日盲社協通信 令和5年(2023年)12月号(通巻87号) 編集人:福山博   発行人:長岡雄一 発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協) National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB) http://www.ncawb.org/    もくじ 立ち位置を変えて見えるもの 理事長 長岡雄一 4年ぶりのサイトワールドを終えて 常務理事 荒川明宏 (誌上慶祝会) 指田忠司さんの点字毎日文化賞受賞に祝盃を! 盲人福祉研究会(浜松市)会長 斯波千秋 米島芳文さんの受章を祝う 教員時代の経験を生かして福祉の向上に尽力 日本点字図書館理事長 長岡英司 アジア初! 多和田理事がケン・ロード賞受賞 公益財団法人日本盲導犬協会 石川准氏の鳥居賞受賞を祝す 株式会社アメディア代表取締役 望月優 加藤俊和さんの「ヘレンケラー・サリバン賞」受賞と全視情協からの感謝状授与を祝して 毎日新聞社点字毎日部 佐木理人 荒川明宏氏の近藤正秋賞受賞を祝す 理事長 長岡雄一 わが施設の今 第12回 ロゴス点字図書館 創立70周年を迎えて ロゴス点字図書館館長 平井利依子 第71回全国盲人福祉施設大会 東京ヘレン・ケラー協会点字出版所長 塚本泉 令和5年度アピール・創立70周年記念特別表彰者名簿 待望の「サイトワールド2023」開催 東京ヘレン・ケラー協会『点字ジャーナル』編集部 雨宮雅美 <新規加盟施設> 同行援護事業所 おとも <新規加盟施設>春己ガイドサービス株式会社 日盲社協事務局だより 編集後記    立ち位置を変えて見えるもの    理事長 長岡 雄一 今、多くの福祉施設は第三者評価という外部評価を受けています。  「評価」というと、施設の良し悪しやランク付けと考えてしまいますが、実際に外部評価を受けると、そうではないことに気づかされます。  この外部評価については、東京都において実施されている評価手法が非常に細かく、多岐にわたっており、他県との違いがはっきりしていると聞かされていました。  ちなみに東京都で外部評価を受けている福祉サービスは、高齢分野、障害分野、子ども家庭分野等併せて61サービスに及んでいるとのことです。  さて、今年(2023年)3月に東京視覚障害者生活支援センターの所長を辞したことを機に、評価される側から評価する側に立ち位置を変えると、施設がどう見えるのかと思い、実際に評価者になる研修を受講しました。比較的軽い気持ちで応募したのですが、これが意外にハードで、研修が終了して、こんなにほっとしたのは久しぶりという感じがしています。言い換えるならば、充実感があったということでもあります。  まず、応募の段階でレポートが求められ、受講の可否が決められます。幸いに受講可となって初めて何キログラムもある資料が送られてきます。  研修はオンライン講義と対面講義・演習に分けられますが、対面日程の開始前に720分のオンライン講義を受けなくてはならず、受講の確認が取れて初めて対面講義ならびに演習へと進むことができます。  対面は1週間おきに4日。さらに1日評価場面での実習。演習の後にはテストがあって、合格しないと再試験、点数によっては研修そのものが不合格、とかなり厳しいものでした。 対面講義、演習では必ず宿題が出され、次回までの提出が求められました。  開始から終了まで2か月ほどを要した研修ですが、テストも何とかクリアし、実習も終え、あとは結果待ちといったところです。  この研修の間、徹底されたのが、どういう視点で施設運営を見ていくかという点です。法人や施設には、さまざまな表現の仕方はあるでしょうが、理念や目指すべき方向があります。そして、その理念の具体化の実現に向けて、さまざまな事業を行うわけで、当然事業の一つ一つに、実施の理由があるはずです。「なぜ、これを行っているのか?」という観点です。  ただ、当初計画した事業と理念との間に乖離があったとしても、それを責めるのではなく、なぜそうなっているかを、「施設自らが気づく」ようにすることが大切だというのが外部評価における考え方なのです。今まで施設に身を置いていた経験上、理念に沿った事業計画を立てても、時として十分な取り組みができないことがあります。それがなぜなのかを、気づくことは実は容易ではありません。  そうした意味からも、施設が外部評価を受けることの価値はあるのではないかと思います。もちろん、理念に沿った事業を確実に実施していて、乖離がない場合は、当然、それなりの評価がされることになります。それはそれで、施設側にとっては、自らの事業運営への自信となるでしょう。  自分の施設が評価されるとなると、どうしても構えてしまいがちです。「あらさがしをされるのではないか?」と言う気持ちを否定することはできません。しかし、実際には「あらさがし」はなく、逆に、もし外部評価を受けて、そうした「あらさがし」を感じるとしたら、それは本来の意味での外部評価ではないという気づきが、今回の受講で感じたことです。  研修の最後のアンケートで、「外部評価にあたって必要なのは、共感と気づきと提起である」と記させていただきました。それが、本来的なものなのかどうかは、今の時点では分かりません。ただ、従来の「評価」に対する印象が大きく変わったことは事実です。  さて、長い間、社会福祉の世界に身を置いているのですが、社会福祉の外の世界は、社会福祉をどう見て、どう感じているのか、つまり、どう評価しているのか、気になることがあります。社会福祉事業に対する外部評価はどうなのかということです。  中長期計画はどうなっているのか? リスクマネジメントはどうか? 経営における社会的責任とは? 地域への貢献はどうか? 社会福祉を取り巻く環境をどう把握しているか? 人材の確保はどうか?  これらは、実際に施設への外部評価で問われることですが、社会福祉事業という大きな枠組みにおいては、これらを当てはめていくことは、かなり無理があるというのが、正直なところです。ただ、それでも、社会福祉事業の外部からの評価はほしいし、かといって私たち自らが、第三者の立場に立つことは難しい。となると、やはり社会福祉事業とはまったく無関係と思われる方たちからの評価はしてほしい。  日常的には、各種マスコミや評論家による評価はあるでしょうし、行政からの評価もあるでしょう。しかし、私が望むのは、「共感と気づきと提起」という、施設における第三者評価と同じ手法を用いる評価です。そうすることで、私自身も社会福祉事業の外の世界に共感を持って接することができるかもしれないし、多くの気づきを得られるかもしれないと思うのです。そしてもちろん、自分とは違う立場に立って社会福祉事業を見ることができるのではないかと思っています。  