日盲社協通信 平成23年(2011年)11月号(通巻63号)

日盲社協通信 平成23年(2011年)11月号(通巻63号)
編集人:福山博   発行人:髙橋秀治
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/

もくじ

新任のご挨拶「第一歩は事務局強化」
理事長 髙橋 秀治

私は茂木幹央先生の後任として7月から本職に就きましたが、これはエライものを引き受けたと悔やんでいます。もう後の祭りです。時間をかけて日盲社協の全体像をつかみながら、前進したいと思います。攻めて耐え、石橋を叩いて渡ります。皆様のご指導・ご協力をお願い申し上げます。
ここ10年間は、本間昭雄先生のバランスの取れた寛容な組織運営、それに茂木先生の会館建設に示された果敢な運営と、お二人の個性がにじんだ期間でした。私はお二人に点字出版部会役員として、また一施設職員としていろいろ教えていただきました。しかしその中で、一番気を遣ったのは部会のまとまりです。日盲社協全体には関心が及びませんでした。従って、これから全体をみなさいと言われても、思うように的が絞れません。この迷いをよそに、仕事はどんどん続いていますから、のんびりできません。
さて、以前から気にしていたのですが、視覚障害関係の各種大会に行きますと、参加者の中で視覚障害当事者の姿が数えるほどしかいません。見える人が圧倒的に多いのです。パソコン関係の大会でもそうですが、スクリーンに映像を写して説明する例が多くなっています。早口の説明と早い画面展開では、視覚障害者はついて行けるでしょうか。
それと視覚障害者団体の組織率が低くなっています。不確かですが、どこでも20%前後という推測を聞きました。視覚障害者団体に入らないほかの視覚障害者は「わが道」を歩んでいるのでしょうか。これには奥深い議論が必要ですが、今後の活動を考えると、深刻にとらえざるを得ません。
基本的に日盲社協は視覚障害者の仕事という点では共通していますが、実際の仕事内容が違う施設の集まりです。同じ視覚障害者の仕事をしていても関わり方が違います。それを承知で、手を組んで共通課題について活動するためには、お互いに関心を持ち合い、相手と知りあうことが第一歩です。では、誰がそのきっかけを作りますか。
私は事務局の充実を優先したいと思っています。幸い、岩上義則事務局長をはじめ、事務局スタッフは組織の充実に意欲をもっています。施設と施設をつなぎ、共通の問題点を示し、関係者の思いをまとめていき、そのエネルギーを燃やしたいのです。言うのは簡単ですが、実際はとても大変です。しかし、かつて茂木先生は「会館を大いに利用していただき、会員施設の拠点としてほしい」と話されましたが、これは事務局の活用は組織強化につながるという意味です。各部会の情報を事務局にたくさん寄せていただき、事務局はそれを全国の施設に伝えて、お互いの活動を確認していきたいものです。
例によってまとまりませんでしたが、どうぞよろしくお願いします。

新体制の苦悩
常務理事・事務局長 岩上義則

日盲社協は念願の新社屋を建築して新年度を迎えた。事務局長も石倉満行常務理事から同じく岩上へとバトンタッチされ、職員は中尾忠雄氏から島田昌子氏に引き継がれるなど新体制でスタートした。
言うまでもなく、日盲社協には重大な課題が山積しているのだが、正直言って、当面の課題をクリアするのに汲々としたのが今年度上半期の姿だった。
何に、そんなに振り回されたのかと言えば、上半期前半は、平成22年度の事業報告・決算、6月に開催した第59回日盲社協静岡大会の準備と後処理である。決算報告も従来の経常活動による収支報告以外に、施設整備等による収支報告の作成が大変困難だった。
全国大会に関しては、次期大会主管施設の予定になっていた福島県点字図書館が被災に遭われ辞退せざるを得なかったため、今大会開催間際まで後任施設の決定に奔走した。また、義援金配分方法の決定や全国大会での目録贈呈など、不慣れな事務局長が、いきなり重い事務と向き合ったのが主たるもたつきの原因で、不行き届きな点が多々あったが、今となっては無事になし終えたことだけを良しとして、おぼつかない運びだったことを会員施設には、どうかお許しいただきたい。
上半期後半は、青天霹靂の理事長交代や日盲社協会館新築に伴う各諸手続きや(財)JKA補助事業激変への対応があった。
任期途中の理事長交代については、国や東京都、関連団体への変更手続きが多数生じた。また新築に伴う法人事務所の所在地変更と基本財産の変更手続きには繁忙を極め、膨大な書類整備と役所通いは、事務職員の休日取得さえも困難になるほどの厳しさだった。
ダブルパンチを喰らったのが(財)JKA補助事業の申請方法の変化である。これまでの補助事業は、補助対象部会からの大まかな予算・決算を軸にして、事務局が作文すれば何とかなるものだった。ところが、(財)JKAが国の事業仕分けの煽りをもろに受けたせいもあって、前年度の報告も含めて、来年度からの申請がまさに激変したのである。補助対象となる部会自身が詳細な評価や成果を作成しなければならない。さらに、今後見込まれる研修の効果や成果の波及、事業実施の課題などを現場感覚で報告しなければならなくなった。事務局は、言わばその中継役に徹しなければならないのだが、担当部会ともども、今なお深い戸惑いの渦中にある。
そんな中で下半期に入った次第だが、ぼやいてばかりいても仕方がない。日盲社協の足場を固めながら、何としても発展につながる課題に果敢に取り組まねばならない。各部会・会員施設の一層のご支援・ご協力をお願いすること大である。

