日盲社協通信 令和7年(2025年)12月号(通巻91号)

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日盲社協通信 令和7年(2025年)12月号(通巻91号)
編集人:福山博
発行人:長岡雄一
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/

もくじ

巻頭言「対人関係を考える」 理事長 長岡雄一

今年は、インフルエンザの流行時期が早まり、横浜市のように12月時点ですでに流行警報が発令されている地域も出ているようです。感染症と言えば、新型コロナも依然として形を変えながら、威力を奮っていると聞きます。
それでも、街に出るとマスク姿の方もだいぶ減りました。電車に座って、前の座席に座っている人を見ると、時には7人全員がマスクなしという光景も決して珍しくなくなりました。
しかし、2020年に始まった新型コロナ流行は、今でも大きな影響を社会に及ぼしているように思います。先日、ある専門学校で、学生の実習についての話を伺いました。先生方の話によると、実習時に指導者や利用者とのコミュニケーションがうまく取れないという実習先からの評価を多く聞くようになっているとか、授業でも、一見静かに聴講しているようだけど、担当教員との関係性がうまくいかないとか、様々な問題が語られていました。
「新型コロナがすべての原因とは言わないけれど、中学生、高校生の時に在宅を強いられ、教員や友人との直接対面での接触が少なかった世代が、今、専門学校生や大学生になり、『実習』という社会と直接接しなくてはならない課題にぶつかったとき、どうしても、中学・高校時代の今までにはなかった対人関係の形に縛られてしまい、実習そのものがうまくいかないように思う」という教官の発言は、思い当たる点が少なからずあるように思います。
対人関係がうまくいかない結果、教官や実習指導者との間にもギャップが生じているという事実も考えさせるものがありました。
また先日、何十年かぶりに、以前お世話になった眼科医と会い、一緒に仕事をした頃のことを懐かしく語り合いました。同じ病院で、医師と歩行訓練士という立場での関係性でしたが、今、この分野で言われている視覚障害者への早期介入をすでに行っていたこともあり、現在の状況も含め、改めて、視覚障害者福祉を考えるきっかけともなりうる時間を過ごすことができましたが、ある話に非常に興味をそそられました。
曰く「今、医療では電子カルテが必須で数年後にはすべて置き換わるということだが、患者さんは、診察中に医師がパソコンに向かっていると、『もっと自分をみてほしい』」と言うけれど、紙のカルテに記入していると、何も言わない」というのです。記録するという行為そのものに変わりはないが、手書きとキーボード入力のどこに違いを感じるのでしょうか。
いずれのケースも、直接処遇に関わってきた者として、対人関係を改めて考えさせられた出来事でした。

点字考案200年 節目の思い 点字出版部会長 肥後正幸

ここ数年、デジタル化が進む中で「点字」というものの存在も大きく変化し、色々な影響をうけてきました。UDブラウザ教科書やデイジー(音声)教科書、音声端末などの需要が増え、点字本の供給数も以前に比べて大きく変化してきています。実際に、スマートフォンやPCなど、音声利用ができる端末が必須の生活になっている視覚障害者の方々も多いのではないでしょうか。
私がこの点字業界に入った40数年前では考えられなかったような変化です。こんなにもデジタル化が進み、私たちの業界にも大きな影響を与えるとは想像もしていませんでした。こういった変化に対応すべく、私たち点字出版部会も日々踏ん張っているところです。
昨今、様々な業界で「人手不足」や「後継者不足」という言葉を耳にするようになりました。今まではどこか他人事のように聞いていた言葉が、我々点字出版部会の大きな問題になってくるとは思ってもおりませんでした。
点字の本を作成するには、大変な手間と知識・技術が必要です。その習得には年数を要しますし、根気も必要です。また、職員の採用に大変苦労されている出版所も多々あります。職員の高齢化が深刻となり、点字出版に必要な技術の次代への継承が難航しているというのも大きな問題となっています。
点字出版に必要な機械も、メンテナンスや買い換えが度々必要になります。市場が小さいため、作業に時間がかかったり、メーカー自体の後継者不足や事業縮小の危機という問題も発生し、不安を感じている出版所も少なくありません。点字関連の機器を取り扱うメーカー自体が少ないことは、限定的な業界であるが故の悩みです。点字機器メーカーは老舗の会社も多く、素晴らしい技術をお持ちです。こういった会社に長く事業を続けていって頂くためには、私たち点字出版業界側も頑張って生き残っていかなくてはいけないですね。
こういった諸問題に対応するため、点字の楽しさ、点字の奥深さを多くの人に知ってもらうこと、デジタル化に対応出来る人材を育成していくことが、これからの私たちの一番の課題、使命ではないかと感じています。
2025年は点字考案200年の大きな節目となりました。各所で200周年のイベントが催されており、次の250年、300年と周年記念に繋げていけるような活動をしていかなければならないと改めて感じました。
2026年の点字出版部会は、先ほど挙げたような課題の解決のほか、「選挙公報」点字版の普及に向けた活動、『点字出版物製作基準』の見直しなどをテーマに、一歩でも前に進めるよう活動して参ります。

読書バリアフリーと人材育成 情報サービス部会長 又木勝人

昨今の情報サービス部会における重要なテーマの一つが「読書バリアフリー」であり、今後もその実現に向けて様々な取り組みを計画し実施していくことになります。
視覚障がい者をはじめとする多くの読書困難者にとって、大きなターニングポイントとなった法律「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)が施行されたのは2019年6月28日でした。
同法の目的は「障害の有無に関わらず読書による文字・活字文化の恩恵を受けられる社会の実現」であり、全国での実施です。
また、同法第7条に基づいて、読書バリアフリー基本計画が翌2020年7月に策定されました。5カ年計画の1期目が終わり、見直しが行われた結果「点字図書を安定的かつ効率的に製作することが可能となるよう、製作現場に必要な運営支援を行うこと」等の文言が明記されるなど、より現実的で、かつ意義ある基本計画となり、2025年度より第2期目がスタートしました。
情報サービス部会では、次に掲げる6つの委員会活動を行っています。
1.点字指導員研修委員会
2.音訳指導員研修委員会
3.情報化対応指導者研修会(情報機器コース)
4.情報化対応指導者研修会(相談支援コース)
5.音声版選挙公報製作委員会
6.実態調査プロジェクト委員会
これら委員会活動における目的は、視覚障害者への情報保障の充実であり、それをもって、視覚障害者の社会参加の促進や、QOL(生活の質)の向上に寄与できるよう取り組みを進めているところです。
前述した読書バリアフリーのための取り組みや情報保障に関する様々な活動は、質の高いものでなければならないと思います。
社会が急速に変化しているのと同時に、利用者ニーズも多種多様化しています。
つまり、図書製作においても、情報化対応についても強化が求められています。またそれぞれの対応力・体制に地域格差があってはならないことが重要です。そこで点字・音訳、情報化支援等のエキスパートを養成し、全国一律の支援体制を構築できるよう各委員会は努めています。
一方、近年は全国の施設において運営上の厳しさから委員会への職員派遣を躊躇されるケースも生じており、今後の活動に支障をきたすことも案じられるところです。手前味噌ではありますが、私個人も、私の所属する施設職員も委員会で人を知り、知識や経験を得て地元施設にフィー
ドバックできた経験もあります。
時代に即した委員会活動となるよう見直しや効率化を行い、関係団体等の連携強化により、負担軽減を図りながら、次世代の人材育成に取り組み、持続可能な委員会活動に繋げたいと思います。