そのためにも、人材の宝庫とも言える会員施設の方々のお力をこれからもお借りしたいと思っています。  最後に、今年(2023年)に理事を退任された、舛尾政美氏、岡本博美氏、岡村原正氏のお三方。ならびに評議員を退任された姉崎久氏に今までの法人運営へのご尽力に心より感謝の意を表したいと思います。  特に、ここ最近の新型コロナ感染拡大の時期にあっては、ご自身の施設(事業)運営に多くの時間を割かなくてはならない状況下で、力不足の私に多くの面でのご支援をいただき、法人を支えていただいたこと、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。    4年ぶりのサイトワールドを終えて    常務理事 荒川 明宏  4年ぶりにサイトワールドが、11月1日から3日まで、錦糸町のすみだ産業会館で開催されました。4年ぶりの開催ということもあり、非常に多くの方が来場されるのか、情報が行きわたらず閑散としたサイトワールドになるのか、不安の多い開幕でした。  三日間での来場者は、3,550名、4年前と比較すると減りました。しかし、来場された方にとっては、少し並べば物が見れるという状態だったので、ちょうどよかったのではないでしょうか。  9階で開催された催しは、どのイベントもほぼ満員でした。今回は点字をテーマにしたイベントが3つ予定されていましたが、どれも満員になっており、点字離れといわれる今日ですが、点字への関心は高いものがあるのだと改めて感じることができほっとしました。  4年ぶりの開催で、運営側として非常に困ったのが、ボランティアの確保です。今まで行ってくれたボランティアの方も4年歳を重ねるわけです。さらにコロナで体力を落とされた方もかなりいると思います。その結果、過去14回支えてくださった墨田区のボランティアの参加がなくなりました。後は個別に対応するという形になり、4年前に比べてボランティアの延べ参加人数は半減する結果となりました。同行援護で来場されている方も多くいるので、ボランティアの不足がそのままクレームに繋がることにはなりませんでしたが、改めて、高齢化社会の怖さを知ることになりました。  出展者の傾向も大きく変わりました。4年前より、スマートフォンやiPhoneを用いたサービスや商品が大きく伸びました。そして、視覚障害に特化した企業ではなく、一般企業の参加が増えたように感じます。  ある企業からはとても興味深い話を聞くことができました。「今まではアクセシビリティ部門がサイトワールドについて対応していました。今年は社内に参加したい人と希望を募ったらかなりの応募になった」という話でした。この話を聞きサイトワールドを行う意義は、こういうところにもあるのかと改めて感じました。  令和5年(2023年)の「サイトワールド2023」を10年後に振り返ったら、大きな転換期の始まりだったと思うようなそんな展示会だったと思います。  ユニバーサルな社会が目指すもの、それは視覚障害者当事者の自立も同時に目指しているのではないでしょうか? 私たち日盲社協の会員施設はどこまで「自立」にこだわることができているでしょうか。「自立」は障害者が自ら望むものではないかもしれません。誰でも楽をしたいのが本音です。夢が実現できることにより初めて「自立」のスタートに立つことができます。サイトワールドを見て、「夢」を感じて自立に繋がることを期待したいものです。(株式会社ラビット代表取締役社長)    誌上慶祝会    指田忠司さんの点字毎日文化賞受賞に祝盃を!盲人福祉研究会(浜松市)会長 斯波 千秋  指田忠司さん、第60回点字毎日文化賞受賞、おめでとうございます。  指田さんの本賞受賞は、静岡県浜松市で活動する私にとって特に嬉しいことです。  点字毎日文化賞は浜松市出身の中村京太郎が、大正11年(1922年)に創刊し初代の編集長として、また同紙を利用して視覚障害当事者としてのオピニオンリーダーとして活躍した『点字毎日』を冠にした賞だからです。本賞の副賞には中村京太郎賞と日本盲人福祉委員会賞が提供されます。  中村京太郎は大正元年(1912年)に日本人として初めて視覚障害者として文部省の委託を受けて英国に留学し、ヨーロッパの視覚障害者の福祉・教育・文化を広く見聞し、帰国後に「視覚障害者が社会の中で平等に生きる」を目標に掲げ、週刊点字大阪毎日新聞を創刊したのです。指田さんの幅広い働き・活動の中でも、とりわけ今回の受賞理由である障害のある人たちの就労を支援する活動はまさに中村京太郎の思いと同じ地平に立たれているのです。中村京太郎を尊敬する私にとって今回の指田さんの受賞は特に嬉しいのです。  得意の英語力を活用し、世界の人たちと繋がり、情報交換をして役立つ情報を点字毎日墨字版発行時から30年の長きにわたり連載してきたことも素晴らしい業績のひとつです。  英国などで学んだ中村京太郎と同じように海外へ行き、数多くの働く視覚障害者を直接取材し、働く環境や諸制度を調べ、それらを多くの論文に書き上げて行政へ提言もしています。この業績は現在の我が国の障害者就労・雇用政策の環境づくりにも大きな貢献となっています。今私たちが障害者就労支援の活動を続けられるのも、指田さんの提言により多くの法制度が大きく変わり、より幅の広い障害者の就労が保障されるようになったためです。日本で活躍されている多くの方々が「指田さんのお陰で今の私がある」との感謝の言葉を耳にすることがあります。就労を目指す障害者にとっては障壁が多くあります。その障壁に突き当たり悩む人に対し、優しい笑顔で親身になって問題解決に取り組んで来られた証なのです。  視覚障害者の教育の歴史を研究し、これからの障害者教育を展望する「日本盲教育史研究会」においても、ご多忙の中、運営委員の重責を担い各方面との連絡調整にもご尽力されています。  数々の大病を抱えながらも旺盛な好奇心による多方面でのご活躍は本当に素晴らしいことです。これからも長く活躍されるには体力と健康が大切です。食生活と飲酒にご留意され、中村京太郎の思いを受け継ぎ、ご活躍されることを心より願っています。 改めて点字毎日文化賞・中村京太郎賞の受賞に乾杯!!    米島芳文さんの受章を祝う    教員時代の経験を生かして福祉の向上に尽力    日本点字図書館理事長 長岡 英司  本年(2023年)春の叙勲で社会福祉法人石川県視覚障害者協会理事長の米島芳文さん(71歳)に、社会福祉功労者として旭日双光章が授与されました。同氏のこれまでのご功績を改めて称えるとともに、このご栄誉を心からお祝い申し上げます。  昭和27年(1952年)10月に石川県能美市(旧・根上町)で小児科医の家に生まれた米島さんは、幼いときからの弱視でした。地元の小学校に入学しましたが、教科書が読みにくくなり、3年生からは石川県立盲学校で学びました。