6月23・24の両日、静岡県点字図書館(北村國七郎館長)を主管に、全国の視覚障害者福祉施設関係者200名が静岡市のホテルアソシア静岡に集い、日盲社協は第59回全国盲人福祉施設大会を開催しました。

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(写真)ならんで、次々に感謝の言葉と共に被災状況を語る被災施設の代表

写真 (写真:全国盲人福祉施設大会の玄関脇看板)

◆同行援護とリンクポケット

1日目は開会式に引き続き研修会と5部会に分かれて事業部会が開かれました。

研修会は「視覚障害者の未来は」を統一テーマに、2つのテーマで講演等が行われました。

テーマ1は、「同行援護とは?」と題して、和洋女子大学の坂本洋一教授が、3ヶ月後に実施される同行援護をめぐる諸課題を解説。それを受けて、日本ライトハウス岩井和彦常務理事が、視覚障害者の立場から「移動・コミュニケーション支援」について当事者ならではの思いを語りました。

これは改正障害者自立支援法が平成24年4月から施行されるのを前に、新たに創設された視覚障害者の同行援護など一部が先行して10月1日から施行されることに対応したものです。改正法は、現行の自立支援法を廃止して新たな障害者総合福祉法(仮称)に移行するまでのつなぎ法として、昨年12月に国会で成立しました。

改正法では新たに1人では外出が難しい視覚障害者に対し、ヘルパーらが付き添って代読などの情報支援を伴う「同行援護」サービスを創設しました。しかし、実施に移すには、地域格差の解消、事業所の確保、研修体制の確立など、様々な課題が予想されるため、この研修会となったものです。

写真(写真:講演する坂本教授)

テーマ2は、「デイジー・オンライン・サービスとは」で、これはシナノケンシ(株)が新開発した「プレクストークリンクポケット」の解説です。サピエ図書館に所蔵されている点字・録音図書をパソコンを使わないで、アクセシブルに検索・ダウンロードして読書できる優れものです。

次の人々が同機について、それぞれの立場からデイジー発展の経緯なども織り交ぜながら紹介し、評価しました。

日本点字図書館利用サービス部 杉山雅章部長

シナノケンシ(株)ビジネスユニット営業課 山岸秀和係長

水戸録音福祉研究所  須之内震治代表

日本ライトハウス点字情報技術センター 福井哲也出版部長

写真(写真:以上の発言者4人)

その後、点字出版、情報サービス、自立支援施設、生活施設、盲人用具の5つの事業部会に分かれて、それぞれの運営や研修等に関して集中討議が行われました。

◆義援金は457万4,894円

2日目は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室横矢寿彦室長補佐による「障害者制度改革の動向について」と題する講演が行われました。

次いで式典に移り、全国の施設から推薦された点訳・音訳・作業・指導などのボランティア活動をされた101名の奉仕者と43名の永年勤続職員、および援護功労表彰者として協同組合岐阜県眼鏡商業協同組合に対して、茂木幹央理事長から表彰状が贈られました。

写真(写真:表彰式遠景)

写真(写真:表彰する茂木理事長)

この後、厚労省、静岡県、静岡市、静岡県社協、日盲連、全視情協石川准理事長らによる来賓祝辞がありました。
その後、「アピール」を静岡県点字図書館職員の土居由知氏が、「大会決議」を評議員で、視覚障害者総合支援センターちばの高橋恵子氏が読み上げ、満場一致で採択されました。

3月11日の東日本大震災は、人知の予想をはるかに超えた規模で市民の生活を破壊し尽くしました。甚大な被害と計り知れない恐怖に見舞われた該当地域の皆様には衷心よりお見舞いを申し上げます。

日盲社協では、被災された施設に対しまして復興のお役に立ちたいと考えて、加盟施設に募金のご協力のお願いをしました。すると大変多くの施設から心の込った義援金が寄せられました。

義援金の総額は、457万4,894円で、贈呈該当地域は、岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・千葉県の6県にまたがり、贈呈を予定した施設は11施設でした。

義援金の配分方法は、第1回理事会・評議員会で常務理事に委任されましたので、それを受けて、次のように決定しました。

該当11施設に基本金20万円を進呈、さらに被害甚大な3施設(下記の@〜B会員施設)に義援金残額を3等分した金額791,631円を加算して贈呈する。

以上のような配分決定に基づき、第59回全国盲人福祉施設大会の式典において、義援金目録贈呈式を行いました。

ところが、自治体の方針や施設の事情によって、義援金を受けられない施設があり、結局、義援金の贈呈施設は、次の8施設となりました。

@社会福祉法人 養護(盲)老人ホーム祥風苑(岩手県)

A社会福祉法人 視覚障害老人ホーム松風荘(宮城県)

B社会福祉法人 特別養護老人ホーム一重の里(宮城県)

C福島県点字図書館

D茨城県立点字図書館

Eとちぎ視聴覚障害者情報センター

F社会福祉法人 視覚障害者総合支援センターちば

G宮城県視覚障害者情報センター

◆アピール

日本点字制定の恩人・石川倉次先生を生んだ静岡県において第59回全国盲人福祉施設大会を開催し、私たち視覚障害者福祉施設の周辺には、一つ一つの施設が抱える問題と共に、各施設が一丸となって取り組まねばならない問題があることを確認しました。

