次の一文は、日盲社協を創設し、初代代表となった岩橋武夫の“創設のことば”です。点字雑誌「黎明」の第177号[1953年(昭和28年)10月号]の巻頭言の一節として掲載されました。
「二つの集会」とは、日盲社協の発会式並びに第1回総会と、岩橋武夫の遺業となった「第1回アジア盲人福祉会議」の「日本準備委員会」のことです。岩橋は1954年(昭和29年)10月に死去しましたが、第1回アジア盲人福祉会議は、1955年(昭和30年)10月に東京で開催されました。
岩橋 武夫 我が国盲界にとって注目すべき2つの集会が9月末東京の日本赤十字社本部において開催されようとしている。その一つは、9月29日午後1時より夜にかけてもたれようとする「日本盲人社会福祉施設連絡協議会」の発会式と、引き続き開かれる第1回総会がそれである。
すでに何人も知っているように、去る昭和23年、ヘレンケラー女史再度の来朝を記念して日本盲人会連合が呱々の声をあげ、年々進歩向上して今や加盟団体59を有する全日本的盲界中心勢力となったことは、誠に喜ばしい最近の収穫と言わねばならない。
先の九州地方や南近畿を襲った水害に対しても、罹災盲人救護のために点毎や業界と協力して50万円近い募金を獲得した事実を見ても、日盲連の存在価値が自ずから評価されてくるであろう。
この日盲連の力強い動きに対して、これと緊密な連絡を保ちつつ、盲人社会福祉施設が、各地方において公私にわたり著しい発展進歩をとげたことも、誠に喜ばしき近代の現象である。日盲連はどこまでも組織団体として盲人運動の中心機関であり、後者は各種社会福祉施設としての連絡協議会である。
この二者は、車の両輪のごとく相互に助け合いつつ発展し、盲界全体の幸福のために役立たねばならないという使命を持っている。今回の発会式において、この日盲社協が旗印として掲げるところの目的は、「盲人文化の向上と盲人福祉の達成に貢献する」という一点にあって、これはまさに日盲連の定款がその目的にうたっているのと同様である。
かくて日盲社協は、各施設相互間の連絡調整を最も必要とするがゆえに、できるだけ民主的な役員機構や運営の方法を取って委員会制度となし、加盟施設は少なくとも1名の代議員を総会に送らねばならないことになっている。会費は1施設1単位として年額千円、その他必要な経費は、寄付金、助成金、事業収益金等によってこれを賄おうとしている。
この会の成立によって、点字図書館事業や点字出版事業は全国的に強力化されるとともに、相互の勢力争いや時として起こる同じ図書の二重出版、あるいは図書の盲学校売り込みに伴う、あらずもがなの摩擦や勢力争いもなくなって、平和にして協調的な盲界事業体の横顔を見ることができるようになるであろう。
これを一言にして言えば、今までの各事業施設は乱軍であり戦国時代の群雄割拠であった。そうした一般社会の盲界に対する認識不足をよいことにして、ややもすると一人よがりな排他的言動を見せつけられた事実も少なくなかったが、それもこれも過去の物語となり、明るい新時代が来るであろう。
私は、この日本盲人社会福祉施設連絡協議会の意義ある発足を心から祝福し、日本盲界、否、世界盲界により良き貢献の成されんことを祈ってやまない。
29日、東京日赤本社の発会式にはせ参じる各施設は、国立、公立、私立を合わせてその数32に及び、これを地域別に列挙すれば次のごとくである。
北海道地区: 北海道点字図書館
関東地区: 国立東京光明寮、日本赤十字社図書館、日本点字図書館、東京点字出版所、東京光の家、桜雲会、東京ヘレンケラー協会友愛寮、聖ルカ失明者更生協会、国立塩原光明寮、千葉県盲人協会
中部地区: 富士根園、静岡県盲人連合会、聖愛園、名古屋ライトハウス、岐阜訓盲協会
信越北陸地区: 市立上田図書館、新潟県盲人協会、石川県愛盲協会
近畿地区: ライトハウス、西日本ヘレンケラー財団、点字毎日新聞出版部、府立京都寮、和歌山県盲人協会、国立神戸光明寮、関西盲婦人ホーム
中国地区: 広島県盲人協会、青い鳥盲女子ホーム
四国地区: 県立松山光明寮
九州地区: 福岡県盲人協会、新生会(九州ライトハウス)
(以下略)
「黎明」第177号(1953年10月、日本ライトハウス編集発行)より