常務理事の宿題
社会福祉法人山口県盲人福祉協会理事長 舛尾政美

昭和35年春、山口県立盲学校を出て下関市で三療を開業。3年後生活が落ち着いたので山口県盲人福祉協会に加入し、間もなく青年部長に就任、その後理事となり組織の活動に夢中になりました。
「三療の仕事を忘れるな。頼まれると何でも引き受ける。嫌と言えないのは悪い癖」とよく母に言われたものです。しかしその悪い癖は50年経った今でも直っていません。数年前に茂木先生に「私はそろそろ引退しなければ」と話すと社会の損失だと言われ、結局生活施設部会の長を引き受ける事になってしまい、今ではすっかりのめり込んでいます。
生活施設部会の長として全国の養護盲老人ホームの実態(措置控・定員割・経営難)を知るにつけ何とかしなければと思い、先ず自分の施設で出来る事を考えてみました。職員に有効に就労して貰うための毎日の作業表作りに始まり、国の補助金を受けた太陽光発電システムの導入(建物3棟の屋根にモジュール216枚設置)、入浴用の温水の確保のため太陽熱ソーラーシステム13基設置、用途の多い食堂等の蛍光灯はLEDへ切替等です。しかし、これらの企業努力にも限界があります。もちろん各措置機関・包括支援センター・病院等には働きかけをしていますが、なお現状を打開するに到っていません。ここで、養護盲老人ホームに課せられた制約を緩めて貰うためにはやはり政治力が必要ではないかと考えています。
5月の会館の落成式には私共法人がお付き合いしております元総理の安倍晋三先生にご出席頂き、さらには7月厚労省老健局長に部会長として陳情した際には同行もして頂きました。10月には安倍先生の下関事務所に配川筆頭秘書を訪ね今回の老健局長に陳情した内容を確認すると共に、現時点で厚労省が陳情内容に対してどう動いているのか質して頂く様お願いしました。このように生活施設部会の問題がこれからという時に茂木先生から役員改選で常務理事にと頼まれ、また悪い癖が出て引き受ける事になりました。
10月の常務理事会で杉光園の財源が半年で200万円不足しているとの報告を受けました。かなり深刻な状態にあると思います。私は昭和61年に20年続いた盲人ホームを閉鎖しました。盲人ホームの収入を増やそうとすると近隣の三療業の視覚障害者と営業面でトラブルが生じるためです。ところが茂木先生は深谷市において昨年6月就労継続支援B型事業所として盲人ホームを開所され見事に成功しておられます。
私はこれを試してみようと思い、7月から山口県と交渉を始めました。当初、障害者支援課の課長は難色を示していましたが、「視覚障害者の就労の場を」という私の気持ちを理解して頂けたようで、11月1日開所する運びとなりました。これを成功させ、杉光園の現状を大きく改善する事に繋げていきたい―― 今その思いを強く胸に抱いています。
生活施設部会の養護盲老人ホームの問題と杉光園の問題 ―― この二つの問題解決が、私の常務理事としての大きな宿題となっています。

