在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究事業 報告書 コミュニケーション手段から就労への可能性について はじめに  当協議会は、昨年創立50周年の記念すべき年を迎え、視覚障害者関連機関の協議会として、その社会参加をさらに押し進めていく決意を新たに致しました。  さて、近年のIT革命は視覚障害者のコミュニケーション環境にも大きな影響をもたらし、その日常生活や職業等にも変革の新しい波が生まれてまいりました。  とりわけコンピュータをはじめとするIT機器は、職場での事務処理のIT化の流れに呼応し、視覚障害者自身の努力と相俟って職務遂行の可能性を一段と高めていると考えられます。  このような状況の変化にあたり、当協議会として、より多くの企業や働く視覚障害者の現状を把握し、今後の視覚障害者の雇用促進に資する調査研究を行うこととなり、本報告書をまとめるに至りました。  なお、本調査研究を行うに当たって、独立行政法人福祉医療機構より、「在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究事業-コミュニケーション手段から就労への可能性について-」として助成を頂きました。  ここにそのご協力に対して深く感謝申し上げます。 平成16年3月15日 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 理事長 本間 昭雄 -------------------------------------------------------------------------------- 報告書をまとめるに当たって  IT技術が急速に進歩し、情報の電子化が急速に進む中、業務に関わる情報伝達手段としての電子媒体や電子機器の役割が増加しています。  また、印刷物に関しても、視覚障害者はこれまでは人に読んでもらわなければその内容を把握できませんでしたが、OCR技術の進歩により、最近では人の手を借りずにある程度の印刷物を読みこなすことができるようにもなってきました。  視覚障害者が働くということを考えるとき、これらの社会と技術の大きな変化を見逃すことはできません。  私は全盲の視覚障害者ですが、私自身の生活を昔と今とで比較した時、今のライフ・スタイルは25年前の私自身にとってはSF小説としてさえも書けないぐらいに異なっています。  このIT技術の進歩による視覚障害者のライフ・スタイルの変化は、視覚障害者が仕事をすることにおいても大きな影響を与えていることは確実です。また、在宅で仕事をするということにも可能性を広げているのではないかと考えられます。  このような経緯で、「在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究」に取り組ませていただくことになりました。  本報告書は、まず第一に現在実際に働いている視覚障害者とIT技術との関係を浮彫にし、次に、それを元にして視覚障害者の雇用を進めていく上での雇用主向けの助言集としてまとめました。その中で、視覚障害者の在宅ワークの可能性についても検討しました。  調査を行う上で、多くの企業とそこで働く視覚障害者の方々にアンケートやインタビューなど、いろいろな形でご協力を頂きました。これら本調査研究にご協力頂いた皆様にこの場を借りて心より感謝申し上げます。  本報告書が多くの雇用主の皆様に視覚障害者の雇用を具体的に考えるきっかけとなることを心より念願致します。 平成16年3月15日 在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究委員会 委員長 望月優 -------------------------------------------------------------------------------- 第1章 視覚障害者のIT利用の現状  本報告書のはじめに、IT技術の進歩が視覚障害者のライフ・スタイルにどのような影響を与えてきたか、そして、現状はどのレベルにあるのかについて報告する。  この章を読んで頂くだけでも、IT技術の進歩と視覚障害者の業務遂行能力が以下にリンクしているか創造していただけるに違いない。 1-1 変遷  まず、視覚障害者の情報環境を改善すべく取り組まれてきたこれまでの経過を概観して見る。 (1) 視覚障害者の技術に対する期待  視覚障害者の読み書きの不自由さの解消を求める運動野動きは、かなり以前から具体化している。これは、視覚障害者自身がこの不自由さを解消することが、生活面でも、社会参加の側面においても、さらに雇用においてもキーポイントになることを肌で感じていたからにほかならない。  1974年12月、当時、東京教育大学付属盲学校の視覚障害教員長谷川貞夫は、自分の考案した6点漢字入力方式で文字を入力し、それを国立国会図書館の大型コンピュータを介してプリンタで印刷した。これが、視覚障害者がコンピュータを用いて独力で文字を書いた最初の試みであった。  長谷川は、視覚障害者が漢字かな混じりの文章を入力することさえできれば、コンピュータを用いて自分で文字が書けるようになると確信して、コンピュータ技術に先んじて漢字を点字で表現するための6点漢字を既に1972年に考案していたのである。時はまだ目の見える人達にとってもコンピュータで漢字を入力する方式が確立していなかった時期である。  この事実は、もちろん長谷川の先見性も大変なものだが、視覚障害者自身がいかにコンピュータの技術に期待を寄せていたのかということを如実に物語っている。 (2) 視覚障害者用ワープロの製品化  視覚障害者の「障害」のハイテク機器による解消を目指す動きは、まず「書き」の不自由さを解消するためのワープロ・ソフトの開発という形で本格化した。  1983年、高知システム開発は、長谷川式6点漢字入力機能を搭載した「AOKワープロ」を、NEC・PC−8801対応で発売した。このワープロ・システムでは、6点漢字による入力ができるのに併せて、外付けの音声合成装置によって入力の音声によるフィードバックや書いた文書を連続的に読み上げさせる機能を日本で初めて実現した。これにより、6点漢字を知っていさえすれば、目が見えなくても文書が書けるという環境が完成した。  AOKワープロを追いかけるようにして、1984年〜1985年にかけて、6点漢字表現をフルキー入力できるようにした「エポックライター音訓」、8点式の漢点字入力を採用した「チノワード」や「BRPC」等が相次いで開発された。  これらのワープロ・システムの文字入力は、音声での漢字の詳細読みによる漢字かな変換が実用化されるまでは、いずれも漢字コードを6点式もしくは8点式の点字により直接入力するという、JISコードを直接入力するのに匹敵する方式が取られていた。  こうして、1980年代後半には、パソコンに音声合成装置を接続した方式の視覚障害者用ワープロ・システムが急速に普及した。 (3) ワープロ・システムの特徴  視覚障害者用ワープロ・システムの技術的特長は、入力部分と出力部分である。  入力に関しては、最初は6点漢字または8点式の漢点字による直接入力から始まる。これは、一般のワープロにおいてもまだかな漢字やローマ字・漢字変換が普及していない時期にその開発が進められたからであった。  その後、かな漢字変換やローマ字・漢字返還が一般的に用いられるようになると、視覚障害者用のワープロでもこれらが用いられるようになった。  一方、出力に関しては、特別な音声合成装置をパソコンに接続し、その装置から出力される音声ガイダンスにしたがって操作するという方式が取られた。  書いた文書の確認方法としては、もっとも初期の頃には1文字ずつを6点漢字方式で読み上げるといったような手法がとられたが、まもなく文書全体を人が読むように読み上げる「滑らか読み」の技術が開発された。  また、1文字ずつの確認方法においても、一般によく用いられている熟語を例にとって漢字の文字を説明する「詳細読み」の技術が80年代後半には確立した。この「詳細読み」技術は、かな漢字変換やローマ字・漢字変換を行う上で、必須の読み上げ技術となった。 (4) パソコンの音声化  1983年7月、当時病院で三療師として働いていた視覚障害者、斎藤正夫(現アクセステクノロジー社長)は、パソコンの画面に表示される文字をモールス信号で表現するプログラムを自作した。これが、パソコンを何とかして視覚障害者の道具にしようとする動きの最初の成果であった。  斎藤は、8ビット・パソコンのN88−BASICの画面読みソフト、16ビット・パソコンのN88−BASICを音声化する「VDM98K」、そしてMS−DOSの画面を音声化する「VDM100」を80年代中期から後期にかけて相次いで開発した。  マイクロソフト社が80年代前半に投入したMS−DOSというOSは、パソコンを普及させるのに大変大きな役割を果たした。この頃から、パソコン技術が視覚障害者の障害を軽減するのに役に立つに違いないという発送が目の見える技術者達の中にも徐々に広がっていった。  1980年代半ば、当時電気通信大学の講師であった小山智は、富士通のパソコンで動作する「OS−Talk」というMS−DOSの画面読みソフトを開発した。これが日本最初のMS−DOS画面読みソフトであった。  それについで、末田統(すえだ おさむ)が8点式ワープロと一緒に開発した「BRPC」、テクノメイトのドスリーダー、マイクロニクスの「音次郎」等が1985年〜1987年にかけて相次いで発表され、視覚障害者のパソコン利用において選択肢が増えてきた。  これらMS−DOS画面読みソフトの開発によって、当時一般の人達に人気のあったワープロソフト「一太郎」や表計算ソフト「ロータス」などを視覚障害者も使えるようになった。 (5) 自動音訳への挑戦  視覚障害者にとってのもう一つの大きなハンディキャップ、文字が読めないということに対しても、IT技術による解決への挑戦が行われてきている。  1978年、電子ピアノで有名な米国の発明家、レイモンド・カーツワイルは、英語の印刷物をガラス面の上に乗せてその内容を合成音で読み上げる機器「カーツワイル朗読機」を発表した。  日本では、1983年より5年間のプロジェクトで、通産省が巨費を投じて、NECとアンリツに開発委託するという形で、日本語自動朗読システムの開発が取り組まれた。これが日本における最初の読書機への挑戦であったが、残念ながらこの開発は実用化されなかった。  1990年代に入ると、OCR技術が進歩し、富士電気、富士通、三洋電機等からOCRの専用機が300〜400万円程度の価格帯で商品化されるようになった。  このような技術的バックグラウンドを活かして、1992年には、拓殖大学と横浜市立盲学校の協同研究による「達訓(たっくん)」が自動朗読システムとして発売された。  一方、同じ頃、日本障害者雇用促進協会は印刷物からの朗読及び自動点訳システムを開発し、これを用いて、視覚障害者を雇用している雇用主向けにサービスを開始した。  上記の2つのシステムは、いずれも、富士電機のOCR「XP−70S」を用い、音声システムとしてはNECのPC−9801とMS−DOS音声化ソフト「やまびこ」を機軸にしたものを採用したものであった。  1993年11月、オーストラリアのロボトロン社が日本語読書機「エスプリ」を開発し、アメディアから160万円で販売を開始した。  しかしながら、上記の「達訓」と「エスプリ」は販売されているとはいうものの、いずれも100万円以上の高額製品であり、一般の視覚障害者が手に入れることのできるものではなかった。  1995年にマイクロソフト社からWindows95が発売されると、これまでよりも1ランク上の技術基盤をベースに開発が行われるようになったため、視覚障害者のための朗読システム開発の上では、大きな分岐点となった。  アメディアは、1996年9月に、これまで販売していた「エスプリ」に替えて、パソコンを用いた読書システム「ヨメール」を発売した。これは、パソコンを含むシステム価格が40〜50万円程度に抑えられ、かつ認識精度や音声の聞きやすさも大幅に改善されていたため、個人の視覚障害者に受け入れられるようになった。  一方、「達訓」の販売を行っていたタウ技研は、同年11月に、パソコン用読書ソフト「よみとも」を発売した。これも価格、認識精度、音声において個人の視覚障害者に十分受け入れられるものとなった。  しかしながら、紙に書かれた文字を認識するOCR技術は、現在も発展途上段階にあり、かすれた文字、色で装飾された文字、形で装飾された文字、大きさの異なる文字が混在している文書など、まだまだ解決すべき課題は少なくない。よって、この分野の製品は、今でも各社ともに随時機能アップ版を投入している。 (6) パソコン通信とインターネット  1980年代の後半になってMS−DOSが定着してくると、パソコン通信を趣味とする人々が徐々に増えてくる。パソコン通信というのは、1つのコンピュータをホストとしてデータを蓄積し、会員となった人達が同じホスト・コンピュータにアクセスして情報やデータを共有するという仕組みである。しかしながら、この仕組みは、趣味でははやったが、業務ではあまり用いられなかった。  1995年にWindows95が発売されると、目の見える人々の世界では、ホームページや電子メールといったインターネット系のサービスの利用が急激に増え始め、パソコン通信は徐々に後退していく。  インターネットは、ホスト・コンピュータ同士がお互いにリンクしあい、ユーザーは自分が契約したホスト・コンピュータを通して、世界中のホスト・コンピュータに蓄積されたデータにアクセスできるという仕組みである。  MS−DOSとパソコン通信、Windowsとインターネットは、パソコン史においてはほぼ対になっていると考えてもよい。  そのような事情から、世の中がWindowsに変わった直後は、視覚障害者はインターネットが利用できず、目の見える人々との情報格差が一時的に大きく広がった。  しかしながら、1997年11月に日本IBMから「ホームページ・リーダー」が発売され、ようやく視覚障害者もWindowsベースでホームページから情報を得ることができるようになった。  電子メールに関しては、Windowsベースでの視覚障害者向けのものの登場はやや遅れたが、1999年春に発表された「MMMAIL」を皮切りに、使い勝手の良いものが続々と登場している。 (7) スクリーンリーダーの進歩  上記(1)〜(4)で紹介したように、1990年代前半はMS−DOSの画面読みソフトがかなり充実した状況になっており、視覚障害者のパソコン利用者はその恩恵に大きくあずかっていた。  ところが、1995年にマイクロソフト社からWindows95が発売されると、個人をはじめ企業までもがこの新たなOSをMS−DOSに差し替えて導入し始めた。  WindowsはGUIと言って画面に表示されるグラフィカルな情報を手がかりに操作するシステムで、目の見える人達にとっては、これまでのコマンドを入力しなければ操作できないMS−DOSとは異なり、直感的に操作できるとても便利なシステムとして一気に受け入れられた。  一方、視覚障害者にとっては、グラフィカルに情報を提示することが標準となったWindowsの利用は当初はほとんど困難だと思われた。  当時労働省の外郭団体である障害者職業総合センターは、この状況を早急に打開すべく、Windowsの画面情報を読み上げるソフトウェア「95Reader」を開発した。そして、このソフトウェアは、システムソリューションセンター栃木(SSCT)から、1996年11月に発売され、視覚障害者がWindowsを音声を頼りに操作する最初の環境が構築された。  このように、画面に表示された情報を音声で読み上げるソフトウェアを総称して「スクリーンリーダー」と呼ぶようになった。  その後、1998年夏に高知システム開発から「PC−Talker」が発売され、さらに2001年4月には米国で開発され世界でもっとも評判の高い「JAWS」という製品の日本語対応版が日本IBMから発売されるにいたった。  これらのスクリーンリーダーは、視覚障害者が職場で目の見える同僚達が用いるのと同じソフトウェア環境を利用することを可能にしたものであり、視覚障害者の業務遂行にとって必須のアイタムとなっている。 (8) 画面拡大ソフトの変遷  MS−DOSが主流の時代には、やはり特別なハードウェアとセットで画面の表示を拡大するものがあったが、ハードウェアが高価なため、あまり多くは普及しなかった。  Windowsが主流の時代に入ると、スクリーンリーダーと同様、画面拡大をソフトウェアのみで行うようになった。  現在では、NECから画面拡大ソフト「ZOOMTEXT」が販売されており、多くの強度の弱視者に利用されている。  一方、ユニバーサル・デザインの社会的潮流に呼応すべく、マイクロソフト社はWindowsそのものに利用者自身が画面の拡大率や配色などを細かく調整できる「ユーザー補助」と呼ばれる機能を搭載した。  軽度の弱視者にとっては、この機能を適切に用いることにより、パソコン操作がかなり楽にできるようになっている。 (望月優) -------------------------------------------------------------------------------- 1-2 現状  ここでは、現在視覚障害者がITを用いることによりどのようなことができるか、また、現状どのような物があるのかを説明して行く。ここで紹介するものは、すべての視覚障害者が使用できるわけではなく、トレーニングが必要なものも含まれている。  情報障害と言われる視覚障害者に取って、このIT利用は、仕事の上に置いて、様々な可能性を生み出している。  (1)スクリーンリーダーによるOSの音声化  パソコンを使用する上では「Windows XP」、「Windows2000」、「Macintosh」、「Linux」など、OSと呼ばれる基本ソフトウェアが組み込まれている必要がある。 この「OS」を使うことができないと、パソコンの目的のソフトを起動したり、電源を切ることもできない。  国内では現在約5種類のOSを音声化するためのソフトウェアが発売されている。国内で最初に発売された「95Reader」を始め、「PC-Talker」、「VDMW300」、「WinVoice」、「JAWS」の5種類である。これらは、いずれもマイクロソフト社のWindows系のOSを音声化するためのソフトウェアである。  「Macintosh」用のスクリーンリーダーは国内では販売されていない。また、「Linux」を使用するためにはいろいろな工夫が必要となる。  上記のようなOSの音声化ソフトにより、mouseを使うことなく、キーボードで音で確認しながら、ソフトの起動と終了、文字入力、漢字変換などが可能となっている。そして、この主のソフトウェアを「スクリーンリーダー」と呼ぶ。  漢字には同じ音でも様々な意味がある。例えば「音」という漢字を入力するとスピーカーから「おんがくのおん おと」のように発生され、正しい漢字かどうか確認することが可能である。  5種類のスクリーンリーダーにはそれぞれ特徴があり、業務の目的や使用する視覚障害者のパソコン習熟度、視力の状態により、適切なものを選ぶ必要がある。また、場合によっては、複数の音声化ソフトウェアを入れ、切替ながら使うような工夫もなされている。  これらのソフトウェアは、OSの基本的な部分を音声化しているに過ぎず、目的に応じて利用しているスクリーンリーダーと相性の良いソフトウェアを組み合わせる必要が出てくる。  つまり、スクリーンリーダーのみを購入したとしても、目的の作業ができるとは限らないのである。  (2)ワープロとしての利用  仕事のもっとも基本となるのは文書を書くことである。この作業はワープロ・ソフトを用いることにより視覚障害者も可能となる。  先に挙げたスクリーンリーダー5種類は、ビジネスの中で多く使われている、「Microsoft word」に対応している。つまり、一般の方が使用している「word」をスクリーンリーダーを用いて、使うことができる。もう一つの代表的なワープロソフト「一太郎」はスクリーンリーダーの音声化は不十分のため、実用的に使うことは難しい状況になっている。  この「Microsoft word」を使用しての文書作成は可能だが、スクリーンリーダーの種類によっては、表の作成など、一部できることに制限がある。  また、視覚障害者専用のワープロソフトも発売されている。視覚に訴えることの多い「表や図など」をこの専用ワープロソフトを使うことにより、視覚障害者でもより効率よく作成することが可能となっている。  しかし、「word」とはファイル保存の形式が異なるため、「表や図」のデータの共有はできない。  (3)メールの利用  ビジネスでは、社員間の仕事のやり取り、部下への仕事の指示など、言葉で伝えるだけでなく、文字による明確な伝達方法が必要となる。  視覚障害者は紙のメモを読むことができない。  一方、仕事を指示する側は点字によるメモを渡すことができない。  口頭で指示するだけでは、曖昧な部分が出てしまったり、記録に残らないため言った言わないの問題になる恐れもある。  これを解決するのが「電子メール」である。  現在職場ではかなりメールが利用されている。本調査アンケートからも、その実態を知ることができる。  この「メール」は視覚障害者に取ってはとても重要な情報伝達手段である。  一般的にメール・ソフトとして「Microsoft outlook」が利用されていることが多い。しかし、このソフトに完全に対応したスクリーンリーダーは現在の所「JAWS」のみとなっている。  一方、視覚障害者の利用を念頭においた使いやすいメールソフトも複数販売されている。これらのソフトウエァは視覚障害者の作業効率を確保できるため非常に有用であるが、職場のメールシステムによっては、使用できないこともある。セキュリティを考慮して職場で用いることのできるメール・ソフトを限定するような場合がしばしば見られるからである。  ただ、企業にとっては視覚障害者の業務効率を無視することはできないので、メールソフトの選択に当たっては、システム管理者を交えて十分に協議する必要があろう。  (4)インターネットの利用  健常者は雑誌、新聞などから様々な情報の取得が可能である。しかし、情報障害と言われる視覚障害者に取って、この「情報取得」が正に困難である。日常的な事柄であれば、テレビやラジオから取ることは可能であるが、仕事に必要な情報となると、やはり専門雑誌や新聞などの情報は不可欠で、これを克服しないと、仕事をすることはできない。  この「情報不足」を補う手段として  第三者に雑誌などを朗読してもらい、それを聞く方法と、インターネットから情報を取得する方法とがある。  どちらも時と場合により、必要なことである。  リアルタイムな情報は「インターネット」による情報取得が早く、本人がより深く勉強する上においては、専門書などを図書館などに依頼、朗読してもらうという、アナログ的な要素も重要である。  インターネットを利用する場合、各スクリーンリーダーでかなりの部分まで操作が可能である。しかし、グラフィカルな情報や複雑な表のページなど、読むことのできないページもある。  また、視覚障害者用に開発された「ホームページ閲覧ソフト」も販売されている。「ホームページリーダー」や「ボイスサーフィン」といった商品がこれに該当する。スクリーンリーダーより効率的にページが読めるように工夫されているのが特徴である。  (5)OCRの利用  視覚障害者に取って「電子メール」や「インターネット」など、電子化された情報は自力で読むことができ、情報取得には大変有意義である。  しかし、紙の情報をすべて電子化するのは難しい場合もある。他の部署から回った回覧文書など、電子掲示板を利用している会社もあるが、紙で回覧している職場もまだ多く見受けられる。  「OCRソフト」はこの「紙の情報」を「文字認識」という技術を用いて、電子化するものである。この電子化された情報を視覚障害者は音声で確認することにより、内容を理解することができる。 簡単に記すと、「自動朗読装置」である。  新聞のような複雑なレイアウトのものを読むことは困難だが、通常の1枚ものの活字印刷物や文庫本などはかなり性格に読み上げることができる。  一人暮らしをしている視覚障害者は、郵便物の読み上げなどに広く使用している。  (6)表計算の利用  実際の業務の中では「データ分析」や「シュミレーション」、「報告書の作成」などといった作業が必要である。もちろん「ワープロソフト」である程度までは可能だが、限界もある。特に、「分析」や「シュミレーション」などは数値を与えて、その結果がどのように変化をするのか、見て行く必要がある。  そこで、よく利用されるのが「Microsoft Excel」である。この「Excel」はほとんどのスクリーンリーダーで対応している。  表の作成や決められた表に対しての数値の記入など、独力で十分操作可能である。  しかし、グラフの作成など自力では若干難しいものもある。  (7)グループウエアの利用  「情報の共有」という意味で、グループウエアを導入し、そこで一括管理をしている企業も多くある。  このグループウエアにも何種類かあるが、現在視覚障害者が利用可能なものは「notes」で、スクリーンリーダーは「JAWS」を用いた場合と限定される。  逆に、「notes」を導入している職場では、この「JAWS」を使用することにより、情報取得が可能と言える。  しかし、この「JAWS」は操作が難しく、トレーニングが必要である。また、「notes」も職場により、様々にカスタマイズされているため、職場で用いられている環境での「notes」と「jaws」との組み合わせによる実地訓練が必要であろう。  (8)その他ビジネスソフトの利用  職種によっては「プレゼンテーション」が必要な場合がある。一般的には「powerPoint」が多く使われている。グループウエアでも紹介した「JAWS」を利用することにより、「powerPoint」も音声での利用が可能となり、独力でプレゼンテーションも可能である。  専門的な職種では、データベースソフト「access」を利用することもある。これもスクリーンリーダーとして「JAWS」を利用することにより、音声化が可能となっている。  このように、スクリーンリーダーと業務に必要なソフトウェアとの適切な組み合わせにより、視覚障害者もある範囲まで独力で仕事が可能となる。  この他にも視覚障害者の業務を支援するソフトウェアや機器として、「画面拡大ソフト」、画面の情報を点字で確認できる「点字ディスプレイ」、情報を点字印刷するための「点字プリンタ」などがある。  このように様々なソフトや機器の導入により、「視覚」のハンディーを補うことが可能となっている。  これら機器導入に当たっては、職場環境、仕事の内容、本人の障害の程度、本人が受けてきたリハビリテーションの内容などを総合的に考え、決定する必要がある。  機器を揃えたからと言って、必ずしも効果的な業務ができるとは限らない。機器やソフトウェアの機能と本人のスキルとがマッチしてはじめてその威力を発揮するからだ。  その意味で、IT機器及びソフトウェアの導入に当たっては、業務を行う本人を交えて、専門の施設、または会社に相談することが重要である。 (荒川明宏) -------------------------------------------------------------------------------- 第2章 視覚障害者の就労現場でのIT活用  この章では、視覚障害者が職場においてどのような場面でITを利用しているか、また、ITでは解決できない課題に対してはどのように対処しているかそして対処すべきかについて報告する。 2-1 コミュニケーション手段としてのITの利用 (1) はじめに  コミュニケーションは通常、友人、職場の同僚、上司や社会など、様々な人間関係の間において、さまざまな対話が対話する人の固有の会話術により交わされるのが実態と言えよう。  本来、コミュニケーションは、対話者の「心と心」が通い合った言葉の交換がなされたとき、最高の効果を上げ得られるものだといわれる。  その手段として通常、「アイコンタクト」、「口頭」、「文書」が存するが、残念ながらアイコンタクトについては視覚障害者はお手上げ状態だ。この手段を利用できないため、視覚障害者はコミュニケーションが下手だと言われることもよく聞くことである。  このような状況から、 視覚障害者のコミュニケーションノ手段は、口頭と文書に頼ることになるが、口頭の場合、状況が把握できさえすれば問題点はない。  文書の場合、これまでは点字または拡大文字による手段しかなく健常者との間において共通性に欠けるところがあったがIT機器の発達によって対健常者間に共通のフィールドが構築され状況が一変した。  ここでは、視覚障害者のコミュニケーション手段として大変化を見せているIT機器の活用状況について、就労現場における実態をアンケートやインタビューから分析する。 (2) 概要  今回の調査は、当事者については、在宅ワーカーと会社に毎日出勤するワーカー(以下、在社ワーカー)の就労形態に分けて実施したことに伴ない、この就労形態にそってIT機器がコミュニケーションにどのように利用されているかについて分析を試みた。  その結果、かねてより予想されていたことではあったが、在宅ワーカーも在社ワーカーのいずれも、パソコンを中心にして、スクリーンリーダー、ホームページ閲覧ソフト、電子メールソフト、録音機、拡大読初機、スキャナーおよび、点字ディスプレイや電話などを複合的に利用していることが明らかになった。 (3) コミュニケーション手段の考察  読み書きが不自由な視覚障害者にとって職場の上司や同僚とのコミュニケーションをいかに円滑に行う課は、業務遂行上もっとも重要と言える。  IT機器が、このコミュニケーション手段として日常業務の遂行、あるいは会議資料の作成などにどのように利用されているかの結果は以下のとおりである。 1. 在宅ワーカーのケース  在宅ワークは会社から離れたところで一人で業務を遂行しているため、会社からの業務指示、会社への報告、日程調整などさまざまな打ち合わせ、ならびに会議資料等々、すべてにわたり電子メールによりやり取りする特殊環境にあることから、コミュニケーション手段として、IT機器は必需品だという。  ただ、ちょっとしたことについては、会社内であれば隣の席にいる同僚に声をかけ、たやすく勘違いなど手軽に確かめあえるが、働く場所を異にするこの場合、電話の存在も欠かせないコミュニケーション手段になっているという。 2. 在社ワーカーのケース  在社ワークは、多人数の中で業務を遂行してゆくため、情報交換手段が多様化する傾向にあるのが特徴デアル。  まず、日常業務の遂行については、「口頭」が53件ともっとも多く、「電子メール」の利用が20件を越え、これに続いている。  口頭による手段が多いのは、グループワークという事情から複雑性が伴うため手軽な口頭になりやすいことは理解できるが、文書に仕上げるような場合とか、間違い防止とか、能率化などの観点から電子メールなどが望まれるところではなかろうか。  次に、内容を伴う文書のやり取りについては、 1)職場の同僚から本人への伝達手段の場合、 「電子メール」が27件、「口頭」が23件、「印刷文書」が22件と続き、その他、「フロッピー」が9件、「点字文書」が9件、「拡大文字による文書」が5件となっており、「印刷文書」が電子メール化されるようになれば、一層消化されやすいようになるのではなかろうかと思われる。 2)視覚障害者から目の見える同僚への場合、 「印刷文書」が35件、「電子メール」が29件となっており、この2つの手段が圧倒的に多い。  このことからも判るように、IT機器の発達は、視覚障害者の文書作成を助長し、これまで不可能とされていた事務職などの就労を可能にし、さらにこれを拡げているとも言えるのではなかろうか。  最後に、会議資料についての回答は、 1)会社側から本人へ会議資料を提示する場合、 「印刷文書」が40件、「電子メール」が19件、「点字文書」が14件、「口頭」が8件、「拡大文書」が5件、「フロッピー」が5件となっている。  この結果から判るとおり、印刷文書が未だに多い。これに関しては、会議の内容を把握する観点などから一日も早く電子メールなどに切り替えられ、事前配布されることが望まれるところだろう。  この点について、 さらに細かくアンケートをみると、「点字文書」と回答した14件のうちの13件及び「拡大文書」と回答した5件のうちの3件が施設勤務者からの回答である。  つまり、企業勤務者の30件の回答の中には、点字文書は1件、拡大文書は2件しかなく、「その方法はあなたにとって適切ですか」という質問に対して、企業勤務者30名のうちの14名が「いいえ」と答えていることから、会議開催にあたっては十分な配慮が望まれることが裏づけられていると言えよう。 2)視覚障害者が会議資料を作成する場合、 「印刷文書」が40件、「電子メール」が15件、「口頭」が12件、「点字文書」が8件、「フロッピー」が8件、「社内掲示板」が3件、「拡大文書」が1件となっている。  この場合、「口頭」というのはどの程度の会議に関する資料なのかよく判らないが、やはり会議でテーマに上げる内容であるなら、口頭による伝達という手段は好ましいとは考えられない。 (4) まとめ  IT技術の習得は、就職するためであったり、業務の能率を上げるためであったり、情報の入手・発信であったり目指すところはさまざまであろうが、結果的にその技術がコミュニケーションの手段として、表裏一体に作用し、「心と心」がかよったコミュニケーションに利用されることになっていると言えよう。  更生施設などによるITに関する訓練は、 「文書作成」:25件、「インターネット」:11件「表計算」:6件、「プログラミング」:4件、「Windows」:2件、「UNIX」:1件。 という結果から文書作成が圧倒的に多く、インターネット利用が続いていることがアンケートの結果からも分るとおり、コミュニケーションに重点がおかれていることが理解できる。  因みに、IT設備への満足度について尋ねたところ、「大変満足」と「まあまあ満足」をあわせて51件となっており、有効回答数85件の60パーセントに達していることは、基本的に満足している方が多いと言えるものだろう。  しかしながら、残りの者は良好なコミュニケーションをつくれないのか、気がかりになるところだ。  この背景にはいろいろあろうかと思われるが、もし、一因がIT機器の利用法にもあるとしたら、万人が容易に使いこなせ得るバリアのない機器の早急な開発が望まれる。 (下堂薗 保) -------------------------------------------------------------------------------- 2-2 業務をこなすためのIT利用  ここでは視覚障害者がIT機器を利用することでどのような業務を確実にこなしていけるか考察してみることにしよう。  一般的に事務的な業務をこなす上ではIT機器の必要性は必須である。それは視覚障害者が業務を遂行するためにはなくてはならない。IT機器を使いこなせなければ事務的業務を遂行することはまず不可能である。  これらの観点から考えて、視覚障害者がIT機器を有効に活用して行える業務にはどのようなものがあるのだろうか。  具体的な例として、いくつかの業務について考察して見よう。 (1) 各種企画書・報告書作成業務  所属部署における様々な企画立案を行いエクセルやワードのような各種ワープロ、表計算ソフトを利用して、上司もしくは同僚に提出出来るフォームで作成する。  報告書も同様で、あらかじめ決まったフォーマット(ただし、スクリーンリーダー対応可能なソフトウェアで開けるファイル)もしくはワープロ、表計算ソフトなどを使用して自力で作成する。 (2) インターネットで情報収集、社内報やメールマガジン、HPのコンテンツ作成  スクリーンリーダーを利用してインターネットを閲覧し、業務に必要とされる情報をピックアップする。  例えば、業務でお客様向けの製品情報あれこれといったちょっとした情報誌を作成するとしよう。  まず、インターネットで、作成する情報誌のネタ収集を行う。さらに、関連情報もピックアップし、ファイルに落として編集する。  インターネットで拾ってきた情報を必要に応じて編集し、他の資料と合わせて、情報誌を作成する。  メールマガジンや、社内報の記事などは上と同様の方法で作成することが出来る。  ホームページのコンテンツ作成業務に関して言えばIT機器やソフトウェアの利用スキルが高い視覚障害者ならば、内容としてのコンテンツを作成するだけではなくホームページ自体の作成も自力で行い、そのサイトの運営、管理も業務として成り立つと考えられる。 (3) その他各種事務作業  人事、総務などでは、各種データ管理業務が必須である。  例えば、人事に席がある場合、新規の社員をインターネットで募集し、集まった応募データを管理し、一人一人とメールもしくは電話を利用して採用に向けてのコンタクトを取る。  総務であれば、社内の備品、在庫などのデータ管理、各種顧客名簿データ管理、社内出版物データ管理といった様々なデータ管理が考えられる。  いずれの業務でもスクリーンリーダー対応のIT機器を利用するのは必須で、データ管理業務ではスクリーンリーダー対応のデータベース管理ソフトの利用が不可欠である。さらに、データ管理には使用する表計算ソフトやデータベースソフトの習熟が必要であるが、訓練によって十分に業務に耐えられるレベルまで高めることが可能である。 (4) IT講習会企画運用例  以上のように、IT機器の利用を工夫することで視覚障害者が様々な業務にたずさわることが可能となる。  ここで、ある部署で視覚障害者がIT機器を利用することで業務を円滑に行える具体的な例を一つ紹介しよう。  視覚障害者向けのIT講習会の実施を例にとって説明しよう。  具体的な作業は、以下のような流れとなる。 1.エクセルを使用してIT講習会の企画書を作成する。 2.社外向けIT講習会実施のパンフレット(チラシ)を作成する。 3.開催日程が決まった時点でIT講習会の準備スケジュールをエクセルを使用して作成する。 4.必要備品在庫チェック表をエクセルを使用して作成する。 5.必要機材(講習会で使用するPC・周辺機器・ソフトなど)の調達(購入)。 6.講習会で使用する機材準備(動作確認)、ソフトインストールなど。 7.講習会で使用するテキスト作成(インターネットや、ソフトのまにあるを利用して、必要な情報を収集、編集)。 8.当日機材搬入作業。 9.講習会講師。 10.使用機材搬出作業。  以上、ざっとIT講習会実施業務の流れを列挙してみた。この中で基剤の搬入と搬出に関しては同僚との協同作業になるが、その他の作業は全て本人一人だけでもこなすことができる。さらに、視覚障害者向けの講習会企画のため、公衆本番の講師役は視覚障害者本人が最適役となる。 (5) 業務をこなすためのITスキル  本項のまとめとして、視覚障害者が業務をこなしていく上で必要なITスキルを整理して見る。 1.電子メールは必須  印刷された文書の処理が困難な視覚障害者にとっては、電子メールが使えることは最低条件である。  現に、事業所に対するアンケートの有効回答数26件のうち、日常の情報交換手段として電子メールを上げている回答が21件もあった。職場側にとっても、視覚障害従業員との情報交換手段として電子メールがいかに大切であるかがよくわかる。 2.自分のための記録手段  目の見える従業員でも、自分自身のメモが整理されていて、業務内容や日程などの自己管理がしっかりとできている人ほど仕事がよくできる。  これは、視覚障害者に対しても同じことが言える。  ただ、視覚障害者の場合には、目が見えないあるいは見えにくいために、目の見える人達とは別のやり方で自分自身のための記録を取り、自己管理している。  例えば、パソコンが身についている視覚障害者の場合には、エディタソフトで自分用のメモを取り、管理しているケースが比較的多い。記録の分量が膨大になっても、検索機能をうまく利用することにより、必要な情報を簡単に見つけ出すことができるからだ。  点字に慣れ親しんでいる人の場合には、点字電子手帳は非常に強い見方となる。視覚障害者に対するアンケートでも、点字メモ機を使用しているという回答が7件あった。  点字があまり得意でない全盲者の場合には、録音によりメモを取ることもある。最近はデジタル録音方式の録音機が登場し、録音であっても検索ができるようになってきているので、これも十分に有効な方法の一つである。  いずれにしても、周りからはあまりよくわからない場面で視覚障害者はITスキルを用いて自分用のメモを取り、情報を管理していることは見逃せない。そして、その自己記録の管理の出来具合が、その視覚障害者の業務効率に大きな影響をもたらしているのである。 3.業務用のスキル  これに関しては、本項の(1)〜(4)においてかなり具体的に紹介している。  ワードやエクセルのスキルは、視覚障害者の業務としてこなせる範囲を広げる。  データベースの管理やデータ集計の仕事に携わる視覚障害者の場合には、当然、その職場で用いているデータベース・ソフトが使える必要があるのだが、これに関しては、スクリーンリーダーとの相性及び本人のパソコンに対する高いスキルが必要となる。経理に携わる場合も同様だ。  いずれにしても、これ以降は、一般的なITスキルというよりも、それぞれの業務内容に合致した専門的なITスキルが必要となる。  専門的なITスキルに関しては、本人の力量もさることながら、現状での視覚障害者向けのIT環境がその業務スキルをこなしうるレベルにあるのかどうかという視点からの検討も非常に重要な要素となる。 (堤 由紀子、望月 優) -------------------------------------------------------------------------------- 2-3 ITを対象とした業務への取組の現状  本項では、プログラミングやシステム管理などの職種について考察する。 (1) はじめに  コンピュータのプログラミング言語は英語であり、正確な英文タイピングを身につければ入力は可能であり、わが国でも視覚障害者のプログラマー養成が行なわれてきた。コンピュータ技術の進歩によって、コンピュータの入出力を合成音声や点字で確認できるようになり、一段と作業は能率的に遂行できるようになっている。  ただ、「グラフィカル・ユーザーインターフェース」(GUI)とよばれる、アイコンに代表される画面上のオブジェクトをマウス等のポインティングデバイスで操作するユーザーインターフェースが一般的になったことにより、プログラマーが開発しなければならないソフトもGUIを用いることが求められ、さらに、プログラムを開発するための開発言語(ソフト)自体が、GUIを採用しており、これらの点から、プログラミングにあたり、視覚的な処理の比重が大きくなり、視覚障害者のハンディキャップが大きくなったことは否めない。  しかし、第1章の変遷で述べた「スクリーンリーダー」の開発と進歩は、「スクリーンリーダー」が業務遂行の必須アイテムとなったと同時に、プログラマーに従事する視覚障害者自身が、その努力により、ハンディキャップを克服してその業務を継続していることもアンケートの回答や本聞き取り調査が証明している。  コンピュータ技術の進展により、特にウィンドーズによるプログラミングのノウハウが個人に帰属し、視覚障害者の習得が難しい状況を生み出してきていることを指摘する声もある。  晴眼者の利便性向上のため開発された技術を、視覚障害者の利便にも供する技術への変換や応用の努力が繰返されて、今日のコンピュータ技術がある。このコンピュータの利用で、視覚障害者の普通文字の読み書き能力は大きく向上した。  ワープロソフトを使えば文書作成には問題がない。また電子化された文書やデータは容易に点字や音声に変換可能だ。印刷文書もスキャナで電子化でき、点字や音声で読むことができる。  システム管理や、電話による情報収集、情報提供、相談サービス、あるいは電話による販売業務など従事するために、その業務の基礎となるデータベースの作成や検索も、コンピュータの利用によって容易になっている。  このような状況の中で、GUIの登場により多少不利になったとは言え、現在もシステム管理やプログラム開発に携わっている視覚障害者の実例をいくつか紹介することにより、この主の業務がそれ相応の教育を受け、知識を持った視覚障害者にとっては適職であることを示そう。 (2) データベース開発・管理をしているAさん  聞き取り調査に応じて頂いたAさんは、商品小売を行とする本社従業員250名のグループ企業の本社情報管理部情報システム課長であり、現在は全盲で全く見えない。  ここでは、グループ企業全体の電算管理システムの開発・運用・管理を行っており、毎日刻々と変化していく商品の販売データベースと経理データベースをいってに管理している。  Aさんは入社23年のベテランエンジニアで、現在動いているシステムはAさん自身が会社に提案して採用され、自ら設計とプログラミングを行って構築したもの。その運用と管理、そして保守を現在行っており、この課の責任者である。  社内でのITの利用状況は、以下の通りである。 1.業務上の情報伝達  業務の詳細な指示はメールで行う。  簡単な情報伝達は口頭や掲示板でも行う。 2.業務上でのパソコンの利用  パソコンで実際にコーディングをしている。 3.その他のIT機器や会社のIT環境の利用状況  社内はイントラネットで結ばれているが、Aさん自身が電算システムの責任者のため、その設計もAさんご自身が行っている。  そのため、イントラネットは音声化システムに完全対応しており、不便だということは全くない。 (3) ウェブアクセシビリティを助言するBさん  一連のホームページの集まりを「ウェブサイト」と呼ぶ。  インターネットの急速な普及により、公共機関や企業など、より多くの人達に情報を伝える必要のある組織はどこでも、ウェブサイトを構築するようになった。  ウェブサイトには視覚障害者もスクリーンリーダーや専用の閲覧ソフトなどを駆使してアクセスしてくるのだが、そこでの情報提示方法に配慮がないと、視覚障害者にとっては大変理解しづらいサイトとなる。これについて助言するのがBさんの仕事である。  Bさんが勤めるA社は、ウェブサイトを中心としたコンサルティングや調査を行っているシンクタンクで、Bさんは最近とある大学の数学科の修士課程を修了して採用されたばかりの若手だ。  Bさんは強度の弱視で、スクリーンリーダーを利用した音声化環境と画面を拡大して見る環境とを併用している。ようするに、ウェブアクセシビリティの対象当事者としてこれほどマッチした人はいない。さらに技術的素養を持っており、専門的に突っ込んだレベルでのアドバイスにも十分対応できる人材だ。  ここまでの情報だけでも、BさんがA社の業務の一翼を担う上でいかに適任者であるかということが創造できるであろう。  現に、聞き取り調査に応じて頂いたA社の社長は、「ウェブのバリアフリー化という観点から適任という判断をして、Bさんを採用した」と言う。さらに、それに加えて、Bさんの将来について「アクセシビリティ関係のみならず、ITに関する全般的なコンサルティングができるようになって欲しい」とも語っている。  このような社長のBさんに対する更なる期待は、現在のBさんの業務が満足のいくレベルに達していることを如実に語っている。 (4) Windowsアプリケーションの開発に取り組むCさん  Cさんは全盲であるにも関わらず、 Visual C という普通はグラフィカルなインタフェースを利用して開発する言語を用いてアプリケーションの開発業務に携わっている。  Cさんは約10年前に視覚障害者用のアプリケーションソフトを主に開発しているB社に入社し、当初はMS−DOS上で動作するソフトウェアの開発に携わった。  しかし、Windowsの時代となり、B社の製品もWindows対応のものに変化して行った。  このような中で、Cさんはグラフィカルなインタフェースを用いない「コマンドライン」という方式で Visual C コンパイラを操作し、Windows用のアプリケーションソフトを開発するノウハウを会得した。 (5) まとめ  上記の例からも判るように、ITのユーザー・インタフェースが最近はグラフィカルになってきたことが視覚障害者にとって一つのハンディにはなっているものの、以前として専門的な技術・知識を持つ視覚障害者にとっては有力な職種の一つと言える。  現に、アンケート結果から見ても、視覚障害当事者からのアンケートで85件のうち7件、事業所向けのアンケートで41件のうち9件が視覚障害者従業員がプログラム開発に携わっていることを示している。  IT自体の社会需要は増大することこそあれ、減少することは近い将来の範囲ではとうてい考えられない。そして、そのITを対象とした専門業務も、ますます多岐にわたってくるであろう。  このことは、ITを対象とした業務であっても、グラフィカルな部分に関わりのない業務を生み出すことの可能性を広げることにもつながる。  例えば、大規模なデータベースであっても、そのデータ設計はグラフィカル・インタフェースとは無縁である。また、LINUXを中心とするインターネット・サーバーの管理は、グラフィカルなインタフェースを用いないで行うことが一般的である。  このように考えると、ITを対象とした分野においても、視覚障害者のスタッフに適切な業務分担を与えることにより、会社にとって十分に戦力となる仕事をさせることができることは間違いない。 (近藤 義親、望月 優) -------------------------------------------------------------------------------- 2-4 ITではカバーしきれない問題とその対応  仕事は通常、職場という組織の中で行われており、自らの業務を遂行するためには、他の社員とのコミュニケーション(連携)をとることは必要不可欠だ。  コミュニケーションの手段は、口頭と文書によるものに大別することができるが、文書によるコミュニケーションは、IT機器の活用により、視覚障害者でも可能になった。しかし、IT機器はコミュニケーションや業務遂行のすべてを可能にしたわけではない。それは、IT機器はコミュニケーションや業務遂行のための1つの手段に過ぎないからである。したがって、視覚障害者がIT機器を活用して、本人のもつ能力を十分に発揮するためには、職場環境、特に人間関係の構築が重要になる。このことは、本アンケートで、視覚障害者自身が働いていく上で人間関係が重要であると回答していることからも明らかである。 一方、実際に視覚障害者を雇用したことがある雇用主の回答で、通勤に対する不安、職場でのサポートをどのようにしたらいいのかなど、本来の業務内容以外の面で、視覚障害者を雇用する際に漠然とした不安を抱えていたことも明らかとなった。漠然とした不安を抱えたままでは、よりよい人間関係の構築はありえない。  そこで本項では、視覚障害者が働いていく上で、ITではカバーしきれない諸問題とその対応について考えてみる。 (1) 視覚障害者の多様性  まず、視覚障害者とはどのような人をいうのだろうか。  視覚障害の状況を表すものとして、身体障害者手帳の等級がある。視覚障害1級は視力0から0.01までとなっている。0.01といえば、眼科の視力検査でランドルト環という視票の最も大きなものが50cmの距離からわかる状態を示している。つまり、最も重度の視覚障害1級といってもまったく見えない人から少し見える人まで幅が広い。その上、視野の程度、障害を負った時期、視力や視野が進行性のものか、疾患の特性などを考えると、1人として同じ状況の人はいない。 (2) サポートを要する場面の考察  上に揚げたような視覚障害という個性に加え、個人の特性として、社会人としての経験、IT機器の活用技術、当該職種に関する理解度・経験度などが加わる。したがって、視覚障害者に対する業務上の必要な配慮や支援(以下、サポートとする)は一律にはできない。  このため、実際には雇用する(した)視覚障害者本人、人事部、現場の3者において、どのようなサポートを行えばいいのかを話し合うことが重要になる。  しかし、話し合いで想定された状況だけが実際の仕事の中で展開されるとは限らない。また、そのサポートだけを行っていれば、よりよい人間関係が構築されるというわけでもない。  そこで、職場で働くということを、1)通勤、2)業務の遂行、3)職場生活の3つに分けて考えてみる。    1)通勤  職場に出勤するためには、通勤という行為は不可避だ。視覚障害者は、必要に応じて白杖を携帯したり、その使い方の訓練を受けたり、実際に通勤経路を歩行訓練士などと歩き、通勤の安全性を確保するように事前の準備を行っている。  このように、視覚障害者は、自分が事故にあうことによって職場に迷惑をかけると考え、安全に通勤する方策を考えている。したがって、視覚障害者だから通勤は危険・困難であると決め付けないでいただきたいと思う。また、通勤経路上などで職場の視覚障害者を見かけたら、声をかけ、本人の申し出によるサポートをお願いしたい。このようなことは、コミュニケーションが深まる要因ともなる。  2)業務の遂行  自己完結的な業務内容の場合、IT機器の活用により単独での遂行が可能だが、電子媒体になっていない情報源からの情報入手の場合は、サポートをお願いすることになる。また、業務は組織の中でおこなっているため、遂行上、組織(他の社員)との連携やコミュニケーションが必要だ。  この際、口頭によるコミュニケーションの場合、その場所に誰がいるかが分からない状態では適切な発言などのコミュニケーションをとることが出来ない場合がある。このような場合には、名前を名のるなどのサポートが必要となる。  また、文書によるコミュニケーションの場合は、本人が事前に申し出た方法(電子化、拡大化、読み上げ)でのサポートが必要である。特にIT環境が整っている職場の場合は、電子化は有効だ。また、拡大化の場合は、文字の大きさを同じにするように拡大することが大切である。弱視者の中には、視野の狭い人もおり、単なる拡大は反対に見にくくなる場合があることも付記しておく。  3)職場生活  職場ではトイレに行く、昼食をとる、お茶を飲む、諸届けの提出など、業務の遂行以外の様々なことがある。  このうち、トイレに行く、休憩場所に行く、食堂に行くなど、その場所への移動は、当初、不案内や不慣れなため、多少サポートが必要な場合もあるが、時間とともに慣れていくことである。したがって、永続的なサポートは必要ない。  また、諸届けに関しては、紙に書き込む形式の場合には、視覚障害者が提出可能な形式(電子媒体や拡大など)に変更する、紙に書き込む際に代筆するなどのサポートが必要となる。  一方、食堂や球憩室の利用に関しては問題が生じやすい。