******************************************************************************  『日盲社協通信』平成26年(2014年)4月号(通巻68号)  編集人:福山博 発行人:橋秀治  発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)  National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)  http://www.ncawb.org/ ****************************************************************************** *各みだしの前の行に「++」の記号がありますので、検索機能などでみだしを探す時にご活用ください。 ++  もくじ<数字は活字版のノンブル(ページ番号)>  垣根を乗り越えて 理事長 橋秀治 1  第62回全国盲人福祉施設大会について 常務理事・事務局長 岩上義則 2  ローマは一日にしてならず 山口県盲人福祉協会理事長 舛尾政美 3  社会福祉法人の見直しについて 常務理事 橋秀夫 4  <福岡大会>ご来県をお待ち申しあげます 福岡市立点字図書館館長 横田博文 5  (誌上慶祝会)高橋實氏の塙保己一賞大賞の受賞を祝す 日本点字図書館理事長 田中徹二 6  (誌上慶祝会)前川昭夫さんが、「旭日双光章」を受賞されました 広島県視覚障害者団体連合会副会長 藤井貢 7  シンポジウム 視覚リハビリテーションの空白A 〜支援団体、当事者、学校、学会、眼科医会が一同に会して〜 日本盲人職能開発センター施設長 杉江勝憲 8  (特集)日盲社協各事業部会の取り組み 理事長 橋秀治、点字出版部会長 田中正和、情報サービス部会長 岡本博美、自立支援施設部会長 山下文明、生活施設部会長 茂木幹央、盲人用具部会長 荒川明宏 9  平成25年度第32回音訳指導技術講習会 東京ヘレン・ケラー協会点字図書館 堀江達朗 14  平成25年度点字出版部会職員研修会報告 日本ライトハウス点字情報技術センター 高橋昭衣 16  平成25年度生活施設部会・自立支援施設部会合同施設長並びに職員研修会 自立支援施設部会長 山下文明 17  選挙公報点字表記委員会の成果と課題 選挙公報点字表記委員会委員長 渡辺昭一 18  熊谷ライトハウスと同リフレッシュセンターが竣工 広報委員長 福山博 19  日本点字図書館オープンオフィス 日本点字図書館館長 天野繁隆 20  競輪補助事業完了のお知らせ、日盲社協事務局だより 21  編集後記 22 ++  垣根を乗り越えて  理事長 橋秀治  私が本会の理事長の席に着いてから3年になります。  ロゴス点字図書館という超小型の施設がベースなので、大きな戸惑いがありましたが、何とか3年もちました。小さな施設はいつもそれなりの背伸びをしていますし、対外的には日本盲人福祉委員会(日盲委)の視覚障害者選挙情報支援プロジェクト点字版部会の部会長をしていて、日常的に国政選挙をにらんだ体制づくりに時間を取られていました。それプラス日盲社協となると、実際どうなるのか先がみえませんでしたが、「もうやるしかない」ということで、ダブルブッキング、勘違い、聞き間違い、物忘れなど周辺にひどいご迷惑をかけたりして、情けない思いをしながら歩いてきました。  しかし立場上、いろんな会合に呼ばれ、挨拶したり、勉強したりで、今まで直接親しくなかった団体との接触の中で、団体同士の協力や連携の必要性を学ぶことができたのは有り難いことでもありました。  中でも日盲委との関わりは大変勉強になりました。日盲委は日盲連、日盲社協、全国盲学校長会の3団体で作られています。日盲連会長と日盲委理事長は竹下義樹さんが兼務しています。そして、日盲連と日盲社協は岩橋武夫先生が創設されたものです。そういう出発のご縁と、日本の盲教育を担う盲学校長会の握手というのは、難題の多い視覚障害者の世界では素晴らしい繋がりといえます。これを活かさない手はありません。  平成16年(2004年)には視覚障害者選挙情報支援プロジェクトが、同18年(2006年)には毎年秋に開催されるサイトワールドが、同23年(2011年)には東日本大震災視覚障害者支援対策本部が日盲委の中に立ち上げられたことで、その連携の重大さが証明されました。  誰もが参加できて、共同作業を行うことで、他の団体の人々と気持ちが通い合うという大きな絆が広がります。  もちろん、日盲社協でいえば、一つ一つの施設はそれぞれ信念をもって仕事をこなし、同業との連携は所属部会で確認しあい、そして他の部会で活動する施設に対しては、異分野ではなく仲間として捉えられれば、相互理解は深まります。  日盲委が取り上げる大きな分野に国際交流がありますが、これも各部会それぞれに活かせる分野です。いろんな意味で、日盲委を通してこれから大きなアクションが広がる気配がします。自分の所属団体をしっかり固め、スケールの大きなイベントなどには手をつないで参加し、個人としても団体としても幅を広げていけるとしたら、素晴らしいことです。 ++  第62回全国盲人福祉施設大会について  常務理事・事務局長 岩上 義則  日盲社協の全国大会が、約2ヵ月後に迫りました。今年は福岡市立点字図書館のお世話で開催しますが、福岡での大会は平成13年以来2度目になります。有名な博多どんたくは5月に終わりますが、福岡タワー、櫛田神社、キャナルシティなど名所が数多くあり、博多ラーメン、明太子、梅ヶ枝餅などをご賞味いただけます。  会場となるヒルトン福岡シーホークは、福岡空港から車で20分、博多駅まで車で15分と便利なロケーション。「都市景観100選」に選ばれたシーサイドももち地区に位置し、海まで徒歩5分。福岡ヤフオクドームに隣接する地上36階の建物です。  スケジュールの骨格はほぼ例年通りで、初日の6月26日(木)に研修会、事業部会、交流会を、翌27日(金)は講演、ボランティア懇親会、式典を行ないます。研修会は二つのテーマを設定しており、第1テーマは「読み書き支援」、第2テーマは「GPSが開く災害支援」です。  研修会第1テーマの読み書き支援は代読・代筆を指しますが、言葉は生き物ですので、時代や流行を反映して、コミュニケーション支援や情報支援などの類語として生まれたものと言えましょう。特に同行援護が始まって、制度の趣旨が移動支援以上に読み書き支援にあるとされる中で、外出に伴う情報支援はいかにあるべきかが問われています。これに点字図書館がどう係わるのかも支援の発展に大きく影響しそうです。読み書き支援を実施する余裕など無いと考える経営者がいる一方で、本協議会加盟の施設にはプライベートサービスや自立支援事業を行なっている施設も少なからずありますので、議論の交錯が危惧されますが、活字の認識に困難のある者の生活向上に資する今日的な問題として、ともに考えていきたいと願っています。  第2テーマは、「GPSが開く災害支援」です。GPSを利用すれば障害者の救難・救助、居場所確認などに役立つほか、環境情報も得られると期待されています。  講演の演題は「権利条約の批准・法整備後の障害者の社会」。日本は本年1月権利条約を批准しましたが、昨年は、条約を有効ならしめる重用法も成立させています。