東京ヘレン・ケラー協会点字出版所長 福山博

直居鐵先生を偲ぶ

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2月29日午後3 時、日本点字図書館(日点) の直居鐵理事が肺炎で逝去された。享年85。

通夜と葬儀は家族と近親者のみで行われ、5月12日(土)午後3時から日点主催による直居先生の「お別れの会」が同館3階多目的室で行われる。

頑固一徹だが、涙もろい一面も持つ直居鐵先生の謦咳に接して34年がたった。当時は都立文京盲学校の理療科教諭で、日本盲人福祉研究会(文月会)で大学進学対策委員長などを務められるかたわら、小協会発行の『点字ジャーナル』の常連執筆者、編集委員として協力していただいていた。

先生は大正15年大阪生まれ。幼少時から弱視で、小学校はわが国初の弱視学級「視力保存学級」を設置した麻布・六本木の東京市南山尋常小学校に通学された。

その後、官立東京盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)に進み師範部を卒業して、昭和23年に平塚盲学校に奉職。しかし、2年で退職して、早稲田大学教育学部教育学科に入学され、昭和27年3月に卒業。昭和28年4月文京盲学校に奉職され、当初は中学部で普通科を教えられたが、同校が小・中学部と高等部に分離する際に理療科に移られ、理療科教員として約30年勤務された。昭和57年3月に同校を退職され、日点副館長に就任された。

日点では常務理事も兼任する激務の中、日本点字委員会事務局長、全国点字図書館協議会(現・全国視覚障害者情報提供施設協会)会長、日盲社協図書館部会長(現・情報サービス部会)を歴任された。

平成3年3月に日点を退職されたが、理事は生涯続けられた。平成13年から平成20年までは、国際視覚障害者援護協会(IAVI)の理事長を務められた。

平成21年秋の叙勲では、旭日双光章の栄に浴されている。

長尾榮一先生を偲ぶ

直居先生の死に先立ち、2月14日には、元筑波大学教授である長尾榮一博士が、膵臓ガンで逝去された。享年81。お通夜にあたるカトリックの前夜祭が2月19日、告別式が2月21日、ともに東京カテドラル関口教会で行われた。

同氏は昭和6年東京生まれで、4歳の時に敗血症で失明。昭和12年官立東京盲学校に入学し、中等部を経て、昭和26年同師範部を卒業。卒業と同時に同校の理療科教師となる。教壇に立ちながらツボの存在についての研究を続け、昭和54年東京大学から医学博士号を受ける。全盲では日本初であった。

『鍼灸按摩史論考』などの著書が多数あり、東洋医学の発展に大きく寄与し、昭和62年には内閣総理大臣賞を受賞された。

両先生のご冥福をお祈りいたします。


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