中学部以後は墨字と点字を併用し、同校理療科専攻科から進学した東京教育大学理療科教員養成施設在学中まで、その学習スタイルを続けました。 進行性眼疾患のために、現在は完全に失明しています。  職業生活は、昭和50年(1975年)4月に理療科教員として着任した新潟県立新潟盲学校で始まりました。2年後には母校の石川県立盲学校に移り、平成25年(2013年3月まで通算38年間の教員生活を送りました。  60歳の春、平成25年(2013年)4月には、石川県視覚障害者協会での勤務を始め、教育の世界から福祉の世界に転身しました。同協会は、100年余の歴史のある社会福祉施設です。金沢市内にある石川県視覚障害者情報文化センターを拠点に、視覚障害者の福祉向上をはかる様々なサービスを提供しています。  米島さんは、平成26年(2014年)4月に理事長に就任し、翌年からは石川県視覚障害者情報文化センター施設長兼務となり、事業を率いる立場で現在にいたっています。  教員だった平成10年(1998年)、米島さんは、視覚障害者協会役員に就任し、盲学校生徒の働く場を確保するために、協会内に小規模作業所を開設しました。その後これが核となって、現在では、就労継続支援B型事業、同行援護事業、移動支援事業、計画相談事業、福祉有償運送サービスを行うNPO法人に発展させています。  また、盲学校教員の経験を踏まえ、眼科医や視能訓練士と連携してロービジョンルームを開設し、弱視者の支援に取り組んでいます。ほかにも、視覚障害者ITボランティアを養成し、ICTサポートセンターを整備しました。  県内の複数の障害者関係団体の役員だけでなく、日本視覚障害者団体連合の理事も務める米島さんには、豊富な実績を踏まえて全国の視覚障害者の福祉向上にも大いに貢献していただきたいものです。    アジア初! 多和田悟理事がケン・ロード賞受賞    公益財団法人日本盲導犬協会  日本盲導犬協会多和田悟常任理事(盲導犬訓練士)が、本年(2023年)4月27〜29日カナダのバンクーバーで行われた国際盲導犬連盟(IGDF)のカンファレンスにおいて、「ケン・ロード賞」を受賞しました。  本賞は、IGDFの共同設立者の一人で、南アフリカ盲導犬協会のCEOを務め、40年以上にわたって盲導犬事業に貢献したケン・ロード氏の名を冠して、国際的な盲導犬事業に長年貢献した人に与えられます。  平成14年(2002年)の創設以来、11人が受賞し、多和田理事は49年にわたる功績が認められアジア初の受賞者となりました。  国内でも、書籍『盲導犬クイールの一生』で主人公として描かれ、盲導犬の周知や理解促進に大きな影響を与えています。  昭和49年(1974年)21歳で盲導犬協会の門を叩いてから40年以上にわたり、盲導犬育成の現場で見えない、見えにくい人と向き合い、盲導犬歩行指導にあたってきました。盲導犬事業創成期、主流であった「調教」による盲導犬育成に限界を感じ、視覚障害者がより使いやすい盲導犬の育成へ向け、新たな「訓練」理論を築きました。  平成7年(1995年)、オーストラリアのクイーンズランド盲導犬協会にシニア・コーディネーターとして招聘され、後に繁殖・訓練部長としても活躍しました。  平成16年(2004年)、日本盲導犬協会付設の盲導犬訓練士学校が開校すると、教務長に就任し後進の育成にあたり、平成24年(2012年)に協会理事、平成29年(2017年)には常任理事として海外盲導犬育成団体との連携にも力を注いでいます。  IGDFには昭和61年(1986年)の創設準備から関わり、平成6年(1994年)に加盟団体の審査を行うアセッサー(査察員)に任命され、これまでに海外の17団体を訪れました。また、IGDF教育委員会のメンバーとして、国際的な訓練士育成システムの立ち上げにも貢献しました。  多和田理事は「これからも世界と協調しながら、日本ならではの歩みを進めていきたい」と情熱を燃やしています。    石川准氏の鳥居賞受賞を祝す    株式会社アメディア代表取締役 望月 優  有限会社エクストラ代表取締役石川准氏に、本年度(2023年度)鳥居賞が京都ライトハウスから贈られた。  私は東京教育大学附属盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)高等部で学んだ仲間としてこの栄誉をお祝いする。     1. 点字受験初の東大生 石川氏は、昭和52年(1977年)に東京大学を受験し、見事現役高校生で合格した。 私は、この合格の吉報に非常に感動した。  彼はクラスの中で学力は突出していたが、16歳のときの失明で、点字を読む速度は早くなかった。 それにも関わらず、点字受験で東京大学に見事現役で合格したのだった。     2. 社会学者としての活躍  彼は、東京大学の修士課程、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校博士過程への留学そして東京大学大学院の博士課程を経て、平成元年(1989年)に静岡県立大学国際関係学部の講師に着任。アイデンティティ論、障害学、感情社会学を専門とし、多くの著書を書き残している。  彼が『アイデンティティゲーム』という著書の執筆に当たっている頃、とある用事で電話したところ、「アイデンティティ」について詳しい説明をもらった。これ以来、私は、アメディア社員のアイデンティティを大切にするようになった。  平成6年(1994年)に助教授、平成9年(1997年)に教授へと順調に昇進し、令和4年(2022年)に退官するまで静岡県立大学で勤めあげた。     3. 公職でも活躍 彼は、公職でも大役をこなしてきた。  平成21年(2009年)に内閣府中央障害者施策推進協議会会長、平成24年(2012年)に内閣府障害者政策委員会委員長、平成31年(2019年)に国連障害者権利委員会副委員長に就任し、障害者政策に多大なる貢献をしてきた。     4. 視覚障害者支援機器分野での活躍 彼は、米国留学から帰国後しばらくしてからプログラミングに没頭し始めた。  私は、彼が作成したVegaというエディタやMS-DOSのスクリーンリーダー「グラスルーツ」をDOS時代に使わせてもらった。  平成3年(1991年)のアメディアフェアのソフトウェア・コンクールで、彼が応募した自動点字変換ソフト「EXTRA」がグランプリを受賞。その後、これを製品化し、9年後の平成12年(2000年)4月に、この製品ブランドにちなんで、有限会社エクストラを設立した。  現在は、世界最大手の米フリーダムサイエンティフィックや、韓国ヒムス社の正規代理店として、日本の視覚障害者に海外の最先端機器を日本語にローカライズして提供している。 これら、各方面での大活躍が評価されて、今回の鳥居賞の受賞に至った。 おめでとう! そして、これからも活躍を期待します。    