紙上慶祝会
浜松の斯波千秋さん 第42回鳥居賞を受賞!
全国を牽引する福祉就労の実践、白杖の普及から国際貢献へ 日本盲人福祉委員会 評議員 加藤俊和

鳥居賞は、日本盲界の先駆者で「盲人の父」と慕われた、日本盲人会連合二代目会長で京都ライトハウス創立者の鳥居篤治郎先生の遺徳を偲び、視覚障害者福祉の一層の発展を願い、実本博次氏や松井新二郎氏らによって、遺徳顕彰会が創設され、1983年から鳥居賞の表彰が始まりました。
「斯波千秋さんは、1949年生まれの浜松育ち、1972年から22歳の若さで盲人福祉研究会を引き継がれ、白杖をはじめとする盲人用具の製作・普及から、小規模授産施設を設立されて、……」と紹介しよう、と思っていましたら、なんと、この「日盲社協通信」の2025年5月号に詳しく書かれておられました!……というわけで、私の出る幕はありませんが、以下は「私の知る斯波千秋さん」として、余分な、蛇足の、付け足しです……。
斯波千秋さんの父、穏(やすし)氏は、1954年に日本で初めて白杖の製作販売を始められていました。私事ですが、点訳を始めた1961年頃から盲人用具にも関心を持ち、「盲人福祉研究会」という名前にも興味津々でした。私は企業に就職した1968年から“盲界”に首を突っ込み、あちこちで白杖のことを熱心に説いておられる斯波穏氏ともお話していました。そのうちに、若い!千秋さんにもお会いするようになりましたが、まず歩行訓練士を目指されておられたことは知りませんでした(実は私も、同じ1972年に受講しようとしたのですが、条件を整えられず挫折していました)。
でも、千秋さんはそれから、その願いを地道な努力で積み重ねられて地域の方々とともに大きな運動とされ、1996年には視覚障害者のための小規模授産施設「ウイズ」を設立されました。その前から、「ofでもforでもなくwith、視覚障害者もだれかれも共に、の with です」と語られる50歳前の千秋さんのお顔からは、強い思いがほとばしっていました。今の千秋さんのお顔には、穏やかなにこやかさが加わりましたが、この強い思いが変わることなく秘められています!
私は災害支援に関わっていますが、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震と、いつもすばやく浜松から白杖が届けられていました。感謝しかありません。
視覚障害者の福祉就労の実践から国際貢献まで、全国を牽引して希望を与え続けておられる斯波千秋さん、本当におめでとうございます!

紙上慶祝会
第62回点字毎日文化を受賞!
高校生時代の点訳奉仕から大災害支援まで長く幅広い活動が評価
日本盲人福祉委員会 常務理事 指田 忠司

加藤俊和さん、このたびは第62回点字毎日文化賞のご受賞、誠におめでとうございます。
加藤さんは高校生のころから点訳奉仕活動に従事され、その後も長年にわたり視覚障害者支援活動に尽力してこられました。特に、関西Student Library)の設立に関わられたことは、東京にいた私も学生時代からよく聞いており、今でもその活動が多くの方々に恩恵を与えていることを実感しています。
加藤さんは1980年に日本ライトハウスに転職され、点字図書の制作や出版業務に携わられ、多くの視覚障害者の情報アクセス向上に貢献されました。
さらに、日本ライトハウスの役員として活躍され、特に2002年のアジア太平洋ブラインド・サミットの事務局長を務められた際には、開催地大阪において海外からの参加者の受け入れと会議の運営に尽力され、成功裡に終わり、アジア太平洋地域の視覚障害者のネットワークづくりに貢献されました。
その後、2011年の東日本大震災発生の際には、迅速に各団体との連携を図り、被災した視覚障害者の支援活動に尽力され、日本盲人福祉委員会の行う被災視覚障害者支援活動の中心として支援体制の整備に努められました。
2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震等に際して初期支援の段階を含めて被災視覚障害者の状況を把握され、支援活動に尽力されました。
このような加藤さんの幅広いご活躍が高く評価され、このたびの点字毎日文化賞が授与されたと思います。
今後とも加藤さんのご尽力が求められることが多いと思います。ご健康にご留意され、ますますのご活躍を期待いたします。私ども日本盲人福祉委員会の活動にとっては支援活動の継続のため、災害時の支援の重要性の啓発、幅広い支援者の確保などこの事業の発展のために今後ともご指導ご協力をお願いしたいと存じます。

紙上慶祝会
シナノケンシ社の本間一夫文化賞受賞を祝う~デイジーの普及・発展の立役者~
日本ライトハウス情報文化センター 館長 久保田 文

この度、第22回本間一夫文化賞をシナノケンシ株式会社が受賞されました。
周知の通り、本間一夫先生のご功績を記念して設立された本賞は、視覚障害者の文化・福祉・教育の向上に貢献した個人・団体に贈られる賞です。シナノケンシ社受賞の一報を聞いた時は、普段からデイジーに関わっている者として、納得もし、嬉しくも思いました。
デイジー(DAISY)は、今や日本をはじめ50ヶ国以上で使われているデジタル図書(録音・電子書籍)の国際標準規格ですが、シナノケンシ社はデイジー再生機の誕生に企画・構想段階から深く関わり、1998年に世界初のデイジー図書専用再生機「プレクストークTK-300」を世界に向けて発売しました。当時の当館の情報誌にも、「TK-300」をカセットテープに代わる視覚障害者用録音図書プレイヤーとして紹介し、当館が録音図書のデイジー化に着手するという記事が掲載されています。
また、同年に第1回目を開催した「日本ライトハウス展(当時は「情報機器展98」の名称で開催)」では「TK-300」の体験コーナーを設営し、来場した視覚障害の方々に、墨字の図書に匹敵する検索性を持った新時代のデジタル録音図書を紹介しています。
その後もシナノケンシ社のイノベーションは止まらず、2002年には録音機能が付いた「プレクストーク PTR1」(再生機に限定した中価格帯モデル「プレクストークPTN1」も同時発売)、2005年には後継の「PTR2」及び「PTN2」を発売。全国にデイジー図書が加速度的に広まりました。
最新の「プレクストーク PTR3」には、「サピエ図書館」のデイジーオンラインサービス(PCが無くてもネットからデイジー図書をダウンロードできるサービス)に対応した機能が付いています。
デイジーは、視覚障害、発達障害、読字障害、上肢障害等、読書にニーズを持つ多くの方の読書環境を支える根幹の技術であり、我が国のデイジー図書の普及・発展はシナノケンシ社の功績なくして語れません。
最後に、私の個人的なエピソードになりますが、大学を卒業した1994年、私は就職先の会社で、プレクスター製(シナノケンシ社)のパソコン用4倍速CD-ROMドライブを仕入れる仕事をしていました。世界初というその技術と、新卒の社会人には目を剥くほどの価格にのけぞったことを覚えています。
私にとってプレクスターは垂涎の超高級ブランドだったわけですが、当館に就職して「TK-300」と対面した時は、運命的なものを感じました。ちなみに、当館では「TK-300」が今でも現役でバリバリ動いています。