カフェテリア方式などの場合にはメニューがわからない、空席が分からないなど、単独での利用が難しい場合がよくある。また、休憩場所の利用に際しても、灰皿の位置が毎回異なる、自動販売機の品目が入れ替わるなど、細かなことではあるが利用する時点で一定の状況になっていない場合には、サポートが必要となることがある。    3つの場面についてみてきたが、どの場面においても、環境や状況を一定にすることが大切だと言える。 (3) 「一定」についての考察  この環境や状況を一定にしておくという点について、もう少し詳しく考えて見よう。  障害の有無を問わず、同じ業務であっても、転職などにより働く環境が異なると、慣れるまでは大変である。これは、業務という行為そのものは定型であるが、働く環境が非定型であるため、それに適応するためにはサポートと時間を要することを示している。  視覚障害者の場合は、晴眼者が定型と考えるような微細な環境の変化であっても、非定型の環境となってしまうことがよくある。  いくつか例をあげることにしよう。  例えば、普段は電子メールを活用して会議の内容を視覚障害者に知らせていたとしよう。しかし、あるときだけ紙に印刷して会議の内容を知らせました。この場合、会議の内容を知らせるという行為は定型であっても、その環境、つまり知らせる方法が非定型となる。この場合は、サポートが必要となる可能性が生じる。  また、いつもは弱視者の要望にあった文字の大きさで、コミュニケーションをとっていた。しかし、あるときだけ文字を大きくしなかったとしよう。これも文字によるコミュニケーションという行為は定型だが、文字の大きさが非定型となる。この場合もサポートが必要になる可能性がある。  さらに、移動の面を考えて見よう。視覚障害者が移動する経路に、いつもはない荷物が置いてあった、いつもは全開しているドアが半開きだった、引き出しが出しっぱなしだったなども、移動する経路は定型だが、途中の状況が非定型となる。このような場合、視覚障害者は荷物につまずいたり、半開きになっているドアや引き出しにぶつかったりする可能性があるため、サポートを必要とする。  つまり、視覚障害者にとって 1)定型な行為であれば、定型的な環境のもとにおいては、慣れれば単独で行えることが多い。しかし、慣れるまでには多少の時間を要するとともに、適切なサポートを必要とする。 2)定型な行為であっても、非定型の環境ではサポートを必要とする。このような場合には、視覚障害者本人に非定型の環境であるということを伝え、どのようなサポートが必要かをたずねる必要がある。ただし、非定型の環境を作り出さないという配慮も重要である。 3)非定型の行為で非定型の環境の場合、いままでの技術などを応用して可能な場合もあるが、多くの場合は単独で行うことが困難か、または時間がかかりすぎで実用的ではない。この場合には、視覚障害者側からはサポートを申し出る必要があり、また会社側としては具体的なサポート方法を検討する必要がある。 (4) 心理面に対する配慮  最後に心理面を考えてみたい。  視覚障害者には、障害を持っているが故に他の職員と比べ、能力が低いなどと負い目を感じている人もいる。また、職場の中ではできるだけ他の社員のサポートを受けずに、自分の仕事内容を独力のみで遂行したいと考えている人も少なくない。障害ゆえに、単独で行うことが困難な状況に直面したとき、これら心理が邪魔をして、サポートを依頼しにくい気持ちになることがしばしばある。その結果、業務遂行上で失敗したりすると、障害をその原因にしたり、業務への自信を失ったりしがちになる。  これがより一層、自分自身を卑下することにつながったり、他の社員との人間関係の歪みを生じ、サポートへの遠慮につながってしまうこともある。このような視覚障害者の心理面にも配慮した人間関係の構築が必要である。    今後、IT機器が発展しても、業務を遂行するためには職場の内外を問わず、他者との連携、コミュニケーションを通しての人間関係の重要性は変わらないだろうと思う。そのためには、視覚障害者自身の努力や工夫なども大切だが、善意や同情心による過剰なサポートではなく、本人の意見を聞いた上で必要なときに適切なサポートを行うこと、またそのような職場の雰囲気や態勢を作ることも大切である。  職場にいる視覚障害者に対し、はれものに触るように扱うのではなく、一人の社会人、仕事人として接することが大切である。仕事には厳しく、人間関係には温かい配慮をお願いしたい。 (石川 充英) -------------------------------------------------------------------------------- 第3章 在宅雇用への道筋  この章では、視覚障害者と在宅ワークとの関係について考察して見る。 3-1 在宅ワークの現状  ここでは、聞き取り調査の二つの事例から、視覚障害者の在宅ワークの現状を報告する。 (1) はじめに  グウグルのHPによれば、在宅ワークあるいは、テレワークとは、「情報通信技術(IT)の電子メールなどを活用し、時間、場所を柔軟に利用して、自宅やサテライトオフィス、喫茶店など普段仕事をしない場所で働く働き方」をさす、と定義されている。  そして、厚生労働省の調査では、最近、在宅ワーカーは全国で1000万人を超えているとモ書かれている。  今回、このような定義に該当する視覚障害者のリストアップからはじまり、アポイントメントを得た二人について、直接対面し、インタビュー方式で聞き取りによる在宅ワークの現状調査を行った。 (2) 調査対象者のIT機器構成  調査の対象者は、東京と内に所在する民間会社に勤務する二人の男性社員である。お二人は中途失明者で、年齢は、それぞれ、50台だ。  在宅ワークの場所はDさんが埼玉県内、Eさんが神奈川県内にある自宅であるが、それぞれ、自宅内の一室を仕事場として占用し、パソコンなど業務遂行に必要なIT機器がところせましと設置されている。  因みに、Dさんの場合、パソコン、プリンター、スキャナー(イータイピスト)、各種ソフト(2000リーダー、ボイスサーフィン、翻訳/辞書、JAWSなど)のほか、電話ファックス等、上記全て会社より支給されたものが設置されており、本社人事グループの一員として働いている。  機器導入に当たって助成制度は活用していないとのことだ。  Eさんの場合は、パソコン3台(MS−DOSが稼動するNEC98シリーズ、エプソンノWindows98、IBMノート型・Windows98)、各種ソフトウェア(オフィス2000、XPリーダー、JAWS、PC−Talker、OutSpoken、ホームページリーダー)、電話ファックスが設置されており、顧客サポートセンター コンテンツ制作やシステムのメンテナンスなどに取り組んでいる。  機器に関しては会社からの支給品と私物が混合しているという。  Dさん、Eさんの在宅ワークの経緯や職種などは以下に紹介するが、お二人に共通している仕事の内容がそれぞれ見えていたころ体験した得意分野であるということは、注目すべきではなかろうか。 (3) Dさんのケース  Dさんは現在、従業員 約720名、障害者数 本人を含む5名・うち視覚障害者本人1名のみという規模の中で働いているが、もともとは、30年以上の経歴を有する、長い海外経験のある営業マンだった。  会社創業以来はじめての視覚障害者の出現ということで、当初は会社もどうしたものかと迷ったようであるが、結果的に、通勤途上の安全性の確保、及び、海外経験を活かした社業関連の専門記事の英文和訳、並びに海外店よりの月例市況報告コメント、営業アドバイスなどの仕事を任せることになったという。  これに伴い、パソコンなどはまるで縁のなかったDさんのパソコン支援体制について、主に本社システムグループが中心になるなど、全面的な会社側のサポートにより、在宅ワークは開始されたという。  Dさんの過去の会社に対する貢献度なども背景にあったろうと推測されるが、会社側のこの協力姿勢は高く評価できると思う。  以下は、在宅ワークに至るまでの経緯だ。 1.会社側から眼科受診の助言があり、眼科で検査をしたら、いきなり、一種一級と認定されたため、役員から一ヶ月間の自宅待機命令が出されたが、休職はしなかった。 2.会社では処遇策の検討が開始され、身分は正社員、配属先は本社人事部グループなどが盛り込まれた在宅就労に関する契約書が会社側から提示されたので弁護士に相談のうえ、それに署名押印した。 3.在宅業務内容をどのようにするかは、会社にとってもはじめてのケースだったため、確定するまで2ヶ月を要した。 4.在宅就労を認めるに当たり、給与体系、退職金などについて、就業規則の改定がなされた。  このような経緯を経て、これまでの営業マンとしてのフェイス・トゥー・フェイス・スタイルの仕事から大転換して、はじめて経験することになった在宅ワークはスタートすることになったのだが、翻訳作業に取りかかろうとしても、もともとパソコンの素地がなかったこと、希望する翻訳用ソフトに出会え名かったことなどが重なり、仕事が軌道にのるまで6ヶ月間を要したという。  ただ、いきなり音声対応によるパソコンやスキャナによる文書読み取り装置などに出会ったときは感動ものだったと言う。この言葉は多くの中途視覚障害者が味わう実感ではなかろうか。  業務量は、毎日着実に遂行してゆかなければ溜まってしまい、まとめてやろうとすると良好な成果品を挙げられないほどたっぷりあるという。  就業時間9時から17時15分までを確実に厳守しながら、会社で行われる毎月一回の業務報告を兼ねての定例営業会議への出席時には、前もってメールで送っておいた「始業」、「終業」、「休憩」、「業務内容」を記載した在宅勤務表の押印した原本を持参することになっているという。  会議資料は、会社側から前もってメールで送られてくるので、なんらの支障はない。  また、月々の給与は減ったが、満足している、と明るい。 (4) Eさんのケース  Eさんは、全従業員数 約2,000名の中、視覚障害者従業員数6名の一人として、現在顧客サポートセンター コンテンツ制作部に在職しているが、この会社に入社したのは、視覚障害者になり、国立所沢職業リハビリテーションセンター(以下、国リハ)を修了後再就職して以来10年だという。  10年の間に四度ほど社内異動を経験しているそうだが、最初の配属先だったOA推進部というところで、ロータスを使った手書き処理からコンピューター処理方式のシステムを完成させたという。国リハで少しは基礎を習っていたが、プログラマーやシステムエンジニヤでもないので、システム関係については、入社後独学で本格的に勉強したという努力家だ。  現在の毎日の業務は、まず失明前の職業であった印刷関係の知識を活用し、主に支店の営業社員の情報源用に客先に行って話題になるようなネタを盛り込んだ「週刊メールマガジンの編集作成」であるという。  これは、建築関係の会社のため、建築・土木・不動産・住宅などのニュースが乗っている十何誌かの雑誌をメールやネットからチェックし必要な記事を抜き出し作成するものだそうだが、その日の夕方に送るため、午前中はこの作業に当たることにしているという。  次に、「月刊・顧客向けマガジン」の一部を作成(部数・10万部)する。  これは、会員の工務店が顧客向けに建築間径の話題プラス軽い小話を載せた会報誌であるが、こ会報用に、日々書き留めていたニュースやおもしろい話題を編集者の依頼により執筆するものであるという。  そして、社内の事務処理システムの開発・保守も行う。  これは、自らが作り上げたシステムのバージョンアップや保守、新規開発などの作業であるという。  以下は、在宅ワークに至るまでの経緯だ。 1. システム開発の業務を行っていたころの会社は、パチンコ屋に隣接しており騒音が激しいところにあったため、音声をたよりに仕事をする視覚障害者は音量を上げなければならず、大音量の中で仕事をつづけていたらついに耳鳴りがしはじめた。 2.この状況を会社に相談したところ、会社側は仕事の内容から判断して在宅でできるのではないかと勧められ、健康への配慮から第一回目の在宅ワークはすんなり開始された。 3.部署の異動によって一時、この在宅ワークは、中断することになったが、現在の部署に異動したときから再び、開始された。 4.在宅ワークを実施するにあたり、社内的制度などの改変は何もなく、ただ、Eさんにとって在宅ワークの方がいいだろうということで決められた。  社内では、システム開発者という立場の人がEさんお一人だったという事情もあろうかとは思うが、会社側の理解度の高さに加え、Eさんが強調して積極的に業務に取り組む姿勢などが会社側の信頼を得て、すんなり在宅ワークが決まったろうことが言外に推測された。  Eさんの積極的な協調性を示唆する言葉として、以下の二つが印象に残っている。 1.外注すれば相当学の開発費用が必要になるものを社内で作成することで経費節減につながっていると思う。 2.視覚障害者がではなく、視覚障害者もという視点で健常者との生合成をとりながら仕事の提案をしている。  週間メルマガの発行作業は、「主にネットからのニュース収集→蓄積→メルマガ編集・制作」と流れ、また、月間社外向け解放誌関係は、「ニュース収集→編集者へ送信→原稿依頼→原稿執筆」という流れであり、それに、Accessによるシステム開発(バージョンアップ、保守)は、「打合せ→システム設計→提案→調整→システム作成→テスト→導入→操作 指導→検収」という行程でかなりの労力を要する。  出勤簿管理方法は、当初、わざわざ家に専用のタイムレコーダーが会社から支給されたが、これはあまりに形式的なためすぐ廃止された。現在はエクセルの表で、「始業」、「終業」、「業務内容」などを記入した勤務時間管理表を記録し、報告している。  勤務時間は、原則として午前9時から午後6時までとなっているが、待遇は、年俸制度で成果主義であるので、残業しても超過勤務手当てはつかない。  年俸を16等分ぐらいにして、月々口座に振り込まれ、残額がボーナスというような形になっているという。  インタビューの最後に現在の処遇について伺ったところ、 メルマガの発行、システム管理などの業務が会社側から評価されていること、在宅ワークによる仕事の充実感などがあるのだろう、即座に「満足している」と、こちらも明るい。 (5) 在宅ワークの心構え  最後に、お二人から伺った在宅ワーカーの心構えや注意事項を記しておく。 1.在宅は周囲に同僚などだれもいないため、疎外感、孤独感が伴うので、これを克服するため、かなりの緊張感をもって、自身のコントロール、自己管理が必要であること。 2.心身の健康管理ができること。 3.ずぼらしないためメリハリをつけ、徹底的に時間管理ができること。 4.課題解決にあたっては、自分自身の努力と工夫が何より必要なこと。 5.パソコンは、特にネットにおいての利用価値があるので必需品。スキルアップの努力を怠ってはならないこと。 6.これならまかせなさいという得意分野を一つでも二つでももち、受身だけの仕事に甘んじているのではなく、IT機器を駆使して自ら発信できるようになること。  このように、自己管理能力と心構えさえしっかりしていれば、在宅ワークという業務スタイルは視覚障害者にとって向いていると言えるであろう。 (下堂薗 保) -------------------------------------------------------------------------------- 3-2 ITを利用した在宅ワークの可能性  インターネットでまとまった情報のやり取りが非常にスムーズに行えるようになった現在、視覚障害者の就労の可能性が在宅勤務という形で広がるのではないかと考えるのはきわめて自然である。  現に、今回聞き取り調査を行った中で2名が在宅勤務の方であるが、お二人ともインターネットを利用して会社と情報のやり取りをしながら業務を遂行している。  一方、雇用主側からすれば、在宅でもできる業務の場合には、通勤上の事故の可能性がなくなるという安心感もあるであろう。  ただ、一般的に考えれば、雇用主の側からは、本当に一人で仕事にしっかりと取り組んでくれているのだろうかなどという不安が付きまとうのも在宅勤務の特徴である。  そこで、ここでは、それらの問題点を浮彫にした上で、今後の視覚障害者の在宅勤務及び在宅ワークの可能性を探って見る。 (1) 雇用管理上の問題  雇用している従業員を在宅勤務させる上では、勤務時間の管理がまず問題となる。通常勤務時間をとどこおりなく業務に当たってくれているのだろうかなどという点について、全て本人からの報告を信頼するしかない。  今回インタビューに応じていただいたお二方の場合には、業務の具体的な成果によって在宅ワークの内容が確認できる仕組みが確立していた。  つまり、業務を着実に遂行しなければ報告ができないような分量の仕事が与えられており、毎朝会社から具体的な業務指示がきているので、それに目を通さなければ成果品が上げられないような仕組みになっている。このようにして、上司のチェックが的確に入る仕組みが構築されていた。  とはいうものの、やはり在宅勤務をさせることのできる従業員は、雇用主や直属の上司から見てよほど信頼できる人物でなくてはならないだろう。  ただ、この場合、目が見えないことによるハンディはほとんどない。問題は会社側から信頼されるかどうかのみである。  結局、在宅勤務に関わる問題はきわめて一般的な問題であり、視覚障害者にとっての固有の課題はほとんどないと言える。  逆に言えば、一般の従業員を在宅勤務させる風土が根付かなくては、視覚障害者だけを在宅勤務させるという形にはなかなかならない。雇用主が一般の従業員の在宅勤務に肯定的でない限り、視覚障害者にのみ肯定的になるということは考えにくいからだ。 (2) 成果主義の促進  上記のことを考えると、在宅勤務という勤務形態を促進するためには、成果主義を大きく導入した雇用形態が必要である。雇用主にとっては、数値としてはっきりと現れる成果に対しての報酬の支払いならば全く問題ないからである。  元来、完全な成果主義ならばそれはもはや雇用ではなく請負業務である。雇用という形態は、基本的には労働者の時間を拘束して、その時間を会社の指揮命令に従ってもらうというのが原則である。  業務を行っている姿を直接見ることのできない在宅勤務の場合には、この観点から「雇用という形態に適合するのか」という疑問が残る。  その意味で、視覚障害者を含めて在宅勤務という勤務スタイルを確立するためには、成果主義の賃金支払いを大幅に認める雇用制度の思い切った変更が必要であろう。  仕事を得ようとする視覚障害者の立場から言えば、雇用という形に固執せず、在宅ワークのできる請負業務を自らアピールして確保して行こうという積極的なアプローチが現状において望まれる。 (3) 在宅ワークで有望な職種  それでは、雇用されて在宅勤務をする場合であれ、または請負で在宅ワークを行う場合であれ、いずれにしても自宅にいながらにして視覚障害者が遂行していける業務を考えてみよう。  自宅に必要なIT機器とソフトウェア及びインターネット環境を整え、電話で話ができる状体を確保できれば行える出あろう業務を以下に列挙して見る。 1. ソフトウェア開発  メールで進捗状況を報告し、青果物もメールまたは郵便で送ることによって行える(実例あり)。 2. インターネットによる調査  インターネットを駆使して情報を収集し、報告書をメールで提出することによって行える。 3. 言語の翻訳  青果物を指示に応じて随時メールで提出できる(実例あり)。 4. 企画立案 5. 原稿作成  本報告書を作成する際にも、各視覚障害者の委員にメールにて執筆原稿を提出頂いている。 6. ホームページ作成  ホームページ・データの作成とそのアップロードは、自宅からでも行える。 7. 電話での苦情対応  会社から電話を転送してもらい、報告書をメールで書く形で行える。 8. インターネット・サーバー管理  サーバーの管理はインターネット経由で行える。 9. 音作り  携帯電話の着メロの作成などは、在宅で可能。 10. メルマガ作成  文書作成のみでなく、配信まで可能(実例あり)。 11. 財務分析  会社から経理データをメールで送ってもらうことにより可能。 12. 株式による資金運用  インターネット売買を利用する。 13. 特許調査  特許、実用新案、意匠登録の調査は全てインターネットで行える。 14. Eラーニングの教師  生徒とは、メールやホームページを介して情報交換ができる。  そのほかにも、まだまだいろいろな業務が考えられるであろう。  ただ、これらの業務は、もちろん会社に勤めている状体で仕事として与えられるのであれば、在宅勤務の従業員として行うことができるのだが、在宅ワークの醍醐味は、むしろ、就職していない状体でも、視覚障害者当事者の側からアプローチして請負業務として仕事をもらうことができる可能性である。  このように考えると、在宅での請負業務は、本人の意思さえしっかりとしていれば、IT記述を駆使できる視覚障害者にとってとても大きな可能性を切り開くものであろう。 (望月 優) -------------------------------------------------------------------------------- 第4章 視覚障害者雇用に向けての助言  この章では、視覚障害者を雇用するに当たって、雇用主や直属の上司の皆様に考慮していただきたい点について記載する。 4-1 雇用主から視覚障害者に求めるべきこと (1) 戦力としての視覚障害者雇用  「障害者雇用」はよく企業の「社会貢献」と言われることがある。しかし、「社会貢献」や「社会的弱者への配慮」といった考えだけでは、視覚障害者の雇用には重大な問題が予想される。なぜなら基本的には企業は「利益」を生み出すことを目的としており、その上に「社会貢献」なども成り立っているからである。  視覚障害者雇用が「社会貢献」ではなく、企業の戦力となるように、視覚障害者に対して、求めるべきことを、明らかにしておくことが重要となる。  社会貢献的障害者雇用は企業に取って、様々な問題を生じさせることがある。  人事部側が問題がないと考えても、実際に受け入れる現場ではいろいろな感情を持つはずである。障害者を「戦力」として正しく理解して受け入れる職場もあれば、「社会貢献だからしかたがない」という考えで受け入れる職場もあるに違いない。  全社の考え方が基礎となって業務が遂行されてこそ長期的且つ発展的な雇用関係が構築できる。後者の感情がベースに存在すると、「荷物をしょわされた」という考えが起きないとも限らない。 (2) 視覚障害者の意識  一方、視覚障害者自身もいろいろなタイプがあり、様々なことを考える。これは、職場側にもいろいろな考え方があるのと同様で、就職をして「視覚障害」というハンディを超えて、一労働者として職務を遂行する最大限の努力をする場合と、「企業は弱者に対し手をさしのべるのが当たり前、まして、仕事も同じである」といった障害を盾に取った甘えに基づく考えである。  前者の姿勢を持った視覚障害者は職場の中でいずれは受け入れられ、周りとのコミュニケーションも取れるようになるが、後者はかなりの問題であり、これを修正しない限り、行く末は職場環境の悪化や雇用関係の破綻につながる。  景気が良く「障害者雇用は社会貢献だ」と言っていられるうちは問題は表面化しないかもしれないが、今の時代は、健常者自分の身がいつどうなるのかわからない厳しい時代といえる。その時に業務に対して積極的とはいえない障害者がその職場にいたのでは、その職場の雰囲気は悪くなり、職場と障害者の関係は難しいものとなる。  しかし、人事部側ではその内情まで理解することは難しく、現場でも「障害者が仕事をしない」と言った直接的な表現をすることには勇気がいることだと思われる。つまり、障害者自信の固有の問題があったとしても、「障害者差別」と思われるのが怖くて、誰も本当のことは言えないからである。このような関係では仕事が円滑に進むはずがない。  このような場合、障害者自身も職場に行くことがストレスとなり、その職場に対する「障害者への理解がない」と言ったような新たなマイナス意識を生み出し、複雑な問題に発展して行くことが予想される。  このような状況にならないように、雇用主から視覚障害者に対して、最初から言うべきことを言う必要がある。 (3) 最初に確認すべきこと  一番目として、視覚障害者を雇用する上での企業の考えをきっちり本人に理解してもらうことが重要である。  「障害者雇用」という形式であるが、あくまでも給与は労働の代償として支払う物で、その人なりのベストを尽くした「結果」が評価の対象であるということである。  この「結果」には、採用した視覚障害者の専門的な能力を生かしたことによる「直接的な評価」と、視覚障害者がきっちりと仕事をすることにより、周りの健常者に見えない「プラス効果」をもたらすという二つの点が上げられる。  これを本人に正しく理解させることこそ、障害者雇用がうまくいくかどうかの分かれ道になって行くことになる。  「健常者」も「視覚障害者」も一人の人間としては対等である。しかしながら、一般的には「健常者の社会」で「視覚障害者」は不自由をし、何も言えないことが多い。つまり、視覚障害者から見た場合には、常に「健常者は障害を理解してくれない存在」であり、またそのように思いこんでいるのが多くの現状だからである。  しかし、就職をしてしまうと、この立場は逆転する。直接視覚障害者に対して「仕事のミスの指摘」などができるだろうか?おそらく「障害を持っているのだからしかたがない」といった感情になるのではなかろうか。  これが長く続いて行くと、健常者側は「仕事を頼んでも手がかかる」といった感情に変わってくることになる。つまり、健常者が強く視覚障害者が弱いという立場ではなく、障害者に対して物が怖くて言えない健常者は弱くなり、何でも言う障害者が強くなってくるわけである。  企業側から雇用の考えを説明することにより、結果として、視覚障害者が、直接的であれ、間接的であれ、企業目的達成のための戦力として扱われているという自覚が生じ、視覚障害者自身のモラール(やる気)を向上させ、そのことが、他の従業員のモラールをも、向上させる。  その結果として、モラールの向上のスパイラルといった良好な職場環境が実現するのではなかろうか。 (4) 業務適応は自己責任  二番目として、本人の能力やその能力の業務への適応は本人自身の問題であるという点である。  これは一般的には当たり前のことであるが、視覚障害者雇用という立場ではやはり難しい問題の一つと言える。ある意味、最初から「弱者」を採用している訳であり、どこまで「能力」を求めて良いのかの程度が計りにくいからである。  仕事は現在その人が持っている能力や技術だけでできるものは少ないと言える。入社後、会社の業務内容や営業品目を覚えるなどといった追加の知識が必要となる。  健常者であれば、雑用をさせながら、徐々にこれらの知識を高めて行くことが可能だが、視覚障害者の場合には、「自然に覚える」という形態は向いているとは言えない。  視覚障害者に対し、実際に雑用をやらせながら自然にこれらの業務や製品知識などを高めさせていくことは難しい。よって、個別の社内教育をできる範囲で行うべきではあるが、それと同時に、本人の責任を自覚させるような工夫が必要である。  基本的には、視覚障害者に対しては最初から具体的な業務内容を決めて取り組ませることが望ましい。この時、本人のIT能力ではなく、業務に対する知識が課題となってくる。  この「業務知識の習得」は障害があるなしではなく、本来その人の仕事に対する姿勢の問題であり、視覚障害者に対し、「自己スキルアップ」、「業務への適応」は障害とは別の問題と位置づけ、自ら職場の従業員達と積極的にコミュニケーションを取り、自分で解決することが求められると指摘することが重要である。  