<特集>東日本大震災における視覚障害者の状況と支援
社会福祉法人日本盲人福祉委員会 東日本大震災視覚障害者支援対策本部事務局長 加藤俊和

◆1.視覚障害者の避難と避難生活の困難さ

(1)今回の震災の特徴
今回の大震災の犠牲者の9割以上が津波という中で、視覚障害者はどのようにして逃げられたのか。全盲やかなり見えにくい人は、家族か近所の人に助けてもらったと答えている。逆に言うと、津波が押し寄せた地域にいて助けが得られなかった方は犠牲になる可能性が高い、と言える。
震災後8か月たった今でも障害者の犠牲者数は明らかになっていないが、障害者団体の会員等については犠牲者の割合は一般の約2倍、という発表もある。しかし、津波の被害の大きかった沿岸部では、視覚障害者団体の会員や点字図書館の利用者は身体障害者手帳保持者の1割程度であり、9割近い方々については、把握できていないという現実がある。単純な推測はできないが、視覚障害で犠牲となったのは百人前後に達していると見られている。
なお、各地での「非常時支援のための要援護者の登録」によって助かった人もいるが、登録数が少なかったこともあって、十分機能していたとは言えない。高齢者を含む近隣支援の「要援護者ステッカー」なども含めた緊急時対策の抜本的な見直しも必要であろう。
(2)避難所での視覚障害者の生活
避難所で視覚障害者にとって最大の困難はトイレである。ほとんどの避難所は断水となり、バケツの水をひしゃくで流す、ということだけでも大変な状況になる。通常のトイレが使えなくなって、介護用を使って自分で処理することが必要になったり、掘った穴に2枚板だけのトイレなど、非常時のさまざまなトイレへの対応は、状況の変化に対応することが困難な視覚障害者にとって、人間の尊厳に関わるような状況に追い込まれてしまうことさえある。
また、避難所で重要な、貼り紙の情報をいつも読んでもらえるとは限らず、弁当の情報すら得られなかったりすることも少なくない。しかも、親しくなった人が先に仮設住宅に移って、困難な状況に追い込まれた視覚障害者も少なくなかった。
なお、福祉避難所が少なかったことも指摘されているが、介護中心で支援者は視覚障害のことをよく知らないため対応も不十分で、視覚障害者施設は遠すぎて、あまり利用されなかったということもある。
(3)自宅や仮設住宅の問題も
今回、岩手県下で目立ったのが、自宅が半壊でも全壊でもないのに避難所に行かざるを得なかった方々である。集落に1軒しかない”よろずや”的な店が流されると、視覚障害者は生活ができなくなってしまうためである。
また、自宅にとどまっていたり、仮設住宅に移ると、一部を除いて弁当などの支給は得られない。三陸の鉄道が止まり、バスすらない仮設住宅地など、視覚障害者にとって生活の困難に直結する問題が続出している。様々な情報も、「見る資料」ばかりであり、視覚障害者は知ることができないことも多かった。原発の関係でも地図や図表の情報など、視覚障害者には伝わりにくい情報が多いことが指摘されている。

◆2.対策本部における視覚障害者支援の状況

(1) 当初の準備活動
震災の早期支援が必要であることは言うまでもないが、今回の大震災は南北500km以上にもおよぶ範囲の避難所や自宅をガソリンもない中で訪問支援しないといけないことに加え、支援を必要とする視覚障害者を見つけ出すための個人情報の入手が著しく困難になっていることから、その対策から準備をすることが求められた。
それで、当事者と支援者などを束ねる最もふさわしい日本盲人福祉委員会(日盲委)に対策本部を設置することとなり、3県の行政各機関や各団体などと支援準備を進めて視覚障害者リストを準備していった。
(2) 4月、5月の支援
このような場合、「視覚障害者の相談支援のできる専門家」が回って、様々な支援を行う必要がある。東北に唯一のリハ施設を持つ日本盲導犬協会の多くの職員のみなさまと、視覚障害リハビリテーション協会や全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)も含めて、全国からの延べ50名の方々によって、3県の視覚障害者を訪ね回っての支援活動を行った。このときの対象者は、各団体の沿岸部居住者のリストから586人で、手帳保持者の約1割であった。
5月も市町村の職員と同行するなどの形で、必要な方々の支援を続けたが、避難所からの退出も相次ぎ、十分な成果とまではならなかった。

◆3.新しく支援し始めた”8割の人たち”