紙上慶祝会
近藤正秋賞に社会福祉法人桜雲会 片岡好亀賞に日本点字委員会が受賞!
名古屋ライトハウス専務理事 山下 文明

社会福祉法人名古屋ライトハウスが主催する第20回近藤正秋賞・片岡好亀賞に社会福祉法人桜雲会様、日本点字委員会様が受賞されました。
近藤正秋賞は、『地域団体活動、職業活動、政治活動などにおいて著しい功績があるとともに、今後の活躍が期待される視覚障害者または団体』に贈られる賞です。
あらためて申すまでもありませんが、2022年1月に創立130年を迎えた社会福祉法人桜雲会様は、1892年1月17日、東京盲唖学校の盲生徒の同窓会として発足、1902年に今田束著「実用解剖学」全8巻が点字本として販売されたことから点字出版部が発足し、日本で最初の点字出版所となりました。1952年には社会福祉法人桜雲会となり、日本最古の医学書専門点字出版所として先進的に活動を行ってきています。
現在は、視覚障害者情報提供施設として、総合的な点字出版事業、自治体の点字版広報や音声版広報製作などの委託事業、録音図書のデジタル化を行うデジタル製作事業、また、国内及び外国のあはき師の卒後教育支援事業、生活用具支援事業、バスツアーや講演会の企画など社会活動等々、常に第一線で活動を展開し盲界をリードしてきました。
点字出版事業を中心としたこれらの輝く業績は“近藤正秋賞”にまさにふさわしいものであります。
また、片岡好亀賞は『福祉、教育、文化、スポーツ等の分野で活躍し視覚障害者の社会的進歩に著しい功績があるとともに、今後の活躍が期待される視覚障害者または団体』に贈られる賞で、日本点字委員会様に贈られました。
こちらも言うに及ばずですが、1966年に発足した日本点字委員会は、盲教育界と盲人社会福祉界からの委員を中心に組織され、日本における点字表記法の唯一の決定機関として、点字表記についての提言や表記の統一に向けた活動、表記法の決定と普及、点字研究機関の育成と指導、内外関係諸団体に対する連絡と調整など点字全般に関わる活動を継続的に行い、点字を通した視覚障害者のスムーズなコミュニケーションの確立と社会参加の推進に大きく寄与してきまし
た。
これらの活動と業績は“片岡好亀賞”にまさにふさわしいものであります。両賞とも日盲社協、長岡雄一理事長にご推薦いただきました。ありがとうございました。
点字考案200年という節目の年にあたり、両団体の業績と活動は今回の受賞にまさにふさわしく、あらためましてお祝い申し上げます。
おめでとうございました。

第73回全国盲人福祉施設大会 ~金沢で復興と文化創造を考える~

第73回全国盲人福祉施設大会が11月27日28日の2日間、石川県金沢市のANAクラウンプラザホテル金沢で開催された。
今大会は、日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)長岡雄一理事長の「震災からの復興をみんなで考えたい」との強い希望を、石川県視覚障害者情報文化センター・米島芳文センター長が「苦しい決断だったが、熱意に感動し」実現した。
参加者は、点字出版部会6施設7人、情報サービス部会28施設38人、自立支援施設部会10施設13人、生活施設部会3施設5人、盲人用具部会8施設9人、ボランティア受賞者6人、石川県視覚障害者情報文化センターから11人、日盲社協から長岡理事長ら3人の計92人だった。
開会式で、長岡理事長は「能登の復興に敬意を表する。何を感じ何を考え何を成し遂げるかを見つけていきたい」とあいさつ。今大会主管施設の米島センター長は「復興へご支援に感謝。伝統文化に新たな文化都市が融合した金沢の文化に触れていただきたい」と歓迎の言葉を述べた。

講演1 のとじま水族館 完全復活
~あの日から今日まで、そしてこれから~
石川県県民ふれあい公社のとじま水族館
展示・海洋動物科長 加藤雅文

令和6年1月1日午後4時10分、能登半島地震発生。マグニチュード7.6、震度7。のとじま水族館は通信機能喪失、島への橋は通行止め、孤立状態。館内約200人の避難誘導。配管等飼育設備は深刻な損傷をし水位低下、水質・水温悪化、漏水・漏電の中での必死の避難救出にも、人気のジンベイザメ2頭を含む約5000匹が死滅した。
復興には、資金支援と他の動物園、水族館の協力が欠かせなかった。
新潟市水族館、上越市立水族博物館、富山市ファミリーパーク、いしかわ動物園、すみだ水族館、八景島シーパラダイス、越前松島水族館、天王寺動物園、アドベンチャーワールドの全国9施設に63点の展示生物を取りに来て、受け入れてもらった。飼育機材の提供もあった。大きな力になった。何よりも精神的支えになったのは、応援メッセージ・イラストで、今も水族館に貼ってある。
最後に、「助け合い」が力になり、水族館として「支え合える存在」を目指すと講演を結んだ。

報告 能登半島地震被災者支援の取組
石川県健康福祉部障害保健福祉課 地域生活支援グループ 主事 金子龍騎

震災への石川県の対応が報告された。
要介護・要配慮者は、学校や公民館などの一次避難所からホテルなどの二次避難所に移るが、能登半島地震では、地理的要因やライフラインの長期の停止により移動ができなかった。そこで、1月8日にいしかわ総合スポーツセンターなどに1.5次避難所を開設。医師、看護師、薬剤師、ケアマネ、介護福祉士、ボランティアなどを配置した。通常市町村が行う避難所経営を県が行うという独自の対応ができた。
視覚障害者への3つの支援が報告された。1つは、被災見舞金の支給を県が周知協力、石川県視覚障害者協会の会員増加につながった。2つ目は、地域コミュニティー再建事業による地域イベントに被災マッサージ師の派遣を組み入れた。3つ目は、石川県代筆・代読支援員派遣事業を都道府県規模では全国初の実施でした。1回当たり最大2時間、被災証明の発行時はもちろん日常生活場面でも無料で利用できる画期的な制度になった、との報告が行われた。

その後、5部会に分かれての事業部会会議を行い、夕方6時から交流会となった。
交流会では、5部会の部会長が部会会議を報告。活動内容や各施設が抱える困難が報告された。
続いて、宝生流・松田若子さんによる能楽「高砂」が披露され、「羽衣」の一節を会場と共に謡い、金沢の伝統文化に触れた。
養護盲老人ホーム「ひとみ園」施設長の茂木幹央さんの乾杯があり、旧交を温め合う歓談の輪が広がった。

