日盲社協通信 平成25年(2013年)4月号(通巻66号)

日盲社協通信 平成25年(2013年)4月号(通巻66号)
編集人:福山博   発行人:髙橋秀治
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/

もくじ

のびやかな活動のために
理事長 髙橋 秀治

私たちの周辺にはたくさんの施設や団体があります。
組織・団体ともなれば、「何のためにあるのか」とその目的が掲げられ、その目的を達成するためのスケジュールが立てられます。
そして、一定期間をおいて総会などを開いて、目的がどの程度達成されたかどうかが点検されます。こういう繰り返しの結果、その団体の質の向上や低下がチェックされていきます。
日盲社協の加盟施設もそれぞれ同じような展開ではないでしょうか。そして、その上で日盲社協の全国大会となると、どう臨めばいいのか、正直戸惑われるかも知れません。皆さんの施設、その上の5部会の運営、そして社協事務局や理事会などそれぞれに筋を通す1本の幹ができます。
こうした構造の中から何が生まれて来るか注目されますが、「何もなくても、同じ視覚障害関係者として横の繋がりがあればそれでいい」という考えも案外大きいのかも知れません。これも考え直すと、奥深いものがあります。
面白いといっては失礼ですが、日盲社協には「社協」を上回る力と組織を持った施設がたくさんあります。かと思うと、ロゴス点字図書館のような小さな施設もたくさんあります。
おのずと業界をリードする施設、大きな施設になることを目標に頑張る施設、小さくてもいろんな視覚障害施設の情報が手に入るだけでもいいとする施設など、関わり方は様々です。
例えば、世界は平和維持のために国際連合を持っています。その内容は大国と小国の力の差が組織を作る上で見事に反映されています。
その最たるものが国連の安全保障理事会です。ここが賛成しない決議は何の効力もありません。大国は「平和のため」と称して力を使い、小国は連携して対抗します。先進国は利益を追求し、途上国も追いつく努力をしますが搾取されることもあります。常に力のバランス、利益のバランスが問われます。
そして、そのときの尺度が大切です。強者は正義と公平の立場を保ち、弱者は平等と自由を求めます。それをどこで折り合いを付けて行くかが、常に問われます。
形は違いますが、世界の情勢と視覚障害という基本ベースを持った私たちの活動と連携も、いつも全体を読みながら互いの連絡を大事にしていけば、組織としての果実を得られるかも知れません。
先輩の皆さんが苦心の上に到達した60年という歳月を振り返り、次の10年を思うと、改めて人間世界にぞくぞくさせられます。

会員の声を謙虚に聴きたい
常務理事・事務局長 岩上 義則

日盲社協が還暦を迎える年になり、それにふさわしい行事を計画していることは、昨年の本誌11月号に掲載したとおりであり、準備が順調に進んでいる。それはそれとして、還暦後の日盲社協第2の人生をどのような生き方にするのか、今回は、そのことを会員全体に訴えて、記念大会における全体会の持ち方なども、これに沿ったものになるよう起案中だ。そして、起案をさらに具体化するために、活動への期待や疑問、今後目指すべき事業などに、会員施設の思いをぜひ知りたい。近く、アンケート調査を実施する予定だが、全体会は、そこに表われる意見を反映させたテーマを設定して、未来像が築けるよう盛り上げたいと考えている。
日盲社協が創設当初と大きく違ってきた点が二つあると思う。第1は、創設当初は会員施設が極めて少なかったことと、各々の力が弱く団結の重要性が今よりもはるかに高かったことだ。今も団結の大事なことに変わりはないが、現在では、運営資金の確保や物品の整備等、それぞれの施設が自力と個性を強めて発展をはかるようになっている。第2は、60年の間に施設の種別による専門性が進んだことである。そのため、団結と言っても、日盲社協加盟施設だけの団結という色彩が薄まって、情報サービス、生活施設、自立支援などのように、多くの団体との係わりの中で、運動の成果を高めようとする色彩が濃くなっている。
そのような傾向にある中、種別の異なる施設を200以上抱えている法人が、時には難しい調整を迫られたり困難な場面にも遭遇する。そのような事情もご理解の上、会員施設職員の建設的なご意見とアドバイスをぜひ賜りたいものである。
次に、日盲社協の運動を活発にするために、大会や研修会への施設職員の幅広い派遣と参加に経営者の深い理解をいただきたい。これには施設側に多額の費用負担や職員出張による業務へのしわ寄せ等厳しい事情が想像できるので無理を言いづらいのだが、大会や研修に1度の参加もない施設が相当数あるのは大変残念である。日盲社協のためにも、自施設充実のためにも是非ご理解・ご協力をお願いしたい。
時々聞こえる会員の声に、日盲社協に加盟することのメリット論がある。法人に加盟することで、事業資金が潤ったり施設のネームバリューを高めたりできる特典を指すのだろう。だとすれば、その側面も見据えながら、「選挙のお知らせ」発行のような、サービス向上に直接結びつく仕事を積極的に捜してみたい。しかし、それも施設の団結があればこそ。あくまでも、そこに力点を置いて日盲社協の存在感を高められるよう努めたい。