加藤俊和さんの「ヘレンケラー・サリバン賞」受賞と全視情協からの感謝状授与を祝して    毎日新聞社点字毎日部 佐木理人  東京ヘレン・ケラー協会が主催する「第31回(2023年度)ヘレンケラー・サリバン賞」に社会福祉法人日本盲人福祉委員会の評議員・災害担当のほか、視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブルックの会の代表、点字楽譜利用連絡会の副代表・加藤俊和さん(78歳)が選ばれました。  サリバン賞は、視覚障害者の支援に功績のあった方を表彰するものです。多岐にわたる分野での加藤さんの精力的な活動を考えると、まさしく受賞にふさわしいと言えるでしょう。また、全国視覚障害者情報提供施設協会からは、感謝状が贈られました。  日本ライトハウスや京都ライトハウスに所属していた加藤さんは、教科書の点訳では、数学・理科や情報処理関連の点字表記をまとめる作業に関わり、楽譜点訳では、教科書のレイアウト統一に尽力。駅ホームからの転落や踏切での事故を巡っては、事故現場の検証など、安全対策につながる提案に力を注いでこられました。この分野の一番の功績は、ホームの内側を示す「内方線」の考案と設置の実現ではないでしょうか。さらに、平成23年(2011年)の東日本大震災では、日盲委の災害対策本部の事務局長を務め、被災した視覚障害者を支え続けてこられました。  そんな加藤さんと私は、約20年間、視覚障害者の移動環境の改善を目指して共に活動を続けています。点字毎日の記者として、取材先でお会いすることもたびたび。いつも私を見かけるとさりげなく静かに声をかけてくださいます。京都出身で物腰は柔らか。それでいて、ときには「当事者は、もっと怒らないと!」と視覚障害者に熱く語りかける姿はかなりの迫力です。  サリバン賞の授賞式で加藤さんは「私たちとつながりのない多くの中途視覚障害者の存在を社会に伝え、そんな方々への取り組みを続けていきたいです」と述べられました。加藤さんは、よく知る視覚障害者から「見える盲人」と呼ばれています。「体は晴眼者だけれど、心は視覚障害者」という意味が込められた愛称です。  加藤さん「ヘレンケラー・サリバン賞」の受賞、本当におめでとうございます。多くの視覚障害当事者と共に心からの祝意と敬意を送ります。    荒川明宏氏の近藤正秋賞受賞を祝す    理事長 長岡雄一  名古屋ライトハウスの創立者のお一人でもある近藤正秋氏の名を冠したこの賞は、就労、経済、政治等の分野で活躍し、著しい功績のある視覚障害者を顕彰するために設けられた賞です。  第1回の受賞者は、現在、日本科学未来館で館長を務められている浅川智恵子氏。その後もそうそうたる方々が、受賞者に名前を連ねています。そして、令和5年度(2023年度)、そこに荒川明宏氏の名前が加えられました。  現在、株式会社ラビットの代表取締役を務められているだけでなく、サイトワールドの運営においても、代表者として重要な役割を果たされ、さらに日盲社協盲人ホーム杉光園の園長、さらには日盲社協の常務理事と、たぶん、体がいくつあっても足りないのではないかと思うほどの日々を過ごされています。  いくつもの仕事をこなされているからでしょうか。それとも企業の経営者としての思いでしょうか。日盲社協の運営に対しても常に厳しく、的確なご指摘をいただきます。  今年の70周年記念大会の講演者である法政大学大学院の米倉誠一郎教授も荒川氏の紹介によるものです。  常に、固定観念に縛られることなく、今の自分の位置と、これから先を考えての行動は、時として、我々凡人には予想さえつかないこともあります。  そんな荒川氏は今、日本製の視覚障害関係の機器が、今後なくなってしまうのではないかという、かなり切迫した危機感を持っています。  日盲社協の理事会でも、70周年記念大会におけるアピールでも、さらに厚生労働省への陳情においても、その危機感を強く表明されています。この受賞を契機に、その危機感を関係者の多くが共有できるように、さらに荒川氏が行動を続けていくことを切に望んで止みません。  近藤正秋賞の受賞は、もちろん終着駅ではありません。第1回(平成18年度)から第17回(令和4年度)までの受賞者を見ても、受賞後の活躍は目覚ましいものがあります。荒川氏においても、受賞者の諸先輩たちのように、今後もなお一層のご活躍をされることを願っています。 今回の受賞、改めておめでとうございます。    わが施設の今    第12回 ロゴス点字図書館    創立70周年を迎えて    ロゴス点字図書館館長 平井 利依子  ロゴス点字図書館は、カトリック点字図書館から数えて、今年(2023年)で70周年を迎えました。  第二次世界大戦に従軍して視力を失った兵士の社会復帰のために、政府が教育施設、収容施設を用意し、その援助を、塚本昇次神父に要請しました。視覚障害に関心があった塚本師は、教会の有志とともに奉仕を開始します。当時、カトリック関係の点訳書はほとんどなく、次第に点字図書館の必要性を感じた塚本師は、昭和28年(1953年)にカトリック点字図書館を設立しました。  カトリックの仲間たちへの情報提供から、広く全国の視覚障害者へ利用が広がったのが、2代目館長、西尾正二神父の時代でした。視覚障害の団体や、図書館の団体と積極的に関わり、周囲からは「カト点」と親しまれ、専門性の高い図書館として存在感を明らかにしました。  より大きな転機が訪れたのは、橋本宗明3代目館長が成し遂げた法人化でした。東京には点字図書館が5館あり、そのうち社会福祉法人はすでに3館あったため、認可は難しいと思われました。専門性の高い図書館として認知されていたカト点でしたが、橋本氏は、「目が見えないと苦しいことが多い。苦しいことが多いと人は物を考えるようになる。そうした人を支援する施設、『考える図書館』の存在は社会的に有用性を持つ」と生きる意味での必要性を訴えました。  平成13年(2001年)、法人化となり、法人名を「ぶどうの木」、施設名を「ロゴス点字図書館」と定めました。  橋秀治4代目館長、西田友和5代目館長と続きますが、「考える」のに有益な資料を提供するという理念を守り続けています。地域の行事への参加、近隣の公共図書館との連携も強化しています。また、カト点からの特徴として、全国組織等へ積極的に関わっていることがあげられます。少しでも全国の施設の職員の役に立ちたいという思いです。それが、利用者へのサービスにつながり、職員も全国の動きを知ることができ、業務のプラスになっています。  今後も専門性を生かした図書館として、支援者、施設、関係者の皆さんと協力していきたいと思っております。    第71回全国盲人福祉施設大会    ―日盲社協創立70周年記念―    東京ヘレン・ケラー協会点字出版所長 塚本 泉  第71回全国盲人福祉施設大会が11月9日、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で開かれた。  