さて、障害者の社会がどう変わっていくのか大きな関心事です。講師は日本障害者協議会(JD)常務理事の藤井克徳氏。まさに時の話題、ご期待ください。  なお、盲人用具部会では、大会終了後の6月28日に福岡県立点字図書館にて視覚障害者用具の展示会を行ない、地元ユーザーや関係者に見ていただきます。地域に用具情報を浸透させるのは困難で悩み多いことなのですが、部会では、例年の本大会をチャンスととらえて、できるだけ展示会を実施するよう努めています。参加日程に余裕がある施設の方は是非ご覧ください。 ++  ローマは一日にしてならず  山口県盲人福祉協会理事長 舛尾 政美  日盲連は結成当初、大阪の日本ライトハウスに事務所を置いていたが、後に、下関出身の江藤智参議院議員のお力で東京都新宿区高田馬場の国鉄職員研修所を払い下げてもらい、ここに本部事務所を置いた。  江藤議員と日盲連を結びつけていたのが県盲協4代目の大西政夫会長である。私は大西会長の下で青年部長を務めていたが「全国盲人福祉大会で自分はいろいろ制度作りに係わってきたが、盲人のガイドヘルパー制度作りにとても骨が折れた」と江藤議員は話していた。  参院選の後、私が事務所を訪ねたとき林秘書は「下関の点字の得票のうち江藤の票は17であった」と言われた。とても恥ずかしく思ったものである。それ以来、議員と選挙を通じてしっかり仲良くすることが何かを実現する上で最も大事なことであると知った。議員の後援会の組織づくりをはじめ、決起大会や諸会議に参加し、応援演説も引き受けた。その結果、山口県や市の点字広報発行や点字ブロックの敷設、各種委託事業などが受けられた。  昭和56年(1981年)に私は県盲協の理事長になって養護盲老人ホーム春光苑の建設運動を始めた。その中で当時外務大臣であった安倍晋太郎先生の秘書を務めていた安倍晋三氏(現総理)が厚生省の担当課や日動振の事務所に同行されたことが、春光苑の建設実現に大きな力となった。  最初、県庁に行ったとき担当課の課長は「資金も無い土地も無いそんな者がホームを建設しようとは全く非常識」と言ったが、県下の市や町は補助金を出して協力した。  春光苑建設の後も各種ヘルパーセンターやデイセンター、さらに障害者グループホームや就労継続支援事業B型事業所、鍼灸マッサージ治療所光明園を開所した。山口県は平成22年(2010年)、障害者などの医療費を一部患者負担にすると決めた。私たちは視覚障害者の請願運動により下関市において医療費の無料化を実現した。  しかしながら今日、時代は大きく変わりつつある。国・県から市・町に権限が移譲され、福祉運動は、特に少数派の視覚障害者の運動は大変困難になっている。  2月7日、私は厚労省の高齢者支援課を訪れ高橋課長補佐らと話をした。養護盲老人ホームの入所要件の緩和の1つとして、預金や土地などの資産の制限緩和について質問したが「十分検討して回答したい」と答えるにとどめ、運用にあたっては市や町と直接相談してほしい様子であった。  2月19日下関市の市長に陳情したときも点字図書の価格差補償の手続きの簡素化や地デジラジオの補装具化については「市において充分検討したい」とする積極的な発言もあったが、養護の入所要件については慎重な発言に終始した。  今後しばらくはこのような状況は変わらないと思われるが、それはいつまでも続くとは思わない。道はなお遠いとしても「ローマは一日にしてならず」を心の支えにして日々前進を目指したいものである。 ++  社会福祉法人の見直しについて  常務理事 橋 秀夫  花見をする人を「花人」というそうです。春の日の明るい光を全身で受けていると晴れ晴れとした気分になります。介護施設や保育園のパンフレットは、桜が爛漫と咲き誇る下で車椅子の高齢者や園児が微笑む姿が定番です。その介護施設や保育所などを運営する社会福祉法人の見直しを国が検討しています。  2004年4月から実施された介護保険制度は、社会福祉法人にとって高齢者介護の独占が崩れ、高齢者介護を営む事業所の一つにすぎないということを実感した制度でした。しかしながら、介護保険事業で得られる収入は「サービスの対価」であり、それをどのように使うかは各法人の自由でもあったのです。そのため、次々と事業拡張する社会福祉法人が少なくないため、他法人はもとより「社会福祉法人と営利法人はどこが違うのか」との疑念を抱く市民の声が上がりました。  一方では、NPO法人や株式会社が相次いで福祉サービスに参入しては、不正申請のため事業所取り消しで消え去る現状もあります。ぎりぎりの民間経営者からの不満はついに「社会福祉法人は税制優遇にふさわしい役割を果たしているのか」との疑問が投げかけられるようになりました。同じ介護事業を提供するNPO法人(法人税は非課税)や株式会社は法人税や固定資産税を負担しているためです。  ここにきて社会福祉法人の役割に対する声は他の福祉事業の法人にも向けられ、ついに2013年9月から厚生労働省に設置する「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」で検討が行われています。2014年2月には検討会等での議論を踏まえ、2013年度以降の財務諸表についてはすべての社会福祉法人に対し、インターネット上での公表を義務化することが決定されています。  また、社会福祉法人の内部留保が問題となっている点では、「内部留保が社会事業等により生じた余剰金であるという性格を踏まえれば、剰余金については、まずは、社会事業を実施するために活用するなど、あらかじめ事業計画を策定、使途を明確にした上で、法人自らが説明責任をはたすことが重要と考えている」としています。加盟施設におかれましては、事業計画の中で明確にしておく必要があります。  こうした背景には、国が進めている「施設から地域包括ケア」という流れがあり、入所施設の抑制を行う一方で、特別養護老人ホームのノウハウを提供させて地域でも支援させようとするシステムに注視する必要があります。二つ目は、財務諸表の公表により、お金の使い道を外部チェックさせようとするものです。  安定運営をするためには決算時における同業種の財務諸表の比較検討、新たな地域ニーズに対応する投資・行事をどうするかも検討課題です。 ++  <福岡大会> ご来県をお待ち申しあげます  福岡市立点字図書館館長 横田 博文  第62回全国盲人福祉施設大会が福岡市において開催されることになりました。関係する全国施設の皆様方のご来福をお待ち申し上げます。  ここ福岡県福岡市は昨年5月に人口150万人を越え大都市の仲間入りをしました。  福岡・博多は、空港から都心部まで地下鉄でわずか10分。そして都心部からほとんどの市内観光スポットに、公共交通機関で20分以内に移動できるという抜群の利便性。さらに、ショッピングやスポーツ、エンターテイメントから豊かな自然までをひと通り楽しむことができ、かつ人情味に溢れた大きい街です。  またグルメの街であることでもとても有名です。何と言っても新鮮でおいしい魚を毎日味わうことができます。そして、全国的にも有名な「めんたい」「博多とんこつラーメン」はもちろんのこと、「もつ鍋」「水炊き」焼き鳥の「豚バラ」等々是非ご賞味ください。博多弁飛び交う夜の屋台風景は、また最高の雰囲気ですよ。  