施設部会長4年間を振り返って思うこと
常務理事 舛尾 政美

私は4年前生活施設部会長を、2年前に常務理事を引き受けた。
常務理事を引き受けるとすぐ、常務理事が部会長を兼任するのは望ましくない、部会長は他の者に代わるようにと言われ、早速各ブロックの有力者にあたってみたが、生活施設部会長を引き受けようという人はいなかった。
このたびやっと理事長のお薦めにより、茂木幹央先生に引き受けてもいいと内諾をいただき、私はどうにか4年間続けた部会長を辞めることが出来た。
振り返ってみると色々な事が浮かんでくるが、私がまずしようと思ったことは部会の加盟施設の数を増やすことであった。
施設部会の多数は盲老人ホームである。盲老人ホームの問題を解決することから始めるのが一番だと考えた。盲老人ホームの一番の問題は入所要件の改善であろう。介護保険の導入によって養護盲老人ホームは措置が受けにくくなり、入所者の高齢化・重度化が進んで施設を維持することが大変困難になっている。私はこれを何とか改善しなければならないと思い、自民党の衛藤晟一参議院議員や河村建夫代議士、さらに安倍晋三代議士などと相談し、彼らの秘書や本人と一緒に厚労省に行き、陳情を何度か繰り返した。しかしこれはそう容易には解決出来ない事であった。厚労省は平成23年12月、実態調査から始めると言ってそれを実施し、その調査の結果いくらか解決出来た。市や町が極端な措置控えをやめて入所要件も幾らか緩和した。しかし利用者や同一世帯の家族が所得税を納めている場合入所は認めないし、資産が多い者は入所出来ない。
国は企業努力が大事だと言っている。私は生活施設部会の研修会などで企業努力について検討し実践を繰り返した。介護保険の導入で人手が多く掛かるようになった。人手を確保するために中国人学生のアルバイトも使ってみた。一般的には「介護の仕事はきつい」「汚い」「賃金が安い」と言われ嫌がられているが、中国人は嫌がらないでしっかり頑張っている。卒業後も日本で介護の仕事をしたいという者が増えている。常勤を少なくしてパートを大幅に増やした結果、経費が増大した。経費削減のためにLEDを取り入れてみた。一般的に明るさは倍、経費は半分と言われている。太陽光発電も導入し、ソーラーシステムも取り入れた。水道料金の削減には井戸を何本か掘ってみた。
しかしながら、こうした企業努力にも限界がある。やはり政治力を使って制度を根本から変えることが必要であろう。いずれにしても私の部会長としての任期はすでに終わった。今思えば悔いの多い4年間であった。しかし、自分にとっては学ぶことの多い4年間であったと思う。この経験をいかに生かすことが出来るかを考えつつ、今は4年間にお寄せいただいた皆さんのご支援に心から感謝申し上げる次第である。

読み書き(代読・代筆)情報支援員養成基礎講習会の開催を!
常務理事 髙橋 秀夫

例年は4月に桜の花が、咲く・舞う・散るといった移りゆく美しさの変化が堪能できましたが、今年は3月に満開を迎えたため慌ただしい花見となりました。世の中では、「四季の変化を楽しむように、社会の変化に対しても、よく順応し、それぞれの変化を楽しんで生きていける人が真人」であると言われますが、凡人の私は順応できずに悩んでいます。
さて福祉行政施策に関して言えば桜のように早咲きの開花・変化がほしいものです。その一つに視覚障害者読書権保障協議会の運動があります。昭和45年から行政に対して、晴眼者と同じように視覚障害者も文字情報を摂取する権利があり、国及び地方自治体が保障すべきだと訴えてきました。また、平成22年から読書権保障協議会として、「すべての人の読み書きを支援する社会」を目指し、読み書き(代読・代筆)情報支援員養成基礎講習会を開催しています。その甲斐あって、ようやく春がやってきました。
平成25年度に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」が施行されます。
その資料によると、地域社会における共生の実現に向けて新たな障害福祉施策を講ずるため、意志疎通支援の派遣及び養成事業の実施に努めるよう地方自治体に示しています。視覚関係では、「代読や代筆などの方法があるので、それぞれのニーズを的確に把握し、円滑な事業の実施に努めること」としています。
このことにより、視覚障害者の方々のニーズがあれば代読・代筆を実施することが明文化されたと言えます。具体的には、①勉学上必要なもの、②研究活動等で使う資料や学校提出書類等、③職業上必要なものとして、会議等で配布される資料や会社等の提出書類等、④日常生活上必要なものとして、地域の回覧ものや広告、家電等の説明書、各種申し込み等の署名、押印、手紙や宛名書き等です。
このような代読・代筆の支援を必要としている方々は、①視覚障害者、②ディスレクシア(文字は見えるが理解がしにくい)③手や身体が不自由で読めない方、④日本語文が読めない外国の方々、⑤高齢者、と対象者は幅広く地域社会に住んでいます。また、このような支援を行う支援者の確保も急務です。人材育成は視覚障害者情報提供施設が行うのが的確です。なぜなら日頃からこれらに類する情報提供を多少なりとも行っているからです。読書権保障協議会(特定非営利活動法人大活字文化普及協会内の専門委員会)と連携して講習会を開催し、読み書き情報支援員養成にぜひとも取り組んでいただきますようお願い申し上げます。(視覚障害者生活情報センターぎふ館長)