主催する社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)は今回、創立70周年記念行事の一環と位置づけた。 新型コロナウイルス禍の影響もあり、4年ぶりに視覚障害者福祉に関わる全国の施設関係者が一堂に会する大会となった。     講演T 田中伸明弁護士  メインイベントといえる二つの講演会が開かれ、午前の部では、弁護士で名古屋市視覚障害者協会田中伸明会長が「障害者権利条約の国連勧告と視覚障害者運動」と題して講演した。  田中氏は子供の頃から視力が弱く、名古屋大学入学後に症状が悪化して進路に悩んだ。全盲の弁護士、竹下義樹氏(現・日本視覚障害者団体連合会長)に出会い、「弁護士は視覚障害者でも続けられる仕事」とアドバイスを受けて法曹界に関心を持ち、工学部から法学部へ移った。  25歳から司法試験にチャレンジし、苦節15年の末に合格して弁護士となり、「障害のある人とない人が平等に生きていく社会にしたい」と障害者支援の活動に取り組んでいる。  田中氏は、国連で「障害者の権利に関する条約」が平成18年(2006年)に採択された後、日本では国内法の整備に時間がかかり平成26年(2014年)に批准した経緯を説明。このうち障害者基本法の改正(2011年)に伴い、障害者の定義について、身体や精神などの障害により日常生活が制限されるという「医学モデル」から、障害者が社会制度の不備により制限を受けているとの「社会モデル」という考え方に変わった。さらに最近は表現、居住、職業選択の自由など基本的人権の行使をより重視する「人権モデル」に移りつつあるとした。  これらを踏まえた上で、国連障害者権利委員会が令和4年(2022年)9月、日本政府の条約への取り組みを審査して不十分な点を指摘した総括所見・改善勧告を解説。この中で、障害者がグループホームなど特定施設で生活する義務を負わず、居住・移転の自由を確保して地域の人々との交流を広げる。表現の自由を行使するため、点字、音声解説、手話などの意思疎通手段を充実し多くの情報を利用しやすくする―ことなどを可能とする法整備、予算確保を政府に求めたことを強調し、「所見を生かすため、憲法のいう人権、自由の保障をもとに人権モデルの考え方をしっかり受け止めることが大事」と結んだ。     講演U 米倉誠一郎教授  午後の部では、一橋大学名誉教授で法政大学大学院教授、CR-SIS(クリエイティブ・レスポンス ?ソーシャル・イノベーション・スクール)学長の米倉誠一郎氏が「視覚障害者活動をイノベーションする:楽観主義・多様性・ソーシャルで」と題して講演した。  米倉氏は、技術革新や斬新な発想で社会経済に変革と新しい価値をもたらすイノベーションの研究で知られる。  講演では「イノベーションは目的ではなく手段。持続可能な経済発展と地球環境の維持の両立は難しいが、それを達成するのがイノベーション」と切り出した。「この大変な時代の今こそ楽観主義に立とう」と提唱し、楽観主義は「何とかなる」ではなく「何とかする」という意志だと説明。  まずは現実を直視することが大事だとし、主要国の平成10年(1998年)と令和2年(2020年)のGDPを比較して日本が韓国、イタリアに抜かれ経済成長が低迷している原因として、労働時間が長い割に生産量が伸びず生産性も賃金も低いことを挙げた。生産性を上げるためにAIやロボットを活用して労働時間を減らし、付加価値の高い製品で生産量を増やすことが肝心だと述べた。  さらに、日本の長所として、製品の信頼性が高く、共通の目標を持った時や危機を迎えた時に強みを発揮するとして、明治維新、第二次大戦後、オイルショックなどの危機を乗り越えて成長してきたケースを例に取り上げた。  危機対応の基本原則として「弱いところを嘆かず、強いところをより強くする」必要性を挙げ、地球環境の危機の中、共通目標としてSDGs(持続可能な開発目標)に資源を集中するべきだ、と指摘した。障害者についても障害(バリア)を価値(バリュー)に変える視点の重要性を提案し、「視覚障害者だからこそできる仕事がある」などの楽観主義的な考え方がイノベーションにつながり、「多様性の高い組織が生産性も高い」「今の日本には新しい視点・異なる視点が必要」と説いた。     記念式典  講演会の後に記念式典が開かれ、長年にわたり日盲社協や各施設の運営を支えてきた援護功労者・団体、ボランティア、永年勤続職員らの功績をたたえ、表彰状や感謝状が贈られた。  式典の最後に「来年開催される第72回大会は、令和6年(2024年)11月28・29の両日、大分市のレンブラントホテル大分で開催します」と主管施設の大分県点字図書館玉井和年館長が壇上から挨拶し、参加を呼びかけた。     祝賀会  今回は、「未来に向けた前向きな大会にしたい」という長岡雄一理事長の方針の下、記念講演の講師の選定をはじめ、プログラムの決定、記念誌発行の編集など、入念な準備作業を積み重ねてきた。 4年ぶりの対面開催とあって、式典に続いて開かれた祝賀会は旧交を温める場となった。  祝賀会では、乾杯の音頭をとった本間昭雄名誉会長が「70周年の歴史を知る者は94歳になる私だけになった」と歴代理事長の名前を挙げながら日盲社協発足当初からの足取りを振り返った。また、創立50周年の式典に出席された天皇皇后両陛下(当時)と皇居で会見した思い出などを披露した。    令和5年度アピール・創立70周年記念特別表彰者名簿     アピール  日本盲人社会福祉施設協議会は、1953年(昭和28年)に結成され、1981年(昭和56年)の社会福祉法人化を経て、本年70周年を迎えました。日本ライトハウス創始者でもある岩橋武夫氏の「盲人文化の向上と盲人福祉の増進」の提唱。そして、そのためには、各施設相互間の連携・調整を最も必要としているという主張は、その後の日本盲人社会福祉施設協議会の方向性を明確なものとしました。  多くの先人の熱意や尽力によるその後の発展は、加入施設が200にもなろうとしている事実が、何よりも明確に示しているといっても言い過ぎではありません。改めて、先人への深い敬意と感謝を表します。  さて、東日本大震災という未曽有の自然災害を体験した後に開催された60周年記念大会からの10年。自然は、さらにその厳しさを増し、毎年のように大きな災害の発生を見るようになってきました。それに加えて、特に2020年からの4年間、私たちは、新型コロナウイルス感染拡大による混乱に巻き込まれました。  会員施設のどこも、事業運営の危機に遭遇しました。安閑としていた施設はなかったはずです。さらに、コロナ禍が一定の治まりを見せてきた現在でも、私たちは前に踏み出すことに多くの障害を抱えています。