講演2 21美の奇跡
金沢21世紀美術館 館長 鷲田めるろ

新しい金沢の文化の創造という視点で講演。金沢21世紀美術館は「21美」と略称され、2004年10月9日に開館、22年目になる。年間来場者約200万人(日本第5位。上位は国立の科学館、美術館、博物館)、当初目標を30万人と高く掲げたが、それを大きく上回っている。
鷲田さんは開館5年前の準備室から参加。通常、学芸員は1年前採用だが、5年前に採用し、基本設計から関わった。

美術館は温度湿度管理、光を遮り閉じられた「蔵」。それが、全面ガラス張りの円形建築、フェンスを取り払いどの方向からも入れ、約4割が無料ゾーンという斬新な美術館である。設計は妹島和世と西沢立衛による建築家ユニットSANAA。若手を抜擢した。
金沢市が考えたコンセプトは①新しい文化の創造②にぎわいの創出の2つ。
新しい文化の創造??「新しい」に重点があります。金沢と言えば友禅・象嵌・塗り物などの伝統文化、普通の発想なら金沢伝統工芸美術館になる。伝統文化に刺激を与え新しい文化をつくる、難解で限られたファンしかいない現代美術をもってきた。
ニギワイの創出??1990年代はバブル崩壊後の美術館冬の時代。都市のドーナツ化と地方都市からの人口流出。ファン数が少ない現代美術。ニギワイ創出に反する。
相いれないコンセプトをつないだのが斬新な美術館。海外では美術館が街づくりに役立つと言われスペインで事例があった。
「21美」建設をすすめた山出保元金沢市長は「本当にしんどかった」と2025年7月に亡くなる前にお会いした時に吐露された。
「21美の奇跡」は従来の常識にとらわれない発想とものすごいエネルギーが必要であることが示唆された。
2027年5月から11か月間、老朽化と被災修復のために全面休館。その間、作品を街に持ち出して展覧会をする。大金庫のある旧日銀、香林坊を会場にすると、「新しいとニギワイ」を演出する企画を披露して講演をしめた。

第73回全国盲人福祉大会 式典

式典は米島主管施設長、長岡理事長挨拶につづき表彰にはいった。ボランティアへの感謝状贈呈は、90人を代表して日本点字図書館の淺岡高子さんに長岡理事長から贈られた。また、永年勤続職員18人を代表して視覚障害者生活情報センターぎふの山村友梨子さんが表彰状を受け取った。援護功労者として国際ソロプチミスト金沢の大樋洋子代表といしかわ映音ガイド アイ&あいの喜多美津子会長に感謝状が贈られた。
来賓あいさつでは、出席された石川県の馳浩知事が全国初の石川県の代筆・代読支援員派遣などの復興の取り組みを披露し、今後の力強い支援を約束された。
このあと、第73回大会アピール文を石川県視覚障害者情報文化センター 職員の浅野つづきさんが読み上げ、満場一致の拍手で採択された。最後に、来年10月29日、30日の第74回大会は、神奈川県横浜市で行うことが発表された。次回の主管施設、公益財団法人日本盲導犬協会の山口義之専務理事からあいさつがあり、12時前に閉会した。

第73回大会アピール
全国から盲人福祉施設職員、関係者の皆さんをお迎えし、石川県において社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会第73回全国盲人福祉施設大会が開催されることを、大会参加の皆さんとともに喜びを分かち合うとともに、本大会を通じて相互の連携が一層深まることを願っております。
令和6年能登半島地震の発生で、石川県奥能登地域をはじめ、石川県内全域、富山県、新潟県にまで広範囲に深刻な被害をもたらしました。その後も豪雨による河川の氾濫や土砂災害が頻発し、さらに長期の避難生活を余儀なくされている方も多いと伺います。平常を取り戻すためにはまだまだ時間が必要です。復旧、復興へと着実に進んでいくことを願ってやみません。
現在、デジタル化社会が急速に進むなか視覚障害者にとってのICT機器の充実と活用の課題、読書環境の整備・推進の課題、歩行訓練をはじめとする今後の訓練のあり方等の課題、鉄道無人駅化が進むホームの移動の課題、代筆代読サービスをはじめとした意思疎通支援の課題、日常生活用具給付事業における地域間の耐用年数や対象品目の相違の課題など、まだまだ視覚障害者が抱える困難な問題はたくさんあります。
日本盲人社会福祉施設協議会には、点字出版部会、情報サービス部会、自立支援施設部会、生活施設部会、盲人用具部会が設置され、多様な福祉サービスを総合的に提供できるよう、資質の向上に向けた取り組みがなされています。すべては視覚障害者の福祉の向上、社会参加を支援するものであることは申すまでもありません。
日本盲人社会福祉施設協議会は、加盟する施設、関係団体を支え、さらに時代の変化による様々な問題、課題に対して積極的な情報発信を行うとともに、諸問題の解決に努めていくことを宣言いたします。
令和7年11月28日
第73回全国盲人福祉施設大会
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