60周年記念大会へのお誘い―― 還暦からのスタート ――
実行委員会委員長 長岡 雄一

厳しかった冬もやっと峠を過ぎ、そろそろ桜の便りが聞かれる時期となりました。そして、それは新しい年度への序章ともなります。
そして迎える新年度は、日盲社協にとっては記念すべき年度となります。平成25年9月9日(月)、10日(火)の2日間、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷において日本盲人社会福祉施設協議会の60周年記念大会が開催されます。
「60」という数字は一人一人の人間にとっても意味のある数字です。すなわち「還暦」です。ここで、還暦について深く掘り下げることはしませんが、人間と同じく、組織としても一回りしたということになります。いくら元気とは言え、人間では、還暦を迎えると、先行きのことを考えざるを得なくなりますが、組織としては、まだ、たった一回りの組織として、改めて、組織のあり方や今後について思いを巡らせる必要が出てきます。
そこで今回の記念大会は、「あり方」と「今後」をキーワードに据えて実施することとしました。過去を見て、今を見て、そして将来を見る。これらを2日間の大会の中でどう表現し、実行していくか。実行委員会が組織されて以来何回にもわたって議論を重ねた結果が、関宏之氏の記念講演に始まり、事前にいただく予定にしている皆さまからのアンケートを基にした、全体会における議論をもってまとめとする。という大会の流れとなりました。
私の個人的な感慨を述べることを許していただければ、関氏は、私が日本ライトハウスで歩行訓練士の研修を受けていた時、ライトハウスの所長をされていました。私の現在の出発点がそこにあるとすれば、関氏の講演でスタートするこの大会は、私自身のスタートとも重なります。
そして大会を締める全体会は、これからの日盲社協を浮き彫りにできたらと考えています。確かに、日盲社協を取り巻く状況を語ることも大切なことです。外から日盲社協がどう見えているのかを知ることも同様に大切なことです。しかし今回は、会員施設が日盲社協そのものと、もう一度向き合うことを優先させました。
実は、大会の前に日盲社協に関するアンケートを皆さまにお願いすることには、多少躊躇がありました。そこからもたらされる結果が怖いということもあるでしょう。予想もつかないような結果が出ることもあるでしょう。しかし、二回り目を始める組織として、今だからこそ、今でなくてはできない試みと考えています。忌憚のないご意見をいただきたいと考えています。
会員の皆さまの中には、50周年の記念大会を経験されている方も少なくないと思います。そうした方々にとっては、今回の大会は少し地味ではないかとのお気持ちもあるかもしれません。「50周年のときは、3日間の日程だった」「お呼びする方も多彩だった」等々。私自身そう思う一人です。確かに、こうした大会や式典は、多少派手気味の方が印象は強く、そして感動も増すかもしれません。
ただ、始まる前から言い訳を言っているような気がしないではありませんが、今回は、前述したような背景もあり、地味ではありますが、今までとは違った意味で、中身が充実した2日間にしたいとの思いが先行しました。実は、私の勤務する東京都視覚障害者生活支援センターは今年度ちょうど30周年を迎えます。日盲社協の半分の時を過ごしてきたわけです。そしてセンターも、未来に向かって、今曲がり角を迎えているところなのです。
センターは、日盲社協が経営する唯一の障害福祉サービス事業所として、日盲社協の動きと無縁ではいられません。極端な言い方をすれば、今後、センターは日盲社協の動きと連動していくとさえ言えるかもしれませんし、場合によってはその逆もあるかもしれません。そのような背景からも、日盲社協の今後に、今まで以上に真摯に向き合わなくてはならなくなっています。この時期に記念大会が開催されることを、幸運なことと捉え、そのためにも、皆さまに納得していただける大会になるよう、準備にいそしみたいと思います。
さて、大会まであと半年を切りました。会場となるのは、50周年記念大会も行ったグランドヒル市ヶ谷。日盲社協の研修会などで何度か利用しており、私にとっては親しみを感じることができる会場です。JR市ヶ谷駅から、さほど遠くはなく、都心の一角にある割には、落ち着いた、緑に恵まれた場所にあります。ホテルの前を走る靖国通りは、毎年2月に開催される東京マラソンのコースで、少し足を延ばせば、皇居の外堀や迎賓館など、東京の観光名所もあります。
私が勤務するセンターや日盲社協の会員施設である日本盲人職能開発センターも歩いてわずかの距離ですし、靖国通りを走る都営バスを利用すると、日本点字図書館や東京ヘレン・ケラー協会、東京都盲人福祉協会、そして日本盲人会連合には乗り換えなしでも行けます。今まで縁のなかった方も、この機会に見学などをされるのもいいかもしれません。
東京では、9月という月は、まだ夏と同義語です。暑い中、お越しいただくことは心苦しいのですが、是非とも大会にご参加いただき、「市ヶ谷から始めよう」を合言葉に、これからの日盲社協を語り合っていただけたらと思います。
皆さまのご参加を心からお待ちしております。「市ヶ谷から始めよう!」を合言葉に。

(特別寄稿)真のフェアネスとジャスティス
(社)日本身体障がい者水泳連盟会長 河合 純一

9月7日、日本の将来が大きく変わるかも知れません。それは2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が決定する日なのです。去る3月4日から7日にかけて、IOC(国際オリンピック委員会)評価委員会が開催候補都市のトップバッターとして東京の視察に訪れました。東京での開催は、国内支持率の低迷という大きな課題を抱えていましたが、昨年のロンドンオリンピック・パラリンピックでの選手たちの活躍などにより、国内支持率は大きく上昇し、70%まで高まりました。
私は視覚障害(全盲クラス)のスイマーとして、1992年のバルセロナから2012年のロンドンまで6大会連続出場を果たすことができました。この間はパラリンピックにとって、激動の20年間でした。新聞の記事にもならなかった時代からテレビでも開会式、閉会式の生中継が行われ、ダイジェスト版ではありますが、毎日報道されるようにもなりました。近年ではパラリンピック以外の国内の大会についても報道されるようになり、それに伴い、多くの方々の理解が深まっていると感じています。
パラリンピックそのものも変化してきました。オリンピックとの連携が密接なものとなり、エリートスポーツとしての色合いが強まると同時に商業化の道を突き進んでもいます。
しかし、パラリンピックの父と呼ばれるグッドマン博士(英国)の「失われたものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」という精神は今も受け継がれています。スポーツの価値の一つである己の限界を超える姿はパラリンピックにこそシンボリックに映し出されているといえるでしょう。
昨今、いじめや体罰などが社会問題化しています。この問題を解く鍵がスポーツにあると私は考えています。しかしながら、むしろこのような社会問題の根源がスポーツにあるような論調を目にする度に悲しい気持ちになっています。
スポーツは本来、自発的な活動であるべきです。決して強制的な活動ではありませんし、暴力によって上達することはありません。スポーツを通じた友情、仲間との信頼関係づくり、目標設定と達成に向けた戦略立案と実行力の醸成など、多くのライフスキルを獲得できるツールです。
このことを私たち視覚障害者がスポーツを楽しんでいくことで体現していくことが大切だと思っています。スポーツを通じて、真の公正、公平を実現していきましょう。いまだにスポーツ行政は、文部科学省と厚生労働省とに分けられたままです。スポーツ界こそ、率先して真のフェアネスとジャスティスを推進すべきです。そのためにも、私は視覚障害当事者としても、スポーツの一元化に向けて歩を進めていきます。