(1) ひっそりと暮らしていた”新たな8割の人たち”
画期的な取り組みとなったのは、6月下旬に宮城県が「支援資料を被災地の1、2級の視覚障害者全員に配付」を行ったことであった。日盲委で資料や要望返信資料の作成を行い、6月17日に宮城県を皮切りに、岩手県、仙台市からも送付された。福島県についても、実施に向けての働きかけを行っている。
◆10月末現在の沿岸部における視覚障害1・2級の被災者数など(括弧内は4月末現在)

「支援要望者」のほとんどは、4月に私たちが把握しなかった人々であった。40年以上も、ほとんど目のみで生活して来た”普通の人”が急に視覚を失うと、ほとんどの方々は何もできなくなって極端な絶望状態に陥り、家の中でひっそりと暮らす状態が何年も何十年も続く・・・。そのような700人以上もの方々の実態が、初めて明らかになった画期的なできごとと言える。
(2) 半数近い方々が、音声時計の存在すら知らなかった!
「ラジオ」は5~7割もの方々が切望され、音声時計などを知らない方が要望者数の43%、日常生活用具制度を知らない・使ったことがない方は要望者の56%という、驚くような数字となっていた。

◆4.今回明らかになった障害者支援の問題点

(1) 行政・関連機関は、多くの障害者の実態の把握と支援を
行政各機関は、多くの中途障害者の特性をつかみ、的確に対応すること、そして、各障害を代表する団体も、多数の方々の隠れたニーズを把握して、活動していくことが求められている。
緊急時の避難は、これまでのように「近隣の方々と仲良く」そして「登録を」と言うだけでは、支援の必要な多くの方々の犠牲は防げないことが明らかになった。
「同意」の得られにくい精神障害者や視覚障害者でも今回コンタクトの取れ始めた”8割以上の人々”を救うには、「高齢者を含む緊急時要支援者の所在情報だけは、近隣に開示」のような方法も早急に検討することが必要であろう。
(2) 災害時の個人情報保護に対する準備
まず、行政側は、どのような災害で、どのような状況になれば、いつ、だれ(代理者)が、どのような団体に開示するかの準備を整えておくことが必要である。
一方、開示を受ける団体も、条件を満たす組織の準備と、災害発生後早急に立ち上がるよう、確実な個人情報の扱いの規定などの早急な整備が必要である。
なお、日盲委では東日本大震災から1周年にあたる来年(平成24年)3月11日に、仙台市で「大震災と視覚障害者」をテーマにシンポジウムを開催する。

静岡市で第59回全国盲人福祉施設大会 ~被災地の8施設に義援金を贈呈~

6月23・24の両日、静岡県点字図書館(北村國七郎館長)を主管に、全国の視覚障害者福祉施設関係者200名が静岡市のホテルアソシア静岡に集い、日盲社協は第59回全国盲人福祉施設大会を開催しました。

◆同行援護とリンクポケット

1日目は開会式に引き続き研修会と5部会に分かれて事業部会が開かれました。
研修会は「視覚障害者の未来は」を統一テーマに、2つのテーマで講演等が行われました。
テーマ1は、「同行援護とは?」と題して、和洋女子大学の坂本洋一教授が、3ヶ月後に実施される同行援護をめぐる諸課題を解説。それを受けて、日本ライトハウス岩井和彦常務理事が、視覚障害者の立場から「移動・コミュニケーション支援」について当事者ならではの思いを語りました。
これは改正障害者自立支援法が平成24年4月から施行されるのを前に、新たに創設された視覚障害者の同行援護など一部が先行して10月1日から施行されることに対応したものです。改正法は、現行の自立支援法を廃止して新たな障害者総合福祉法(仮称)に移行するまでのつなぎ法として、昨年12月に国会で成立しました。
改正法では新たに1人では外出が難しい視覚障害者に対し、ヘルパーらが付き添って代読などの情報支援を伴う「同行援護」サービスを創設しました。しかし、実施に移すには、地域格差の解消、事業所の確保、研修体制の確立など、様々な課題が予想されるため、この研修会となったものです。
テーマ2は、「デイジー・オンライン・サービスとは」で、これはシナノケンシ(株)が新開発した「プレクストークリンクポケット」の解説です。サピエ図書館に所蔵されている点字・録音図書をパソコンを使わないで、アクセシブルに検索・ダウンロードして読書できる優れものです。
次の人々が同機について、それぞれの立場からデイジー発展の経緯なども織り交ぜながら紹介し、評価しました。
日本点字図書館利用サービス部 杉山雅章部長
シナノケンシ(株)ビジネスユニット営業課 山岸秀和係長
水戸録音福祉研究所  須之内震治代表
日本ライトハウス点字情報技術センター 福井哲也出版部長
その後、点字出版、情報サービス、自立支援施設、生活施設、盲人用具の5つの事業部会に分かれて、それぞれの運営や研修等に関して集中討議が行われました。