ボランティア表彰者<施設名、氏名(敬称略)、奉仕内容の順>

旭川点字図書館 赤坂淑子(点訳) 井上恵美子(音訳)
千歳市点字図書室 内藤佳子(音訳・校正)
日本赤十字社北海道支部点字図書センター  松村斗季子(点字図書作成) 成田裕子(音訳図書作成)
函館視覚障害者図書館 黒丸義子(音訳)
廣岡清枝(点訳・デイジー編集)
北海点字図書館 上木由美子(点訳) 宮脇みどり(点訳)
青森県視覚障がい者情報センター 山田玲子(点訳・校正) 五十洲廣明(音訳)
岩手県立視聴覚障がい者情報センター 高橋節子(点訳) 本舘 操(点訳)
宮城県視覚障害者情報センター テープみやぎ(音訳) 渋谷秀子(音訳)
秋田県点字図書館 川尻普子(点訳) 金森洋子(音訳)
山形県視覚障がい者情報センター 星川茂子(音訳) 土門紀子(点訳)
福島県点字図書館 齋藤 愛(点訳) 渡邉美恵子(点訳)
とちぎ視聴覚障害者情報センター 石川綾子(音訳・作業奉仕) 藤田正江(音訳)
埼玉点字図書館 坂詰 泉(点訳) 目黒敏郎(デイジ?編集)
視覚障害者総合支援センターちば 工藤正毅(点訳) 加藤 薫(音訳)
日本点字図書館 淺岡高子(朗読校正・デイジ?編集) 福田千津(点訳・校正)
大田区立障がい者総合サポートセンター声の図書室 関口季三江(音訳) 点訳グループ・エスカルゴ(点訳)
神奈川県ライトセンター 上村美佐子(点訳) 小島砂稚子(録音図書編集) 豊島秀子(拡大写本) 高瀬和子(ITサポート・誘導)
横須賀市点字図書館 花上和代(点訳) 原田法子(音訳)
福井県視覚障害者福祉協会情報提供センター 河村賀代(音訳) 石黒佳美(点訳)
山梨ライトハウス情報文化センター 鶴見貴美恵(点訳) 古屋玲子(点訳)
視覚障害者生活情報センターぎふ 門奈弘子(音訳) 豊吉真佐子(音訳) 林磨利子(点訳) 安藤加代子(点訳)
名古屋ライトハウス情報文化センター 伊藤澄子(点字図書製作)
三重県視覚障害者支援センター 池田政子(点訳) 青木明子(点訳)
上野点字図書館 中居郁子(音訳) 服部美千代(音訳)
滋賀県立視覚障害者センター 寺谷久子(点訳) 西村和野(音訳)
京都ライトハウス情報ステーション 三浦英子(音訳・校正・デイジ?編集) 児玉恭子(読み書きサービス)
丹後視力障害者福祉センター 岸田孝子(点訳・校正) 糸井妙子(音訳・校正)
大阪府立福祉情報コミュニケーションセンター点字図書館 森脇みどり(校正・編集) 宮本春江(点訳)
堺市立健康プラザ視覚聴覚障害者センター 岡田恵子(音訳) 三上美江(点訳)
兵庫県点字図書館 中元三枝子(点訳) 清水秀子(音訳)
西宮市視覚障害者図書館 小山芙美子(音訳) 浅井照美(点訳)
奈良県視覚障害者福祉センター 丸山嘉子(音訳) 中川久美子(点訳)
天理教点字文庫 安田豊子(点訳) 西田恵子(音訳)
島根ライトハウスライトハウスライブラリー 下垣八重子(点訳)
岡山県視覚障害者センター 石原みどり(音訳)
山口県点字図書館 田熊れい子(音訳)
周南視覚障害者図書館 西林佳代子(点訳)
徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センター 長岡雅美(点訳) 木下 利明(朗読奉仕)
香川県視覚障害者福祉センター 檜垣規子(点訳) 松本美代子(音訳)
愛媛県視聴覚福祉センター 横田弥生(点訳) 中岡厚子(音訳)
北九州市立点字図書館 高橋鞆子(音訳)
福岡点字図書館 今福直子(音訳)
福岡市立点字図書館 松本優子(音訳) 福山正志(点訳)
熊本県点字図書館 古屋文代(点訳) 出田順子(音訳)
大分県点字図書館 早尻ふみ子(音訳) 浜本敏子(点訳)
都城市点字図書館 挾間喜代子(点訳) 長沼眞理(音訳)
鹿児島県視聴覚障害者情報センター 山元佑子(点訳) 水元常子(音訳)

援護功労者表彰

石川県視覚障害者情報文化センター
国際ソロプチミスト金沢 いしかわ映音ガイド・アイ&あい

Sight World 2025
生活を豊かにする熟した技術が息づいた
2026年は、10月22日(木)、23日(金)、24日(土)に開催
常務理事 荒川 明宏

サイトワールドといえば、毎年11月1日から3日間開催されるのがおなじみでした。しかし今年は、会場の都合で少し季節を早め、10月16日から18日の開催となりました。「日程が変わると、来場者が減ってしまうのでは……」と、正直なところ心配していたのですが、ふたを開けてみれば昨年の3,600人に対して3,100人。思った以上に多くの方が足を運んでくださり、開催前の不安がすっと消えていきました。情報は、必要な人にしっかり届けられていたようです。
さて、毎年恒例の「今年の見どころは何ですか?」という質問。これがまた難しい。今年は、誰もが思わず「おぉ!」と声を上げるような派手な新製品は、正直ありませんでした。その代わりといってはなんですが、長年コツコツ磨かれてきた既存技術の精度が着実に向上し、「頼もしくなったなあ」という印象が強く残りました。技術が「熟してきた」とでも言えるでしょうか。その上で、今年のサイトワールドをあえて一言でまとめるとしたら「ユニバーサル」この言葉に尽きるのではないかと思います。つまり、「視覚障害者専用」ではなく、「誰でも使える。だから視覚障害者も自然に使える」という方向性の展示が目立ったのです。
たとえば、タンデム自転車を使ったサイクリングツアーの紹介。聞いただけで風を切る感覚が蘇ってくるような、ワクワクする提案でした。また、QRコードを使った薬の内容の読み上げは、視覚障害者だけではなく、細かな字を読むのが苦手な方にもとても便利なサービスです。
一方、視覚障害者にとって切っても切れないテーマである「歩行」に関する展示も、静かに、しかし確実に進化していました。今回印象的だったのは、“障害物を探知して振動で知らせる” 製品が複数出展されていたことです。
特殊な眼鏡を装着することで、正面だけでなく左右の障害物まで振動で教えてくれるタイプ。さらに、白杖のグリップに取り付ける小さなセンサーが、障害物を感知すると白杖そのものが軽く震えたり、場合によってはナビゲーションしてくれるタイプ。どちらも海外で開発されたものですが「これ、日本の街で使ったらどうなるんだろう?」と想像せずにはいられません。日本での今後の展開が楽しみであり、注目したいポイントです。
派手さはなくとも、確実に生活を豊かにする技術があちこちで息づいていた今年のサイトワールドでした。
残念ですが、来年はまだ定例の11月1日?3日には戻れません。
来年のサイトワールド2026は、10月22日(木)、23日(金)、24日(土)での開催です。 どのような物が見られるのかが楽しみです。

Sight World 2025シンポジウム
「これからの白杖の歩行訓練」「あしらせ」「アイコサポート」
新たなICT歩行補助具と歩行訓練のあり方
歩行訓練士の質の向上は必須 資格化を考える時期に
理事長 長岡 雄一

今回のサイトワールドでは、昨年に引き続き日盲社協主催のシンポジウムを行いました。昨年は「視覚障害者の訓練に将来はあるか」というテーマでしたが、今回は歩行訓練の将来と歩行訓練士の資格に関わるテーマでのシンポジウムとしました。
ここ数年、視覚障害のある方の歩行を支援する様々な機器が開発されてきました。 今回は、あしらせ とアイコサポートの開発者の方から開発にあたっての考え方と、今後の方向性を語っていただきました。
一方で、こうした各種ICTの使用と白杖での歩行訓練との関係性が今後どうなっていくか、歩行訓練士会の立場からお話しいただき、さらに、歩行訓練士の立場を強化する意味での資格化について、訓練士会と日盲社協の立場からお話ししました。
機器の開発コンセプトは、非常に重要です。あしらせ においては、「定位」を中心とした情報提供に機能を絞り、安全については白杖や盲導犬に任せるという立場をとったとのことです。
また、アイコサポートでは日常生活の中での使用を目指していますが、あしらせ 同様の考え方、立場をとっています。
ここで大切なことは、機器を使用するにあたって、専門家としての歩行訓練士による訓練を前提としているということです。