誌上慶祝会

1.吉田孝志氏の「瑞宝双光章」親授を祝して
社会福祉法人宮城福祉会視覚障害老人ホーム松風荘元施設長 小野寺 一雄

昨年11月3日文化の日に、当会吉田孝志理事長に瑞宝双光章受章の発表がありました。同月15日に皇居で、天皇陛下から重く大きな喜びとなった勲章を直接親授されました。その時の印象を、「平成13年10月12日宮城国体の時に視覚障害老人ホーム松風荘に行幸啓になり施設を天覧頂きました際、両陛下はとても柔和でお優しく利用者に声をお掛けいただきましたが、受章式では、近寄り難い程威厳に満ちており、神々しくさえ感じました」と、述べております。
吉田孝志氏は、昭和37年4月宮城福祉会設立準備室事務局長として立ち上げに尽力し、昭和41年4月1日養護老人ホーム松寿園を開設。全国の施設関係者から話を聴くなかで、盲老人の幸せを願い視覚障害老人ホーム松風荘を開設しました。その後、特別養護老人ホーム松陽苑を開設し、その他介護老人保健施設や障害者施設、保育所合わせて34施設を設置経営しています。昭和56年10月全国社会福祉協議会表彰、平成4年11月厚生大臣表彰(社会福祉功労賞)、平成16年10月全国老人福祉施設協議会表彰に加えて今回の受章となりました。
人柄は温厚で、全てを受け入れる深く大きな度量があり、関係する人々を魅了し、多くの輝かしい事績を残されております。
今後は、ご健康に留意され、福祉の先駆者として後進を導いて下さいますようにお願し、心からのお祝いの言葉とさせていただきます。

2.久保正明さんの叙勲を祝う  聖明園施設長 高橋 イシ子

昨年(平成24年)秋の叙勲で、聖明園のケアワーカー久保正明さんが瑞宝双光章を受章されました。
誠におめでとうございます。
久保正明さんは、昭和57年(1982)から今日まで、東京都内で唯一の盲老人ホームである聖明園に勤務し、31年にわたって一貫して、重度の高齢者介護業務に尽力されてきました。
この間、時代に即応した業務の見直しや利用環境向上に熱意を持って勤めてこられました。
後輩の育成にも力を注ぎ、利用者からもご家族からも信頼を集めてこられました。
長年の労苦を労うと共に、今後も健康に充分留意し、高齢者福祉の向上に尽力されることを期待してやみません。

3.理療科教科書出版6施設に感謝状―― 理教連創立60周年記念式典にて ――
東京ヘレン・ケラー協会点字出版所長 福山 博

昨年の12月23日(日)、筑波大学東京キャンパスにおいて、「日本理療科教員連盟(理教連)創立60周年記念式典」が全国から駆けつけた会員や文科省からの来賓、関係者らを集め盛大に開催されました。席上、理療科教科書を発行する日盲社協傘下の点字出版所6施設(桜雲会、岡山ライトハウス、東京点字出版所、東京ヘレン・ケラー協会、日本点字図書館、日本ライトハウス)にも感謝状が贈られ、代表して桜雲会の三宅隆課長が受け取りました。
感謝状は各点字出版所の理事長宛になっており、本文は以下のとおりです。

あなたは長年にわたり日本理療科教員連盟編集による理療科用図書の出版と普及に尽力され、理療教育の向上と本連盟の発展ならびに視覚障害者の職業自立の促進に寄与されました
その労に対し、ここに深甚の謝意を表します
平成二十四年十二月二十三日

日本理療科教員連盟会長
藤井亮輔(印)

平成24年度 点字出版部会 職員研修会報告
社会福祉法人日本ライトハウス点字情報技術センター 高橋 昭衣

2月7・8日に大阪の日本ライトハウス情報文化センターを会場として計22施設50名の参加のもと平成24年度点字出版部会職員研修会が開催され、バラエティに富んだ4つのテーマで研修が行われた。
1日目は3つテーマが用意され、最初に京都ライトハウス鳥居寮の久保弘司氏から「中途視覚障害者への点字指導と点字出版」と題して講演があった。文字をイメージ化する、語彙力を養いつつ推測読みをする等の触読訓練に関する話や、訓練初期に点間の大きいL点字を使用することで点字が出来ない方を減らすという話は興味深かった。また利用者の方に読みたい本が無いこと、中途視覚障害者にとって長文を読むことは困難なので、短編で少しずつ読める点字本があるとよいとの言葉は、今後の点字製作のヒントになるかもしれない。地域で点字の触読指導が受けられる環境を作るため触読指導ボランティアを育てる研修を施設で催すことが望ましいとの話もあった。
次に厚生労働省社会・援護局障害福祉課関口彰課長補佐から「障害者優先調達推進法について」と題しての講演があり、福祉施設等における仕事の確保に向けた取組の推進を目的として成立された優先調達推進法について詳しく解説いただいた。「優先調達推進法に点字印刷物は想定しうるか」との質問に、現在含まれていないが全国課長会議で提案するとの言葉をいただき、後日、全国課長会議資料に点字印刷物についての一文が掲載された。
最後に、東京点字出版所の肥後正幸氏の進行で「点字図書給付事業の現状と課題」について話し合った。問題のあった手続きについて多数報告があり、部会施設間で事例を共有することの大切さを認識した。また、点字出版施設側も点字図書給付事業制度を利用者に使ってもらえるよう努力する必要があるのではとの意見もあった。平成25年に埼玉県民共済生活協同組合から助成を受け、全国の市区町村に点字図書給付事業の運用状況と申請方法についてのアンケート調査を行い、全国の申請方法の統一と手続きの簡素化を目指す。
2日目は、日本ライトハウス点字情報技術センターの金子研一氏より「点字出版におけるデータとコンピュータシステムのセキュリティを考える」と題して発表があった。データの喪失・流出の大半は人為的ミスによることが多いのには驚きであった。人為的ミスを認識した上でUSBメモリを持ち出さない、メール送信先の確認をするなどの注意点があげられた。
最後に部会事務局からの報告と確認、各施設からの情報提供を行ったのち閉会した。

(特集)点字サインJIS規格の普及を目指して!