半導体の不足による点字印刷機を含む各種機器の保守、製作の滞り、施設利用者の減少、職員の人手不足は今の時代、各施設の努力だけでは解決できない構造的な状況となっています。  それでも、今、こうして70周年記念大会に集うことができました。この事態をどう捉えるかは、人により様々でしょう。しかし一方で、対面がままならぬ状況で、オンラインを利用した新たな対話方法が当たり前になり、時として、情報共有にとっては以前より充実したものとさえ感じられる時があったことは、貴重な体験でした。事業展開にも新たな方向性が感じられ、実践が可能となったものもありました。  他方、視覚障害者福祉全体の動きについても、60周年からの10年という年月を、コロナのみで語ることは適切ではありません。  障害者総合支援法、障害者虐待防止法、障害者差別解消法、障害者雇用促進法の施行、社会福祉法人制度の改正、視覚障害の認定基準の変更、読書バリアフリー法、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の施行と続いた10年は、どれも、これからの障害者福祉に関わっていく者にとっては非常に重要な10年と言うことができるでしょう。この機を捉えないことはありえないことです。  また、急速に普及し始めたAI技術は、我々の今後の方向性を変えるかもしれないほどの影響力を持ち始めています。もちろん何事にも、両面があり、マイナスもプラスもあるでしょう。問題は、いかに私たちが技術に使われないよう努力することではないでしょうか。  多くの課題に対して、日本盲人社会福祉施設協議会は部会の垣根を取り払い、多くの英知を集めて、問題解決に立ち向かっていく必要があります。垣根は他の法人や団体との間にもあるかもしれません。それらも取り払う必要があるでしょう。「時すでに遅し」とならぬよう、厚生労働省、関係団体には腹蔵なく話し合うことを強く訴えます。  また、私たち自身においても、福祉と社会との間に垣根を作っている可能性は低くありません。さまざまな考え方をいかに効果的に取り入れていくか。それは私たちに課せられた課題とも言えるものです。幸いなことに、本法人は全国組織であり、かつ様々な属性を持った職員がそこで働いています。今は方法論に縛られている時ではありません。まず、共通の目標である、視覚障害者の福祉の向上に向け、新たに一歩を踏み出すことをここに宣言いたします。 令和5年11月9日 創立70周年記念第71回全国盲人福祉施設大会 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会    創立70周年記念特別表彰者(敬称略)    (1) 特別感謝状贈呈者 公益財団法人日本テレビ小鳩文化事業団 公益財団法人原田積善会 全国労働者共済生活協同組合連合会 東京都民共済生活協同組合 教職員共済生活協同組合    (2) 特別表彰者 本間昭雄名誉会長、第10代理事長、社会福祉法人聖明福祉協会会長 高橋實参与、社会福祉法人視覚障害者支援総合センター元理事長 田中徹二社会福祉法人日本点字図書館会長 茂木幹央第11代理事長、社会福祉法人日本失明者協会理事長 橋秀治第12代理事長、社会福祉法人ぶどうの木ロゴス点字図書館元館長 舛尾政美第13代理事長、社会福祉法人山口県盲人福祉協会理事長    (3) 特別ボランティア表彰者(30年以上の奉仕者)名簿 以下、推薦施設名、表彰者氏名(奉仕内容)の順。 千歳市点字図書室 細谷ちぐさ(点訳)・齋藤裕子(音訳・校正) 日本赤十字社北海道支部点字図書センター 福田和子(点訳)・青木泰子(音訳・校正) 函館視覚障害者図書館 森田直子(音訳・校正) 北海点字図書館 高田久美子(点訳・校正)・里見利恵子(音訳・校正) 岩手県立視聴覚障がい者情報センター 桑原民子(点訳・校正)・鎌田恭子(音訳) 宮城県視覚障害者情報センター 及川久(音訳)・阿蘇由美子(点訳・校正) 秋田県点字図書館 武蔵美佐子(点訳)・寺田恵子(音訳) 山形県立点字図書館 中川順子(点訳)・伊藤靖子(音訳) 福島県点字図書館 橘洋子(音訳・校正)・野地イチ子(点訳・校正) 足利市視覚障害者福祉ホーム 足利点訳サークル『あいの会』(点訳) 視覚障害者総合支援センターちば 藤波和子(点訳)・河野浩美(音訳) 視覚障害者支援総合センター 古川聖子(点訳・校正) すこやか食生活協会 藤村美貴子(録音雑誌製作) 聖明園曙荘 七重会代表野口篤子(点訳・拡大写本)・魚友(食品用達) 日本点字図書館 小田美保子(点訳・校正) 神奈川県ライトセンター 饗庭繁和(録音雑誌製作)・福田富美江(録音図書製作) 富山県視覚障害者福祉センター 佐藤久江(音訳・校正・デイジー編集)  石川県視覚障害者情報文化センター いしかわ音訳の会(音訳)・石川県点訳友の会(点訳)  視覚障害者生活情報センターぎふ 松居澄映(音訳・校正)・藤田敏子(点訳・校正・触図作成)・佐藤直子(点訳・校正・製本作業)・前田冨美子(点訳・校正・製本作業)  名古屋ライトハウス情報文化センター 竹中夏子(音訳・校正)・細尾明子(点訳・校正) 三重県視覚障害者支援センター 山田たへ子(音訳)・井上苑枝(音訳)  京都ライトハウス情報ステーション 五十川静江(点訳・校正)・板並令子(音訳・校正)  大阪府立福祉情報コミュニケーションセンター点字図書館 酒巻三津子(音訳・校正)・植田恒子(点訳・校正) 堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター 渡辺登貴子(音訳・校正・対面朗読) 堺市点訳ボランティアひかりの会(点訳・校正・触図作成) 西宮市視覚障害者図書館 山本悦子(点訳・校正)・松本米美(音訳・デイジー編集) 天理教点字文庫 水谷吉文(点訳)・土田美奈子(音訳) 奈良県視覚障害者福祉センター 奈良県点訳グループ青垣会(点訳) 奈良県音訳グループ草笛会(音訳)  島根ライトハウスライトハウスライブラリー 遠藤宗比古(点訳・校正)・小笹眞知子(点訳) 山口県点字図書館 中村實枝(点訳・校正)・玖村彰子(音訳・校正) 徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センター 田幡玲子(点訳・校正)  香川県視覚障害者福祉センター 秋山順子(音訳・校正・編集)・志津木倫子(音訳・校正・編集) 愛媛県視聴覚福祉センター 二宮タカ子(点訳・校正)・市川多鶴子(音訳) 福岡市立点字図書館 浜田美沙子(点訳・校正)・長田壽美子(音訳・校正・編集) 福岡点字図書館 杉原京子(点訳・校正)・城戸延子(点訳・校正) 大分県点字図書館 竹上惠子(点訳・校正) 都城市点字図書館 都城点訳・音訳友の会(点訳・音訳) 宮崎県立視覚障害者センター 矢口貴子(点訳・校正)・西山百世(音訳・校正)    (4) 特別永年勤続表彰者(勤続46年以上の半世紀勤労者)  以下、施設名、表彰者氏名、勤続年数の順。 