これを認識させないと、本人が能力不足はすべて「会社の責任」と思いこむ危険性がある。 (5) まとめ  就職はその職場で働く「スタートライン」に立ったに過ぎない。しかし、障害者の多くはこの「スタートライン」を自分は評価されたという「ゴールライン」と勘違いしてしまう場合が少なくない。  健常者であれ、障害者であれ、企業が戦力として処遇しているのなら、自らの能力を磨かなければ企業における存在意義は消滅するのは当然の結果である。  上記の二つの点を明確にすることにより、障害者自身の「甘え」がなくなり、現場への適応、コミュニケーションにも良い結果をもたらすはずである。  人はつい、自分に甘くなる。まして、障害を持っていれば、「これは目が見えないのだから、自分の責任ではない」このように考えてしまうものである。  このような考えを起こさせてしまった時点で、周りとのコミュニケーションはうまくいかなくなり、その修正は非常に難しいものとなるだろう。  「できない」ということを障害者自身がどのように明確にし、周りの理解を得ると同時に自らも最大限の努力をして協調していけるのかが非常に大切なことである。 (荒川 明宏) -------------------------------------------------------------------------------- 4-2 視覚障害者の限界  視覚障害者はITを用いることにより、様々なことが可能となった。  しかし、すべてが可能となり、障害を克服し、健常者と同じ環境で、同じ早さで行える訳ではない。  ここでは「視覚障害者の限界」について説明する。 (1) ハンディの考察  誰でも簡単に試すことができる、「視覚障害の不自由な点」を考えて見よう。  例えば、事務机が一つ目の前にあったとする。その机の上には何も乗っていない。その机のどこかに10円玉を1枚置く。この10円玉を探して見るという単純なものである。  目が見えていればそれは何でもないことで、難しいことも何もないはずである。  それでは、目を閉じて10円玉を探して見よう。  では、目を閉じた状態で別な人に10円玉を置いてもらい、同じことをして見よう。見えない状態で歩行をする訳ではないので、ただ、単純に手で机の上を触って探すことができる。危険なこともないので、誰でも試すことができる。  10円玉は簡単に見つけることができただろうか?  この机の上にコップやノートなどを置いて、同じことを試して見よう。  いずれも時間をかけて、順番に机の端から端まで触って行けば必ず見つけることができ、難しい事は何もない。  しかし、10円玉を手に取るまでの時間を比較して見よう。  目で見て取るときと、手で探すときといったいどれくらいの時間差があっただろうか?  これが視覚障害者に取っては仕事をする上での「見えない」というハンディ」つまり「壁」となる。決してできない訳ではないが、「時間がかかってしまうという「ハンディ」である。  一般入試や資格試験などはこのハンディを考慮して、通常1.5倍の試験時間を取っている。  このことを理解した上で、実際に仕事ではどのような限界があるか、どのような仕事が視覚障害者には苦手なのかを考えて見よう。 (2)環境の変化による効率性の低下  「視覚障害」は環境の変化に対する順応性が悪いと言われる。  先の10円玉の例でいうと、何も置かれていない所からコップやノートなど、障害物を置くことにより、今までとは少し違った探し方が必要となる。  しかし、この問題はなれること、つまり時間が解決してくれる。  例を挙げて考えて見よう。  視覚障害者の社員Aさんがいたとする。このAさんの仕事は、インターネットを使って各新聞記事を読み、そのAさんの職場に取って参考になる点、ライバル会社の情報などをレポートにまとめ、同僚に情報提供している業務をしていたとしよう。  このAさんの仕事に取って、一番困ることはなんだろうか?それは毎日見ている新聞などのホームページのレイアウトの変更である。  机の上の例で言えば、障害物と10円玉をいつも同じ所に置けば、10円玉を手に取る時間もどんどん短縮される。最終的には机の上を触らずに、直接その付近に手を持って行き、いきなり手に取ることが可能になる。  次に、なれた所で、何も言わずに今度はその10円玉を10センチ移動してみよう。  僅か10センチの違いでも探すのには時間がかかってしまい、場合によっては端から端まで探さなければならなくなる。  このAさんの仕事では、必要な情報はどこを見れば良いのか、日常業務でなれているので、普段は「目が見えない」ということをあまり意識せずに業務をこなすことができる。しかし、「ホームページのレイアウト変更」という、ちょっとした変化で、今までのなれは通用せず、また自分なりに一からなれて行く必要があり、また元の状態の戻ってしまい、効率の良い業務ができるようになるためには少し時間がかかってしまうこととなる。  見えている人に取っては10円玉の10センチの移動やレイアウト変更は全く意識することもなく、「そう言えば変わったのかなあ」という程度の些細なことであろう。しかし、視覚障害者にとってはこれは大きなできごとなのである。 (3) グラフィカル処理やイメージ処理の限界  ITを用いた業務であっても、視覚障害者が克服できない問題がある。  それは、グラフィカル処理、イメージ処理などである。  「パソコンを使って「文字」を書くことは可能であるが、「絵」を書くことは残念ながら視覚障害者にはできない。また、文に絵を組み合わせて、「良いイメージの物を作成する」と行った業務も現実的に難しいものがある。  以前視覚障害者は「コンピュータ・プログラマ」として多くの人が就職をしたことがある。また、それは「視覚障害者の仕事」として、かなり定着した。しかし、最近ではこの「コンピュータ・プログラマ」としての就職は困難になりつつある。  その原因は幾つかあるが、その中の最も大きな要因として、「グラフィカル処理」が上げられる。  昔のコンピュータまたは端末は「絵」はなく、文字だけが書かれていた物であった。ところが現在では、「Windows」の画面に代表されるように、「絵」で表現するのが一般的となっている。  この「絵」を作ることができないため、また、この「絵」を使って開発をしなければならなくなったために、「コンピュータ・プログラマ」での就職は難しくなった。  視覚障害者は「知的業務」にはハンディがなく、「コンピュータ・プログラマ」のような仕事は本来向いている。  また、現在は「IT技術者の不足」という現状があるため、視覚障害者も「IT業務」に携わるのが理想といえる。しかし、この「グラフィカル処理」が残念ながらハードルとなっている。  視覚障害者は「ホームページ作成」や「報告書作成」などの業務を行うことは十分に可能であるが、実際にその業務を与えるときにはこの「グラフィカル処理」に配慮する必要がある。  上記のことからも推察できるが、内容のみを視覚障害者に作成させ、後から別な人がレイアウトなどを付けるといった業務の分担は、視覚障害者の業務効率を大幅に向上させることになる。 (4)情報取得の時間の制約  ITの利用により、視覚障害者に取っての情報不足もある程度解消されてきた。ホームページからの情報取得や電子化された情報を音声で聞くことにより可能になった訳である。  しかし、「見る」と「聞く」では決定的な大きな違いがある。それは「机の上の例」の話に置き換えて見ると、「どこに何があるのかすぐにわからない」という点である。  目で見れば、自分の目的とする情報がこのページに書かれているのかどうかはあまり時間をかけずに判断することができる。しかし、これを耳で聞く場合にはそう簡単ではない。そのページに書かれている情報を音声で聞いてから初めて、必要な情報があったかどうかが理解できるからである。  このように、内容を理解するためには、健常者に比べて時間がかかってしまうというのが実情と言える。  また、電子化されている情報であっても、音声読み上げでは理解するのが難しいものがある。  例えば、「テレビ番組表」がその代表例として上げられる。これは現在インターネットで簡単に見ることができ、もちろん視覚障害者も音声化ソフトなどを用いることにより、ページの内容を音声で読ませることができる。しかし、表になっているので、中身だけを順番に読み上げられても、実際に必要な項目が、横軸、縦軸のどこに位置しているのかを理解することは大変困難である。つまり、この番組は「何時から何時まで放送されるのか」と行った重要なことはわからないことになる。結局音声で読むからと行って視覚障害者がわかるかどうかは別問題となる訳である。  最近ヘルスキーパー業務で、視覚障害者もグループウエアを使って、予約管理などをしてほしいと要望されることがある。「ITの現状」で紹介したように、ある環境が整えば、この「予約管理」も音声で操作することは可能である。しかし、「テレビ番組表」の例で上げたように、「表」を瞬時に理解することは困難と言える。電話で来た予約に対して、パソコンを操作しながらその時間が空いているのかどうかといった判断は単純なことであるが、視覚障害者が苦手とする業務の一つといえる。  このように、「スピード」を要求される仕事については、どの程度対応できるのかは十分考慮する必要がある。  これは、本人の能力といった問題ではなく、「視覚障害」という「障害」のために共通の問題と言えるからである。 (5)単独歩行  就職を希望する視覚障害者は単独歩行には問題がない。視覚障害者を採用する場合、「通勤途中事故などは起きないだろうか」と行ったことを心配するケースが多々ある。しかし、これは職場までの歩行訓練の実施などにより、安全に歩行することが可能である。  しかし、この単独歩行は普段行き来する所でのみ通用する。  例え同じフロアーであっても、はじめて別な部署に行く場合などは誰か周りの人のヘルプを必要とすることがある。ただ、これも何度か繰り返すうちに、特別な訓練をうけなくても、単独で移動できるようになる場合が多い。 (6) まとめ  「視覚に障害を持つことにより、様々なハンディがある。  しかし、このハンディを列挙したのでは実際に仕事も生活も成り立たない。  必要なことはこの「できないこと」に対して視覚障害者自身が何とかしようとする積極的な努力や工夫である。  「道がわからないから歩かない」のではなく、「道がわからなくても周りの人に聞いて行く」、この気持ちが大切と言える。  周りから視覚障害者に対して配慮をすることよりもむしろ、本当に困る点を本人の口から訴えさせる雰囲気を作ることが職場での業務連携を正常に保ち、視覚障害者本人の仕事をうまく進めさせていくポイントである。  また、このコミュニケーションにより、「視覚障害者の限界」も変わってくるはずである。 (荒川 明宏) -------------------------------------------------------------------------------- 4-3 視覚障害者の可能性  視覚障害者は目が見えないあるいは見えにくい。  視覚障害者の特性は元来それだけである。  個々の個人を観察すれば、もちろんほかにもいろいろな個性や特徴があり、それらは視覚障害による特性ではないかと考えられる面も多々あるであろう。しかし、それらは、人間関係や社会環境がゆえに築かれてきた個性や特徴であり、職場においてはその人に対して適切な対応をすることにより、その人の個性や特徴を業務遂行の上でプラスになるように導くことができるに違いない。  このような観点から、ここでは、視覚障害者を職業人として育て、業務遂行において最大の可能性を引き出す方法について検討して見たい。 (1) 限界を考慮した業務分担  前項でも述べられているように、視覚障害者にはその特性、つまり、目が見えないあるいは見えにくいという特性からくる限界がある。視覚障害者の業務範囲を定めて指示するとき、この限界を考慮した与え方がまた逆に可能性を引き出す与え方にもなる。  前項からの繰り返しになるが、文章をまとめるのが得意な視覚障害者を雇ったならば、報告書や企画書を作成させる際、最終的な完成品を全て一人で作ることを求めないのも適切な方法の一つである。文章作成部分のみを担当させて、それに対して画像を差し込んだりレイアウトを見栄えの良いものに調整するといった作業は、別の従業員に分担させるようにすれば、その視覚障害者の文章力はさらに向上し、短時間のうちに内容のある文書をどんどん完成させる人材になるかも知れない。  ただ、上記の例の場合、視力やITスキルの程度によっては、画像対応やレイアウト調整にもあまり負担を感じない視覚障害者もあるかも知れない。その意味で、一度は本人の自己評価を聞いて、できそうならばやらせて見るのも良い。しかし、この場合、できたとしても業務効率上仕事の流れの中に組み込むことができないと判断したときには、きっぱりとその業務からははずすべきである。 (2) 平等な関係と対等な関係  人間は誰しも他人と平等な関係でありたいと思う。だが、もしもこの「平等」という言葉が職場において同じ方法で仕事をこなすことを意味しているのであれば、視覚障害者の従業員にとって大変不利な職場風土といえる。  そのような風土があれば、視覚障害者は無理をしてでもほかの目の見える従業員と同じ仕事を同じ方法でこなそうと考え、弱い視力をさらに落としたり長時間労働をしたりということにつながる恐れがある。  このような」無理をする」努力は、一人の前向きな従業員の姿勢として評価することはできるが、それをそのままにしてしまう上司や職場の管理者は全く評価できない。  本来、会社は利益を上げるために従業員を雇用しているのであり、その意味からも、効率の悪い仕事を無理をして行っている状態を放置してはならない。その業務を効率よく行えるような環境整備、つまり、IT機器の導入や業務分担の変更などを配慮し、ほかの従業員とは異なる業務分担や作業スタイルで仕事をこなしていくことを本人及び周りの従業員に周知・理解させていく必要がある。  このような、異なるやり方や個別の業務分担ではあるが、結果として会社に対して同等の経済的貢献をするということを目指す風土は、「平等」という言葉よりもむしろ「対等」という言葉の方が適切なように思う。  やり方は違っても同等の経済的価値を生み出すことを奨励する「対等な関係」を基本とする職場風土は、視覚障害者の可能性を大きく引き出す基盤となるであろう。 (3) 可能性を引き出す秘結  上記の考察から、視覚障害者の業務遂行上での可能性を引き出す秘結として、以下の点を上げたい。 1. IT環境整備  まず、IT環境の整備は視覚障害者の業務遂行の効率を上げるために必須である。  最近は、視覚障害者が使えるという観点からも、新たなIT技術に対応した機器やソフトウェアがぞくぞくと登場している。  これら機器やソフトウェアの選定に当たっては、本人や紹介してくれた学校やリハビリテーション関係者の意見をよく聞いて整えるのが良い。同じ機能を持つ機器やソフトウェアでも、本人の慣れやこれまで受けてきた訓練の内容により、その時点での作業効率が大きく異なることもあるからだ。  ただし、本人がこれらIT機器やソフトウェアに関して特に主張しない場合には、会社側でよく調査して、期待する業務にもっとも適したIT環境を整備する必要がある。 2. 職場での本人の位置付けの確立  他の従業員と同じ仕事を同じスタイルでこなす必要はない。だが、会社に対して同程度の貢献をする必要はある。  このような風土での本人の位置付けを行うべきであろう。これは、職場の同僚達にそのように理解させるのみならず、本人にも同様に理解させる必要がある。  本人は、就職直後はほかの従業員と同じ仕事を同じやり方でこなすことが一つの目標のように感じるのが一般的である。よって、やり方が違っても良いという点は本人にも伝える必要がある。  ただし、ここで一つ課題を指摘しておこう。「やり方が違っても良い」ということのみを強調すると、視覚障害者本人のわがままを助長する危険性がある。あくまでも「やり方は違っても良いが、成果はほかの人たちと同じだけ上げてもらわなくては困る」というスタンスを堅持すべきである。  業務スタイルの独自性と成果の同等はいつもセットでなければならない。 3. 適切な業務分担  上記の風土から、目の見える従業員同士での業務分担とはまた異なる形での分担が模索される。  会社の利益という観点から言えば、一人一人で別々に作業している状体よりも、二人が連携したときにはより良質で多くの仕事をこなせれば良いわけである。そのためにはどのような役割分担が良いのか、視覚障害者をチームに受け入れた場合には、柔軟に思考すべきである。  なお、この件に関しては、また項を改めて考察する。 4. 効率の上がらない業務は与えない  上記のこととも関連するが、本人が行ったのでは効率の上がらない業務は与えるべきではない。  いくらできると言っても、同僚が行えば1時間でできる作業を、視覚障害者が行った場合には3時間かかるとすれば、会社としては2時間も無駄にする。むしろ、その3時間を視覚障害者本人が得意な業務の時間に当てた方が、会社の利益にもなるし本人の可能性を大きく伸ばすことにもつながる。  人は誰しも得意な作業を続ければ、どんどん効率を上げ、可能性をさらに発展させる。  視覚障害者は目が見えないあるいは見えにくいことによって、何でも屋にはなりにくい。  得意な分野を徹底的に追求させることによってその人の可能性を伸ばし、スペシャリストとして育てて欲しい。 (4) 活躍の実例  この項の最後に、本人の可能性を十二分に発揮して活躍している視覚障害者の実例を少しだけ列挙しておこう。 1. 電算システム管理者として働くAさん  C社は従業員数250名を越す小売業を営む会社。  全盲のAさんはその電算管理システムの責任者で、同社の販売と経理に関わるデータベースを全て管理している。  AさんなしにはC社はなりたたない。 2. ITコンサルタントとして活躍するBさん  IT関係のコンサルティングを行っているA社に勤めるBさんは強度弱視。  ホームページのユニバーサル・デザインについて深い知識を有し、A社にとってなくてはならない存在。 3. 営業マンに情報提供をするEさん  D社に勤める全盲のEさんは、メルマガを編集し、自社の営業マン達に直接メール送信している。  Eさんが収集し、発信する情報が、D社の営業戦略の基盤を強固にしている。 4. 翻訳者として働くFさん  Fさんはある通信社で外電として流れてくる英文のニュースをほとんどリアルタイムに日本語に翻訳している。  そのベースには、最適なIT機器の導入と業務の結果に対して厳しくチェックする職場風土がある。 (望月 優) -------------------------------------------------------------------------------- 4-4 適切な設備投資 (1)はじめに  視覚障害者の就労を、効率的かつ、安全に遂行するためには、当該障害の特性に適合したサポートが不可欠である。  そのサポートには、大別すると、人的サポートと物的サポートがある。  ここでは、物的サポートのうち雇用主の行う障害補償のための設備投資について述べる。  ここで、視覚障害補償のための設備投資とは、主に、雇用側が行う視覚に障害のアル従業員をサポートする目的で実施される物的環境整備のことを意味するものとする。  すなわち、いかなる物的環境整備を実施すれば、視覚障害者の能力を余すことなく発揮させ、組織の戦力として有効に機能させることができるかということである。  本節では、サポートの局面を、業務上のコミュニケーションと移動に限定して、どのような環境整備が必要かを検討する。  これは、業務の態様にかかわらず、必要不可欠な部分であるからである。  また、あくまでこの環境整備は、雇用主が実施するものであり、各組織の態様によって多少の差はあるが、その環境整備に当てることのできる支出学には制限があり、制約的である。  そこで、本節では、上記制約を考慮に入れ、以下検討する。 (2)業務上のコミュニケーションについての環境整備  ここでは、当委員会の実施したアンケートの回答結果を踏まえて、環境整備の現状と、あるべき姿を、検討する。  視覚障害者は、業務上のコミュニケーションにおける文書の作成及びその読みの局面において、障害の程度により、その内容には差はあるが、何らかの補償が、必要である。  その補償に、もっとも有効に機能するものが、ITである(詳細については、第1章を参照のこと)。  そのうち、特に、スクリーンリーダーは、視覚障害者の、文書作成と、その読みに画期的に貢献した。  すなわち、スクリーンリーダーは、まったくディスプレイに表示された文字を読むことのできない視覚障害者に、文書作成、Eメール、インターネットをある程度実施可能な環境をもたらしたのである。アンケートにおいても、文書のやり取り、日常業務の連絡等には、このスクリーンリーダーを使用した結果によるEメール、文書作成が実施されており、ある程度の満足を得ている。  ただ、アンケートにおいて、会議資料の提供において、相対的に、視覚障害者の満足感は少ないという結果がうかがわれた。これは、会議中に使用する資料として通常の活字文書がほとんどである事に起因するものと思われる。特に、企業勤務者においては、「点字文書による会議資料の提供あり」という回答は、1件のみであり、点字プリンタにより、点訳文書は、作成されていないのが実情である。  ここが、現状なのではないか。すなわち、スクリーンリーダー等のソフトウエアによる環境整備は、比較的予算において許容しやすいが、点字プリンタ等は、許容が難しいのではないかと思われる。  では、IT環境整備のための初期支出学の総額は、具体的には、どの程度なのであろうか。  視覚障害者を雇用している雇用主へのアンケートによると、50万円以上が、11社、、50万円未満20万円以上が、6社、20万円未満が、3社、初期投資額0が4社であった。  支出内容は具体的には不明であるが、50万円以上が、約4割、50万円未満が、6割ということになる。これは、初めて視覚障害者を雇用しようとされている企業にとって、アル朱の指針になるものである。すなわち、視覚障害者雇用の実績のある企業が、視覚障害者を雇用することによる効果と、そのコストを比較衡量した結果の意思決定に基づくものであるからだ。  初期投資において、この環境整備に関する意思決定を行う際には、雇用主側は、視覚障害者にとって、どのようなものが必要であるかという情報を、適切に把握しなければならない。このためには、視覚障害者本人からの聴取やリハビリテーション施設、職業訓練施設、教育機関等からの情報収拾が必要である。特に、視覚障害者本人からの聴取は、障害の程度によって個別性があるということ、聴取と同時に、雇用側の事情をも説明できること等の理由により、重要である。  ここで、視覚障害者本人も、必要なものを具体的に、できればその金額をも含めて、提示する必要がある。すなわち、どのようなものが、どうして必要か、それはいくらか刈るのかを、明確に情報提供することにより、雇用主側の理解を得られ、業務遂行にとってより良い環境が創出できるからである。  そして、このプロセスを経て、環境整備の意思決定において、重要な要素である効果の評価をも同時に行い、IT環境整備投資額を決定する。この決定による環境整備が視覚障害者の満足を得られるものであれば、適切な投資がなされたといえる。なぜなら、その投資は、雇用主側から見ても、適切な意思決定プロセスを経ており、経済的合理性が満足されているからである。  このことは、ITが急速な進歩を遂げている現在において、初期投資においてのみ限定されることではなく、その後の環境整備においても、該当するものである。  初期投資威光の環境整備においては、すでに、視覚障害者の業務遂行の実績を、雇用主側は把握している。これは、視覚障害者雇用による効果の評価に強く影響し、結局、環境整備の許容額2影響する。換言すれば、適切な環境整備は、視覚障害者の実績如何にかかっているという側面もあるということである。  一方、前述の意思決定プロセスにおいて、雇用主は、視覚障害者雇用による効果の評価にあたって、視覚障害者の業務遂行自体から直接得られる効果のみではなく、他の従業員に対するプラス効果をも、その評価対象とすべきである。ここに、視覚障害者雇用の特性があるのである。 (3) 移動についての環境整備  初めて視覚障害者を雇用する企業にとっては、「通勤は、どのようにするのか。」「社内での移動は、どうするのか。」といったような不安を持つのは、当然のことであろう。  視覚障害者にとって、特定の場所から、特定の場所への移動は、まったく見えない場合であっても、適切な歩行訓練を行えば、多少の個人差はあるであろうが、十分に可能である。ただ、その移動を安全かつスムーズに実行ならしめるには、環境整備が望まれる。  具体的には、経費のかかる設備としては、音声案内つきエレベータや誘導ブロックの設置、あるいは建物付属設備の改良を伴うものがある。一方、エレベータの階数ボタン横への点字表示、各執務室のルームナンバーの点字表示などは、きわめて軽微な支出のみで実施できる。  後者の場合は、社屋を賃借している場合は、オーナーへの許可申請等の問題は生じるが、それ以外は、さほど問題なく実現できると思われる。そして、その効果は、視覚障害者にとっては、その支出額の軽微さからは、考えられないほど多大なものなのである。  また、前者の建物等への改良を要するものについては、いくつか難しい問題が存在する。それは、いずれも工事が必要であるという事、さらに、それが賃借形態であれば、企業自体の意思決定の枠外の問題となる事からである。  すなわち、改良工事が不可欠であり、相対的には支出額は、多大となろう。また、その改良工事は、どのように行うのか、つまり、1部の改良でよいか、全面的な取替えとなるのか等の検討が必要である。  さらに、社屋が賃借の場合は、当該企業の意思決定のみでは何ら実行はできず、あくまでも、オーナーへの要請を通じて実行するしかない。  移動のための環境整備の意思決定は、前述したIT環境の場合と同様に、基本的には、コストと効果の比較衡量によって行われるが、それに加えて、上記の実行性に関する検討が加わる。  短期的には困難であっても、長期的には実行可能な場合は存在すると思う。例えば、社屋の前面リニューアル計画に基づく回収と同時に音声機能を敷設するとか、賃借契約の更新時に、オーナーへ要請するとかである。雇用主側が、視覚障害者のニーズを認識して、合理的と判断していれば、いずれ、解決できる問題であろう。  結局、ここにおいても、雇用主側と視覚障害者本人の、密なるコミュニケーションが前提となる。 (4)むすび  上記で検討した、適切な環境整備を実行することにより、視覚障害者は、その業務を、安全に、かつスムーズに実行することが可能となる。それは、当然に、人的なサポートを得ることによって、さらに効果的に機能する。  適切な環境整備がなされた場合、視覚障害者自体の業務を、直接的に効率化するばかりでなく、視覚障害者に対する雇用主側の姿勢が認識できることにより、視覚障害者のモラールを向上させる側面も見逃せない。そして、このことは、視覚障害者のみではなく、他の従業員のモラールにも効果的に作用する。  すなわち、他の従業員が視覚障害者の高いモラールの基での業務遂行に触れることにより、自らのモラールが高まるという側面と、音声案内付きエレベータ等の敷設により、雇用主側の視覚障害者への取り組み方が他の従業員にも理解できることにより、モラールの向上に機能する側面である。  