福岡・博多は、現代的な都市である一方、歴史的・文化的なお祭りや建物が大切に受け継がれています。毎年7月に行われる「博多祇園山笠」は全国的にも有名な祭りです。760年以上の伝統を誇り、水法被に締め込み姿、「博多っ子」は、この時期血が騒ぎます。  平成23年3月には九州新幹線の全線開通、新博多駅ビル開業で交通網や商業施設がさらに充実しております。伝統と現代が調和した魅力ある福岡・博多へどうぞお越し下さい。  博多はよかとこバイ みんなきんしゃい!  会場 ヒルトン福岡シーホーク 〒810-8650 福岡市中央区地行浜2-2-3 TEL:092-844-8111 FAX:092-844-7887 URL:www.hiltonfukuokaseahawk.jp/  日程  6月26日(木)  12:00〜13:00 受付  13:00〜13:15 開会式・オリエンテーション  13:30〜16:00 研修会  16:10〜17:40 事業部会(5部会)  18:00〜20:00 交流会  6月27日(金)  09:00〜10:30 講演  10:45〜12:00 式典(表彰・来賓祝辞等)  主管施設  福岡市立点字図書館  〒814-0001 福岡市早良区百道浜3-7-1  TEL:092-852-0555 FAX:092-852-0556 ++  誌上慶祝会  高橋實氏の塙保己一賞大賞の受賞を祝す  日本点字図書館理事長 田中 徹二  社会福祉法人視覚障害者支援総合センター理事長の高橋實さんが、埼玉県の第7回塙保己一賞大賞を受賞しました。おめでとうございます。  私が初めて高橋さんに会ったのは、今から約60年前、日本盲大学生会でした。高橋さんが日本大学文学部社会学科3年生のときです。現在、養護盲老人ホームひとみ園等を運営する日本失明者協会理事長の茂木幹央さんも一緒でした。それから日本盲人福祉研究会(文月会)の活動でも一緒でしたし、高橋さんが視覚障害者支援総合センターを運営するようになってからも付合いは続いています。思えば長い縁です。  この間、横から高橋さんを見ていて思うのは、よく言えば信念の人だということです。これだと思い込んだら、周りで何を言おうと押し通す人です。緻密な計算の上に自分の信念を形のあるものにしていく実行力も持っています。悪く言えば、信念に基づく発言が相手を傷つけようが気にしない人なので、反発もありました。  こうした高橋さんが、ここまで業績を上げてこられたのは、奥さんの次子さんをはじめ多くの人たちの支えがあったからだと思います。  高橋さんは『点字毎日』記者時代、文月会の活動でしばしば上京していましたが、その際付き添ってこられた方々、また秘書として取材をサポートしていた女性も何人もいらっしゃいました。高橋さんのその方たちの能力を引き出す才能は、他に真似のできないものでした。私はいつも羨ましく思っていました。  しかし、その人たちに支えられたとはいえ、信念に基づいてここまでの業績をあげたのは、高橋さんご自身です。高齢になってもいささかも衰えない強い意志、卓越した交渉力によって、これからもこれまでに劣らない業績をあげていくでしょう。長生きをして、盲人の世界に光明をもたらしてください。 ++  誌上慶祝会  前川昭夫さんが、「旭日双光章」を受章されました 〜 慶びは地元の私たちの喜びでもあり、希望です 〜  広島県視覚障害者団体連合会副会長 藤井 貢  広島県立視覚障害者情報センター所長の前川昭夫さんが、昨年「秋の叙勲」におきまして「旭日双光章」に叙されました。長年にわたり視覚障害者福祉向上にご尽力された功績を評価されての受章でした。  前川さんは、日盲連の副会長、広島県視覚障害者団体連合会(以下、県連合会)の会長を務められているほか、皆様もご存知のとおり、長年にわたり全国視覚障害者情報提供施設協会の役員などを歴任されました。また、地元広島県では、県身障連副会長をはじめ様々な立場から視覚障害者のみならず、幅広く障害者福祉運動の最先端に立って活躍されております。  そんな前川さんの受章は、地元の私たちにとりましても大きな喜びであり名誉です。まずは、皆様とともに長年にわたるご努力とご苦労の日々をねぎらい、支えて来られました奥様、そしてご家族の方々に心からお慶びを申し上げます。  前川さんは、地元福山市の盲人協会(現視覚障害者協会)青年部長を皮切りに、広島県盲人協会(現県連合会)青年部長、県連合会の理事、副会長、会長を歴任され今日に至っておられます。  その間の平成5年、突然県連合会の会長、事務局長が相次いで亡くなられ、当時副会長であった前川さんが引き継ぎもないままその後を引き受けなければならなくなりました。県連合会にとりましても大事件でしたが、前川さんにとっては、まさに晴天の霹靂だったと思います。  県連合会は、「愛命園」という障害者福祉施設を経営しており、当時は施設の建て替えが俎上に上り、既に中途で断念できない状況にありました。  前川さんは、その頃のことを「とにかくがむしゃらに行動するしかなかった」と述懐されています。  その大変さは出来上がった後の姿しか知らない私たちには想像もつきませんが、当時を語られる前川さんの言葉には、その苦労がにじんでいるように思われます。  前川さんは、どのような場所でも具体的な言葉で語られますので、一見普通の人のように思われますが、その実高邁な理念の持ち主です。  また、大変な配慮と気遣いの人でもあります。気づいてみれば「前川さんの配慮の中に居た」ということがよくあるのです。  このような前川さんの人となりは、先に述べたような体験によって培われたものではないかと想像しています。  本当は、まだまだ語り尽くせませんが、この慶びを機に、私たちも一層の飛躍を求めて頑張りたいことを述べまして、筆を置きます。本当におめでとうございます。 ++  シンポジウム 視覚リハビリテーションの空白A 〜 支援団体、当事者、学校、学会、眼科医会が一堂に会して 〜  日本盲人職能開発センター施設長 杉江 勝憲  2月9日(日)、東京・飯田橋の家の光会館で、国立障害者リハビテーションセンター病院第二診療部長で眼科医の仲泊聡氏が研究代表を務める「総合的視覚リハビリテーションシステムプログラムの開発」の一環として、昨年に引き続き、このシンポジウムは開催された。  当日は、仲泊氏及び吉野由美子氏(視覚リハビリテーション協会会長)の司会の下、支援団体の代表として橋秀治氏(日盲社協理事長)、当事者団体の代表として竹下義樹氏(日盲連会長)、特別支援学校の代表として三谷照勝氏(全国盲学校長会会長)、関連学会代表として加藤聡氏(日本ロービジョン学会理事長)、眼科医の代表として高野繁氏(日本眼科医会会長)がシンポジストとして登壇した。  始めにプログラム開発の成果として、仲泊氏が支援ソフト「ファーストステップ」(空白への対処法、@情報障害の双方向性、A眼科外来の出会いの場、B対処法の提案)の説明が行われた。  橋秀治理事長からは、支援者の立場から加盟203施設の日盲社協5部会の説明とその目指す方向は視覚障害者の自立や福祉の実現であり、視覚障害者の人生の豊かさの実現を目標に活動していきたいとの提言がなされた。  竹下義樹会長からは、日盲連の役割として、@当事者の声を制度に反映させる、A相談活動の重要性と受け皿、B関連団体との連携の提言がなされた。  