北海点字図書館 姉崎久志(48年5ヶ月) 視覚障害者総合支援センターちば 橋恵子(48年0ヵ月) 東京ヘレン・ケラー協会点字出版所 福山博(46年4カ月) 日本視覚障害者職能開発センター 杉江勝憲(47年6ヵ月) 天理教点字文庫 山崎浩(53年0ヵ月)    待望の「サイトワールド2023」開催    東京ヘレン・ケラー協会『点字ジャーナル』編集部 雨宮 雅美  第15回視覚障害者向け総合イベント「サイトワールド2023」が11月1日(水)から3日(金・祝)の3日間にわたり、すみだ産業会館サンライズホールを会場に、コロナ禍を経て4年ぶりに開催された。3日間の述べ来場者数は3550名とコロナ禍前2018年の来場者数の3250名を上回り盛況を博した。  今回、編集部では3日目の最終日を取材した。まずメイン会場で印象的だったのは、説明を聞くためにいくつか行列ができていることだった。特に靴に取り付ける機器とiPhone向け専用アプリが連携する歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」の体験にできた長蛇の列や、ダイハツ工業の白杖で一人で安全に歩くための肩掛け式カメラによる障害物検知機器のブースに出来た人だかりから、おそらく4年前にはまだ開発の途上だったスマートフォンに連動したアプリ・カメラ機能・GPS機能を利用した支援機器に注目が集まっているようだった。実際にそういったサービスの提供を始めた企業を含めて今回9社が新規出展しており、開催のなかったこの4年の間に視覚障害者を取り巻く環境も大きく変化しているのだということに改めて気づかされた。  また、本イベントは、開催中ワークショップや講演会なども数多く開催された。3日目の午後に行われたのは、点字考案200年記念事業推進委員会が主催する「日本における児童・生徒、中途失明者に対する点字指導のあり方」をテーマにした講演会で、本委員会委員長の竹下義樹氏の開会の挨拶から始まった。  本講演会は2部構成で、第1部では、来年アメリカで開催される「ゲッティング・イン・タッチ・ウィズ・リテラシー」の事前発表として、立体模型を使った触図と触察の普及について、新潟大学の渡辺哲也教授と大学入試センターの南谷和範教授から発表があった。渡辺教授からは現在行われているハザードマップ作りと視覚障害当事者や地域関係者と共同した取り組みの推進について、南谷教授からはビジュアルがメインとなった教科書を補うべく学習指導の現場での立体模型の必要性や図書館での貸し出しの可能性等について発表された。また、全国視覚障害児童・生徒教科書点訳連絡会事務局長の奥野真理氏より、日本における点字学習の具体的な現状について発表が行われた。  第2部では今回の講演会テーマを題した内容で2023年10月25日に改訂版が発行になった『点字学習指導の手引き』の編集委員会の主査を務めた元広島大学牟田口辰己教授より、図形触読の章の新設や初任者・転任者といった指導者への留意事項等について今回の改定のポイントに関する解説が行われた。最後に現場からの報告として、福島県立視覚支援学校の渡邊寛子教諭から実際の教育現場で行っている点字触読指導方法が発表された。2時間の講演会で盛りだくさんの内容ではあったが、ここでは渡邊寛子氏の発表について報告したい。  「『私の文字』と胸をはって社会へ出るために――心を育む現場から」と題された氏の講演は、自身も中途失明し、塩原視力障害センターでの生活訓練の経験を活かし、5歳児から50代の中途失明者へ行った点字学習の方法と学習した当事者達がどのような成長をし、進路に進んだのかなどが発表された。  特に月齢に応じた学習教材の提供や、学習する本人がモチベーションを保てる教材の選択に留意し、また触読をどのレベルまで習得してどんなことがしたいのか、本人の意思を確認したり、あるいは指導者から将来像を示すことも重要だと語った。  またその際、やはり文字を読むという基本から「読書」に重きを置いているのが印象的だ。小学1年生に『給食室の一日』という作品を読ませた後に実際に校内の栄養士さんに話を聞きに行く。『赤毛のアン』を読んだ高校生が夏休みに物語の舞台となったカナダへ旅行に行く。コロナ禍、カレーショップのメニューを事前に読んで、テイクアウトをしに実際に店舗を訪れる。同時にカレーショップまでの地図(東西南北)を覚える。こういった実例を挙げながら、点字で本を読んで行動を起こすことが身の回りの生活を豊かにする理想的な学びであり成長につながるのだという。  講演を聞いて感じたのは、指導対象者と実に密にコミュニケーションを取っており、真に寄り添っているということだ。渡邊氏のように熱心に2人3脚で歩んでくれる点字指導者がそばにいることは、学習中の児童・生徒、あるいは中途失明者にとって心強く、モチベーションを保ち続ける大きなファクターになっているに違いない。点字指導には触読できることは必要な条件だが、こういった指導対象者に寄り添い続けられる優秀な指導者の存在は点字存続にとっても必要不可欠と言えるのではないだろうか。  最後に当委員で、日盲社協の長岡雄一理事長から本講演会が立ち見が出るほど盛況であったことに驚きと共に心強く感じた。点字や触図について改めて考える機会となれば幸甚だとの閉会の挨拶をもって盛会裏に終わった。    <新規加盟施設>    同行援護事業所おとも  「同行援護事業所おとも」は、視覚障害者の母親をもつ代表が2017年に立ち上げた、視覚障害者の外出支援(同行援護)を専門に実施している東京都にある事業所です。  登録しているガイドヘルパーは2023年10月現在、500名以上在籍しており国内でも最大規模の同行援護事業所です。サービス提供地域は東京23区と近隣の多摩地域・神奈川県・埼玉県・千葉県にも対応しております。また、スマホから簡単に同行援護の予約ができるマッチングWEBアプリも提供しております。 ■ガイドヘルパーズ(https://guidehelpers.jp/) 同行援護事業所おとも 〒121-0816東京都足立区梅島3-34-5 西崎ビル1F    TEL:050-5526-2818 FAX:03-6740-2485   E-mail:info@otomo.care    HP:https://otomo.care    <新規加盟施設>    春己ガイドサービス株式会社    春己ガイドサービス株式会社代表取締役社長 蜷 春己 春己ガイドサービス株式会社 〒816-0801福岡県春日市春日原東町4丁目63-103 TEL:092-574-6656 FAX:092-574-6657 E-mail:harumiguide@jewel.ocn.ne.jp  春己ガイドサービス株式会社は、目に障害のある方の同行援護や居宅介護サービスを行っている事業所です。  