の城「日盲社協会館」の建設を果たして拠点づくりがかなったのは、特筆に値する快挙であろう。

さて、肝心なのは、これからどうするのかである。5部会の課題は永遠であっても、新しいニーズと期待にいかにして取り組め かが当法人の成否を決める。

時代の流れは施設福祉から地域福祉への転換にある。施設が持つ専門性と設備を、地域で暮らす視覚障害者の生活につなげていかなければ、真の視覚障害者の暮らしやすさは実現しない気がする。

地域の施設を孤独な障害者が気軽に利用できる方策は何か。施設利用者が減少していく現状と視覚障害者が外出の手段とチャンスを待ち望んでいる実体が明らかなのだから、そこに魅力のある利用課目の用意、外出サポートの確立という方法論の鍵が見えてくる。

拠点づくりを成し遂げた日盲社協の知恵の出しどころはまさにこれに尽きると言ってよかろう。

 

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