適切な環境整備は、以上のような良好な職場環境をもたらし、組織目的の達成に直接的にも、間接的にも効果をあげ、もって視覚障害者の当該組織における戦力としての存在意義を、確固たるものとする。これは、視覚障害者の長期的雇用と、視覚障害者雇用の機会拡大につながるものである。  また、障害者雇用のための環境整備に対する公的助成としては、第一種及び第二種障害者作業施設設置等助成金があり、各地の雇用促進協会において実施されている。公共職業安定所所長の意見書が必要であるが、助成要件等を充たせば、一定の限度額の下、支出額の3分の2を助成される。この制度の利用も、環境整備の促進に有効である。 (大橋克巳) -------------------------------------------------------------------------------- 4-5 人的協力と業務分担  これまでにも述べてきたように、視覚障害者には目の見えるワーカーとは別の観点から手助けが必要な場合がある。また、独力でできても効率がよくない場面もある。  ここでは、これらの視覚障害者の特性に対応する良い手段を考察して見る。 (1) 事務職と文字処理  視覚に障害がある者が働く上での一番のウイークポイントは文字処理、特に紙ベースの書類の処理全般である。  具体的に言えば、仕事上、目を通す必要がある様々な紙ベースの書類の読み下し、あらかじめ提携が決まっている領収書、仕事上使用して発生した伝票、その他仕事で必要な様々な定型書類への書き下しなどであり、これら一般事務職においては当然のごとくこなしている一連のルーティーンワークの中にも困難な場面が出てくる。  もともと、IT機器が全く利用できなかった30年前であれば、これらの文字処理場面では、全面的に誰か見える人のサポートを受ける必要があった。  現在は、ITの利用により、そのうちの多くの場面を視覚障害者が独力でこなせるようになってきている。  IT機器の利用はこれまでにも述べてきたように、工夫次第で様々なルーティーンワークに取り込んでいくことが可能である。IT機器を仕事のどのような場面で有効利用するかを考慮して仕事の流れを構築していくならば、事務職のルーティーンワークの大半はこなしていけるということもお分かりいただけたと思う。しかし、特に事務職という専門性の問われない職種に従事する視覚障害者の場合はIT機器の有効利用だけでは、職務が完結しないことが考えられる。そこで、不可欠なのが職場での人的協力である。IT機器の活用と併合して人的協力を仕事のどの場面で取り入れていけるかが、仕事の完成度、職域の幅の拡大につながるキーポイントになるであろう。 (2) 企画立案  一つ、取引先に対する企画書の作成を例にとって、どのような人的協力や業務分担を行えば良いのか考察してみよう。 1. 企画検討  企画内容を熟慮・検討する。 2. 書き起こし  検討した内容を自分にとってわかりやすい形で書き起こす。  全盲者の場合には、点字板や点字電子手帳を用いて、点字としていったん考えをまとめることもある。 3. 文書作成  書き起こした内容を、今度は人が読んでも理解できる形式のデータ、つまりテキストファイル、ワード・ファイル、エクセル・ファイルまたはHTMLファイルなどに書き起こす。  この作業はパソコンで行う。 4. データベース化  作成した文書を、共有ネットワークに上げ、社内データベースに組み込む。  社内LANの端末として視覚障害者のパソコンも接続されていれば、独力で行える。 5. 企画書作成  上記の文書を、レイアウトの体裁を整え、必要な個所に必要な図表や絵または写真などを織り込んで、取引先に提示できる企画書に仕上げる。  上の業務の流れのうち、1.から4.までは、IT環境が整備されていれば、間違いなく独力でできる作業である。  問題は5.である。  どの程度の体裁が要求されるのか、絵や写真を織り込む必要があるのかなど、書類の性質によって、あるいは視覚障害者といってもその視力の程度やITスキルのレベルはどの程度なのか等の要素によって、これを独力でこなせるかどうかが決まってくる。  しかしながら、業務としてこの作業を位置付けたとき、その青果物の質と作業効率が当然問われる。  この観点から考えると、たとえ全盲のスタッフでこれを独力でこなせる者がいたとしても、5.の部分は目の見えるスタッフに協力または業務分担させることをお勧めする。  もしもその全盲スタッフが非常に企画力のある人手あり、文章力にも長けているとすれば、自ら5.を行う間に、もう一つの価値のある企画を立案するに違いない。 (3) 自然な協力  視覚障害者はご存知の通り、根っからの情報障害が仕事を行う上で大きな障害になっている。  今まで社会経験、職場経験が豊富で突然視力を失った方と、生まれつき視覚障害を持つ方とは少々個人差はあるにせよ、仕事に必要な情報を普段からいかに取り込んでいくかは業務の出来不出来を大きく左右することにつながる。  例えば、商品の営業を行うとき、営業先に自力で行くことは十分にできるとしても、その場で資料を見ながら説明するということができないので、商品知識や、その他その職種に関連する知識は前もって下調べして点字などでメモしていくか、頭に入れておかなければならない。そういった立場に立たされたときは、即対処出来ない視覚障害者はどうしても不利な状況におかれてしまうのである。  これら業務遂行に対するデメリットの解消はどのようにすれば良いのだろうか。まずは、本人が日ごろからインターネットなどを活用して必要情報を取り入れる努力をするということが必須である。  それに加えて、本人の障害を考慮して、回りの同僚達が有益だと思われる情報を言葉を返して提供する、もしくは、その仕事に関連する書籍やHPのアドレスを紹介するなどの行為も、視覚障害者スタッフの作業効率を高める手助けとなる。  特に事務職の場合には、大きな企画を一人でこなすということはあまりなく、グループで取り組むのが普通であろう。このような場合、その仕事にかかわるメンバーは、日ごろから視覚障害スタッフに対する情報提供を自然な形で仕事の一部としてこなしていく協力体制が確立していれば、その部署全体の効率も大幅に上がる。  ただし、どんなことについての情報が必要か、どんな場面での協力が欲しいかなどについては、一般的に晴眼者には理解されにくいので、視覚障害者本人は、周りの人達に対する適切な働きかけを常に行うことが重要であり、そのようなことのできる職場風土を確立するための心配りも雇用主または職場上司にとって必要なことである。 (4) 業務分担としての位置付け  上にも述べたように、視覚障害ゆえにできない部分あるいはできても効率の上がらない部分に関しては、業務分担として別のスタッフが負う仕組みを作ることがもっとも好ましい。なぜならば、効率の上がらない業務をほかのスタッフに分担してもらうことによって自分の専門業務の効率を上げることができ、会社に対しての貢献を実感できるからである。  貢献を実感できればやる気がますます盛り上がる。やる気が高まればさらに生産性が向上するといった具合に、良い方向に回転し始めるからである。  視覚障害者が活躍できる適切な業務分担と、上記3項で述べた自然な形での協力がマッチしたとき、その視覚障害者自身の作業効率はもとより、その彼または彼女を含む職場全体の業務もきわめてスムーズに流れ、効率の良いものになっていくことは間違いない。 (堤 由紀子、望月 優) -------------------------------------------------------------------------------- 第5章 調査の評価と分析  この章では、今回のアンケート調査の結果とその分析を報告する。 5-1 働く視覚障害者向けアンケート結果  企業または施設で働いている視覚障害者に対してアンケート調査を行った。  企業で働いている視覚障害者に対してはメーリングリストでアンケートへの協力を呼びかけ、30件の回答を得た。  施設で働いている視覚障害者に対しては、日盲社協加盟のうち163施設にフロッピーディスクにアンケート内容のテキストファイルを収めた形で送付し、55件の有効回答を得た。  以下、企業勤務者と施設勤務者に分けてその結果を記載し、最後にその両方の回答をあわせた結果を記す。 ---------------------------------------- 1. 企業勤務者 ---------------------------------------- A ご自身のプロフィールについてお尋ねします。 a. ご年齢をご記入ください。 10代:0 20代:2 30代:12 40代:10 50代:6 60代:0 70以上:0 b. 性別をご記入ください。 男性:24 女性:6 c. 視力をご記入ください。 1.全盲:11 2.0.01以下:8 3.0.05以下:5 4.0.1以下:3 5.0.3以下:3 6.それ以上:0 d. 現在の職種をご記入ください。 1.プログラマー:6 2.経理:1 3.施設職員:3 4.営業:2 5.ヘルスキーパー:3 6.理学療法士:1 7.事務:10 8.技術職:2 9.公務員:3 10.サービス業:0 11.司書:0 e. 現在の企業への就業年数(復職の方は、復職後の年数)をご記入ください。 1年未満:2 1〜3年未満:4 3〜5年未満:3 5〜10年未満:7 10〜15年未満:4 15〜20年未満:2 20年以上:7 f. 視覚障害になる前の職種をご記入ください。 1.プログラマー:2 2.経理:2 3.施設職員:1 4.営業:3 5.三療マッサージ:0 6.理学療法士:1 7.技術職:2 8.事務:3 9.公務員:0 10.トラック運転手:0 11.農業:0 12.なし:6 g. 視力低下以前にIT機器を活用していましたか。 はい:14 いいえ:15 B リハビリテーション a. 生活訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:3 視力低下中期:2 視力低下後期:2 完全失明後:4 受けていない-16 その他-3 ●先天網、学齢前に受けた。 ●先天網、盲学校で受けた。 b. 歩行訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:4 視力低下中期:3 視力低下後期:6 完全失明後:6 受けていない:9 その他:3 ●盲学校の体育の時間 c. 生活訓練・歩行訓練に対する評価 たいへん満足:5 まあまあ満足:9 どちらともいえない:6 少し不満:2 まったく不満-1 d. 職業訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:1 視力低下中期:2 視力低下後期:2 完全失明後:3 受けていない:20 その他:1 e. 職業訓練の内容はどのようなものでしたか。具体的にご記入ください。 1.プログラミング:4 2.文書作成:2 3.表計算:2 4.データベース:1 5.インターネット:1 6.電話交換:2 7.簿記:1 8.三療:2 9.勤続加工:0 10.点字校正:0 f. IT機器の活用訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:1 視力低下中期:3 視力低下後期:4 完全失明後:6 受けていない:13 その他:2 ●友人から教わった。 g. IT機器活用訓練の内容はどのようなものでしたか。具体的にご記入ください。 1.プログラミング:4 2.文書作成:11 3.表計算:5 4.インターネット:8 5.Windows:2 6.UNIX:1 C 就職の経緯 a. 障害を受ける前に就労されていましたか。 1.就労していた:11 2.就労していない:16 b. 障害時期と現在の就職先との関係についてお尋ねします。 障害前からの継続:7 障害後に就職して継続:14 障害後に就職して転職:6 c. 現在の就職先へは、どのようにして就労しましたか。 1.職安:6 2.求人誌:1 3.合同面接:4 4.リハセン紹介:4 5.知り合い紹介:4 6.学校紹介:9 7.その他:4 ●仲間で会社設立。 ●継続雇用 ●募集していたので応募した。 d. 就職活動において、IT技術の習得状況についての、アピールは、いかにおこないましたか。障害後の就職についてのみ、ご回答ください。 (複数回答可) 1.面接口頭:12 2.履歴書自己作成:5 3.自作HP:0 4.目の前でパソコン操作:4 5.アピールなし:11 6.その他:4 ●プログラム・リストを持参して見せた。 ●会社設立の仲間が既に自分のITの力量を理解していた。 ●大学での研究内容紹介によるアピール e. 就職した際、周りの職員に対し、障害の理解に関する働きかけをおこないましたか。 時間内講義:2 時間内個別説明:8 プライベート説明:4 書面配布:1 行わなかった:15 f. 障害に対しての理解の状況についてお尋ねします。 理解あり対応適切:22 理解あるが対応は不適切:5 理解なく対応不適切:2 D 業務上のコミュニケーション方法 a. 他者からあなたに対して、日常の情報交換手段として最も多い方法は何ですか 1.口頭:22 2.手書きメモ:2 3.点字メモ:1 4.E-Mail:5 5.HP又は社内掲示板:3 6.フロッピー:0 7.その他:3 ●文書 ●社内lanを通してexcelデータを取得 ●業務上の情報が回ってこない b. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:28 いいえ:2 c. あなたから他者に対して、日常の情報交換手段として最も多い方法は何ですか 口頭:18 手書きメモ:3 点字メモ:1 E-Mail:9 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:0 その他:3 ●文書 ●ワープロ書き:2 d. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:4 大きくない:25 ●どちらともいえない e. 他者からあなたに対して、文書のやり取りで最も多い方法は何ですか 口頭:7 印刷文書:9 拡大文書:1 点字文書:1 E-Mail:10 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:4 その他:1 ●困ったときには、メールかフロッピーを要求する。 ●墨字文書でもらい、ocrでテキストに変換。 f. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:24 いいえ:6 g. あなたから他者に対して、文書のやり取りで最も多い方法は何ですか 口頭:3 印刷文書:12 拡大文書:1 点字文書:0 E-Mail:11 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:3 その他:0 h. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:4 大きくない:25 ●どちらともいえない i. 他者からあなたに対して、会議資料の提示の手段として最も多い方法は何ですか 口頭:4 印刷文書:16 拡大文書:2 点字文書:1 E-Mail:6 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:1 その他:1 ●会議には出席させてもらえない。 j. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:16 いいえ:14 k. あなたから他者に対して、会議資料の提示の手段として最も多い方法は何ですか 口頭:5 印刷文書:13 拡大文書:1 点字文書:1 E-Mail:7 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:1 その他:2 ●プロジェクターで提示 ●会議資料は提示されない(回ってこない) l. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:7 大きくない:22 F 業務内容とIT機器等(環境)との関係 a. 業務内容はどのようなものですか。 1.企画:4 2.受託調査:2 3.人事:1 4.経理:2 5.ソフト開発:5 6.HP作成:3 7.サーバー管理:1 8.ヘルスキーパー:2 9.電話交換:1 10.コールセンター:1 11.苦情対応:3 12.秘書:0 13.他事務:7 14.他業務:7 15パソコンインストラクター:1 16点字録音図書貸し出し製作:1 17理療指導員:3 18リハ指導員:0 19相談業務:0 20図書館司書:0 ●市の広報などのテープ版とフロッピー版のコピーと発送、点字文書の作成と印刷、点字の手紙を活字にする、名簿の管理、他 ●福祉機器の販売サポート ●申し込み書の受付やその他保全帳票の管理 ●広報・IR業務 ●窓口での相談業務 ●理学療法士 ●データー入力 分析 技術資料作成 ●基準、マニュアルなどの整備 b. IT機器がなかった場合、どのような状況になっていたと思われますか。 就職できない:13 解雇:2 別職種配置:5 同じ職務:7 その他:3 ●コミニケーションを取るのが困難だったと思われる ●自分から止めていたと思う。 ●自主退職 c. あなたが業務上使用しているIT機器をご記入ください。 1.パソコン:28 2.点字ディスプレイ:8 3.点字プリンタ:3 4.墨字プリンタ:4 5.スキャナ:6 6.点字メモ機:2 7.DOS音声装置:2 8.UNIX端末:1 9.サーバー機:2 10.拡大読初機:2 11.録音機:2 12.点図ディスプレイ:1 13.オプタコン:0 d. あなたが業務上使用しているソフトウェアをご記入ください。 1.表計算:15 2.ワープロ:22 3.SR:26 4.コンパイラ:3 5.ブラウザ:13 6.メーラー:12 7.点訳ソフト:7 8.OCR:10 9.住所管理:1 10.データベース:7 11.LAN関連:4 12.UNIX関連:3 13.拡大ソフト:3 14.プレゼンソフト:1 15.ホームページ作成ソフト:1 16.地図ソフト:1 17.時刻表:1 e. あなたは、現在のIT環境の整備状況について、どのように、評価しますか。 たいへん満足:6 まあまあ満足:15 どちらともいえない:3 少し不満:3 まったく不満:2 f. IT環境の整備について、あなたの意見が反映されていますか。 反映:15 一部反映:5 どちらともいえない:8 あまりない:0 まったくない:2 非協力的:0 g. あなたがお使いのハードウエアはどなたのものですか すべて会社:22 一部会社:4 すべて自分のもの:4 h. あなたがお使いのソフトウエアはどなたのものですか すべて会社:19 一部会社:7 すべて自分のもの:3 最初のみ会社:0 i. 就職の際、ご自身のIT機器の操作技術と雇用主が求めている操作技術とのすりあわせを誰がおこないましたか。 ご自身:16 職業訓練担当者:0 生活訓練担当者:0 企業担当者:2 その他:7 ●復職に際しては、職業訓練の指導員が同伴し、個人と会社で検討 ●特に行っていない。 j. 現在、仕事で活用しているIT機器の操作は、職業訓練などで学ばれた操作技術のみで対応が可能ですか。 1.対応:3 2.社内研修:6 3.訓練師相談:2 4.業者相談:3 5.独学-8 6.知り合いに相談-3 7.その他-7 ●パソボラの援助 ●盲学校による援助 ●自分で視覚障害者向け研修を探し参加。但し業務として認められている。 ●社内の人に尋ねる。 k. 業務遂行の状況をご自身ではどのように評価されますか。 一般以上:1 同等:11 会社から評価:12 効率が上げられない:3 仕事が与えられない:1 その他:2 ●同じ業務をしている健常者がいないため比較できない。 ●特定の業務に固定されているようなので(職種としてはそうではないが・・・。)何とも言えないが、その分野では一定の評価がある。 G 今後の課題等 a. あなたにとってITの存在は、就労に不可欠なものだと思われますか。 強く思う:24 まあまあ思う:5 どちらともいえない:0 あまり思わない:0 まったく思わない:0 b. 将来、ITを使用しての、在宅就労の普及の可能性について、いかが思われますか。 普及する:13 どちらともいえない:9 普及は難しい:7 ---------------------------------------- 2. 施設勤務者 ---------------------------------------- A ご自身のプロフィールについてお尋ねします。 a. ご年齢をご記入ください。 10代:0 20代:2 30代:17 40代:17 50代:17 60代:2 70以上:0 b. 性別をご記入ください。 男性:40 女性:15 c. 視力をご記入ください。 1.全盲:31 2.0.01以下:5 3.0.05以下:11 4.0.1以下:2 5.0.3以下:4 6.それ以上:2 d. 現在の職種をご記入ください。 1.プログラマー:1 2.経理:1 3.施設職員:26 4.営業:2 5.三療マッサージ:3 6.理学療法士:1 7.事務:8 8.技術職:3 9.公務員:7 10.サービス業:2 11.司書:5 e. 現在の企業への就業年数(復職の方は、復職後の年数)をご記入ください。 1年未満:5 1〜3年未満:5 3〜5年未満:3 5〜10年未満:8 10〜15年未満:9 15〜20年未満-6 20年以上-17 f. 視覚障害になる前の職種をご記入ください。 1.プログラマー:1 2.経理:1 3.施設職員:1 4.営業:1 5.三療マッサージ:0 6.理学療法士:1 7.技術職:1 8.事務:5 9.公務員:1 10.トラック運転手:1 11.農業:1 12.なし:20 g. 視力低下以前にIT機器を活用していましたか。 はい:10 いいえ:3 B リハビリテーション a. 生活訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:2 視力低下中期:3 視力低下後期:2 完全失明後:9 受けていない:31 その他:6 ●先天網、学齢前に受けた。 ●先天網、盲学校で受けた。 ●盲学校卒業後に職業訓練と同時に受けた。 b. 歩行訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:2 視力低下中期:4 視力低下後期:2 完全失明後:14 受けていない:26 その他:5 ●盲学校で受けた。 ●盲学校卒業後に職業訓練と同時に受けた。 c. 生活訓練・歩行訓練に対する評価 たいへん満足:11 まあまあ満足:9 どちらともいえない:8 少し不満:1 まったく不満:1 d. 職業訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:1 視力低下中期:3 視力低下後期:1 完全失明後:12 受けていない:29 その他:7 ●盲学校卒業後に受けた。 ●盲学校で按摩の訓練を受けた。 e. 職業訓練の内容はどのようなものでしたか。具体的にご記入ください。 1.プログラミング:3 2.文書作成:2 3.表計算:2 4.データベース:2 5.インターネット:0 6.電話交換:2 7.簿記:1 8.三療:10 9.勤続加工:1 10.点字校正:1 f. IT機器の活用訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:0 視力低下中期:1 視力低下後期:0 完全失明後:13 受けていない:31 その他:6 ●友人から教わった。 ●就職後に受けた。 g. IT機器活用訓練の内容はどのようなものでしたか。具体的にご記入ください。 1.プログラミング:0 2.文書作成:14 3.表計算:1 4.インターネット:3 5.Windows:0 6.UNIX:0 C 就職の経緯 a. 障害を受ける前に就労されていましたか。 1.就労していた:13 2.就労していない:29 b. 障害時期と現在の就職先との関係についてお尋ねします。 障害前からの継続:2 障害後に就職して継続:28 障害後に就職して転職:14 c. 現在の就職先へは、どのようにして就労しましたか。 1.職安:3 2.求人誌:0 3.合同面接:0 4.リハセン紹介:6 5.知り合い紹介:27 6.学校紹介:10 7.その他:5 ●公務員試験に合格。 ●仲間で会社設立。 ●継続雇用 ●募集していたので応募した。 ●市役所内での配置転換(派遣) ●障害者雇用運動 d. 就職活動において、IT技術の習得状況についての、アピールは、いかにおこないましたか。障害後の就職についてのみ、ご回答ください。(複数回答可) 1.面接口頭:10 2.履歴書自己作成:5 3.自作HP:0 4.目の前でパソコン操作:4 5.アピールなし:21 6.その他:9 ●プログラム・リストを持参して見せた。 ●与えられた課題をアプリケーションソフトで作成。 ●会社設立の仲間が既に自分のITの力量を理解していた。 ●大学での研究内容紹介によるアピール ●就職当時はITなどなかった。 e. 就職した際、周りの職員に対し、障害の理解に関する働きかけをおこないましたか。 時間内講義:0 時間内個別説明:4 プライベート説明:3 書面配布:1 行わなかった:45 f. 障害に対しての理解の状況についてお尋ねします。 理解あり対応適切:35 理解あるが対応は不適切:12 理解なく対応不適切:1 D 業務上のコミュニケーション方法 a. 他者からあなたに対して、日常の情報交換手段として最も多い方法は何ですか 1.口頭:31 2.手書きメモ:5 3.点字メモ:5 4.E-Mail:18 5.HP又は社内掲示板:4 6.フロッピー:2 7.その他:1 ●文書 ●社内lanを通してexcelデータを取得 ●業務上の情報が回ってこない b. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:48 いいえ:5 c. あなたから他者に対して、日常の情報交換手段として最も多い方法は何ですか 口頭:35 手書きメモ:5 点字メモ:2 E-Mail:13 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:3 その他:3 ●文書:0 ●ワープロ書き:3 d. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:4 大きくない:48 e. 他者からあなたに対して、文書のやり取りで最も多い方法は何ですか 口頭:16 印刷文書:13 拡大文書:4 点字文書:8 E-Mail:17 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:5 その他:1 ●困ったときには、メールかフロッピーを要求する。 ●墨字文書でもらい、ocrでテキストに変換。 f. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:39 いいえ:13 g. あなたから他者に対して、文書のやり取りで最も多い方法は何ですか 口頭:13 印刷文書:23 拡大文書:0 点字文書:2 E-Mail:18 HP又は社内掲示板:1 フロッピー:8 その他:0 h. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい-6 大きくない-46 i. 他者からあなたに対して、会議資料の提示の手段として最も多い方法は何ですか 口頭:4 印刷文書:24 拡大文書:3 点字文書:13 E-Mail:13 HP又は社内掲示板-1 フロッピー:4 その他:0 ●会議には出席させてもらえない。 j. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:32 いいえ:19 k. あなたから他者に対して、会議資料の提示の手段として最も多い方法は何ですか 口頭:7 印刷文書:27 拡大文書:0 点字文書:7 E-Mail:8 HP又は社内掲示板:2 フロッピー:7 その他:1 ●プロジェクターで提示 ●会議資料は提示されない(回ってこない) l. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:7 大きくない:41 F 業務内容とIT機器等(環境)との関係 a. 業務内容はどのようなものですか。 1.企画:8 2.受託調査:0 3.人事:0 4.経理:0 5.ソフト開発:0 6.HP作成:1 7.サーバー管理:0 8.ヘルスキーパー(マッサージ):3 9.電話交換:1 10.コールセンター:0 11.苦情対応:2 12.秘書:0 13.他事務:6 14.他業務:1 15.パソコンインストラクター:2 16.点字録音図書貸し出し製作:16 17.理療指導員:5 18.リハ指導員:10 19.相談業務:9 20.図書館司書:5 ●市の広報などのテープ版とフロッピー版のコピーと発送、点字文書の作成と印刷、点字の手紙を活字にする、名簿の管理、他 ●メルマガの製作、社内誌の作成 ●福祉機器の販売サポート ●申し込み書の受付やその他保全帳票の管理 ●広報・IR業務 ●窓口での相談業務 ●理学療法士 ●データー入力 分析 技術資料作成 ●基準、マニュアルなどの整備 b. IT機器がなかった場合、どのような状況になっていたと思われますか。 就職できない:6 解雇:2 別職種配置:10 同じ職務:29 その他:2 ●コミニケーションを取るのが困難だったと思われる ●自分から止めていたと思う。 ●自主退職 ●別の職種を考えた。 c. あなたが業務上使用しているIT機器をご記入ください。 1.パソコン:44 2.点字ディスプレイ:7 3.点字プリンタ:4 4.墨字プリンタ:3 5.スキャナ:6 6.点字メモ機:5 7.DOS音声装置:2 8.UNIX端末:0 9.サーバー機:0 10.拡大読初機:1 11.録音機:3 12.点図ディスプレイ:0 13.オプタコン:1 d. あなたが業務上使用しているソフトウェアをご記入ください。 1.表計算:21 2.ワープロ:32 3.SR:40 4.コンパイラ:3 5.ブラウザ:26 6.メーラー:16 7.点訳ソフト:14 8.OCR:8 9.住所管理:2 10.データベース:5 11.LAN関連:0 12.UNIX関連:0 13.拡大ソフト:1 14.プレゼンソフト:0 15.ホームページ作成ソフト:1 16.地図ソフト:0 17.時刻表:0 e. あなたは、現在のIT環境の整備状況について、どのように、評価しますか。 たいへん満足:9 まあまあ満足:21 どちらともいえない:12 少し不満:6 まったく不満:0 f. IT環境の整備について、あなたの意見が反映されていますか。 反映:15 一部反映:15 どちらともいえない:14 あまりない:2 まったくない:0 非協力的:1 g. あなたがお使いのハードウエアはどなたのものですか すべて会社:30 一部会社:13 すべて自分のもの:1 h. あなたがお使いのソフトウエアはどなたのものですか すべて会社:26 一部会社:14 すべて自分のもの:4 最初のみ会社:0 i. 就職の際、ご自身のIT機器の操作技術と雇用主が求めている操作技術とのすりあわせを誰がおこないましたか。 ご自身:13 職業訓練担当者:0 生活訓練担当者:0 企業担当者:9 その他:16 ●復職に際しては、職業訓練の指導員が同伴し、個人と会社で検討 ●特に行っていない。 ●すり合わせは双方で行うものであり、どちらかを選ばせるのはナンセンスだと思う。私の職場では相互努力により、現在の環境が構築されている。 j. 現在、仕事で活用しているIT機器の操作は、職業訓練などで学ばれた操作技術のみで対応が可能ですか。 1.対応:2 2.社内研修:7 3.訓練師相談:2 4.業者相談:6 5.独学:23 6.知り合いに相談:0 7.その他:2 ●パソボラの援助 ●盲学校による援助 ●自分で視覚障害者向け研修を探し参加。但し業務として認められている。 ●社内の人に尋ねる。 k. 業務遂行の状況をご自身ではどのように評価されますか。 一般以上:0 同等:10 会社から評価:20 効率が上げられない:7 仕事が与えられない:0 その他:5 ●同じ業務をしている健常者がいないため比較できない。 G 今後の課題等 a. あなたにとってITの存在は、就労に不可欠なものだと思われますか。 強く思う:33 まあまあ思う:11 どちらともいえない:1 あまり思わない:4 まったく思わない:0 b. 将来、ITを使用しての、在宅就労の普及の可能性について、いかが思われますか。 普及する:26 どちらともいえない:19 普及は難しい:5 ---------------------------------------- 3. 被雇用者全体 ---------------------------------------- A ご自身のプロフィールについてお尋ねします。 a. ご年齢をご記入ください。 10代:0 20代:4 30代:29 40代:27 50代:23 60代:2 70以上:0 b. 性別をご記入ください。 男性:64 女性:21 c. 視力をご記入ください。 1.全盲:42 2.0.01以下:13 3.0.05以下:16 4.0.1以下:5 5.0.3以下:7 6.それ以上:2 d. 現在の職種をご記入ください。 1.プログラマー:7 2.経理:1 3.施設職員:29 4.営業:2 5.三療マッサージ:6 6.理学療法士:1 7.事務:18 8.技術職:5 9.公務員:10 10.サービス業:2 11.司書:5 e. 現在の企業への就業年数(復職の方は、復職後の年数)をご記入ください。 1年未満:7 1〜3年未満:9 3〜5年未満:6 5〜10年未満:15 10〜15年未満:13 15〜20年未満:8 20年以上:24 f. 視覚障害になる前の職種をご記入ください。 1.プログラマー:3 2.経理:3 3.施設職員:1 4.営業:4 5.三療マッサージ:0 6.理学療法士:1 7.技術職:3 8.事務:8 9.公務員:1 10.トラック運転手:1 11.農業:1 12.なし:26 g. 視力低下以前にIT機器を活用していましたか。 はい:24 いいえ:45 B リハビリテーション a. 生活訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:5 視力低下中期:5 視力低下後期:4 完全失明後:13 受けていない:47 その他:9 ●先天網、学齢前に受けた。 ●先天網、盲学校で受けた。 ●盲学校卒業後に職業訓練と同時に受けた。 b. 歩行訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:6 視力低下中期:7 視力低下後期:8 完全失明後:20 受けていない:35 その他:8 ●盲学校で受けた。 ●盲学校卒業後に職業訓練と同時に受けた。 c. 生活訓練・歩行訓練に対する評価 たいへん満足:16 まあまあ満足:18 どちらともいえない:14 少し不満:3 まったく不満:2 d. 職業訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:2 視力低下中期:5 視力低下後期:3 完全失明後:15 受けていない:49 その他:8 ●盲学校卒業後に受けた。 ●盲学校で按摩の訓練を受けた。 e. 職業訓練の内容はどのようなものでしたか。具体的にご記入ください。 1.プログラミング:7 2.文書作成:4 3.表計算:4 4.データベース:2 5.インターネット:1 6.電話交換:4 7.簿記:2 8.三療:12 9.勤続加工:1 10.点字校正:1 f. IT機器の活用訓練は、いつ受けられましたか。 視力低下初期:1 視力低下中期:4 視力低下後期:4 完全失明後:19 受けていない:44 その他:8 ●友人から教わった。 ●就職後に受けた。 g. IT機器活用訓練の内容はどのようなものでしたか。具体的にご記入ください。 1.プログラミング:4 2.文書作成:25 3.表計算:6 4.インターネット:11 5.Windows:2 6.UNIX:1 C 就職の経緯 a. 障害を受ける前に就労されていましたか。 1.就労していた:24 2.就労していない:45 b. 障害時期と現在の就職先との関係についてお尋ねします。 障害前からの継続:9 障害後に就職して継続:42 障害後に就職して転職:20 c. 現在の就職先へは、どのようにして就労しましたか。 1.職安:9 2.求人誌:1 3.合同面接:4 4.リハセン紹介:10 5.知り合い紹介:31 6.学校紹介:19 7.その他:9 ●公務員試験に合格。 ●仲間で会社設立。 ●継続雇用 ●募集していたので応募した。 ●市役所内での配置転換(派遣) ●障害者雇用運動 d. 就職活動において、IT技術の習得状況についての、アピールは、いかにおこないましたか。障害後の就職についてのみ、ご回答ください。(複数回答可) 1.面接口頭:22 2.履歴書自己作成:10 3.自作HP:0 4.目の前でパソコン操作:8 5.アピールなし:32 6.その他:13 ●プログラム・リストを持参して見せた。 ●与えられた課題をアプリケーションソフトで作成。 ●会社設立の仲間が既に自分のITの力量を理解していた。 ●大学での研究内容紹介によるアピール ●就職当時はITなどなかった。 e. 就職した際、周りの職員に対し、障害の理解に関する働きかけをおこないましたか。 時間内講義:2 時間内個別説明:12 プライベート説明:7 書面配布:2 行わなかった:60 f. 障害に対しての理解の状況についてお尋ねします。 理解あり対応適切:57 理解あるが対応は不適切:17 理解なく対応不適切:3 D 業務上のコミュニケーション方法 a. 他者からあなたに対して、日常の情報交換手段として最も多い方法は何ですか 1.口頭:53 2.手書きメモ:7 3.点字メモ:6 4.E-Mail:23 5.HP又は社内掲示板:7 6.フロッピー:2 7.その他:4 ●文書 ●社内lanを通してexcelデータを取得 ●業務上の情報が回ってこない b. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:76 いいえ:7 c. あなたから他者に対して、日常の情報交換手段として最も多い方法は何ですか 口頭:53 手書きメモ:8 点字メモ:3 E-Mail:22 HP又は社内掲示板:2 フロッピー:3 その他:6 ●文書:0 ●ワープロ書き:3 d. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:8 大きくない:73 e. 他者からあなたに対して、文書のやり取りで最も多い方法は何ですか 口頭:23 印刷文書:22 拡大文書:5 点字文書:9 E-Mail:27 HP又は社内掲示板:2 フロッピー:9 その他:2 ●困ったときには、メールかフロッピーを要求する。 ●墨字文書でもらい、ocrでテキストに変換。 f. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:63 いいえ:19 g. あなたから他者に対して、文書のやり取りで最も多い方法は何ですか 口頭:16 印刷文書:35 拡大文書:1 点字文書:2 E-Mail:29 HP又は社内掲示板:2 フロッピー:11 その他:0 h. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:10 大きくない:71 i. 他者からあなたに対して、会議資料の提示の手段として最も多い方法は何ですか 口頭:8 印刷文書:40 拡大文書:5 点字文書:14 E-Mail:19 HP又は社内掲示板:2 フロッピー:5 その他:1 ●会議には出席させてもらえない。 j. その方法はあなたにとって、適切な方法ですか。 はい:48 いいえ:33 k. あなたから他者に対して、会議資料の提示の手段として最も多い方法は何ですか 口頭:12 印刷文書:40 拡大文書:1 点字文書:8 E-Mail:15 HP又は社内掲示板:3 フロッピー:8 その他:3 ●プロジェクターで提示 ●会議資料は提示されない(回ってこない) l. その方法はあなたにとって、負担の大きい方法ですか。 大きい:14 大きくない:63 F 業務内容とIT機器等(環境)との関係 a. 業務内容はどのようなものですか。 1.企画:12 2.受託調査:2 3.人事:1 4.経理:2 5.ソフト開発:5 6.HP作成:4 7.サーバー管理:1 8.ヘルスキーパー(マッサージ):5 9.電話交換:2 10.コールセンター:1 11.苦情対応:5 12.秘書:0 13.他事務:13 14.他業務:8 15.パソコンインストラクター:3 16.点字録音図書貸し出し製作:17 17.理療指導員:8 18.リハ指導員:10 19.相談業務:9 20.図書館司書:5 ●市の広報などのテープ版とフロッピー版のコピーと発送、点字文書の作成と印刷、点字の手紙を活字にする、名簿の管理、他 ●メルマガの製作、社内誌の作成 ●福祉機器の販売サポート ●申し込み書の受付やその他保全帳票の管理 ●広報・IR業務 ●窓口での相談業務 ●理学療法士 ●データー入力 分析 技術資料作成 ●基準、マニュアルなどの整備 b. IT機器がなかった場合、どのような状況になっていたと思われますか。 就職できない:19 解雇:4 別職種配置:15 同じ職務:36 その他:5 ●コミニケーションを取るのが困難だったと思われる ●自分から止めていたと思う。 ●自主退職 ●別の職種を考えた。 c. あなたが業務上使用しているIT機器をご記入ください。 1.パソコン:72 2.点字ディスプレイ:15 3.点字プリンタ:7 4..墨字プリンタ:7 5:スキャナ:12 6:点字メモ機:7 7.DOS音声装置:4 8.UNIX端末:1 9.サーバー機:2 10.拡大読初機:3 11.録音機:5 12.点図ディスプレイ:1 13.オプタコン:1 d. あなたが業務上使用しているソフトウェアをご記入ください。 1.表計算:36 2.ワープロ:54 3.SR:66 4.コンパイラ:3 5.ブラウザ:39 6.メーラー:28 7.点訳ソフト:21 8.OCR:18 9.住所管理:3 10.データベース:12 11.LAN関連:4 12.UNIX関連:3 13.拡大ソフト:4 14.プレゼンソフト:1 15.ホームページ作成ソフト:2 16.地図ソフト:1 17.時刻表:1 e. あなたは、現在のIT環境の整備状況について、どのように、評価しますか。 たいへん満足:15 まあまあ満足:36 どちらともいえない:15 少し不満:9 まったく不満:2 f. IT環境の整備について、あなたの意見が反映されていますか。 反映:30 一部反映:20 どちらともいえない:22 あまりない:2 まったくない:2 非協力的:1 g. あなたがお使いのハードウエアはどなたのものですか すべて会社:52 一部会社:17 すべて自分のもの:5 h. あなたがお使いのソフトウエアはどなたのものですか すべて会社:45 一部会社:21 すべて自分のもの:7 最初のみ会社:0 i. 就職の際、ご自身のIT機器の操作技術と雇用主が求めている操作技術とのすりあわせを誰がおこないましたか。 ご自身:29 職業訓練担当者:0 生活訓練担当者:0 企業担当者:11 その他:23 ●復職に際しては、職業訓練の指導員が同伴し、個人と会社で検討 ●特に行っていない。 ●すり合わせは双方で行うものであり、どちらかを選ばせるのはナンセンスだと思う。私の職場では相互努力により、現在の環境が構築されている。 j. 現在、仕事で活用しているIT機器の操作は、職業訓練などで学ばれた操作技術のみで対応が可能ですか。 1.対応:5 2.社内研修:13 3.訓練師相談:4 4.業者相談:9 5.独学:31 6.知り合いに相談:3 7.その他:9 ●パソボラの援助 ●盲学校による援助 ●自分で視覚障害者向け研修を探し参加。但し業務として認められている。 ●社内の人に尋ねる。 k. 業務遂行の状況をご自身ではどのように評価されますか。 一般以上:1 同等:21 会社から評価:32 効率が上げられない:10 仕事が与えられない:1 その他:7 ●同じ業務をしている健常者がいないため比較できない。 G 今後の課題等 a. あなたにとってITの存在は、就労に不可欠なものだと思われますか。 強く思う:57 まあまあ思う:16 どちらともいえない:1 あまり思わない:4 まったく思わない:0 b. 将来、ITを使用しての、在宅就労の普及の可能性について、いかが思われますか。 普及する:39 どちらともいえない:28 普及は難しい:12 ---------------------------------------- 5.2 事業所向けアンケート結果  委員会で選定した195社の企業に対してアンケートを送付し、41件の有効回答を得た。  以下、アンケートの結果である。 -------------------- 働く視覚障害者とITに関するアンケート調査 事業所対象・集計結果  195社中 41社より回答 1 貴事業所の概要についてお尋ねします 1-1 業種・業態について (簡単に記述下さい) 1-2 従業員数 雇用形態についてお尋ねします 1-2-1 全従業員数( 名) 集計 100人未満:24社 300人未満:5社 500人未満:1社 1,000人未満:3社 5千人未満:3社 1万未満:3社 1万以上:2社 1-2-2 雇用されている障害者は視覚障害者を含め 集計 41社中31社が障害者を雇用(31社計 1,183名) 1-2-3 その内 視覚障害者は 集計 31社中26社が視覚障害者を雇用(26社計 82名)  1-2-4 その内 重度の視覚障害者は 集計 26社中24社が重度の視覚障害者を雇用(24社計 53名) 1-2-5 その雇用形態は 集計 常時:47名 臨時:1名 嘱託:0名 短時間:2名 雇用形態不明:3名 1-2-6 雇用されている視覚障害者の就業年数は 集計 20年以上:3名 15年以上:2名 10年以上:8名 5年以上:16名 5年未満:24名 1-3 資本金 1億円以上:19社 5千万以上:1社 2千万以上:8社 1千万以上:11社 1-4 設立年月 設立50年以上:9社 30年以上:10社 10年以上:12社 10年未満:10社 視覚障害者雇用26社の回答 視覚障害者未雇用15社の回答 2 視覚障害者雇用の経緯についてお尋ねします 2-1 視覚障害者を雇用している理由 (複数回答可・該当の項目に○印をつけてください) 2-1-1 業務に対して適任の人が見つかった:18 2-1-2 キャパシティーが高く、複数の業務をこなせそうな人が見つかった:4 2-1-3 法定雇用率を達成するため:11 2-1-4 雇用助成金が受けられため 給与のコストパフォーマンスが高い:0 2-1-5 強制的に退職させる訳にはいかない:2 2-1-6 障害者と仕事をすることにより、周りへのプラス効果を考えている:6 2-1-7 その他:6 2-2 視覚障害者の雇用で重視されることは (複数回答可) 2-2-1 学歴:1:0 2-2-2 専門的知識・能力:21:4 2-2-3 責任感:13:3 2-2-4 研究心・向上心:16:4 2-2-5 単独歩行:15:2 2-2-6 明朗闊達な性格:10:2 2-2-7 常識・マナー 12 1 2-2-8 その他 0 0 2-3 視覚障害者の雇用で懸念されることは (複数回答可) 2-3-1 適した仕事が見つからない:7:4 2-3-2 コストパフォーマンスが上げられるか不安:7:1 2-3-3 社屋・設備を物理的に改造するための経費負担:0:1 2-3-4 社内融和:2:0 2-3-5 通勤途上の事故など不測の事態:14:3 2-3-6 単独での業務遂行能力が不明:15:0 2-3-7 とにかく手間がかかりそう:0:0 2-3-8 その他:2:0 2-4 視覚障害者を雇用された経緯は (複数回答可) 2-4-1 学校からの紹介:6 2-4-2 職安から紹介を受けた:12 2-4-3 求人誌での募集に応募してきた:2 2-4-4 合同面接会で出会った:7 2-4-5 リハビリテーションセンター又は職業訓練センターから紹介を受けた:5 2-4-6 知り合い又は取引先から紹介された:4 2-4-7 復職:1 2-4-8 その他:6 2-5 就職希望者または復職希望者のITに関する知識の習得度合いが 視覚障害者の雇用の意思決定に 何がしかの影響はありましたか  (コメントあれば記入ください) 2-5-1 影響した:15 2-5-2 影響しなかった:8 2-5-3 その他:1 2-6 復職の場合の仕事についてお尋ねします (コメントあれば記入ください) 2-6-1 今までの仕事をITを活用して従事している:1 2-6-2 復職に当たり 同じ部署内で新たな仕事を創出した:3 2-6-3 ITを活用して仕事が可能な部署への配置転換を行なった:0 2-6-4 その他:3 2-7 就職希望者または復職希望者の ITに関する知識の習得度合いの判断は どのように行いましたか  2-7-1 面接によって:20 2-7-2 履歴書によって:4 2-7-3 職業安定所からの説明によって:0 2-7-4 推薦者からの説明によって:3 2-7-5 試験によって:1 2-7-6 その他:5 3 助成金制度の利用についてお尋ねします 3-1 障害者の住宅に関する助成金  3-1-1 利用している:7 3-1-2 利用していない:15:2 3-1-3 制度を知らない:2:3 3-1-4 その他:2 3-2 障害者用の機器購入・設備等に関する助成金 3-2-1 利用している:19 3-2-2 利用していない:7 3-2-3 制度を知らない:0:1 3-2-4 その他:0 3-3 ヒューマンアシスタント(職場介助者) の利用 3-3-1 利用している:6 3-3-2 利用していない:18 3-3-3 制度を知らない:2:2 3-3-4 その他:0 3-4 視覚障害者雇用にあたりIT環境を整える初期費用の総額は  3-4-1 50万円以上:11 3-4-2 20万円以上50万円未満:6 3-4-3 20万円未満:3 3-4-4 初期費用支出なし:4 3-4-5 その他:11 3-5 視覚障害者の雇用継続のためIT環境設備の更新、追加はありましたか  3-5-1 更新・追加あり: 11 (概略費用 円) 3-5-2 更新・追加はしていない:14 3-5-3 その他:0 4 視覚障害に関する啓蒙についてお尋ねします 4-1 従業員に対し 視覚障害を理解するための啓蒙を行いましたか 4-1-1 行った:9 4-1-2 行っていない:13 4-1-3 検討している:0:1 4-1-4 その他:3:1 4-2 啓蒙を行った方にお尋ねします どのような内容で行いましたか (複数回答可) 4-2-1 ビデオを見せた:1 4-2-2 書籍を見せた:0 4-2-3 関係機関の専門家による講習会を開いた:0 4-2-4 当事者による講習会を開いた:5 4-2-5 その他:6 5 人事関係の情報コミュニケーションについてお尋ねします  5-1 視覚障害者への給与明細はどのような様式ですか  5-1-1 一般と同じ印刷された明細:16 5-1-2 点字印刷または拡大印刷:2 5-1-3 E−mail:5 5-1-4 フロッピーディスク:2 5-1-5 その他:4 5-2 勤怠の届けの提出方法は   5-2-1 タイムカード:7 5-2-2 グループウエアなどに直接入力:9 5-2-3 所定の用紙に記入:5 5-2-4 視覚障害者のみ別な方法で受け付け、後で修正をする:0 5-2-5 その他:5 6 業務上のコミュニケーション方法についてお尋ねします 6-1 日常の情報交換手段はどのように (複数回答可) 6-1-1 口頭:25 6-1-2 手書きのメモ:2 6-1-3 点字のメモ:2 6-1-4 E−mail:21 6-1-5 HP又は社内LANの掲示板:7 6-1-6 文書ファイルをフロッピーでやり取り:3 6-1-7 その他:1 6-2 文書のやり取りはどのように (複数回答可) 6-2-1 口述:14 6-2-2 印刷:7 6-2-3 点字印刷:2 6-2-4 E−mail:20 6-2-5 HP又は社内LANの掲示板:7 6-2-6 文書ファイルをフロッピーでやり取り:7 6-2-7 その他:1 6-3 会議資料はどのように (複数回答可) 6-3-1 通常の活字資料のみ:11 6-3-2 拡大印刷:2 6-3-3 点字印刷:1 6-3-4 E−mailにて前もって送付:12 6-3-5 HP又は社内LANの掲示板に予め掲載:2 6-3-6 文書ファイルをフロッピーで提供:5 6-3-7 その他:2 7 業務内容とIT機器との関係についてお尋ねします 7-1 視覚障害者はどのような業務に従事していますか (業務内容を余白にできるだけ詳しく記入ください) 7-1-1 企画立案:4 7-1-2 受託調査:2 7-1-3 人事:2 7-1-4 経理:2 7-1-5 点字文書編集・作成:3 7-1-6 ソフトウェア開発:9 7-1-7 ホームページ作成:5 7-1-8 システム・サーバー管理:3 7-1-9 ヘルスキーパー:2 7-1-10 電話交換:4 7-1-11 コール・センター:1 7-1-12 サポート・苦情対応:4 7-1-13 秘書:0 7-1-14 その他の業務:14 7-2 IT機器がなかった場合の想定について  7-2-1 雇用しなかった:12 7-2-2 解雇していた:2 7-2-3 現在とは全く別の職種に配置していた:3 7-2-4 現在と同じ職務を与えていた:7 7-2-5 その他:3 7-3 ネットワークへの接続 (視覚障害者がIT機器を使用する場合 通常の社員と異なるソフトを入れる必要がありますが どのような配慮をされていますか) 7-3-1 通常と同じようにネットワークに接続している:23 7-3-2 ネットワークへの接続は認めていない:1 7-3-3 ダイヤルアップなど間接的な方法で接続している:2 7-3-4 その他:1 8 現状の評価についてお尋ねします 8-1 視覚障害者のIT使用による業務遂行ついて 雇用時または 復職時の期待度と比較して どのように 評価していますか  8-1-1 期待以上である:4 8-1-2 期待通りである:16 8-1-3 期待以下である:4 8-1-4 雇用助成金を考慮すれば、一般の健常者従業員と同等又はそれ以上のコストパフォーマンスを実現している:0 8-1-5 障害を考慮に入れればよく頑張っている:8 8-1-6 その他:1 8-2 視覚障害者のIT使用による業務遂行は、同一部署の健常者の従業員と比較して、どのように、評価されていますか  8-2-1 たいへん満足である:4 8-2-2 まあまあ満足である:10 8-2-3 どちらともいえない:9 8-2-4 少し不満である:0 8-2-5 たいへん不満である:2 8-2-6 その他:3 8-3 雇用後 視覚障害の関係機関からのアドバイスについてお尋ねします  8-3-1 関係機関には定期的に連絡をし アドバイスなどを受けている:1 8-3-2 関係機関からのアドバイスは受けていない:18 8-3-3 必要に応じて関係機関を探し出し アドバイスを受けている:3 8-3-4 そのような機関があれば、相談してみたい:2 8-3-5 その他:1 8-4 関係機関から受けたアドバイスの内容について 記述ください:5 9 今後の課題についてお尋ねします 9-1 貴事業所では 今後の視覚障害者の雇用を どのように考えていますか  9-1-1 積極的に 取り組んでいきたい:5:1 9-1-2 現状維持で行く:17:1 9-1-3 減員を考えている:0 9-1-4 その他:4:5 9-2 貴事業所の業務で 視覚障害者のIT使用による在宅就労は 可能だと思われますか  9-2-1 可能である:5 9-2-2 どちらともいえない:9:8 9-2-3 不可能である:6:1 9-2-4 一般的に在宅就労を積極的には考えていない:6:3 9-2-5 その他:0:2 9-3 在宅就労が可能であると回答された方にお尋ねします   在宅就労は 視覚障害者の雇用拡大に つながると思われますか  9-3-1 思う:5:1 9-3-2 どちらともいえない:0 9-3-3 思わない:0 9-3-4 その他:1 視覚障害者の雇用について、また、その促進について、ご意見、ご感想をお書きください。