三谷照勝会長からは、充実した学校教育活動を推進するためには情報の共有と連携が重要であるとの提言がなされた。  加藤聡理事長からは、ロービジョンケアの情報の他団体との共有化と地域格差の解消の提言がなされた。  高野繁会長からは、視覚リハの空白を埋めるため、「理解と紹介」を念頭において、ロービジョン患者に接することの会員への周知と他の職種への連携強化に努めるとの提言がなされた。  視覚障害者支援施設の職員の立場から申し上げると、今回のシンポジウムに参加して、支援団体、当事者、特別支援学校、ロービジョン学会、眼科医会の代表が一堂に会して意見交換がなされ、相互の連携の一歩が踏み出されたところに、日本の視覚障害リハビリテーションにとって歴史的意義があるとの思いに至った。 ++  (特集)日盲社協各事業部会の取り組み  各部会の活動と整理  理事長 橋秀治  日盲社協の創立60周年記念大会で採択された大会決議の取り扱いについては、すでに理事会などを通してお話をしてきました。  私は、かつての出版部会での経験などを思い出しながら、今年は少し手法を変えていきたいと考えました。  普通、大会決議は全国大会終了後、5部会の部会長と本部役員が一緒に厚労省の自立支援振興室に伺い、担当者に陳情する習わしでした。たいてい1時間前後の中でのやりとりです。各部会長が時間を気にして質問し、厚労省の方もほかの担当者を気にしながら回答するのが常でした。何となくすっきりしないまま、決議に対する感想が述べられてお終いになります。ある種のセレモニー化した感がありました。  私は、各部会と厚労省の担当者がもっと膝詰めで親しく話ができる方法がないかと考えました。スタイルも大事ですが、もっと実質的な話し合いがしたかったのです。  そこで、日盲社協本部は知らん顔するつもりはありませんが、できるだけ各部会が厚労省の担当者と連絡を取り、自主的かつ実質的な対話をするよう促しました。  しかし、新年を迎えても決議処理に対する動きは出ませんでした。2月に入って、点字出版部会と情報サービス部会から「厚労省との話し合いの席を」との要望があり、実現しました。  なぜこの時期なのか、年度末で理事会も近いということかなともとれます。  各部会が気が弱くて交渉できなかったとは思いません。また短時間でも5部会揃って決議処理の時間を設ければ出席したかも知れません。  一方、障害者総合支援法の中で活動する部会はかなりあります。国はかなりの事業を自治体に移行しています。部会にとって当面の話し相手は厚労省ではなく、地方自治体だったかも知れません。  この欄では各部会長に今年の活動計画をお願いして、ひとまず全体の動きをご理解いただき、その後で、各部会長と本部で協議して、来年に備えることにしましょう。  点字出版部会の当面の活動 〜 点字出版の明日を切り開くために 〜  点字出版部会部会長 田中正和  点字出版所は、視覚障害者の読書環境の担い手として重要な役割を担っています。新しい情報化時代の中で、果たすべき役割にどう応え、点字利用者が減っていく中での展望をどう切り拓いていくかが大きな課題となっています。     1.「点字図書給付事業」改善の取り組み  昨年は、市町村によって対応がバラバラになっている「点字図書給付事業」の実態調査を、全市区町村を対象に行いました。問題点としては、ただでさえ手続きが煩雑な上に、それに輪をかけるような市町村があることです。課題としては、長年の要望である給付手続きの簡素化と、点字雑誌も給付対象の市町村が16%余あり、他の市町村への拡大が望まれるところです。    2.自治体点字広報実態調査の取り組み  発行状況が把握できていないため、2014年度に全国の都道府県、政令市、東京23区、市を対象に実態調査を実施します。  調査後は、報告書を作成するとともに、関係団体と連携して発行する自治体を増やし、視覚障害者の社会進出と社会参加の促進につなげていきたいと考えています。     3.選挙情報支援の取り組み  めざしているところは、大会決議で挙げている点字版・音声版の「選挙のお知らせ」の普及と選挙公報への格上げです。  現在は、「選挙のお知らせ」は発行が義務化されておらず、選挙管理委員会が「視覚障害者の選挙権の行使に便宜を図るため」ということで発行されています。  しかし、配布方法等で問題や課題も多く、選挙公報への格上げとともに普及についても重点課題として取り組みたいと考えています。  上記三つの課題は、「障害者差別解消法」や「障害者の権利条約」に絡む重要な取り組みと位置づけています。この2〜3年が大きな山場ですので、会員施設の力を結集して前進させていきたいと考えています。     4.製版・印刷機の憂いをなくすために  次に、点字出版に欠かせない製版・印刷機の新規購入と保守管理の問題です。  製造業者が1社となっており危機的な状況であり、国の支援と助成をいただきたいと大会決議に挙げています。2月中旬に厚生労働省自立支援室と懇談の場を設けていただきました。要望に応えていただくのはなかなか厳しいようですが、何らかの実を結ぶまで、引き続き取り組みたいと考えています。     5.点字普及の取り組み  点字普及の課題は、部会を超えた全体的な課題です。各部会と連携を図りながら取り組んでいきたいと考えています。  情報サービス部会の取り組みと展望  情報サービス部会部会長 岡本博美  情報サービス部会としてはこの2年間、音声版選挙公報関係の活動に力を入れてきた。協力施設の各点字図書館の職員やボランティアの方が、それぞれで行う作業としては限界もあるため、昨年は全国から音声版選挙公報の製作担当職員等が集い、46施設53名の参加を得て製作講習会を開催した。利用者のニーズに対応すべく、より専門性を重視した公報の製作と、告示から期限が限られているため、正確でスピーディーな製作を目標とした。  また、かねてより要望のあった各参加施設への機器補充の整備も実現し、一定の成果を上げることができた。これもひとえに参加施設職員等の協力の賜物である。今後も日盲委の視覚障害者選挙情報支援プロジェクトの一員として、部会としての立場を明確にしながら、各施設のご協力を得て活動していくことが必要である。  個人的には、情報サービス、点字出版、生活施設、自立支援施設、盲人用具の5部会をはじめ、県や市の視覚障害者団体や鍼灸マッサージ師会等、仕事柄30年近く携わってきた。そうした中で、時代の流れと共にそれぞれの分野において、大きく変わってきたことを感じさせられる。  それぞれがこれから先の新たな構想を描いていく一方で、各種サービスの範囲は広がり、制度改正などに伴い業務は増えるが、反対に予算は削減されており、これからの施設運営にも危機感が募る。  このような現状を改善していくためにも、日盲社協としては5部会の連携と情報の共有は必要不可欠である。社会の目覚ましい変化や新しい制度に遅れることなく、適宜対応していくためにも、組織の繋がりを強めながら、視覚障害者福祉の向上という同じ目的に向かって進んでいかなくてはならない。  そして、部会との関わりも深いサピエ運営を行う全視情協などの外部団体も、我々同様さまざまな問題を抱えている。従来から点字講習会や音声訳講習会が全視情協と情報サービス部会の両方で行われており、各施設や兼任している委員の負担も大きくなっている。