熱気溢れた「点字サイン監修実務研究会」―― 研究会の成果をいざ実践へ ――
点字出版部会「点字サインJIS規格普及促進委員会」委員長 田中 正和

日盲社協点字出版部会では、点字サインの監修や点検が行える人材を育成するため、「点字サイン監修実務研究会」を2013年2月8日(金)、日本ライトハウス情報文化センターで開催した。全国各地で監修が受けられる体制を整備するため、情報サービス部会の会員施設にも呼びかけ、21施設43名の参加でたいへん盛り上がった。
点字サインとは、手すりや室名の点字表示、駅やトイレの触知案内板等で、視覚障害者が手引きなしで目的地へ行ったり施設を利用したりする上でたいへん重要な情報となるものである。1994年の「ハートビル法」や2000年の「交通バリアフリー法」の制定でハード面の整備が大きく進んだ反面、誤りの多い点字サインがたくさん出て来て、全国紙の1面で取り上げられたりして大問題となった。
点字に命をかけている点字出版部会では、こうした誤りを放置できないとして、点字サインワーキング・グループを立ち上げ、利用者アンケート(2001年実施、回答数209名)を基に「視覚障害者の安全で円滑な行動を支援するための点字表示等に関するガイドライン」を2002年にまとめた。
その後、ガイドラインがたたき台となって2006年には「点字の表示原則及び点字表示方法」、2007年には「触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法」のJIS規格が制定され、委員会の役割もめでたく終える予定だった。
しかし、依然としてJIS規格に沿っていない触知案内板があったり、誤りのある点字サイン等が各地で見受けられ、いよいよ専門家による監修や点検が最後の防波堤であることが明らかになってきた。
ちなみに、視覚障害者に「選挙公報」を点字や音声で届ける取組では、全国の点字出版所や視覚障害者情報提供施設が選挙情報支援プロジェクトを結成し、総務省や都道府県の選管に働きかけ、今日では幾つかの問題等があるものの、ほとんどの都道府県で視覚障害者に「選挙公報」の点字版や音声版が配布されるという状況を切り拓いてきた。
点字サインもそのように、①全国の視覚障害者情報提供施設で監修を受けられるように監修者を養成することと、②監修が制度化されるよう、国や地方自治体に働きかけていく必要がある。
今回の研究会は、2011年12月に行った「点字サイン基礎研修会―― JIS規格と監修業務を学ぶ」を受け、より実践的に研 修を深める場として位置づけて開催したものである。以下、その研究会で取り上げた3つのテーマの報告である。

触知案内図の監修はじめの一歩  日本点字図書館 和田 勉

触知案内図の監修に大切なことと問われたら、何を思い浮かべるだろう? 分かりやすい触図の条件を深く理解していること も大事だし、JIS規格を知っていることも大切だ。だが、点字サインならではのポイントとして、点字とは無縁の「サイン業者」が作成したグラフィック原稿を触読できる状態に仕上げるための技術がある。
具体的に言えば、A3判をはるかに超える大きなサイズになる触知案内図の原稿を縮小された寸法で渡された時に、これを原寸サイズまで拡大し、立体コピーを複数枚使った校正紙を作りあげる技術である。
これができないと、晴眼者が目視による校正をするしかないわけだが、点字サインの校正は点字図書の校正とは似て非なる面がある。例えば点字自体の寸法が一部だけ狂っているような時があり、目だけで追うことには限界がある。触読者による校正をかけるべきなのである。
そこで今回の実務研究会では「触知案内図の監修はじめの一歩 ―― 送られてきた原稿を原寸大に仕上げるコツ」というタイ トルのワークショップを企画した。
ここで学ぶのは、①原寸寸法に拡大コピーするための算出方法、②原寸でコピーした原稿を立体コピーに焼いた後、貼り合わせる技法である。特に後者について、貼り合わせることに技術などあるだろうかと思われるかもしれない。しかし、触読するためには表からテープを貼って、つなぐわけにはいかない。裏から貼って、しかも絵柄がずれないようにピタリとつなぐには、ちょっとしたコツがいる。
こうした技術を伝えるには、実際に手を動かすのが何よりである。というわけで、会場は1グループ5~6名が座れるように机をまとめ、それぞれの机の上には大きなカッターマット、セロテープ、定規、電卓などが置かれた。課題は、A3サイズの原稿から65cm角の立体コピー校正用紙を作ること。まず、電卓で「仕上がり寸法」÷「原稿の実測値」を計算し、およそ260%拡大する必要がある図であることを確認。その場で人数分の立体コピーを焼くことは困難であることから、あらかじめ膨らませておいたA4サイズの立体コピー6枚を配布した。
その後は、実際に貼り合わせの作業に入った。事前にレジュメに沿った説明があったとは言え、聞くとやるとでは大違いということを参加者全員が実感したようだ。各テーブルには、2名程度ずつ触読者が参加していたが、全員でああでもない、こうでもないと議論しながらの作業となった。それでも何回かつなげるうちに、コツを掴んできた様子がうかがえた。完成した図は、高田馬場駅構内図。まちかねた触読者が図に指を走らせる。
およそ通常の点字講習会とは様子を異にするワークショップではあったが、昼食後の眠気を吹き飛ばし、後に続く専門的な議論の前に参加者を活気づかせる導入部としての役割は果たせたようだ。

案内図ビフォー・アフター  名古屋ライトハウス点字出版部 小川 真美子

プログラム「案内図ビフォー・アフター ―― 事前課題から学ぶ監修のポイント」では、参加者に事前の課題提出をお願いした。看板業者から架空の「肥後橋公園駅案内図」の監修を依頼されたという想定で、その課題図に修正を加えていただいた。