:7:8 -------------------------------------------------------------------------------- 5-3 働く視覚障害者に対するアンケート調査分析 (1) 調査方法  本アンケート調査は、まず最初に視覚障害者の会員数の多い3つのメーリングリストで呼びかけて一般企業に勤める視覚障害者の中から協力者を募集し、30件の回答を得た。  次に、2003年10月10日付けで日盲社協加盟施設163施設にフロッピーディスクにアンケートのテキストファイルを保存した形で協力を求め、10月31日までに55件の有効回答を得た。  いずれの回答も電子メールまたはフロッピーディスクにテキストファイルを保存する形でお願いしたものであり、点字での回答は一つもなかった。その意味で、回答者全てがパソコン・ユーザーであることが想定される。  最初の30件の回答はそのほとんどが民間企業に勤める視覚障害者からのものであり、次の55件はそのほとんどが視覚障害者施設に勤める視覚障害者からのものである。  以下、この2つの回答を区別するときは、最初の30件の回答者を「企業勤務者」、次の55件の回答者を「施設勤務者」と呼ぶ。 (2) 回答者のプロフィールから  回答者85名のうち、男性が64名、女性が21名であった(A−b.)。  視力別では、「全盲」と回答した方が42名で全体の約半数、それを含めて0.05以下と記載した方が71名に上り、強度の視覚障害者が中心となっている(A−c.)。  勤務年数を見ると、10年以上の方が45名と半数を超えている。このうち、施設勤務者55名のうちで10年以上と答えた方が32名に上り、日盲社協加盟施設に勤める視覚障害者の勤務年数の長さがめだった(A−e.)。 (3) リハビリテーションについて 1. 概要  リハビリテーションに関する質問では、失明の度合いを基準にしていつ頃訓練を受けているかを尋ねたが、訓練を受けていない方が案外多いことが判った。  例えば、生活訓練は47名、歩行訓練は35名、職業訓練は49名、IT機器の訓練は44名が受けておらず、歩行訓練以外はいずれも有効回答の50パーセントを越えている。  また、失明の程度と訓練を受けた時期を比較した場合、失明度が高まってから訓練を受けているケースが多い。  生活訓練では13名、歩行訓練では20名、職業訓練では15名、IT機器の活用訓練では19名が完全失明後に訓練を受けていると回答している。  中都失明者の場合には、より早い時期における訓練が実現すれば、復職などもよりスムーズにいくのではないかと考えられる。 2. 訓練に対する評価  訓練に対する評価を聞いてみた。  生活訓練と歩行訓練に対する評価では、有効回答数53件のうち、「大変満足」が16件、「まあまあ満足」が18件で、あわせて34件となり、おおむね満足が得られていることが判った(B−c.)。 3. 職業訓練の内容  回答いただいた方の中で、三療の勉強を職業訓練と捕らえた方とそうでない方とがあった。実際には三療の勉強をしている方はもっと多いはずである(B−e.)。 三療:12 プログラミング:7 電話交換:4 文書作成:4 表計算:4 簿記:2 データベース:2 インターネット:1 勤続加工:1 点字校正:1 4. ITの訓練内容  生活訓練や職業訓練という項目とは別に、ITに関する訓練内容についても聞いてみた(B−g.)。 文書作成:25 インターネット:11 表計算:6 プログラミング:4 Windows:2 UNIX:1  上の数値から、ITに関しては、文書作成の訓練が圧倒的に多く、続いてインターネットを利用するための訓練が多いことがわかった。 (4) 就職の経緯  就職の経緯についても尋ねている。  「現在の就職先にどのように就職しましたか」という問いに対して、 職安:9 求人誌:1 合同面接:4 リハビリテーションセンターからの紹介:10 知り合いの紹介:31 学校からの紹介:19 -------------------- となっている(C−c.)。  知り合いの紹介が非常に多いのだが、企業勤務者と施設勤務者とを別々に見ると、施設勤務者の場合が27、企業勤務者の場合が4となっており、視覚障害関連施設に就職する際には、人脈が非常に有効に機能していることがよくわかる。  また、就職活動において、ITの活用技術をどのようにアピールしたかということも聞いて見た。  面接時に口頭でアピールしたというのが22名ともっとも多く、履歴書を自分で作成してそのことをアピールしたという方も10名いた。また、実際に目の前でパソコンを操作してアピールした方も8名に上る(C−d.)。  就職後に視覚障害に対する理解を求める行動を取ったかということも尋ねてみたが、特別なことをしていない方が多い。また、職場の理解はあるかという質問に対しては、「理解がある」という回答が概して多く、視覚障害者を採用する職場では既にある一定程度の理解があることがわかった(C−e.、C−f.)。 (5) コミュニケーション方法  印刷物の直接の読み書きに不自由な視覚障害者にとって、職場の上司や同僚とのコミュニケーション方法が業務遂行上一番要とも言える。  そこで、これに関しては、ITの利用も含めて、かなり詳しく尋ねている。  まず、日常の情報交換手段としては、口頭が53ともっとも多いが、電子メールの利用も20件を越えており、この数も見逃せない(D−a.〜d.)。  これが、文書のやり取りになると、数値がばらついてくる。  まず、職場の同僚から本人への伝達手段としては、電子メールが27、口頭が23、印刷文書が22と続く。また、フロッピーが9、点字文書が9、拡大文字による文書が5というのにも注目したい(D−e.)。  一方、視覚障害者から目の見える同僚への文書伝達手段は、印刷文書が35、電子メールが29であり、この2つの手段が圧倒的に多い。このことからも判るように、視覚障害者は文書を書いて印刷して提出することにはあまり苦を感じていない(D−g.)。  最後に、会議資料について尋ねているが、ここにはやや問題が見られる。  会社側から本人への会議資料の提示の仕方を尋ねている項目では、印刷文書が40、電子メールが19、点字文書が14、口頭が8、拡大文書が5、フロッピーが5となっている。このうち、会議中に直接視覚障害者自身が資料を参照しながら参加できるのは、点字文書と拡大文書のみである。  さらに細かくみると、点字文書と回答した14件のうちの13件及び拡大文書と回答した5件のうちの3件が施設勤務者からの回答である。つまり、企業勤務者の30件の回答の中には、点字文書は1件、拡大文書は2件しかない。現に、「その方法はあなたにとって適切ですか」という質問に対しては、企業勤務者30名のうちの14名が「いいえ」と答えている(D−i.〜j.)。  一方、視覚障害者が会議資料を作成する場合の方法では、印刷文書が40、電子メールが15、口頭が12、点字文書が8、フロッピーが8、社内掲示板が3、拡大文書が1となっている。この場合、「口頭」というのはどの程度の会議に関する資料なのかよくわからないが、やはり会議でテーマに上げる内容であれば、口頭はあまり好ましくないと考えられる。この辺りは、視覚障害者自身の業務に対する姿勢が問われる(D−k.)。 (6) IT機器の利用  IT機器の利用状況を尋ねる前提として、まず最初に、業務内容を尋ねてから、具体的にどのような機器やソフトウェアを利用しているのかを聞いてみた。 1. 利用されているIT機器  まず、利用している機器に関しては、以下の回答があった(F−c.)。 -------------------- パソコン:72 点字ディスプレイ:15 スキャナ:12 点字プリンタ:7 墨字プリンタ:7 点字メモ機:7 録音機:5 MS−DOS音声装置:4 拡大読初機:3 サーバー機:2 UNIX端末:1 点図ディスプレイ:1 オプタコン:1 --------------------  パソコンは圧倒的に多いのだが、有効回答全てではなかった。有効回答が全て電子的なデータ、つまりメールかフロッピーに収めたテキストファイルで回答頂いていることから、パソコンは操作できるけれども、職場では使っていないという方がわずかにいるようだ。なお、企業勤務者30件のうちのパソコン利用数は28件であった。 2. 利用されているソフトウェア  次に、業務で利用しているソフトウェアに関しては、以下の回答があった(F−d.)。 -------------------- スクリーンリーダー:66 ワープロソフト:54 ホームページブラウザ:39 表計算ソフト:36 電子メールソフト:28 点訳ソフト:21 OCRソフト:18 データベースソフト:12 拡大ソフト:4 LAN関連:4 コンパイラ:3 住所管理ソフト:3 UNIX関連:3 ホームページ作成ソフト:2 プレゼンソフト:1 地図ソフト:1 時刻表:1 --------------------  上記のうち、66件のスクリーンリーダーは視覚障害者がパソコンを利用する上で必須のソフトウェアであると同時に、一般の従業員は使わない。一方、それに続くワープロ、ブラウザ、表計算、電子メールなどのソフトウェアは、いまやオフィスワークにおいて必須のソフトウェアであり、事務所で働く人達のほとんどが利用するものである。これらのソフトウェアが使えてはじめて、視覚障害者も事務処理ができるということになる。  21件の点訳ソフトは、点字のデータを作成するためのソフトである。21件のうち、施設勤務者の利用が14件であり、職種のところで「点字録音図書貸し出し製作」が16件となっており、直接の専門業務で用いていると考えられる。また、企業勤務者で点訳ソフトを利用している方が7名あるが、そのうちの5名がソフトウェア開発に携わっており、情報を正確に捉える上での点字の有用性が認められる。  18件と比較的利用率が高いOCRソフトは、印刷物を直接読み上げたりあるいは内容をデータ化して自分の読みやすい形で保存しておくために利用されている。 3. IT機器がなかった場合の仮定  IT機器がなかったとしたら、どうなっていたかについても聞いてみた(F−b.)。  企業勤務者の場合には、就職できなかったと答えた方が13名、解雇されていたという方が2名、別職種に配転されていたという方が5名で、今と同じ仕事をしていたと答えた方は7名であった。  一方、施設勤務者の場合には、就職できなかったと答えた方が6名、解雇されていたとする方が2名、配転されていたという方が10名で、今と同じ仕事をしていたとする方が29名に上る。  やはり、施設に勤める視覚障害者よりも、一般企業に勤務する視覚障害者の方が、IT機器のニーズを強く感じているようだ。 4. IT設備への満足度  「大変満足」と「まあまあ満足」をあわせて51件となり、有効回答数85件の60パーセントに達し、基本的には満足している方が多いようだ。これに関しては、企業勤務者と施設勤務者であまり差はない(F−e.)。  一方、IT環境の整備に関して、自分の意見が取り入れられているかどうかについても聞いてみた。  意見が繁栄されているという回答が30、一部反映という回答が20であり、あわせて50件となり、有効回答数85件の60パーセントに迫る(F−f.)。 5. スキルのすり合わせ  就職の際、職場で求められるスキルと自分が現在会得しているスキルとのすり合わせを誰が行ったのかを聞いてみた(F−i.)。  結果、自分自身という回答が29件、企業担当者という回答が11件であり、リハビリテーション関係者は全く上げられていなかった。  しかし、この質問項目に関しては、実際にはいろいろな要素が背景に存在するため、答えにくいようであった。 6. 就職後のスキルアップ  職場のニーズに対応するための就職後のITに関するスキルアップについても聞いてみた(F−j.)。  これに対しては、独学が31、社内研修を受けたケースが13、専門業者に相談したというのが9件となっている。いずれにしても、自分自身の努力が大切なことは間違いない。 (7) 就労にとってのITの必要性  最後に、就労にとってのITの必要性を聞いてみた(G−a.)。  「不可欠だと強く思う」が57件、「まあまあ思う」が16件であり、圧倒的に多数をしめる。さらに、企業勤務者の回答では、「強く思う」が24件、「まあまあ思う」が5件で、残りの1件は無回答であった。  このように、視覚障害者の就労にとってITが不可欠であることはアンケート結果からもきわめて明確である。 (望月優) -------------------------------------------------------------------------------- 5-4 事業所に対するアンケート調査分析 (1) 調査方法  本アンケート調査は、2003年9月27日付けで本委員会で抽出した195社の人事担当者または視覚障害者従業員の所属する部署宛てに送付し、10月31日までに41件の回答を回収している。  アンケートの送付先は、全て民間企業であった。 (2) 回答社の分類  回答41社のうち、31社が障害者を雇用しており、そのうち26社が視覚障害者を雇用しており、さらにそのうちの24社が重度の視覚障害者を雇用していた。  また、企業の規模別に見ると、100人未満が24社、100人以上300人未満が5社、300人以上千人未満が4社、千人以上1万人未満が6社、1万人以上が2社であった。  なお、回答企業に雇用されている視覚障害者総数は82名、そのうち53名が重度であった。 (3) 雇用の経緯  以下、視覚障害者を雇用している企業の回答を分析してみる。 1. 雇用の理由(2−1)  まず、雇用している理由を聞いて見た。  「業務に対して適任の人が見つかった」という回答が18件とトップで、「法定雇用率を達成するため」が11件と続く。また、「障害者と仕事をすることにより、周りへのプラス効果を考えている」も6件と案外多い。  この回答から、障害者法定雇用率もやはり企業が障害者を雇用するに当たってかなり大きな同機となっていることが伺える。 2. 重視すること(2−2)  次に、視覚障害者の雇用で重視することを尋ねている。  予想通り、「専門的知識・能力」という回答が21件ともっとも多い。次に「研究心・向上心」が16件と続く。今後の成長に期待しているのだろう。また、「単独歩行」という回答も15件と大変多い。企業が視覚障害者の通勤を心配していることがよくわかる。 3. 懸念されること(2−3)  次に、懸念されることについても尋ねている。  「単独での業務遂行能力が不明」という回答が15件ともっとも多い、視覚障害者を雇用している企業でも、その単独業務遂行能力を把握できていない現実があらわになった。また、「通勤途上の事故など不測の事態」という回答も14件と大変多く、先ほどの結果と同様、通勤を心配している職場が多い。なお、ちなみに、この通勤途上の不足の自体を心配しているのは、視覚障害者を雇用していない10社の中でも3社あり、このテーマは視覚障害者の雇用促進に当たって大きなテーマであることが改めて確認された。 4. リクルート方法(2−4)  次に、どのようにして現在雇用している視覚障害者にたどり着いたのかを尋ねて見た。  職安からの紹介が12件とだんとつで、合同面接会が7件、学校からの紹介が6件、リハビリセンターまたは職業訓練センターからの紹介が5件、そして知人からの紹介が4件と続く。  視覚障害者側へのアンケートでは知人からの紹介が多かったが、これは特に施設関係への就職のときに多いようだ。民間企業の場合には、やはり、職安や合同面接などの公的な雇用斡旋サービスによるところが大きいようだ。 5. IT習得度合いの影響(2−5)  次に、雇用を決定するに当たって、視覚障害者本人のITに対する習得度合いが影響したかどうかを尋ねて見た。  影響したという回答が15件で、影響しなかったという8件を上回った。 6. 復職の場合の業務内容(2−6)  復職に際して、どのように業務内容を決めたのかについて尋ねて見た。  「同じ部署内で新たな仕事を創出した」という回答が3件で、「今までの仕事にITを活用して従事している」の1件を上回った。 7. ITの習得度合いの判断(2−7)  就職または復職希望者のIT習得度合いの判断についても聞いて見た。  面接によって判断したという回答が20件と圧倒的だ。履歴書によってという回答が4件あり、推薦者からの説明によってという回答が3件と続く。  ここで、職安からの説明によって判断したという回答が0件であったことに注目したい。職安は元来雇用を促進するために存在する公的機関である。であるならば、視覚障害者が業務をこなすためにどの程度ITを習得しているかぐらいは把握し、雇用主に説明するぐらいの仕事はして頂きたいと感じた。 (4) 雇用助成金の利用状況  雇用助成金の利用状況についても尋ねて見た。 1. 住宅に関する助成金(3−1)  「利用している」という回答が7件、「利用していない」が15件、「制度を知らない」という回答が2件あった。  住宅に関する助成金は、本人のために特別に賃借するなどの条件がそろわないと利用できないので、その割には利用率が高いように感じた。 2. 機器購入や設備に関する助成金(3−2)  これについては、「利用している」が19件、「利用していない」が7件で、利用率が高い。  本調査研究のテーマであるIT機器の購入助成を受けている企業が多いようだ。 3. 職場介助者(3−3)  「利用している」が6件、「利用していない」が18件、「制度を知らない」が2件である。利用していない企業がかなり多い。  実は、私が経営している会社でも以前はこの制度を利用していたが、今は利用していない。我が社の事情からの推察になるが、やはりIT技術の進歩により視覚障害者が独力でこなせる業務範囲が広くなってきていることが、この制度の利用率を徐々に低下させているのではないかと考えられる。 4. IT初期投資(3−4)  次に、助成金を利用しているか否かに関わらず、視覚障害者雇用の際のIT環境を整えるための初期投資額を聞いて見た。  「50万円以上」が11件、「20万円以上・50万円未満」が6件、「20万円未満」が3件、「支出なし」が4件であった。  この数値からも判るように、視覚障害者を雇用するに当たって最初に必要なIT環境整備費は決して会社の負担になるような額ではない。  健常者の従業員を新規採用する場合でも、デスクにパソコンを1台そろえようとすれば10万から20万円程度はかかるのである。 5. IT継続投資(3−5)  次に、雇用継続のためにIT環境を整備するための追加費用について尋ねている。  「更新または追加をしている」が11件、「していない」が14件であった。  IT技術の進歩は日進月歩である。視覚障害従業員の作業効率を常にハイレベルな状体で保つためにも、ソフトウェアのバージョンアップなどの少額なIT環境の更新や追加には常に気を配って頂きたいと思う。 (5) 視覚障害に関する啓蒙  視覚障害者を雇用している企業が、職場の従業員に対して、視覚障害に関する啓蒙を意図的に行っているかどうかを尋ねて見た。 1. 行ったかどうか(4−1)  「行った」という回答が9件、「行っていない」という回答が13件であった。 2. 内容(4−2)  次に、「行った」と回答した企業に対して、その内容を尋ねて見た。  「当事者による講習会を開いた」という回答が5件でもっとも多かった。  職場内でのコミュニケーションを活発化する上でも、このやり方、つまり、視覚障害者のライフスタイルや接し方などについて本人から職場仲間に話をさせるのがもっとも適切な方法だと思う。 (6) 給与明細と勤怠管理  続いて、人事管理上必須の給与明細と勤怠管理をどのようにしているかを尋ねて見た。 1. 給与明細(5−1)  通常の印刷された明細が16件で圧倒的に多く、そのほかの方法として、「電子メール」が5件、「フロッピーディスク」が2件、「点字印刷または拡大印刷」が2件あった。 2. 勤怠届(5−2)  次に、視覚障害従業員がどのようにして勤怠届を提出しているかを尋ねた。  「グループウェア等に直接入力」が9件、「タイムカード」が7件、「所定の用紙に記入」が5件であった。  グループウェアへの入力がこんなに多いのは、以下に働く視覚障害者がITを利用しているかを如実に表した結果だと言える。 (7) コミュニケーション方法  次に、視覚障害者にとってもっとも重要といえるコミュニケーション方法について尋ねた。 1. 日常の情報交換手段(6−1)  「口頭」という回答が25件ともっとも多いのはきわめて自然だが、「電子メール」が21件、「HPまたは社内LANの掲示板」が7件と続くのは、以下にITが職場で自然に用いられているかを物語っている。 2. 文書のやり取り(6−2)  「電子メール」が20件ともっとも多く、「口述」が14件と続く。「HPまたは社内LANの掲示板」が7件、「フロッピーディスク」が7件、「印刷」が7件と、3種類の方法が同数となっている。  現在は、この3種類のいずれの方法でもITを駆使すれば視覚障害者側で対応可能だが、やはり「印刷」はOCRソフトによる読み取りを必要とするので、視覚障害者側にとってもっとも負担の大きい方法である。 3. 会議資料(6−3)  「電子メールにて前もって送付」が12件ともっとも多く、「通常の活字資料のみ」の11件を上回った。  活字資料の場合には、かなり前もって手渡されていればOCRソフトなどで読み取って内容をあらかじめ把握して会議に参加できるが、会議の場でいきなり手渡されたのではどうにも対処できない。  これに比べて、「電子メールにて前もって送付」の場合には、もちろん会議の前に送られていなければならないが、印刷資料よりも視覚障害者自身が短時間のうちに処理できるので、会議知りようの提示の仕方としては妥当な方法と言える。  なお、設備として点字プリンタ及び自動点訳ソフトウェアが備えられていれば、電子メールにて前もって送付された資料を視覚障害者本人が点字で出力して、それを持参して会議に参加することも可能である。この場合には、会議中に参照する必要のある内容についても対応できる。 (8) 業務内容とIT機器との関係  ここでは、かなり多岐に渡って尋ねている。 1. 業務内容(7−1)  視覚障害者が行っている業務内容について尋ねた。  以下のような結果であった。 ソフトウェア開発:9 ホームページ作成:5 電話交換:4 サポート・苦情対応:4 企画立案:4 システム・サーバー管理:3 点字文書編集・作成:3 受託調査:2 人事:2 経理:2 ヘルスキーパー:2 コール・センター 1  上記の回答から、業務内容自体にIT技術を必要とするものが比較的多いことが注目される。 2. IT機器がなかった場合の想定(7−2)  「雇用しなかった」という回答が12件もあり、視覚障害者の雇用を考える上で、以下にITが重要であるかが伺える。 3.ネットワークへの接続(7−3)  社内LANなどのネットワークに接続してもらえなくて業務がスムーズに進められず、会社側との軋轢になっているケースがこれまでにあったので、あえてこんな質問をして見た。  その結果、「通常と同じようにネットワークに接続している」という回答が23件と圧倒的で、ほとんどの会社が極めてリーズナブルな判断をしており、その点では一応安心した。  ただ、少ないと言えども「ネットワークへの接続は認めていない」という回答が1件あったことには心を痛めざるを得ない。 (9) 仕事振りの評価  視覚障害者の仕事振りの評価も尋ねて見た。 1. ITを利用しての業務遂行に対する評価(8−1)  「期待通りである」との回答が16件ともっとも多く、「障害を考慮に入れればよく頑張っている」が8件と続く。また、「期待以上である」と「期待以下である」が4件ずつとなっている。  どの選択肢を選ぶかは、回答者の完成によるところも大きい。よって、「期待以下である」という回答と「障害を考慮に入れればよく頑張っている」という回答とは、どちらが視覚障害者本人にとって好意的なのか、判断することは難しい。 2. 健常者従業員との比較(8−2)  「まあまあ満足である」が10件、「どちらとも言えない」が9件と続き、「大変満足である」は4件しかない。やはり、健常者の従業員と比較すれば、なかなか高い評価を与えにくいようだ。この辺りは、率直に回答頂けたことが伺え、回答頂いた事業所の方々に感謝したい。  なお、「大変不満である」という回答が2件あり、具体的にはどのようなケースなのか、非常に心配である。 3. 関係機関からのアドバイス(8−3)  雇用後に、視覚障害者関係機関からアドバイスを受けているかどうかを尋ねて見た。  「アドバイスは受けていない」というのが18件で、圧倒的多数だった。  この辺りは、関係機関側からの積極的なアプローチも必要ではないだろうか。 (10) 今後について  最後に、今後について尋ねて見た。 1. 今後の雇用方針(9−1)  視覚障害者の雇用について、今後はどのような方針なのかを尋ねた。  「現状維持」が17件とトップで、「積極的に取り組んで行きたい」の5件を大幅に上回った。 2. 在宅就労(9−2)  次に、視覚障害者の在宅就労が可能かどうかを尋ねた。  「どちらとも言えない」が9件と結論を保留した回答がもっとも多く、「不可能である」の6件が「可能である」の5件を上回った。  また、「一般的に在宅就労を積極的には考えていない」という回答が6件あり、単に可能かどうかという判断ではなく、会社として在宅勤務を積極的に進めていくのかどうかという用件がまず先に存在していることが理解できた。  