加えて、サピエのメンテナンスの問題など、相互の事業に大きく係わる問題も多々ある。日盲社協のみならず、他の関係団体とも、今後さらに協力関係を深めていかなければならない。  情報サービス部会としては、独自の専門性を発揮できるよう探究を続けていくと共に、先人の教えにならい日盲社協全体の活性化にできる限り力を注いでいきたい。  そして、さらなる利用者への福祉サービスの向上と、安定したより魅力ある情報サービス部会を目指して日々研鑽していきたいと考える。  自立支援施設部会の取り組み  自立支援施設部会部会長 山下文明     1.自立支援施設部会の現状  自立支援施設部会は、就労継続支援、就労移行支援、自立・生活訓練、同行援護・移動支援、居宅介護、盲人ホーム、盲導犬訓練等の事業を行う全国の48施設が参加する部会です。視覚障害者のリハビリから日常生活、就労などの社会生活まで支援する大変幅広く多種類の事業を行う施設の集まりです。     2.自立支援施設部会の4つの委員会  多種類の事業を行う施設が参加しているため、部会の中では、就労支援、生活支援、盲人ホーム、盲導犬訓練の4つの事業別の委員会を設け、それぞれの課題や法律・制度の最新動向、先進事例の研究等を、主に職員研修会を通じ情報共有し、それぞれの事業の活性化に役立てています。  就労支援委員会と生活支援委員会の施設は障害者総合支援法の下にあり、常に国の施策の動向に影響されるため、常に最新情報を共有しこれに対応しなければなりません。また、運営の安定化に繋がる利用稼働率の向上のための、支援サービスのあり方について議論しています。  盲人ホーム委員会は、盲人ホームにおける利用者の伸び悩み、訓練内容の見直し、年々厳しくなる市町村からの補助金など山積する課題について共有し検討しています。全国では、就労継続支援事業A型やB型に移行する先進事例もあり、これらを参考にこれからの方向性を探っています。  盲導犬訓練委員会では、現状の情報共有と共に、訓練犬の公共交通機関での扱いの改善など共通する課題について、積極的に国に情報発信し改善を求めています。     3.自立支援施設部会の取組み  自立支援施設部会に参加する施設は、視覚障害を持つ方に直接的に支援を行う事業がほとんどです。いわば、視覚障害者に一番近いところにいます。自立支援施設部会は現在のところ、職員研修会を中心とした情報共有に留まっております。自立支援報酬の増額、補助金の増額、適正な障害支援区分判定など、国や関係市町村に要望しなければなりません。同時に、福祉資源の一つとして地域に必要不可欠の価値を持つ施設とならなければなりません。地域社会における視覚障害者の直接的な声を聞きニーズを把握する役割とその責任を再認識し、その声を社会に発信していかねばなりません。  国による相談支援事業等の積極的な推進は、ノーマライゼーションの理念に則った障害者の地域での包括的な支援体制の構築を促していますが、その中でも中核を担うような施設・事業になるよう努力していきます。     平成26年度の生活施設部会  生活施設部会部会長 茂木幹央  生活施設部会の会員施設としては、盲老人ホーム、特別養護老人ホーム、グループホーム、救護施設等があります。  今年度もそれぞれの施設が抱えている問題を解決するために、努力して行きたいと思います。  それから、今年度からは交渉相手を厚労省だけでなく、盲人福祉に対する理解が遅れていると思われる市町村も、対象にして行きたいと思います。  幸いな事に、埼玉県の参議院議員は厚労省の厚生労働委員会の筆頭理事になりましたので、厚労省との交渉の際には、この議員のお力を借りたいと思っております。  盲老人ホームの問題では、入所者の措置控えの事、入所にあたっての所得制限の緩和の事、特定施設の場合は入所者と施設との直接契約で入所出来ないか等の事。  特養の場合は、部会の研修会に参加しても、あまり得る所がないと言われているので、これを解決する事。  グループホームの事では、65歳以上の人は、64歳までにホームヘルパーやガイドヘルパー等を受けていたという実績がないと入所出来ない事。  すなわち、64歳までに大いに頑張って人の助けを借りないで(障害福祉サービスを受けないで)生活すると、65歳になってから介護を受けるためにグループホームに入りたいと思っても、入所出来ないという皮肉な結果になっている訳です。  救護施設の事では、週3回透析治療を受けているような人は、退所させられるという状況が見受けられるという事です。  この場合は、施設に問題があるのか、透析治療を受けている人に問題があるのかを見ていきたいと思います。  今年度各施設に、火災防止の観点から電気器具の取り扱いをどのようにされているかについて、アンケート調査を実施してみたいと考えています。     盲人用具部会の取り組み  盲人用具部会部会長 荒川明宏  用具部会の最近のテーマは、部会をどのように活性化するか、部会で何を行うのかというところにありました。平成25年度に入り、少しずつその方向性が表れ、現在試行錯誤で取り組んでいます。盲人用具部会はご存じの通り、視覚障害者用製品を製造しているメーカーと、それを販売する販売店から構成されています。各会員の最終的な目的は、「良い物を製造し多く販売したい」というところに行き着くでしょう。それが視覚障害当事者のよりよい生活に繋がることになるからです。  平成25年度は、視覚障害当事者にいかに情報を伝えるかというところにポイントを起きました。その一つがサピエの地域生活情報への情報提供です。会員施設の新製品情報や展示会など、新しい情報を用具部会として定期的に配信しています。本来は最低でも隔週に情報提供をしたいと部会では考えていましたが、現在は月に1度の情報配信となっています。商品の情報だけではなく、点字サインや点字ブロックの情報など、有益な情報を随時提供して行きたいと考えています。  次に音声時計や白杖などを知らない視覚障害者の人たちに、どのように情報を提供すればよいだろうかという問題があります。主要都市では視覚障害者に関する用具の展示会は、かなり開催されるようになりました。しかし、地域によってはあまり展示会が開催されることもなく、機器に触れることが難しい状況です。そこで、主要都市ではなく地方の展示会に力を入れてみてはどうだろうか、という声が多数上がっています。平成24年度の全国大会の際に和歌山で展示会を行ったところ、非常に多くの視覚障害者が来場され喜ばれました。今後は日盲社協の全国大会の時だけではなく、地元と一体となった情報活動ができないだろうかと考えています。  新しいテーマとして、支援者、眼科医や自治体の福祉担当者などへの広報を検討しています。視覚障害者はご存じの通り情報障害者と言われます。まして、視覚障害者用機器はテレビやラジオのコマーシャルで知ることはありません。従って音声時計の存在を知らずに、生活をしてしまうという事態が起きるわけです。このようなことを防ぐ観点から、支援者が日常生活用具の知識を持つことはとても重要となります。  障害特性に応じた正しい情報を知ることにより、視覚障害当事者への個々の障害に応じた対応が可能となり、視覚障害者の生活の質の向上に繋がればと考えています。 このように用具部会では、各会員の協力の下に視覚障害当事者と支援者への情報提供に力を入れ、視覚障害者の社会参加と自立、そして豊かな生活を支援できればと考えています。 ++  平成25年度第32回音訳指導技術講習会(第12回音訳指導技術講習会)  本事業は、競輪の補助を受けて実施しました  東京ヘレン・ケラー協会点字図書館堀江達朗  昨年11月20日(水)〜11月22日(金)、情報サービス部会は、大阪市の玉水記念館において、標記講習会を受講者121人で実施した。講習内容は、以下の通りである。     <1日目> 11月20日(水)  講義@「視覚障害者福祉概論」岩井和彦講師(堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター点字図書館館長)  全盲である講師が、まず自らの生い立ち、経験談を交え、視覚障害者福祉の歩み、現状、行く末についての解説。次いで「読書を求める心」「権利条約」「読書のバリアフリー」をテーマに、音訳者が視覚障害者福祉にどうかかわりあうべきか講義した。  講義A「ボランティア養成概論T」高橋三智世講師(堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター職員)  既存の仕事・活動以外にも、音訳ボランティアができることはないかを常に考える姿勢の必要性を、受講者の意見を聞きつつ説明した。次いで養成講習会のカリキュラム・テキスト作成、講師に求められることについて解説した。  講義B「調査技術」襟川茂講師(元京都ライトハウス情報ステーション職員)  録音資料製作における「調査」の基本を説明し、「調査」指導の重要性を解説すると共に、具体的な調査の対象となる言葉を例に、その調査方法のポイントを示した。     <2日目> 11月21日(木)  講義C「ボランティア養成概論U」熊谷成子講師(元静岡県点字図書館副館長)  平成25年4月に発行された『音訳テキスト【音訳入門編】』発行の目的と位置づけ、著者側の意図を解説し、その活用法を指導した。  講義D「処理技術」兄父由起子講師(元福井県視覚障害者福祉協会情報提供センター職員)  さまざまな処理技術の基本と処理技術の指導法のポイントを示し、音声処理においても「音声表現技術」が重要であることを示した。また、「説明文を聞いて図を描いてみる」という受講者の普段の活動とは異なった視点での、利用者の立場を体験させた。  講義E「音声表現技術T」村上由美講師(ボイスマネージ代表・言語聴覚士)  「声」についての基本的な知識をDVDや図を用いて説明し、声のトラブル、声を健全に保つ方法について受講生をサンプルに体験させ、それを通して具体的に解説した。  講義F「音声表現技術U」恵美三紀子講師(元全国視覚障害者情報提供施設協会録音委員会委員長)  まず、音訳の位置づけ、意味を確認。音訳で「伝えること」の重要性を説明し、例文を用いて、実地で音声表現技術の指導法を体験させた。     <第3日目> 11月22日(金)  講義G「録音技術」堀江達朗講師(東京ヘレン・ケラー協会点字図書館職員)  認識にバラつきのある「適正録音レベル」について確認すると共に、マイクなどの特性を知ることで、いかに安定した音質を保持するかを解説。その他、雑音に対する意識や対処法について説明した。また、質疑応答の形式で、録音についてのトラブル・疑問点について回答した。  講義H「校正技術」香川恵講師(香川県視覚障害者福祉センター点字図書館職員)  校正についての「共通の基準・認識」の重要性と校正者の位置づけ、校正のレベル、校正者の適性について説明し、実際の校正指摘事項を示し、その妥当性について説明した。  今回の講習会は「音訳指導技術者」を認定する講習会で、受講者121人中、110人が新規の認定評価対象者である。この数値は録音資料製作の現場で指導者の世代交代が始まっていることを示すものであり、これらの受講者の94%が、アンケートに「期待した成果を得られた」と回答したことは大きな成果であった。 ++  平成25年度点字出版部会職員研修会報告  日本ライトハウス点字情報技術センター 高橋 昭衣  平成25年12月5・6の両日、名古屋市の金山プラザホテルを会場に、17施設・41名の参加を得て、標記研修会が開催された。  初日1つ目は、愛知県の田中伸明弁護士に「障害者差別解消法について」講演いただいた。障害者差別解消法では、行政機関等や民間事業者に対して、障害を理由に障害者を区別・排除する扱いをしてはいけないこと、障害者から障壁の除去を求められたら配慮しなければいけないことが定められているが、それらについて具体例をあげてお話をいただき、理解を深めた。法案が国会で議論されることは、障害者が障害のない人と共に生きる社会の実現に向けて大きな成果となるものの、民間事業者に対しては努力義務であるなど、まだ不十分な面があり、今後も働きかけていくことが大切だと指摘された。  2つ目は、東京ヘレン・ケラー協会の福山博氏から、日盲社協創立60周年記念誌『加盟施設紹介 日盲社協ディレクトリー』の製作担当をされた経験をもとに「墨字原稿の整理と校正」について話をいただいた。現在、多くの人が日常的にE-mailを使用し、視覚障害者も墨字文書にアクセスする場面が多くなり、行政官庁から運営に関する情報開示を求められるなど墨字の重要性が増えているなか、点字出版施設であっても、スムーズな意思疎通を可能にするため、校正記号を使った墨字校正が出来るようになることが大切であると強調された。  3つ目は、日本ライトハウスの福井哲也氏から「統一英語点字(UEB)の実像と日本への導入をめぐる問題」と題して、UEBにすると表記がどう変わるかを例文とともに紹介しながら、日本国内で導入した場合にどのような問題が発生するかを含め、分かりやすく解説いただいた。UEBに変えることが容易な問題ではなく、慎重に進めざるをえない現状について理解が出来た。  2日目は、京都ライトハウスの渡辺昭一氏の進行により「選挙公報の点字表記」について研修を深めた。日常業務に直結する内容のため、各参加施設から活発な意見が出され、お互いに刺激を受けた。点訳において、記号の用法やレイアウト等にはいくつものやり方があり、正解をひとつに決めることは出来ないが、いろいろな出版施設の点訳方法を知り、お互いに良いところを取り入れ、今後の点字製作に役立てていける実践的な研修となった。  その後、部会事務局報告や各点字出版施設からの近況報告などを経て、盛会裏に終了した。 ++  平成25年度生活施設部会・自立支援施設部会合同施設長並びに職員研修会  自立支援施設部会部会長 山下 文明  生活施設部会と自立支援施設部会の合同開催で、標記研修会を平成25年11月28(木)と29(金)の2日間にわたり、山口県下関市の東京第一ホテル下関にて、両部会の全国23施設64名の参加で開催しました。  1日目は、まず分科会が開催され、盲老人ホーム・ケアホーム事業等の生活施設部会と就労支援・生活支援・盲人ホーム・盲導犬訓練事業の自立支援施設部会に分かれ、それぞれの施設・事業の現状報告、国の施策の動向、課題整理、先進事例の報告など両部会とも通常は参加しない事業の職員も参加し、活発に議論がなされました。  次に、下関市立中央図書館の安富静夫館長に「奇兵隊結成150周年と下関」というテーマで講演をいただきました。松下村塾、吉田松陰、高杉晋作、奇兵隊とわくわくするような講演を大変興味深く拝聴することができました。  