歩行訓練は、白杖の使用法だけを習得する訓練ではなく、「定位」と言われている、自分の今いる位置をどう把握するか、そして、どの方向に進むかをどう把握するかという、移動にとって非常に重要なことを身に着けていく訓練でもあります。この部分に、いかにICT機器を活用して、訓練を進めていくかは一つの課題であり、そこにこそ、ICT機器が活用できる領域があります。
一方、歩行訓練士の立場からは、ICT機器の活用を含めた歩行訓練を実施していく必要性は十分理解しているし、視覚障害当事者からも求められています。そのためには歩行訓練士の資質の向上は必須であり、「資質の向上」のためには訓練士の資格化まで考える必要があると発言されました。
歩行訓練士の資格化は、何度も議論されてきましたが、なかなか実現しない状況です。しかし、現在、歩行訓練士数が低迷し、しかも高齢化し、将来的な訓練実施に黄信号が灯っている状況では、新たな訓練士認定制度を考えていくことを、日盲社協の立場から話題提起を行いました。
今後、新たな機器が開発されることを期待しますが、新機器のみで完結するのではなく、歩行訓練士との共同作業が求められます。それに応えるためにも、歩行訓練士の立場を強固にする方策を考えなくてはならない時期にさしかかっています。「強固にする」とは、何らかの形での資格化を進めることでもあり、ICT 開発者との連携も確認する必要性を感じました。

日本歩行訓練士会 冬季研修会報告
日視連・歩行訓練士会・日盲社協 持続可能な歩行訓練の実現に3団体が協力
日本歩行訓練士会会長 古橋 友則

2025年度の日本歩行訓練士会(以下、日歩会)の冬季研修会は浜松を会場に、午前は会員向けの研修会、午後には一般公開のシンポジウムを開催しました。
午前は、私と同じウイズでロービジョンケアを担っている田中恵津子氏による「盲学校における弱視者への支援」ご講演。
生徒が将来社会に出た後のことを見据えて、学びの材料として受け取りやすい教材や提示方法について、行動特性の解釈をふまえて詳しく教えていただきました。
歩行訓練士は福祉現場だけでなく、盲学校など教育分野でも多く従事しています。正しい視機能評価とそれに基づく適切な提示は教育環境でも大切だと改めて感じました。また盲学校だけでなく、地域での支援にも共通する点が多くありました。
午後の公開シンポジウムは「持続可能な歩行訓練を目指して 第3弾 実現に向けての取り組み」というテーマで行いました。 シンポジストの日本視覚障害者団体連合(以下、日視連)、三宅隆常務からは全国の加盟団体の状況と、日視連が厚労省へ要望してきた項目についてご説明いただきました。次に日歩会が取り組んでいる「未来構想プロジェクト」の内容と、厚労省への陳情案について古橋が報告しました。プロジェクトは、(1)自立訓練・委託事業の在り方、(2)歩行訓練士の資格化と配置基準、(3)教育機関での歩行訓練の3グループに分かれ1年間検討しており、会の方向性を決めていく場でもあります。また厚労省への陳情については、地域生活支援事業における委託事業の必須事業化を柱に、視覚障害者支援センターの設置を求めるものです。最後に日本盲人社会福祉施設協議会(以下、日盲社協)の長岡雄一理事長より、障害福祉サービスの配置
基準と、歩行訓練士の資質向上を目的に、訓練士技能検定(団体等検定)について報告いただきました。
3団体が課題を共有し、持続可能な歩行訓練の実現に向けた具体的な取り組みは大きな一歩であり、今後もスピード感と危機感、責任感をもって進めてまいります。

訓練士会研修会 シンポジストとして参加して
訓練士の高齢化 歩行訓練の継続性に不安 不安定な訓練士の身分 若手離れ加速か
理事長 長岡 雄一

今回、シンポジストとして登壇した、日本視覚障害者団体連合、日本歩行訓練士会、日本盲人社会福祉施設協議会は、視覚障害者の歩行(移動)の重要性を共通理解として話は進めたのですが、実際には、歩行訓練そのものが、全国的には十分認識されず、また、サービスそのものが、十分供給されていない現状も明らかになっています。
報告でも、訓練士の数が多いと思われる東京でも、現状は決して十分な状況ではないこと。それどころか、この先10年を考えたとき、歩行訓練を継続的に行っていけるのかが不安になるような状況であることを示しました。
具体的には、高齢化という問題です。以前にも『視覚障害』で述べさせていただきましたが、20歳代、30歳代の歩行訓練士が極端に少なく、50歳代、60歳代の訓練士がほとんどです。今は、熟練した訓練士の方を中心に、充実した訓練が提供できていますが、10年後は疑問符がつきます。
こうした状況を生み出した原因は一つではありませんが、大きな要因の一つは、歩行訓練士の身分の不安定性です。同行援護の講師要件として、日本ライトハウスや国立障害者リハビリテーション学院の修了者が認められている一方で、障害福祉サービス、特に機能訓練においては、職員の配置基準として位置づけられていません。これから歩行訓練士を目指そうとする方々にとっては、これ以上の不安要素はありません。 現在、医療側からは、国立障害者リハビリテーションセンターで実施されている眼科医の補装具判定医の研修等で、歩行訓練士の存在、重要性が示されていますが、福祉側ではそれに十分対応できない状況にもなっています。
これらの解決策の一つとして示したものが、厚生労働省が認めた団体が、歩行訓練士の技能を認定するものです。国家資格ではなく厚生労働省認定ですが、それなりの意味を持たすことは可能です。
ただ、一定の期間、歩行訓練士として就労し一定以上の技能が条件になります。ライトハウスや国リハを卒業、すぐ歩行訓練士と認められることはありません。
あくまでも、民間資格という扱いですが、少なくとも、歩行訓練士の存在を明らかにする効果はあるし、社会的にも認知されやすいと考えています。結果として、自立訓練の職員配置基準として厚生労働省が認めれば、身分の安定感は増します。
問題は残ります。ライトハウスや国リハ終了後、一定の期間は認定されないことへの対応策です。古橋会長からの報告にもあるように、現在、日視連と歩行訓練士会、日盲社協の三者で、歩行訓練士の扱いの検討を始めています。このまま先延ばしにできない課題です。三者による検討で、よい成果がでるよう努めたく思っています。

遠隔でのロービジョン相談が受けられます 日盲社協が支援

日盲社協通信第86号(令和5年5月号)でお知らせした、神戸iクリニック(仲泊聡院長)では、遠隔支援によるロービジョンケアを実施しています。日盲社協はこの「ロービジョン相談」に協力、受診料支援を行っています。
受診の詳細はクリニックのホームページ(https://www.kobe-iclinic.com)を参照。
日盲社協の支援内容は、本部事務局(nichimou.rijichou@abelia.ocn.ne.jp)にお問い合せください。なお、受診支援は、年間10回程度となっています。