寄せられたどの監修結果からも触知案内図の基本ガイドラインである「JIS T 0922」と課題を照らし合わせ、「どこをどう直したら触って分かりやすい触図、文章になるか」と検討された様子がうかがえた。
当日は、委員会が選考した4施設の代表者から「課題をどんな風に修正したか、どんなところが難しかったか」について発表してもらった。参加者全員に、4施設の監修結果を立体コピーで配布していたため、晴眼者も触図に指を走らせる光景が見られた。「目だけでは気づかないことも、触覚を使えば分かることがある」という基本的な事柄ではあるが、晴眼職員にはぜひとも理解・実行していただきたいポイントの一つだった。
発表後、委員会が作った監修例をこれまた立体コピーで配布し、「現在地記号は」「点字と触知記号の距離は」「凡例の使い方」など、監修ポイントごとに解説をした。
「監修例」がたった一つの正解ではない。点訳と同じように、その人・その施設で若干の個性が表れる部分もあるはずだ。ただ、JIS規格で示されたポイントを参考にすれば監修結果は似たり寄ったりになるはずで、今回の提出課題を見てもそうであった。
そして、触って分かりやすい点字サインには、触読者による監修も外せない。民間のサイン業者は、点字や「視覚障害について」明るくない現状もあるので、情報サービス部会・点字出版部会の施設団体が専門分野に点字サイン監修を加え、そのために今研究会で積んだ経験を活かしていただくことが委員会の掲げる理想のひとつでもある。

ホーム可動柵の表示、各地の事例から
日本ライトハウス点字情報技術センター所長 福井 哲也

駅ホームからの転落事故をなくす切り札というべきホーム可動柵。その普及は遅々たる歩みではあるが、最近ようやく新規路線で導入されたり、既存の駅でも設置工事のニュースを時折聞くようになった。
ホーム可動柵には、各扉の脇に点字サインが取り付けられることが多い。扉の脇というのは、階段の手すりの端と同様、視覚障害者が比較的見つけやすい場所と考えられるが、今回少し調べてみたところ、取り付け位置や表示内容に多くのバリエーションがあること
まず、取り付け位置であるが、扉そのものではなく、そのすぐ脇の戸袋に当たる柵の前面(垂直な面)に付けられる場合と、柵の上面(水平よりやや手前に傾斜)に付けられる場合とがある。前者は墨字のサインと一体のものが多いようだが、後者の方が触読しやすいといえる。また、扉の左右どちら側に設置するかについては、今のところ左側が多いと見られるが、利用しやすさの観点から、両側に設置するのが望ましいだろう。
次に、表示内容だが、鉄道10社の例を見比べただけでも、様々なものがあることがわかった。(以下便宜上、表示を墨訳して記す)
(A)点字のみによる表示
最もシンプルな東京のJR東日本山手線は、「6ノ1」のように書き、6号車の1番扉を表す。車両内の扉に付けた点字表示にならったものだが、スペースのわりに簡略化しすぎと感じる。東京メトロでは、「1番線新木場方面/4号車2番ドア/→先頭(10号車)」のように、番線・行き先方面と、先頭車両が表示の読み手から見て左右どちらの方向かも示している。「弱冷房車」のような情報を付加する例(都営地下鉄)もあった。これらに加え、「←階段/←エレベーター」のようにホーム上の情報も書いているのがつくばエクスプレス。降車後のガイドとして有効と考えられる。
(B)点字とともに触図も交えた表示
大阪市営地下鉄の車内の乗車位置表示に始まった、大きめの凸点と凸バーによる図がホーム可動柵にも応用されている。凸点の並びで車両数と今いる位置、凸バーの組合せで車両内の扉数と今いる位置を示すもので、図のルールを知れば、何両編成のどのあたりかが直感的に把握できる。横浜市営地下鉄や小田急電鉄でも採用している。
このように、ホーム可動柵の表示は多様であるため、ある程度の規格化が必要となりそうだ。だがその前に、このような表示の存在を利用者に広報し、活用を促しつつ意見を出し合う環境作りが大切だと思う。

情報サービス部会 平成24年度第31回音訳指導技術講習会(第6回認定者対象講習会)
東京ヘレン・ケラー協会点字図書館 堀江 達朗

本事業は、競輪の補助を受けて実施しました
昨年11月28日(水)~11月30日(金)、東京・早稲田の戸山サンライズにおいて、情報サービス部会は、平成24年度第31回音訳指導技術講習会(第6回認定者対象講習会)を参加者115名で実施した。
実際の講習内容は、以下の通りである。
1日目の講義1「視覚障害者福祉概論」は、弱視者に焦点を当て、弱視の種類とその見え方・見えにくさについて学んだ。また、ロービジョン体験グッズにより、視野狭窄や白内障などの見え方を体験した。
講義2「録音技術」は、録音図書製作に使われる録音機器やソフトに関する疑問等について、説明・解説を行った。
講義3「指導技術論」は、サピエ図書館に寄せられた利用者の意見に基づいて行われる審査と、その結果削除されたコンテンツについて解説した。
音訳指導技術講習会の様子
2日目の講義4「処理技術」は、3つの図の「処理」について1グループ8人の15グループに別れて、課題1問に対して約30分のグループディスカッションを行い、その後グループごとに結果を発表し、担当委員がコメントして、課題に対する処理に関する留意点・注意点を解説した。
講義5「音声表現技術Ⅰ」は、委員会で事前に用意をした5種類の「読み」の音声データをサンプルに、グループディスカッ ションを行い、その「読み」に対する問題点の指摘と解決策について話し合った。
講義6「音声表現技術Ⅱ」は、発声・発音について、人体のメカニズムから説き起こし、声の出し方を説明し、聞き取りにくい声をどうすれば聴きやすい声にできるか解説し、腹式呼吸を体験。
3日目の講義7「デイジー編集技術」は、『音訳テキスト(デイジー編集入門編)』の内容と使い方について学習した。
講義8「音声表現技術Ⅲ」は、合成音声による読書の現状を紹介し、その問題点と課題を解説し、肉声による録音図書製作の重要性も説明した。
録音図書の標準化が必要とされる中、今回も全国から音訳の指導者たちが当講習会に参加した。最新の情報を提供するとともに、録音図書製作の現場で必要とされる基本的な事項の指導法についての講義を行った。本講習会の後に行ったアンケート調査によれば「期待した成果を得られた」は84%で、おおむね受講者が期待する成果が得られたものと思われる。