1日目最後は、大正琴のどこか懐かしく美しい演奏と楽しい郷土民謡が披露されたアトラクションの後、懇親会です。下関の言わずもがなの郷土料理の美味しさに驚嘆し、カラオケも楽しみつつ、各参加者ともすぐに自席を離れ、他部会、他施設の職員と楽しく実のある交流ができました。  2日目は、各部会の報告と部会長による総括、養護盲老人ホーム「春光苑」と就労継続支援B型「光明園」の丁寧な見学があり2日間の日程を終えました。  あたりまえのことですが、就労面、生活面の場において支援や訓練を行うにあたっては、安定した生活基盤、特に安心できる居住空間の確保は欠かせません。不安の無い生活を確保した上での支援や訓練がその効果を発揮できますし、それがさらなる生活基盤の安定をもたらせます。  今回、生活上の基盤となる施設・事業を行う生活施設部会と、日中において生活支援や余暇支援、就労支援・訓練を行う自立支援施設部会が合同で研修会を開催し、お互いの課題や問題、今後の方向性等を共有できたことは大変意義のあることでしたし、他の部会も含めたこれからの連携とそれぞれの施設に戻ってからの、地域における連携にも役立つものでした。  最後に、今回の合同研修会を当番施設として準備、当日運営と全面的にご協力をいただきました山口県盲人福祉協会の養護盲老人ホーム「春光苑」舛尾政美苑長、就労継続支援B型「光明園」舛尾孝江園長を始め、獅子奮迅の活躍をしていただきました両施設の職員の皆様に心よりの感謝と御礼を申し上げます。ありがとうございました。 ++  選挙公報点字表記委員会の成果と課題  日本盲人福祉委員会視覚障害者選挙情報支援プロジェクト選挙公報点字表記委員会委員長 渡辺昭一  選挙公報点字表記委員会は、当初2009年12月に、当時の日本盲人福祉委員会笹川吉彦理事長より、点字版選挙公報の点字表記の課題について諮問されたのを受けて組織された。委員8名および選挙情報支援プロジェクト事務局メンバー2名で構成され、5回の会議を開催して、2010年4月に答申を行って解散した。  答申においては、選挙公報の性質を踏まえた点訳・製版・印刷・製本等について、一定の整理を行った。  また、2010年5月に開催された参議院選挙に向けた職員研修会に協力するとともに、同年10月に参議院選挙公報のうち、プロジェクト以外で作成された点字版選挙公報の点検を目的に、元委員のうち協力できる者が招集され、点検作業と報告書の作成を行った。  その際、選挙情報支援プロジェクト事務局から常設委員会として組織したいという意向が表明され、任期3年の委員会として再発足し、2013年夏の参議院選挙後には、第2期の委員会が組織された。  この間、2011年統一地方選挙、2012年衆議院選挙、2013年参議院選挙に向けた職員研修会に協力するとともに、国政選挙の公報の点検作業を積み重ねてきた。  本委員会の中では、当初からプロジェクト内外にかかわらず点字版選挙公報の点検作業は必要であるとの意見があったが、すぐにはプロジェクト全体の理解を得るのは困難であった。  ところが、2012年冬の衆議院選挙公報の点検作業の中で、プロジェクト以外で製作された点字公報の中から点字として読めない公報が発見され、問題が表面化した。  また、2013年5月に開催された職員研修会資料の中で、点字毎日がこれまでに最終校正でプロジェクトの中の点訳担当施設等に修正を依頼した事項について、はじめて報告された。これを受けて、プロジェクト内外を問わず点字版選挙公報の点検作業が必要であるとの認識が定着しつつあった。  そこで、2013年9月に開催した本委員会では、2013年参議院選挙でプロジェクト内外で作成され、収集できた点字版選挙公報を、短時間ではあったが、一応全て触察して問題点の洗い出しを行った。また、点字毎日からも、参議院公報の校正で点訳担当施設等に修正を依頼した内容について、委員会で報告された。  このように、プロジェクト参加施設等においても、各種のミスが散見される状況があることから、各施設等における引き続きの継続した研鑽が必要であるとともに、早急に使いやすいマニュアルの作成と、研修会の開催が求められている。(京都ライトハウス情報製作センター所長) ++  熊谷ライトハウスと同リフレッシュセンターが竣工  広報委員長 福山博  社会福祉法人日本失明者協会(埼玉県深谷市)は、同法人の茂木幹央理事長が平成23年(2011年)に第5回塙保己一賞大賞を受賞したことを記念して、埼玉県熊谷市上中条727に同法人6番目の施設である熊谷ライトハウスと7番目の施設である熊谷ライトハウスリフレッシュセンターを平成26年(2014年)2月に相次いで完成させた。  その竣工式典と祝賀会が、3月10日(月)午後1時より熊谷市のホテルガーデンパレスにおいて、来賓や関係者184名を集めて盛大に挙行された。  JR高崎線熊谷駅から車で15分の距離にある熊谷ライトハウスは、定員10名の重度の視覚障害者を対象としたグループホーム。居室はすべて個室で、平成22年(2010年)に立て替えられた養護盲老人ホームひとみ園(定員100名)と同じ構造にして、自分の部屋を畳敷きにするか、ベッドにするか選ぶことができる。  あはきの免許を持つ入所者は、隣接するあはき施術所であるリフレッシュセンター(就労継続支援B型事業所、定員10名)で、働きながら生活することができる。これはひとみ園に隣接するウォーターベッドを揃え、年間6,000人が受療する盲人ホームあさひ園の成功に裏付けられたもので、しかもさらに本格的な第6施術室まである視覚障害者の就労施設である。同一敷地内に生活施設と就労施設が併存することにより、入所者の働く喜びと経済力を強化するのが茂木理事長の狙いである。  熊谷ライトハウスの入所者は既に決まっており、30代と50〜80代の計10名で、その中には盲ろう者1名と週3回の透析治療が必要な人も含まれているという。  式典のなかで、「大学生時代からかれこれ60年のつきあい」という高橋實氏(社会福祉法人視覚障害者支援総合センター理事長)は、「茂木さんの強い信念と行動力はよく知っているが、このように厳しい社会経済状況の中で、たくさんの施設作りをされることは敬服あるのみ」と挨拶。  すると、会場からは「寒風ふきすさぶ盲界にあって、まったくそのとおり」の声も聞かれ、参加者の強い共感を得ていた。(東京ヘレン・ケラー協会点字出版所所長) ++  日本点字図書館オープンオフィス  日本点字図書館館長 天野繁隆  昨年の11月9・10の両日、当館は「点字図書館オープンオフィス」という催しを開催した。2日間の来館者は約1,200人で、予想を上回るご来場をいただいた。  当館は、視覚障害者の読書と文化活動を支える拠点として、視覚障害当事者から信頼をいただき事業を続けてきた。しかし運営や財政については、一般社会の理解と支援がなければ明日の存続さえ危うい。  当館の事業費の内訳は、国や都からの公的支援が22%、企業・団体からの助成が17%で、残りの約60%は、個人の篤志家からの寄付金と事業収入である。  時代に即した最新の機器や技術を取り入れながらの事業の継続は並大抵のことではない。当館の必要性や役割を社会に向けて発信し、運営資金を自ら工面して行かなければならないという、社会福祉法人立の点字図書館の宿命を負っているのである。  