なお、この質問に対して「可能である」と回答した企業は、次の質問で「在宅就労は視覚障害者の雇用拡大につながると思う」と回答している。  以上、各企業の担当の皆様には、かなり率直なお答えを頂いた。  ここに深く感謝の意を表したい。 (望月優) -------------------------------------------------------------------------------- 5-5 聞き取り調査所見  本項では、聞き取り調査を行った10件に対して、実際にインタビューを行った委員の所見を記す。 (1) 天岡委員 所見  以下、6件についての聞き取り調査所見である。 1. 視覚障害者向け商品販売業   (調査日 2003年11月7日) 当社は会社設立後1年6カ月を経て、全従業員は5名の小企業である。 障害者関連で実績のあるライトハウスの関係者の関与によって設立された。 取り扱い商品は、視覚障害者向けの商品を扱っている。 当社は先に述べた通り設立後、日も浅い事もあって、全員が一丸となって、企業の存亡に取り組み中である。  そのため、就業規則の整備などまでには至っていないものの取り扱い商品の特性から、視覚障害者雇用への理解と関心は高い。  しかし、視覚障害者が何が自社に適応出来るかは、視覚障害者の努力とその結果を見ている手探りの状態である。  当社の視覚障害者の雇用状況は、現在は1名で採用後2カ月を経過したところである。  したがって、試用期間中の状況で業務割り当ても決定してたものはないが、イベント等のとき、視覚障害者への商品説明などの対応に就労させている。 斯様に自分自身の身近な経験の活用とその人柄に対する評価の積み重ねが、視覚障害者に対する就労の道へ繋がる一面を感じた。 2. 学校法人   (調査日 2003年11月11日) 大学の学生の障害者に対する対応は進歩的でその配慮も細やかである。 又、身体障害者に対する雇用も理解はあるものの、視覚障害者に対する理解は低い。  筑波大学などの特別のところは別として、一般の大学はおおむね同じの様である。  この視覚障害者雇用の弊害は、まづ、大学の事務形態を徹底してIT化への事務改善を行わない限り難しい。  一例として、書類の検索などにしても、研究資料などの検索は科学技術的にその先端を行くものの、大学自体の事務管理が旧体的であり過ぎる。  現在はそこに気づき始めたところで、視覚障害者の就労の道は今後は開かれていくものと思う。 3. トータルコンサルタント業  (調査日 2003年11月12日) 当社はトータル コンサルタントとしての受託事業を営んでいる。 視覚障害者雇用は現在1名である。 当社の視覚障害者の特筆すべき事は、プロとして高度のITの知識と深い研究心の努力によって、視覚障害者のハンディを克服してのものである。  当社への入社もそのプロとしての自覚をもって自ら入社を希望してきて、当社のノウハウ提供企業として充分即戦力となる要素をもっている人材である。  かかる人材を即見出した当社の視覚障害者に対する発想は、視覚障害者に大きい希望を持たせるだけでなく、他の雇用企業の視覚障害者の採用に一つの指針を開くものと評価したい。 4. 特例子会社   (調査日 2003年11月12日)  当社は特例子会社で視覚障害者対策としての企業であるため、障害者に対する雇用の理解度は当然高い。  したがって、就業規則なども晴眼者の職員や男女の勤務上、身分上の差別などもない。 職員それぞれは、PCを始めITに関しての教育や知識の習得の環境は整えられている。  当社の商品開発も障害者向けを意図しているので、それに対応できる人材を採用時に選定されるので、応募の資格障害者には当然PCスキルが重要な条件となる。  就労した視覚障害者と彼ら居住地域の人達との調和にも配慮して、日常的なサポートへも視野に入れている取り組みは、特例子会社として当然とは言えさすがである。 5. 特例子会社   (調査日 2003年11月18日) 当社は身体障害者を雇用する目的で設立された、三菱化成の特例子会社である。  そのため、視覚障害者は元より他の障害者への就労に対する姿勢は前向きである。  視覚障害者の就労にはその障害の限界を理解して効率的な業務遂行を絶えず研究をしている事は称賛に値するものであろう。  就業規則類も当然明確に整えられていて、視覚障害者の身分も一般職員と何ら差別されることもなく、平等に正職員として雇用されている。  したがって、職場の雰囲気も明るく活力を感じられ、会社設立の目的に恥じない高い評価を認められるものと思える。 6. 公共企業   (調査日 2003年11月27日) 当社の障害者雇用率は充足しているものの、視覚障害者への理解と雇用は必ずしも満足するには至っていない。  もっとも、今回の訪問聞き取り調査を行った部署は、たまたま、その部署に視覚障害者が在籍している事、しかも、過去に同部署に就労して後、中途で視覚の障害をもった方が、同じ職場に復職されたケースへの調査になってしまった為、会社としての基本姿勢を聞くことが出来なかったのである。  しかし、出席されて様々な現実の実態と率直な意見を述べて下さった方々から、反面教師として視覚障害者のこれからの有り様と雇用企業の側面を知るに参考になるべきものを見いだせたことは感謝するものである。  特に、中途視覚障害者の精神的苦痛を克服しての精神力と、視覚障害者ができる新たな仕事の創出を成し遂げて新境地を開拓し、なお、その成果を現実の仕事にも生かしていることは、周りの同僚は無論、上司からも高い評価を得ている視覚障害者の方を含めた聞き取り調査は、実に有意義であったと共に、視覚障害者と雇用企業との新たな関係に大いなる明るい希望を与えるものであろう。  しかし、この努力は一人の努力だけでは為し得ない。 たまたま、理解ある同じ現場への復帰が幸いをしたのであって、全社的視野での視覚障害者に対する知識と理解は低い。  視覚障害者は何が出来るのか。また、どのように扱ったらいいのか等を模索している段階である。  さらに、視覚障害者自身も自分が採用されたい企業に、何が出来るのかを具体的に説明できるものを持つことが視覚障害者の就労を更に容易にするであろう。 [まとめ]  以上が、聞き取り調査で得た結果の所見であるが、まだ、一般的に視覚障害者に対する理解が充分でないので、今後も継続してかかる調査と啓蒙が望まれる。 (天岡 秀雄) ---------------------------------------------------------------------------- (2) 下堂薗委員所見  以下、在宅勤務の2件の聞き取り調査所見を記す。 7. 紙パルプ商社業。 調査日:2003年11月19日(水)  紙パルプ専門商社である当社は、紙を通して情報/文化/産業および物流事業の発展に貢献すべく努力しているという。  会社は、都内中央に存し、広々と堂々たる本社ビルから受けた印象は、中堅好業績企業を感じさせるものであった。  調査のため訪問した日は新本社ビルへ引越しが近日中におこなわれるというときで、さらにその感触を強くした。  当社には、総数5名の障害者、うち視覚障害者1名が在職しているというが、部長職にあった視覚障害者は視力障害を患ってから本社人事グループに配置換えとなり、管理職、参時の役職を命じられ、見えていたころの経験を活かした仕事を継続してまかせられている。  聞き取り調査が終わり、その帰路、当社の若い社員に最寄り駅までガイドしてもらうことになった。  その道中、白杖のことや、ガイドすること、視覚障害者団体などのことについて話をした。  そして、目が見えない人に対して、社員一同なんらの違和感はないし、困っている場合は自然に手を貸し手伝いしていることとか、見えない人が当事者グループから情報を得ることも当たり前ではないでしょうか、などと障害者とのコラボレーションについて大変貴重なお話を聞かせてもらい、働きやすい雰囲気を有する職場環境であることを十二分に印象づけてくれた。 8. 建築関係サービス業。 調査日:2003年11月22日(土)  当社は、住宅事業のほか、映像関連、出版事業を展開し、若き建築家を育てる学院を運営する一方、建築業界のニュースや会社概要などを提供する建築サービス業界の大手である。  全従業員数 約2,000名の中に、視覚障害者数は6名いるといい、今回聞き取り調査の対象になった視覚障害者は、中途失明後当社に再就職した。  会社では、システム中心の関係会社の顧客サポートセンターに所属しコンテンツ制作等を担当している。  会社は、雇用に際し、システム開発の業務を主に考慮していたようであるが、当人が社風になじむに従い、当人から提案された職種についても積極的に企画立案を容認したり、業務遂行形態についても会社側から在宅ワークを本人に勧めたり、見えていたころの印刷関係の仕事の経験を活かした業務をまかせるなど、視覚障害者の仕事のやりやすい環境づくりに積極的な印象を受けた。 [まとめ]  以上のように視覚障害者が働きやすい雰囲気を作り出してくれる会社が増えることを期待し、両者を高く評価したい。 (下堂薗保) ------------------------------------------------------------------------------ (3) 望月 優 所見 9. 小売業(電気、家具、宝飾、鉄道模型)   (調査日 2003年11月10日「月)  当社は家電製品、家具等の小売りを行っている商社である。  家電部門ではラオックス、家具部門では大丸と提携して、それぞれの店舗の中に自社ブランドの売場を持っている。  グループ企業全体での従業員数が約250名という規模の中で、インタビューに応じてくれた視覚障害者はグループ全体の電算管理システムの開発・運用・管理を行っている情報管理部情報システム課長として勤務している在職23年のベテランである。  業務内容がシステム管理のため、IT機器の使用は必須だが、イントラネットの設計と構築もご本人が行っているため、スクリーンリーダーを用いてグループ内ネットワークを介して情報交換を行うことには全く問題はない。  長年の間に会社自体も景気の大波に揺さぶられながら難関を乗り越えてきたが、そのような会社にとって厳しい状況の時に真に会社を支えるべく頑張ってこられたご本人の業務に対する姿勢が、結果として会社に大きく評価され、現在の地位に結びついている。  会社自体は特に障害者雇用を強く意識しているということはないようだ。今回インタビューさせて頂いたご本人はその活躍ぶりにより、会社にとってなくてはならない存在になっていることを実感した。 (望月 優) ------------------------------------------------------------------------------------ (3) 大橋委員、近藤委員所見 10. ソフトウェア業 (調査日2003年11月17日) 同社は、昭和46年8月設立、資本金2億5千万円、従業員910名の企業で、コンサルテーション、システムインテグレーション、システム開発・開発支援、システム運用管理等を行なっている。  障害者カウント数は10ポイント、視覚障害者の従業員、現在は1名。 同社の視覚障害者雇用の切っ掛けは、 1.社会貢献の一貫として、 2.雇用率についても、考慮したがすべてではない、 3.視覚障害者のコンピュータ技術の訓練状況を知り、同社の業務(プログラミング)に適していると考えたためと、説明された。  サポートのため専属の晴眼者を配し、視覚障害者の社員の世話をしている。資料の収集や資料の点訳をボランティアへの依頼等、業務遂行のための支援と、業務環境整備をサポートしているとのこと。  企業として障害者雇用には、積極的で、社会的責任を当然のこととして果たそうとされており、敬意に値する会社との印象を受けた。  同社の専属サポート担当の配置は、視覚障害者雇用にあたり、当初どのような施策が、視覚障害者の能力を充分に、発揮するかの議論の中決定されたとのこと、これにより、長期雇用を、実現(10年以上)した。 視覚障害者の雇用を検討している会社に対して、いつでも、サポートについてのノウハウを、指導する用意があるとのこと。将来的には、技術面に対しての専門的知識を有するサポート担当は、不可欠であるというのが、同社の見解であった。  これまで、新しい技術を習得するための、教材の作成にあたり、ボランティアグループと連携し、スムーズな専門書の点訳を実現したが、この各ボランティアグループとの仲立ちは、サポート担当が中心になって行ったとのこと、また、ボランティアに関する情報は、障害当事者が収集したとのことであった。  サポート社員との連携で、プログラミング業務に従事している視覚障害者の社員は、これまで、自らの提案により、データ出力のためのソースを、自動的に作成するためのシステムを開発し、業務の効率化を向上させ、その他、顧客からの要請に応じて個々の課題を解決する局面は多くあり、会社からも高く評価されていた。また、本人もこれまでの業務遂行には、それなりの自信と誇りを持っていた。  しかし、これからの課題として、ウインドウズによるプログラミング・ノウハウが、個人に帰属していて、習得するのが難しいこともあり、本人とサポート担当の方も打開策に苦慮しているようであった。  また、今後の業務については、技術者のリーダーとしての役割を担って欲しいとの会社側の意向と、技術者としての業務を重視し、社内研修においても技術を中心に、指導したいとする本人の希望とは、必ずしも一致していないようであるが、本人も会社の意向については理解しており、サポート担当の方が、この関係の調整にあたられるようであった。何事もオープンに話し合われる社風があるようで、14年の勤務の歴史を感じさせた。  在宅就労について、会社側としては、プログラミングの開発は周囲の職員のフォローが必要な局面が多いため、簡単に在宅で就労できるのか疑問である、在宅は、かえって、仕事を狭める結果になる可能性があるとの指摘であった。また、職員の身分にもかかわる問題も含むであろうとのこと。視覚障害者本人の意見は、視覚障害者を、その他の職員と切り離す方向に向かう可能性があり、在宅就労の推進には賛成できないとのことであった。また、雇用率を、達成するまで、在宅就労は制限すべきではないかとの意見であった。 視覚障害者関連機関に期待することとして、ITに関するノウハウを研究し、公表してほしい、例えば、ウインドウズによるプログラミング方法など。 これは、会社と本人同意見であった。 また、就職後のフォロー・ノウハウの伝達が必要と指摘され、特に、就職直後の業務遂行方法には試行錯誤を繰返すことや、周囲への啓発活動等、障害当事者には、過重な負担がかかっているため、この時に、カウンセリング、各種情報の提供を関連機関が行う体制になっていることが必要であり、これが不備な場合、高い能力があっても、それを発揮する前に、つぶれてしまう可能性があるとのことであった。 法律や制度に対する要望として、会社側は、助成金の給付方法に工夫を指摘され、本当に必要な場面に、助成すべきとされ、具体的には、一律の助成ではなく、設備の充実に対しての助成等、弾力的に運用されるべきとのことであった。 ハローワークの追跡調査についても、5年以降の定着率について、まったく調査していないことに制度の不備を指摘された。 視覚障害者本人からは、雇用促進協会の各種補助における、不合理な制限の実例として、10年間での住宅補助の打ち切りなどの不合理さを指摘された。また、ハローワーク職員の各種障害に対する専門的知識の充実または、障害者雇用専門のハローワークの設立等を求めるとのことであった。 雇用率未達成時の納付金が、安すぎるのではないかとの感想も述べられた。 バリアフリー環境整備に対する、公的機関の仲介として、障害者側の要求を、公的機関が、仲介して、被要求側と交渉するシステムの導入を提案された。 視覚障害者の就労に関する意見では、これから就職を目指す人へのアドバイスとして、3年間は、やめるべきではない、そこを、乗り切ることが重要であり、最初の3年間で問題が明確になるので、できることと、できないことを、明らかにして、できないことについて、どのようなフォローを受ける必要があるかが理解されれば、道は開けるとのことであった。本人の経験からこれがもっとも重要なことではないかとのことであった。 同社としては、視覚障害者雇用においての最重要事項は、人材としての能力の発揮をいかに行なわせるかを重視しているとのことであり、他の会社へのアドバイスとして、 1.専属のサポート担当の配置は必要であること、 2.地域のボランティアとの連携が不可欠であること、 3.テスト的に障害者を就労させてみるべきであること、 (ただし、これは会社に不適合と判断した場合は、正式に雇用しないという当然の決定を気軽にできる体制が、社会に根付かないと難しいかもしれないがとのコメントあり) の3点を挙げられた。 (大橋克己、近藤義親) ------------------------------------------------------------------- まとめ 在宅視覚障害者のIT化に伴うアクセシビリティに関する調査研究事業の調査を通しての考察  今回の調査は、視覚障害者に対する雇用企業・団体、及び被雇用者へ各々アンケートの発送、回収から始めた。  引き続き回収した各関係先へ2003年11月に直接出向いて聞き取り調査を行ったのである。  この調査を行うための準備とその過程、更に、調査の結果から得た事柄は、予想していた通りであったり、意外な発見もあって大変に参考なるものを得られた。  調査の目的は、視覚障害者がITを活用した就労に如何に対応できるかの視点で取り組んだ。  そのIT機器のなかでも、多く活用されているものは、パーソナルコンピューター(以下PCと称する)であることが印象的であった。  そこで、雇用者側と被雇用者をそれぞれ分けて就労の取り組みについて述べてみたい。 (1) 雇用者側  雇用者企業・団体の経営実態によって、被雇用者の取り扱いに対する理解度がはっきりとした違いをみることが出来た。  そこで、大きく次のように分類し述べてみる。 1. 中小企業等の事業体  このような事業体の多くは視覚障害者に対する商品を取り扱っている所であったが、殆どは小規模の形態で、またベンチャー的のところが多い。  そのため、被雇用者に何を専業に就労させるか、迷っている状態である。  しかし、視覚障害者向けの取り扱い商品は視覚障害者の目線から得られる期待を持って雇用した視覚障害者を商品説明、クレーム対応などに接応させながら、仕事の具体的役割を茂索している段階のところが多い。  しかし、なかには、被雇用者が視覚障害を持ちながら、PCやITに卓越した知識と才能を生かして、それら機器に対し新たな創造力を発揮して、ソフト開発でインストラクターの役割を充分に果たして就労していたところもあった。  本人の並々ならぬ努力の結果が、その企業体の大きな戦力になっていることは、敬服すると共に他の視覚障害者への励みになる誠に心強い雇用者と被雇用者の共存企業もあった。 2. 特例子会社  特例子会社は障害者を雇用する目的で設立された企業であるため、当然、視覚障害者に対する就労の配慮は行き届いている。  就業規則をはじめ、晴眼者、男女差、賃金面などのおいても、平等に扱われている。  斯様な企業とはいえ、他の障害者と比べ視覚障害者の雇用は、必ずしも多いとはいえない。  このことは、後で述べるように雇用者側だけの問題とは言えない一面もある。 3. 一般企業(特に大企業等)  ここで述べる一般企業は、その殆どは民間企業である。  障害者の法定雇用率は、大企業ほど高いし、その意義の理解もある。  また、毎年微増ながらも増加しているが、こと、視覚障害者への就労の理解は極端に悪い。  この理由は、大きく分けて二つに要約される。  A)身体障害者に対しては、健常者でも何らかの怪我などで、その不自由の体験をしているので・おおよその理解はできるが、視覚或いは聴覚の障害はその体験がないとく理解し得ない。  B)民間企業の雇用者は、企業存続の社会性と利益追求に対する企業の性格上、障害者に対するための事務管理態勢は充分に整ってはいない。  特に視覚障害者の分野には全くないと言えるが、昨今、ITの利用に馴染んできた事務システムに視覚障害者への就労へ目を向ける企業も少しづつ生まれてきたものの、まだ、一般的には至らない。 4. 視覚障害者の在宅就労には消極的である。  理由としては、大きく整理すると次のようになる。  A)フレックス タイム制をまだ導入していない企業では馴染んでいない  B)視覚障害者への理解不足から生じる事務管理態勢の未整理 (2) 被雇用者側  被雇用者にも就労に対する意識を改革するいくつかの問題を提起しなくてはならない。 1. 障害者も先天的なものと、後天的いわゆる中途視覚障害者に別けられるだけでなく更に、全盲者と視覚障害程度によっても、かなりの行動事情も異なってくる。 2. 今まで、三療業と言われていた職業も視覚障害者の独占と言えない変化が生じてきた。 3. 特に近年、中途視覚障害者は増加している。 今まで、晴眼者であっただけに突然の障害は人生の将来への不安は計り知れないものがある。 4. この様に、さまざまな事情背景を持ちながら、社会へ調和をしながら就労することは大変なことであるが、今日、多様なITが発明・開発された中で、視覚障害者PCの利用も、最早日常的になりつつある。 5. 被雇用者はある程度就労先に慣れたら、在宅就労を希望したいとの声もあった。 6. 視覚障害者は社会へ積極的な参加意識が足りないようである。 (3) 雇用者・被雇用者をコーディネートサポートすることへの提案  今まで述べた事柄は、この度の聞き取り調査を基にして、その一部を報告したのであるが、そこから、雇用者・被雇用者各々が就労についての理解を深めるために、彼らをサポートする組織の必要性を実感したのである。  即ち、 1. 特別に視覚障害者に係わっている事業体や企業を除く一般企業(含一般晴眼者)は視覚障害者の実情は視覚障害の体験がないために正しい理解がない。  そのために、障害者をどう扱っていいのかが全く判っていないのである。 2. 一方、視覚障害者においても、企業勤務の経験の有無によって、就労とは何かを考える場を行政機関も具体的にもつと応援されることを求めたい。 3. 雇用者と被雇用者で、更に必要なことは、被雇用者にあっては自分が何ができるのかを具体的に表現・提示が出来るようにすることが、就労を容易にすることになる。 4. 雇用者にあっては、雇用に当たって、被雇用者に対して何を求めるのかを明確に示すこともまた必要である。  障害者の雇用も、ただ法定雇用率達成だけの目的では意味がない。  雇用後にどういうことが、出来るのかを模索しているようでは、両者ともエネルギーの損失が大きい。 (4) 総括  総括として今回は、視覚障害者の就労に絞った調査であったが、福祉の取り組みにいくつかの疑問が生まれた。  箇条的に集約すると 1. 障害者の区割りが不明確である。  例示すると、法定雇用率を見ても、全ての障害者をひと纏めにしていることである。  果たして、身体障害者や視覚障害者、聴覚障害者などを一律的に雇用率に包含してることに、今後の就労に雇用者も被雇用者も満足できる働く場所にはなるのであろうか。  労務管理上の問題点として指摘したい。 2. この法定雇用率には、除外率設定業種がある。  この制度も廃止に向け段階的に毎年縮小されて行く傾向にあるものの、法定雇用率の未達成の割合をみると、雇用者、被雇用者共にそれぞれの理解をしあえる協力と教育を更に深める事が急務と考えるものである。 3. 更なる疑問に、視覚障害者の就労実態がどこの関係機関でも明確に把握していないことは驚きであった。  調査期間の制約などで、報告には物足りなさを大いに感じる結果になったが、かかる、調査は今後も継続して行うことを強く期待したいものである。  最後に、本調査にはご多忙の中、多くの方々から真剣に意義あるご協力を戴いたことに、本書をかりて、厚く御礼を申し上げる次第である。 (天岡 秀雄) -------------------------------------------------------------------------------- 障害者雇用助成金名称一覧 A:障害者雇用納付金制度に基づく助成金 http://www.jeed.or.jp/employer/data01.htm 1.障害者作業施設設置等助成金 2.障害者福祉施設設置等助成金 3.重度障害者介助等助成金 4.重度障害者等通勤対策助成金 5.重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 6.障害者能力開発助成金 7.障害者雇用支援センター助成金 B:障害者雇用継続援助事業に基づく助成金 http://www.jeed.or.jp/employer/data02.html 1.中途障害者作業施設設置等助成金 2.重度中途障害者等職場適応助成金 ●問い合わせ先 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 http://www.jeed.or.jp/ 03−5400−1600 ●機構本部 竹芝事務所 105-0022 東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー内 TEL:03(5400)1600 FAX:03(5400)1638 大手町事務所 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-2-3 三井生命本社ビル2階 TEL:03(5223)3410 FAX:03(5223)3409 -------------------------------------------------------------------------------- 在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究事業 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 事務局 中尾 忠雄 鷲尾 清孝 以下、委員 委員長 望月 優 株式会社アメディア 代表取締役 委員 天岡 秀雄 法政大学比較経済研究所 兼任研究員 委員 荒川 明宏 株式会社ラビット 代表取締役 委員 石川 充英 東京都視覚障害者生活支援センター 指導訓練課主任 委員 大橋 克巳 筑波技術短期大学 非常勤講師 委員 近藤 義親 ケージーエス株式会社 営業部長 委員 下堂薗 保 中途視覚障害者の復職を考える会(通称「タートルの会」) 会長 委員 堤 由紀子 身体障害者雇用促進研究所株式会社 インストラクター -------------------------------------------------------------------------------- 書名  在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究事業 報告書     -コミュニケーション手段から就労への可能性について- 発行 平成16年3月15日  本報告書は、独立行政法人福祉医療機構より調査研究事業として助成を頂き、 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究事業委員会にてまとめたものです。 -------------------------------------------------------------------------------