平成24年度自立支援施設部会職員研修会
日本盲人職能開発センター施設長 杉江 勝憲

障害者総合支援法の施行が4か月後に迫った平成24年11月29・30の両日、自立支援施設部会は、ホテルグランドヒル市ヶ谷で、全国17施設、42名の参加者を得て研修会を開催した。
目的は、障害者自立支援法後の障害者全体の支援の在り方が大きく問われている中、視覚障害者への支援の在り方についても重い課題が問われている現在、今後の支援の在り方について、障害者総合支援法の内容や現行障害者自立支援法下での先進的実践事例を研修することで、今後の視覚障害者の自立支援に役立てることとした。
研修プログラムは、初日に坂本洋一和洋女子大学教授による「障害者総合支援法の動向と視覚障害者の支援」の講演、①就労支援、②生活訓練・自立支援、③盲人ホーム、④盲導犬の4分野の分科会が開催され、翌日は日本ライトハウスの元管理者面高雅紀氏による「障害者自立支援法への移行3年を振り返って―― 日本ライトハウスの取組み」の講演と日本盲人職能開発センター主任生活支援員坂田光子氏による「日本盲人職能開発センターの就労移行支援実践報告」が行われ、最後に日本盲人職能開発センターの東京ワークショップ(就労移行支援、就労継続支援B型)と能力開発施設(事務処理科)等の見学で終了した。
参加者のアンケートには、①「視覚障害者が地域で生活できる社会へ向けて、施設として準備しなければならないことが見えてきた。各施設が目指す目標への共通の理解が深まるよう努力したい」②「新体系に移行した際には、発表されたのと同じ様々な問題が生じた。今後も、法改正等による問題に対して、他の施設の報告を参考にしながら対応したい」③「視覚障害者の職能訓練、就労移行の段階や分野が大変良く分かった。実際の作業・訓練分野を見学して、より一層、素晴らしさを見ることができ、感動した」④「他の施設との繋がりは大事だと思うので、このような研修会の意義は高いと思う。我々の施設での課題は、他の施設でも共通している。この共通認識を通して、より大きな問題にも対応していけると思う」等の意見が寄せられた。
なお、アンケート(回答者42名)による満足度は、満足82%、まあまあ満足13%、どちらともいえない5%、不満0%との結果であった。

平成24年度生活施設部会 施設長ならびに専門職員研修会
養護盲老人ホームひとみ園事務長 岩元 勇史郎

昨年(2012年)11月29日(木)~30日(金)の日程で、埼玉県深谷市の養護盲老人ホームひとみ園と埼玉グランドホテル深谷を会場に、生活施設部会主催による「平成24年度施設長ならびに専門職員研修会」が、19施設より46名の参加を得て行われた。
実際に行われた内容は、下記の通りである。
(1日目)
開会式・オリエンテーション
講演1「私の養護老人ホーム経営」の講師は、公益社団法人全国老人福祉施設協議会・養護老人ホーム運営委員会委員長阿比留志郎氏
講演2「点字毎日の歴史と現状」の講師は、毎日新聞社点字毎日部東京駐在記者濱井良文氏
(2日目)
ひとみ園新園舎見学
講演3「盲老人による演劇上演の実際 石川達三作『幸福の限界』」の講師は、(福)日本失明者協会理事長茂木幹央氏
閉会式
本研修会による成果は次の通りである。
講演1の演題「私の養護老人ホーム経営」は、講演を通して、具体的に養護老人ホームの経営に役立つ知識を学び、施設経営に生かすことができる内容であった。講演2の演題「点字毎日の歴史と現状」は、講演を通して、世界で唯一現存する点字新聞『点字毎日』の歴史を学び、盲人への理解を深めることができた。
講演3の演題「盲老人による演劇上演の実際」は、講演の中で盲老人の演劇を観劇し、盲老人への理解を深めると共に、視覚障害者の生きがい活動としての演劇を見ることができた。
今後の期待としては、視覚障害者に対する理解力が向上し、より良い盲人福祉サービスが提供できるようになるのではないかと思われた。

<新会員施設紹介>
社会福祉法人名古屋ライトハウス 名古屋盲人情報文化センター サービス事業部用具販売 施設長:武居俊之

2007年まで部会に加盟していましたが、このたび再加入させていただきました。用具販売の職員は2名で、いずれも用具の新人です。装いも新たに、再出発といったところです。
名古屋は、手羽先・味噌カツ・ひつまぶしなどの特色ある名古屋メシに代表されるように、関東とも関西とも全く違う独自の文化が根付く土地柄です。
そこで、新装開店の用具販売では、べたな名古屋弁を用いたキャッチフレーズ「かわなかん!用具いかなかん!センター」のもと、利用者に喜んでいただける、独自性のあるサービス提供を目指します。
まずは、「来て楽しい、聞いても楽しい」をテーマに、電話の保留音として流す「替え歌」を鋭意制作中。
「Do you know? ど~ゆうの?」と、これまた名古屋弁まる出しのタイトルで、情報発信コラムを機関誌やメールマガジンで配信していきます。
キャッチフレーズをもじった、おもちゃの缶詰ならぬ用具の缶詰「かわな缶」を販売予定。何が入っているかはお楽しみ。というより、タイトルだけ決まっていて、中身は考案中なのです。
以上、大真面目に準備中です。
もちろん用具販売店として、新商品開発や機器の改良のために必要不可欠な、利用者の“生の声”をメーカーにフィードバックすることにも、意を用いてまいります。
現在販売中のオリジナル商品は、携帯点字器「だいてん丸」、パンの缶詰「パンですよ!」、官能朗読CD「花の歌1~31」です。
「だいてん丸」は4行26マス、通常の1.2倍サイズの点字が書けます。点字初心者や中途失明者の点字習得用に最適です。
「パンですよ!」は賞味期間約5年間の非常食。味は、レーズン・チョコチップ・コーヒーナッツの3種類あり、1缶2個入りです。
「花の歌」はCDプレーヤーで再生でき、1枚(約1時間)に官能小説や雑誌の読者投稿手記など、1~3話ずつ収録しています。収録作品は、女性の立場からの鑑賞に「たえられる」作品として選んでいます。在庫限りの販売です。
先にあげた独自路線の目標をひとつずつ形にしながら、「日々の暮らしに楽しさをプラスする」事業を行ってゆきます。