まず、3月11日に東北地方を襲った東日本大震災は、地域の人々の生活すべてを奪う被害をもたらしました。今、被災地の視覚障害者救援は、3月28日に日本盲人福祉委員会内に発足した災害対策本部によって行われています。日盲社協もこの組織を通じて、被災者の苦しみと困難を共有しつつ、長期にわたる支援を忍耐強く続けて行かなければなりません。

次に、現在視覚障害者の移動支援は市町村地域生活支援事業として実施されていますが、昨年来、地域格差をなくし、全国的に統一された基準を設けて「同行支援」として代筆・代読も含めた自立支援給付化した内容にする動きがあります。これは移動に困難のある視覚障害者にとって、また代筆・代読サービスの専門性を持つ施設にとっても大きな意味があります。厚生労働省では10月実施をめざして検討中と聞いていますが、視覚障害者の移動をしっかりと支える充実した制度となることを切望してやみません。

昨年12月、年間を通して障害当事者、その家族が半数以上参加している審議会「障がい者制度改革推進会議」は、障害者基本法抜本改正への意見書「障害者制度改革の推進のための第2次意見」を発表しました。内容は障害者の基本的人権の尊重、差別禁止、地域での生活、労働と雇用、インクルーシヴな教育などについて提起されています。これに対して、内閣府は基本法の改正案のイメージを推進会議に示しました。しかし推進会議からは、「前文」がない、「障害のある女性」の項目がなく、地域で生活する権利の明記がないなどの意見が出ました。そして、そのまま4月22日に閣議決定されました。およそ抜本改正とはほど遠く、「1年間の討議は何だったのか」という悲痛な声も聞かれました。私たちは障害者の権利条約批准のこの機会を逃さず、障害者がごく普通の生活を送れるレールが敷かれたと後々評価されるような障害者制度の確立を強く求めます。

このほか点字図書館の4割に迫りつつある指定管理者制度についての実態解明、数年来開業者も施術所も減少傾向にある三療業の立て直し、高齢化社会での盲老人の喜びに満ちた生活保障、そして総務省が提言する点字や音声による選挙公報の拡大を制度として確立するなど、日盲社協が解決しなければならない課題は山積しています。

私たちはそれぞれの施設の足場を固めつつ、視覚障害全体に係る問題を視野に入れて、手を携えて互いに励まし合い、豊かな社会を築くために働いていきましょう。

以上、宣言します。

平成23年6月24日

第59回全国盲人福祉施設大会

社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

写真(写真)大会アピールを読み上げる土居さん

◆大会決議

一、選挙公報は、国民の基本的人権である参政権行使のための重要な情報源である。「公職選挙法」でも国政等の選挙で発行が義務づけられており、視覚障害者等のために発行される点字版・音声版も制度として位置づけられた選挙公報として発行されることを強く要望する。

 

一、点字教科書や点字図書の出版に亜鉛板は欠かせない。現在、東日本大震災の影響で、亜鉛板の確保が大変不安定になっている。また、点字出版所の点字製版機や点字印刷機を製造する業者が日本で1社となり、細い命綱に頼っている状況である。視覚障害者の知る権利と学ぶ権利を保障するため、今後とも原材料と製造機械が安定的に供給されるよう、国の支援を要望する。

 

一、障害者自立支援法の一部改正により視覚障害者等に同行援護が創設され、それが円滑に運用できるよう、重点支援である代読・代筆支援の養成研修の実施を国が強力に推し進めるとともに、その支援を強化・充実させるため、情報提供施設に専門職員の増員を要望する。

 

一、被災された視覚障害者に対して、長期に亘る適切な情報保障やコミュニケーション支援を継続するよう都道府県に要請されたい。また、地方公共団体に対して「災害時における安否確認」が迅速・正確・円滑に行われるよう、個人情報保護条例の規定を適切に解釈・運用し、支援者と情報の共有を図るよう指導することを要望する。

 

一、より質の高い盲導犬を育てるため、公共交通機関や公共施設等における盲導犬訓練士による候補犬の訓練実施に関して、盲導犬に準ずる扱いとしていただけるように要望する。

 

一、視覚障害者が自立した生活を行うための基礎となる白杖歩行、点字、パソコンなどの情報機器の活用、調理などの指導にあたっては感覚機能障害である視覚障害ゆえの個別対応が必須である。しかし、自立支援法で定められた人員配置基準は、機能訓練事業を行う実際の現場とはかけ離れており、現在の報酬体系では施設運営の継続ができず、視覚障害者のための社会復帰のシステムが崩れようとしている。

このため自立支援法後の新制度ではサービスを提供する施設運営が安定し、個別支援の必要な視覚障害者に対して十分な支援が行える制度設計を要望する。

また、新制度施行までは、現在行われている基金事業を継続するなど、施設の運営維持ができるような対策を要望する。

 

一、盲人ホームについて、あはき業に特化した障害福祉サービス(就労支援事業)として明確に位置づけ、安定的な運営が可能となるよう運営費補助金の増額を要望する。

 

一、養護盲老人ホームの入所要件の改善を要望する。

理由として平成12年3月の厚生省局長通知による視覚障害者とは身障手帳1・2級の所持者と限定していることの変更及び昭和38年7月公布の老人福祉法施行令による入所希望者や同一生計者に市町村民税の所得割の額がないことの撤廃。

 

一、日常生活用具の助成金の取り扱いについて地域(各市町村)格差の全廃を要請する。

 

平成23年6月24日

第59回全国盲人福祉施設大会

社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

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