第50回全国視覚障害者情報提供施設大会報告
すべての人が情報を共有できる社会めざし
全国視覚障害者情報提供施設協会 理事長 川崎 弘

「10年後の向こうへ共生社会を届ける!?今、改めて問う、情報提供施設に求められていること?」をテーマに第50回全国視覚障害者情報提供施設大会が10月23日、24日の2日間、大阪府堺市のフェニーチェ堺を会場に全国から186名の参加を得て開催されました。式典では長きにわたり貢献いただいた3名の方に表彰状を贈りました。
日盲社協長岡理事長から祝辞をいただきました。ありがとうございました。
当協会では、平成27年(2015年)、視覚障害者情報提供施設の10年後のサービス全体を見据えた将来構想として『2025年の私たちへ?全視情協10年ビジョン会議報告書』をまとめ公表しました。
大会1日目、3時間に及ぶ全体会では当時のビジョン作成メンバー5名が登壇し、シニアメンバーやフロアーとの間で、今後10年を見据えた熱いやり取りが続きました。そのやりとりは交流会や翌日の分科会へも引き継がれました。
今大会を通じて、すべての人が情報にアクセスできる環境を整備し、誰一人取り残さない社会の実現を目指すことが私たちの責務であることを確認しました。今大会の成果を基に、厚労省等関係省庁、日盲社協等関係団体と密接な連携の下、すべての人が等しく情報を共有できる社会を目指し、サピエを中心とする質の高い点字・録音図書、アクセシブルな電子書籍の提供と、情報取得のためのICT利用支援、並びにサービスの向上にさらに邁進することを宣言しました。また、この宣言を具現化するための決議事項を採択しました。
コロナ禍後、完全リアル開催3回目となった大阪堺大会は参加者の熱気のなかで幕を下ろしました。

読書バリアフリー法の現在地
電子データの円滑提供の仕組みの確立めざし 今年から厚労省・文科省・経産省の合同調査始まる

視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(通称、読書バリアフリー法)が令和元年(2019年)6月に制定施行され6年が経過しました。法施行翌年から5年間の国の第1期基本計画では、視覚障害者等情報総合ネットワーク「サピエ」の運営費が全視情協へ直接交付されるようになり、令和4年度(2022年度)より個人会員から協力金をいただかなくて済むようになったこと、職員体制が確立したことは私どもにとって嬉しいことでしたが、それ以外で目立った動きはありませんでした。
令和7年度(2025年度)から向こう5年間の第2期基本計画策定に当たっては、指標(目標値)を定めること、第1期で手をつけられなかった第11条(特定書籍及び特定電子書籍等の製作の支援(借りる権利))、第12条(視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(買う自由))に取り組むこと、第9条(視覚障害者等による図書館の利用にかかる体制の整備等)では点字図書製作支援に言及、第17条(製作人材の育成等)では、点訳・音訳ボランティアの労働環境に言及するなど今後に繋がる文言を基本計画に入れることはできました。如何に予算を引き出せるかはこれからです。
これらの施策のなかで特筆することとして、令和7年度より、第11条2項に基づく出版社から特定書籍等製作者に対する書籍の電子データを円滑に提供するための仕組みを確立するための実証調査を実施することとなり、令和6年8月に関係者協議会のなかにワーキンググループが設置され、全視情協も参加しました。
令和7年8月から始められた実証調査は、厚生労働省、文部科学省、経済産業省がそれぞれの予算により三省合同で進めるというものです。初年度は全視情協加盟施設のなかから5施設を抽出し、点字図書館の窓口(厚労省管轄)は全視情協事務局が担い、出版社側の窓口(経産省管轄)はABSC(アクセシブルブックスサポートセンター)が担っています。文科省管轄として公立図書館・大学図書館・視覚特別支援学校からも参加しています。
すでにさまざまな課題が出されておりますが次年度以降は調査参加館を増やしながら全国実施を目指します。この実証調査を通し、製作者と出版社の良好な関係が構築され、製作がスムーズに進み、利用者の「借りる権利」のさらなる前進が望まれます。読書バリアフリー法の施策の進展は緩やかですが着実に進んでおります。
(全視情協理事長川崎弘)

点字出版部会 研修会報告
貴重な2人の講演、点字機械扱い方議論 若い世代が多く参加し、技術継承につながった
点字出版部会長 肥後 正幸

2025年12月4日(木)、5日(金)に、点字出版部会の職員研修を神戸国際会館にて実施し、18施設から約50名が参加しました。兵庫県視覚障害者福祉協会の皆様のご尽力で初の神戸開催を実現することができました。
1日目には、福井哲也氏(日本ライトハウス点字情報技術センター情報技術顧問)、濱井良文氏(毎日新聞社点字毎日編集長)にご講演いただきました。
福井氏は、「『点字出版物製作基準』を紐解く?2006?2007年度基準改定委員会の舞台裏と『基準』に込められた思い?」というテーマで製作当時の委員会での舞台裏エピソードを交えながら、私たち出版側として大事な点や時代と共に変化してきている点等のお話をされました。
特に校正の意義、方法については、点字制作物を作る上で非常に大事なパートであり、施設の人員や状況によって実施方法が異なる場合があるのは事実だが『点訳資料校正基準』にできるだけ則って実施することが望ましいとされました。
濱井氏には「左近允孝之進から連なる点字出版?これまでとこれから」というテーマで、左近允孝之進の一生と点字との関わり、現在の点字出版に繋がる貴重なお話をうかがいました。
終盤では質疑応答や情報交換を行い、選挙での点字投票など、今後の点字出版部会の課題となる部分も見えてきました。
2日目には、点字出版部会の長年のテーマでもある「点字製版・印刷機など各種機械の手入れ等について(各施設はどうしてる?)」という内容で、各施設の発表・意見交換を行いました。
小林鉄工所の小林社長にもご登壇頂き、各施設からのご質問にお答え頂きました。機械を設置する際のアースの取り方や、設置場所によっても機械の動きが変わることがあり、各施設で検証が必要であることが分かりました。
また、いくつかの施設に実際の手入れの様子を動画撮影いただき、具体的な悩みやアドバイスを交わすことができました。
今研修会には、若い世代の方々から多くの参加があり、非常に嬉しく感じています。
点字出版に必要な技術の継承や人材不足が深刻になっている中、予想以上に若い参加者が多く、次世代への継承と、長く業界に残っていただけるような働きかけが、ベテラン世代の次の役目だと感じました。