初の試みとして行った「オープンオフィス」は、当館を広く知っていただき、来館者に当館と視覚障害者の理解者、支援者になっていただく。加えて、これまで長年、支援してくださっている個人、団体、企業の方々へ、事業成果の報告と感謝の気持ちを伝える機会と位置付けた。そのために、事業を分かりやすく伝え、当館の社会的使命について、「共感」を持っていただけるよう心がけた。  具体的には、パソコンを音で操作してインターネットから図書を聞いてみよう、点字図書に触れてみよう、見えない人が映画を楽しむために必要な副音声とは、視覚障害者の日常「遊んで・作って」一緒に体験、身近な点字どこにあるかな、見えない見えにくい体験をしてみよう、iPadでアクセシブルな読書を体験、当館を支援してくださる企業や団体の紹介など、体験型を中心に20を超える企画を用意した。  来場者に行ったアンケートから、これまで当館を知らなかった来場者が3割いらした。これは新たな理解者や支援者を増やすという今回の目的を考えると、期待の持てる数字で、催しは成功であった。  障害者の社会参加や企業の社会貢献について考える企業や団体は多い。また個人として社会との関わりを考える世代も増えている。これからの社会福祉法人は、こうした団体や個人を、新たな支援者として積極的に増やして行くことができなければ、財政面だけでなく、運営面でも未来はない。  今まで見過ごされて来た広報活動を、将来の実りのために続けて行かなければならないことを実感した2日間であった。 ++  競輪補助事業完了のお知らせ  社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会理事長 橋秀治  この度、平成25年度の競輪の補助金を受けて、下記の事業を完了いたしました。  ここに事業の実施報告を申し上げますとともに、公益財団法人JKA様をはじめ、ご協力を賜りました関係者の皆様に謹んで感謝の意を表します。  この事業が、当協議会加盟の各施設職員の専門技術向上に多大な成果が得られたことを、申し添えさせていただきます。  事業名 平成25年度障害のある人が幸せに暮らせる社会を創る活動補助事業  事業内容 点字・音訳指導者講習会の開催  @点字指導者講習会  日時:平成25年8月28日(水)〜30日(金)  場所:山西福祉記念会館  A音訳指導者講習会  日時:平成25年11月20日(水)〜22日(金)  場所:玉水記念会館  補助金額 715,000円   ++ 日盲社協事務局だより     施設名表記変更  徳島県立障害者交流プラザ視聴覚障害者支援センターは、徳島県の条例改正により、徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センターの名称に変わりました。     施設名称・住所・連絡先・施設長変更  川崎市盲人図書館(飯田秀隆館長)は、平成26年度より川崎市視覚障害者情報文化センター(小野俊己所長)となり、社会福祉法人日本点字図書館が指定管理者として事業を継続します。新しい住所・電話番号  FAX・E-mail・URLは下記の通りです。  住所:〒210-0026川崎市川崎区堤根34-15  TEL:044-222-1611  FAX:044-222-8105  E-mail:kawasaki-icc@kawasaki-icc.jp  URL:http://www.kawasaki-icc.jp  ※従来は土・日曜は閉館しておりましたが、開館日が火〜日曜日、開館時間が9〜17時になりました。     施設長変更  社会福祉法人名古屋ライトハウス名古屋盲人情報文化センター所長は武居俊之氏から家ア哲郎氏に代わりました。  社会福祉法人岐阜アソシア視覚障害者生活情報センターぎふ館長は橋秀夫氏から山田智直氏に代わりました。     盲人用具部会新規会員施設  株式会社日本テレソフト  代表取締役:金子秀明  施設長名:森脇浩一  〒102-0083 東京都千代田区麹町1-8-1  半蔵門MKビル1F  TEL:03-3264-0800  FAX:03-3264-0880  E-mail:ts-info@telesoft.co.jp  URL:http://www.nippontelesoft.com/     事務局からのお願い  日盲社協事務局では、充実したホームページ(HP)にするため、こまめな更新に努めております。  HPの「日盲社協会員施設一覧」には、全会員施設の法人名、施設名、住所・電話番号・FAX番号・E-mailアドレス、HPを持つ施設にはそのリンクをお願いしております。  変更がありましたらどうぞ事務局までご一報くださいますよう、よろしくお願い致します。 ++  編集後記  本誌6ページの記事と関係するのですが、2月14日(金)午後6時からホテルグランドヒル市ヶ谷において「高橋實氏第7回塙保己一大賞受賞祝賀会」が開催されました。あいにくの大雪でしたが、それにもかかわらず全国から80余名の参加者が集まり盛会でした。  同祝賀会を実質的に切り盛りしたのは、埼玉県深谷市から来られた日本失明者協会茂木幹央理事長(前日盲社協理事長)と職員のみなさんでした。  高橋先生とはあしかけ60年のつきあいという茂木理事長一行は、通常東京からJR高崎線深谷駅まで1時間半のところ、大雪のためになんと28時間もかかったということです。今年の冬の厳しさは、ちょっとした語り草になるほど歴史的でした。  『日盲社協通信』の次号は、平成26年11月に発行する予定です。(福山博)     情報提供のお願い  本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長福山博宛、メール(fukuyama@thka.jp)等でお送りください。お待ち申しあげます。     『日盲社協通信』WEB版リリース  『日盲社協通信』が、平成23年(2011年)11月号(通巻63号)から、日盲社協のホームページにアクセスして、全文を読むことができるようになりました。こちらもご覧ください。 ++  第9回 視覚障害者向け総合イベント  ふれてみよう! 日常サポートから最先端テクノロジーまで サイトワールド2014  サイトワールドは、最先端の技術・機器、日常用品、および、ユニバーサルデザイン(UD)製品等の展示会、講演会、学会発表、フォーラム、体験会等が催される、世界でも例を見ぶない視覚障害者のための総合イベントです。来場者一人ひとりが主役です。  日時:平成26年(2014年)  11月1日(土)、2日(日)、3日(月)(文化の日)  午前10時〜午後5時(11月3日は午後4時まで)  会場:すみだ産業会館サンライズホール(JR総武線・地下鉄半蔵門線 錦糸町駅前 丸井錦糸町店8・9階)東京都墨田区江東橋3−9−10 墨田区丸井共同開発ビル  主催 社会福祉法人 日本盲人福祉委員会  サイトワールド実行委員会  〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 2-18-2  TEL:03-5291-7885 FAX:03-5291-7886  E-mail : sightworld@mbr.nifty.com  ●本誌は、埼玉県民共済生活協同組合の助成により作成したものです。