平成24年度JKA競輪補助事業完了のお知らせ

このたび財団法人JKAから、平成24年度競輪の補助を受けて、下記の事業を実施致しました。
ここに事業の実施報告を申し上げますと共に、財団法人JKA様をはじめ、ご協力を賜りました関係者の皆様に謹んで感謝の意を表します。
この事業が、当協議会の施設長及び各施設職員の専門技術向上に多大な成果が得られたことを、重ねて申し添えさせていただきます。

補助事業名:平成24年度障害のある人が幸せに暮らせる社会を作る活動 補助事業
補助事業者:社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 理事長 髙橋秀治

事業内容:
(Ⅰ)施設長及び専門職員講習会の開催
A.職員研修会(自立支援施設部会)
日時:平成24年11月29日(木)~30日(金)場所:ホテルグランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区)
B.施設長ならびに職員研修会(生活施設部会)
日時:平成24年11月29日(木)~30日(金)場所:養護盲老人ホームひとみ園(埼玉県深谷市)埼玉グランドホテル深谷(埼玉県深谷市)
(Ⅱ)点字・音訳指導員講習会の開催
A.点字指導員講習会
日時:平成24年8月29日(水)~31日(金)場所:山西福祉記念会館(大阪市)
B.音訳指導技術講習会
日時:平成24年11月28日(水)~30日(金)場所:戸山サンライズ(東京都新宿区)
事業費総額:1,303,000円
補助金額:976,000円

日盲社協事務局だより

退会会員施設

①国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局塩原視力障害センターは、平成25年3月末で自立支援施設部会から退会しました。

部会変更施設

①特定非営利活動法人日本点字技能師協会は、平成25年5月1日付で点字出版部会から情報サービス部会へ所属部会を変更します。

住所等変更施設

①北九州市立点字図書館は、平成25年4月1日から住所が下記のように変更になりました。なお、電話は従来のままです。
新住所:〒806-0021 福岡県北九州市八幡西区黒崎3-15-3 コムシティ5階
また、館長も森聖子氏から安藤薫氏に代わりました。
②池野通建(株)営業部は、平成24年11月26日から名称と住所・電話番号等が変更になりました。
新名称:池野通建(株)ソリューション事業部
新住所:〒143-0006 大田区平和島4-1-23
東京総合エンジニアセンター5階
新TEL:03-6275-9926
新FAX:03-5493-2134
新代表者:松村孝好
③シナノケンシ(株)の「プレクストーク」お問い合わせ窓口が、サービス向上のため、3月1日より電話番号と営業時間が下記のように変更になりました。なお、従来の電話番号にかけた場合も当面の間は自動応答メッセージで新しい番号が案内されます。
新TEL:050-5804-1177(営業時間は月~土曜日の9時30分~17時)

事務局からのお願い

日盲社協事務局では、充実したホームページ(HP)にするため、こまめな更新に努めております。HP には、全会員施設の法人名、施設名、施設長名、住所・連絡先・E-mail、HP を持つ施設にはそのリンクをお願いしています。
ところが、会員施設でこれらの項目が変更になっても日盲社協事務局にご連絡がなく、結果的に古いまま掲載されている場合が散見されます。とくに施設長名の変更は忘れがちです。
変更がありましたら事務局までご一報くださいますようお願い致します。

編集後記

お詫びと訂正

前号の『日盲社協通信』平成24年(2012年)11月号(通巻65号)、「日盲社協事務局だより」の記事中「住所変更施設」の中で、「社会福祉法人大分県盲人協会大分県点字図書館」を、誤って「社会福祉法人大分県点字図書館」と記載してしまいました。誠 に申し訳ありませんでした。ここにお詫びして訂正いたします。
ご指摘ありがとうございました。

編集長より

今号では、2020年のオリンピック・パラリンピック招致活動に忙しい河合純一さんに特別に寄稿していただきました。
同氏の華々しい活躍については、すでに皆様よくご存じだと思いますが、改めて以下にまとめてみました。
筑波大学附属盲学校高等部在学中の17歳の時にバルセロナパラリンピックに出場して銀メダル2個、銅メダル3個を獲得。早稲田大学在学中のアトランタパラリンピックでは50m自由形B1と100m自由形B1で金メダル2個と、銀メダル・銅メダルを獲得。教員となったシドニーパラリンピックで金メダル2個、銀メダル3個、アテネパラリンピックで金メダル1個、銀メダル2個、銅メダル2個を獲得して、全盲50m自由形の3連覇を達成。北京パラリンピックでも銀メダル1個、銅メダル1個を獲得。引退した現在は、(社)日本パラリンピアンズ協会の会長も務めています。
今号では、目玉企画として「(特集)点字サインJIS規格の普及を目指して!」をとりあげました。
2007年に点字サインはJIS規格が制定されたのですが、それがまだ徹底されておらず、依然としてJIS規格に沿っていない触知案内板があるばかりか、誤りのある点字サインさえ各地で散見されます。これを防ぐためには、専門家による監修や点検が必要不可欠であることは、いうまでもありません。しかし、点字出版施設でも点字サインに関する充分な知識と技能を持っている職員が少ないのが現状です。
そこで、昨年の「点字サイン基礎研修会―― JIS規格と監修業務を学ぶ」に引き続き、今年は研究会にレベルアップして実施 したもので、極めて意欲的で、刺激的な試みでした。
本誌の次号は平成25年(2013年)11月を目処に発行する予定です。(福山博)

情報提供のお願い

本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長の福山博(fukuyama@thka.jp)宛、メールでどしどしお送りください。お待ちしております。

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