こちらの事業所は、福岡市街地の少し南にある、自然豊かで市街地へのアクセスがよい春日市に位置しております。  福岡県春日市、福岡市を中心に、佐賀県、長崎県でも活動しており、設立して今年(2023年)で10年目となりました。  経験豊かなガイドヘルパーが多数在籍しており、目の不自由な方々が地域で安心安全な生活を営める様に皆様それぞれの性格を把握し、それに合った支援を実施できるように心掛けております。  サービス内容としましては、同行援護では皆様の積極的な社会参加や外出支援、通院のお手伝いなど、居宅介護では家事の援助、身体介護など、利用者の皆様お一人お一人の大切な時間を、誠心誠意をこめて一生懸命サポートさせていただいております。  ご利用者の方々の行動範囲が広がるようにご希望の場所へベテランのガイドが安全を期して同行します。また、温泉施設などへの旅行企画やスポーツ活動なども積極的に取り組んでおり、ご利用者の方々にも大変好評です。    日盲社協事務局だより   1.表彰者・受賞者情報  (1)令和5年(2023年)春の叙勲で、石川県視覚障害者協会米島芳文理事長(石川県視覚障害者情報文化センター施設長)が旭日双光章を受賞。  (2)日本盲導犬協会多和田悟常任理事が、国際盲導犬連盟より「ケン・ロード賞」を贈られた。アジア初の受賞。  (3)第18回近藤正秋賞を日盲社協荒川明宏常務理事(株)ラビット代表取締役が受賞。  (4)第40回鳥居賞を有限会社エクストラ石川准代表取締役が受賞。  (5)ヘレンケラー・サリバン賞を日本盲人福祉委員会加藤俊和評議員が受賞。   2.加盟施設変更情報 (1)新規入会 <自立支援施設部会 5施設> @公益財団法人日本盲導犬協会島根あさひ訓練センター センター長 山田大 〒697-0426島根県浜田市旭町丸原155-15 TEL:0855-45-8311 FAX:0855-45-1139 E-mail:info@moudouken.net HP:http://www.moudouken.net/ A公益財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センター センター長 根本学 〒982-0263 宮城県仙台市青葉区茂庭字松倉12-2 TEL:022-226-3910 FAX:022-226-3990 E-mail:info@moudouken.net HP:http://www.moudouken.net/ B公益財団法人日本盲導犬協会 日本盲導犬総合センター センター長 佐野智浩 〒418-0102静岡県富士宮市人穴381 TEL:0544-29-1010 FAX:0544-54-3030 E-mail:info@moudouken.net HP:http://www.moudouken.net/ C同行援護事業所おとも 代表者 鈴木貴達 〒121-0816 東京都足立区梅島3-34-5 西崎ビル1F TEL:050-5526-2818 FAX:03-6740-2485 E-mail:info@otomo.care HP:https://otomo.care D春己ガイドサービス株式会社 代表者 蜷春己 〒816-0801福岡県春日市春日原東町4-63 シャトレー春日103 TEL:092-574-6656 FAX:092-574-6657 E-mail:harumiguide@jewel.ocn.ne.jp  (2)施設長等変更 <情報サービス部会> 埼玉点字図書館館長 荒井宏昌(令和5年7月〜) <自立支援施設部会> 埼玉盲人ホーム所長 荒井宏昌(令和5年7月〜 点字図書館館長兼務)   3.事務局からのお願い  (1)Zoomミーティング・ウェビナーの貸出:日盲社協では、ZoomミーティングとZoomウェビナーを貸し出しております。利用希望の会員施設は、日盲社協事務局宛にE-mail(nichimou.su@feel.ocn.ne.jp)で、使用希望日等を記載の上お申し込みください。  (2)日盲社協ホームページの「部会別ページ」には、全会員施設の法人名、施設名、住所・電話番号・FAX番号・E-mailアドレス、およびホームページを持つ施設にはそのリンクを掲載しています。  また、小誌では上記に加え、施設長の変更も紹介しております。交代人事がありましたら、日盲社協事務局(E-mail: nichimou.su@feel.ocn.ne.jp)までお知らせください。    編集後記  令和元年(2019年)6月20・21日の両日、北海道帯広市の北海道ホテルにおいて第67回全国盲人福祉施設大会が開催されました。  それ以来、実に4年ぶりに対面による全国盲人福祉施設大会が、本年(2023年)11月9日に、東京・ホテルグランドヒル市ヶ谷において開催されました。  この間の小誌『日盲社協通信』通巻80号(令和2年4月号)〜86号(令和5年5月号)の7号は、コロナ禍で日盲社協も活動自粛を余儀なくされましたので、報告すべき活動が極めて少なくなりました。そこで、小誌では特別編集体制を敷き「オンライン座談会」等の新たな企画を絞り出して、何とか発行を継続しました。  その新たな企画の一つに本部事務局が提案した「奉仕者(ボランティア)表彰者名簿を掲載する」がありました。  これは令和2年6月に滋賀県彦根市において第68回全国盲人福祉施設大会が開催される予定になっていたので、主管施設の滋賀県立視覚障害者センターは準備万端整えておりました。ところが、コロナ禍により、開催直前の3月30日に急遽中止が決まりました。しかし、すべてを白紙に戻すのではなく、大会アピールと決議は生かし、奉仕者には郵送で表彰状と記念品を贈ることなりました。そこで幻の第68回大会ではありますが、通巻81号にこれらを掲載することにしたのです。  また、令和3年の第69回大会はオンライン大会とし、令和4年の第70回大会もオンラインを基本にしつつ、ごく一部対面による参加も認めるハイブリッド方式で開催しました。しかし、奉仕者(ボランティア)表彰者の参加は自粛していただきました。そこで、この間も奉仕者には郵送で表彰状と記念品を贈りましたので、小誌通巻81号と83号に「奉仕者(ボランティア)表彰者名簿」を掲載しました。  しかし、第71回大会は対面でおこない、奉仕者(ボランティア)表彰者にもご参加いただきましたので、元に戻して本号から奉仕者(ボランティア)表彰者名簿は掲載しないことにしました。ただ、本大会は創立70周年を記念しているので、それを記念した特別表彰が行われました。そこで本号にはその名簿は特に掲載することにしました。(広報委員長 福山博) ●本誌は、こくみん共済 coop <全労済>の助成により作成したものです。