わが施設の今 日本盲導犬協会 神奈川訓練センター 築30年で増改築が完成
日本盲導犬協会 専務理事 山口 義之

公益財団法人日本盲導犬協会は、1967年に設立され、現在では200ユニット(視覚障害者と盲導犬のペア)以上の盲導犬が活躍する、国内最大規模の盲導犬育成団体です。当協会では、盲導犬の育成・訓練事業に加え、訪問型や中間型アウトリーチ支援を通じた生活訓練を中心とする視覚障害リハビリテーション事業や、それらの普及推進活動を展開しています。
国内には4つの訓練センターがあり、その中でも盲導犬訓練の中心となる神奈川訓練センターは、1997年に横浜市港北区に竣工しました。この施設は、盲導犬訓練が最も盛んに行われている拠点です。当協会では、毎年35?40ユニットの盲導犬を訓練していますが、その半数以上が神奈川訓練センターで訓練されています。
神奈川訓練センターは、港北ニュータウンという住宅街に近く、新横浜などの繁華街にもアクセスしやすい立地にあります。この環境は、日常的に人が行き交うさまざまな状況下で訓練を行う盲導犬にとって、非常に効率的な訓練環境を提供しています。また、盲導犬の育成には、パピーウォーカーと呼ばれる子犬を預かり育てるボランティアをはじめ、多くのボランティアの協力が欠かせません。この地域は都心部に近く人口も多いため、ボランティアを集めやすいという利点があり、神奈川訓練センターは協会の事業の中心的な拠点となっています。
視覚障害リハビリテーション事業としては、白杖歩行の指導、パソコンやスマートフォンの使い方、調理や掃除などの家事の工夫を自宅に訪問して指導するサービスを首都圏で提供しています。また、盲導犬について知っていただくための「盲導犬体験歩行会」を東京都内や神奈川県内の施設で開催しています。皆さまの施設での開催をご検討いただける際には、ぜひご連絡ください。
近年、神奈川訓練センターは竣工から約30年が経過し、施設の経年劣化が目立つようになったため、3年がかりで増改築および大規模修繕を行い、施設が新しく生まれ変わりました。新しくなったこの施設を大切に運用し、地域の皆さまとともに、引き続き視覚障害者のための事業を進めてまいります。
さらに、来年10月には、日本盲導犬協会が主管施設となり、第74回全国盲人福祉施設大会を横浜で開催する予定です。横浜で皆さまにお会いできるのを心より楽しみにしております。

日盲社協事業報告

点字社内検定 64人が受験 合格者15人(合格率23.4%)
12月12日、日盲社協社内検定試験運営委員会が、東京視覚障害者生活支援センターで開催され、令和7年度の合格者が決定した。
今年は、11月16日(日)に、東京会場・戸山サンライズ、京都会場・京都テルサ、福岡会場・クローバープラザ、仙台会場・宮城県視覚障害者情報センターの4会場で開催された。受験申込者は68人、内受験者は64人(東京25人、京都18人、福岡10人、仙台11人)だった。
合格者は15人。点字使用者5人、墨字使用者10人で、合格率は23.4%であった。例年19%?20%に比べて少し高くなった。なお、検定は学科と実技で行われており、学科一部合格者3人、実技5人であった。
点字検定事業は申込者80人を目標としているが、64人と受験料収入が伸び悩み、補助金を含め事業収入が1,856,794円。試験問題の作成費、会場費などの事業支出は、3,454,405円で、差額1,597,611円の赤字となり、本部から1,600,000円を繰り入れることとなる。

合格者名簿(氏名・都道府県・受験文字)
池田  宏(静岡県)墨字
岩船 美里(茨城県)墨字
大内香江里(北海道)墨字
小関 祐子(福岡県)墨字
金森 淳哉(京都府)墨字
北畠 一翔(静岡県)点字
駒村美佐子(新潟県)墨字
柴田 由紀(富山県)墨字
鈴木 夕琳(愛知県)点字
高橋 美穂(秋田県)墨字
竹内 雅幸(北海道)墨字
花房 朋樹(大阪府)点字
堀口 晃代(東京都)点字
松本  葵(愛媛県)点字
山田亜津子(神奈川県)墨字

東京視覚障害者生活支援センター 建て替え状況

支援センターの建て替えについては、建物の所有者である東京都との間で話し合いを続けてきました。建て替えか大規模修繕かが大きな課題でしたが、昨年度、建物の老朽化の調査を行い、「大規模修繕も可能ではあるが、建て替えが望ましい」という結論になりました。
ただ、建設にあたっては、センターの立地状況から、近隣への影響が大きく、特に隣接するレストランは昭和2年建築の東京都所有の文化財でもあり、建物への影響を極力抑えなくてはならないこと、さらに、工事車輌がレストランの前を通らざるを得ないため、営業にも相当の影響を与えることもあり、基本計画を作成する前に、レストランへの説明を優先させたいと当法人から東京都に申し入れを行っていますが、ここ半年近く、東京都からの回答はなく、現在、建て替えについては、膠着状態と言えます。
なお、建て替えとなった場合、豊島区内での仮建物にて事業を継続する予定です。

日盲社協事務局だより

1.表彰者・受賞者情報

(1)名古屋ライトハウス愛盲報恩会
近藤正秋賞・片岡好亀賞受受賞者
・近藤正秋賞  桜雲会
・片岡好亀賞  日本点字委員会
(2)第42回鳥居賞
・盲人福祉研究会会長 斯波 千秋 氏
(3)第62回点字毎日文化賞
・加藤俊和氏
(4) 第22回本間一夫文化賞 
・シナノケンシ

2.加盟施設変更情報

(1)新規入会
<生活施設部会>
養護(盲)老人ホーム自生園
〒923-0331 石川県小松市上荒屋町ソ4-10
TEL 0761-65-1800 FAX 0761-65-1837
E-mail info@jishoen.com
Web https://jishoen.com
<盲人用具部会>
株式会社Ashirase
〒101-0047 東京都千代田区内神田1-9-5 SF内神田ビル6階
TEL 03-6824-2058
E-mail info@ashirase.com
Web https://www.ashirase.com/
(2)名称変更 1施設 
<情報サービス部会>
・山形県立点字図書館 →  山形県視覚障がい者情報センター

3.法人理事長・施設長変更(敬称略)

<法人>
・社会福祉法人中部盲導犬協会
新理事長 小野田 聡 氏
・社会福祉法人京都視覚障害者支援センター 新理事長 小林 茂治 氏
<情報サービス部会>
・山形県視覚障がい者情報センター
新所長 福田 香 氏
3.新役員等紹介
(1)新任理事
・小田島 明 氏(元国立障害者リハビリテージョンセンター総合支援部長)
(2)新任評議員
・崎山 美知枝 氏(成仁会 養護盲老人ホーム 祥風苑 施設長)
・和田 孝文(北海道盲導犬協会 理事・所長)

編集後記

長岡理事長からの完全版下UP1か月前に突然の指名で、編集人を務めました。
1か月はギリギリ超特急作業です。直ぐに面立て(何頁にどの記事を載せるか、計画表)作成し理事長と打ち合せ、原稿依頼、印刷会社との入稿データ形式、日程の打ち合せ、そして編集作業です。
私が使う編集ソフトは、イラストレーターとフォトショップ。印刷物等の編集のプロ使用です。実は、活版時代に読売新聞整理部長にご指南を賜り、編集歴50年です。
しかし、愛用ソフトは25年以上前の超旧バージョンのMac。さらに日本盲導犬協会機関誌「盲導犬くらぶ」の編集実務から離れ15年。使い方を忘れていることはなはだし、Wordは文字化けして打ち直し。悪戦苦闘の1か月でした。ともかく「できたことをよし」としお許し願い、お読みください。肩パンパンです。(常務理事 吉川 明)

本誌は、こくみん共済coop<全労済>の助成により作成したものです。

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