◆義援金は457万4,894円

2日目は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室横矢寿彦室長補佐による「障害者制度改革の動向について」と題する講演が行われました。
次いで式典に移り、全国の施設から推薦された点訳・音訳・作業・指導などのボランティア活動をされた101名の奉仕者と43名の永年勤続職員、および援護功労表彰者として協同組合岐阜県眼鏡商業協同組合に対して、茂木幹央理事長から表彰状が贈られました。
この後、厚労省、静岡県、静岡市、静岡県社協、日盲連、全視情協石川准理事長らによる来賓祝辞がありました。
その後、「アピール」を静岡県点字図書館職員の土居由知氏が、「大会決議」を評議員で、視覚障害者総合支援センターちばの高橋恵子氏が読み上げ、満場一致で採択されました。
3月11日の東日本大震災は、人知の予想をはるかに超えた規模で市民の生活を破壊し尽くしました。甚大な被害と計り知れない恐怖に見舞われた該当地域の皆様には衷心よりお見舞いを申し上げます。
日盲社協では、被災された施設に対しまして復興のお役に立ちたいと考えて、加盟施設に募金のご協力のお願いをしました。すると大変多くの施設から心の込った義援金が寄せられました。
義援金の総額は、457万4,894円で、贈呈該当地域は、岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・千葉県の6県にまたがり、贈呈を予定した施設は11施設でした。
義援金の配分方法は、第1回理事会・評議員会で常務理事に委任されましたので、それを受けて、次のように決定しました。
該当11施設に基本金20万円を進呈、さらに被害甚大な3施設(下記の①~③会員施設)に義援金残額を3等分した金額791,631円を加算して贈呈する。
以上のような配分決定に基づき、第59回全国盲人福祉施設大会の式典において、義援金目録贈呈式を行いました。
ところが、自治体の方針や施設の事情によって、義援金を受けられない施設があり、結局、義援金の贈呈施設は、次の8施設となりました。
①社会福祉法人 養護(盲)老人ホーム祥風苑(岩手県)
②社会福祉法人 視覚障害老人ホーム松風荘(宮城県)
③社会福祉法人 特別養護老人ホーム一重の里(宮城県)
④福島県点字図書館
⑤茨城県立点字図書館
⑥とちぎ視聴覚障害者情報センター
⑦社会福祉法人 視覚障害者総合支援センターちば
⑧宮城県視覚障害者情報センター

◆アピール

日本点字制定の恩人・石川倉次先生を生んだ静岡県において第59回全国盲人福祉施設大会を開催し、私たち視覚障害者福祉施設の周辺には、一つ一つの施設が抱える問題と共に、各施設が一丸となって取り組まねばならない問題があることを確認しました。
まず、3月11日に東北地方を襲った東日本大震災は、地域の人々の生活すべてを奪う被害をもたらしました。今、被災地の視覚障害者救援は、3月28日に日本盲人福祉委員会内に発足した災害対策本部によって行われています。日盲社協もこの組織を通じて、被災者の苦しみと困難を共有しつつ、長期にわたる支援を忍耐強く続けて行かなければなりません。
次に、現在視覚障害者の移動支援は市町村地域生活支援事業として実施されていますが、昨年来、地域格差をなくし、全国的に統一された基準を設けて「同行支援」として代筆・代読も含めた自立支援給付化した内容にする動きがあります。これは移動に困難のある視覚障害者にとって、また代筆・代読サービスの専門性を持つ施設にとっても大きな意味があります。厚生労働省では10月実施をめざして検討中と聞いていますが、視覚障害者の移動をしっかりと支える充実した制度となることを切望してやみません。
昨年12月、年間を通して障害当事者、その家族が半数以上参加している審議会「障がい者制度改革推進会議」は、障害者基本法抜本改正への意見書「障害者制度改革の推進のための第2次意見」を発表しました。内容は障害者の基本的人権の尊重、差別禁止、地域での生活、労働と雇用、インクルーシヴな教育などについて提起されています。これに対して、内閣府は基本法の改正案のイメージを推進会議に示しました。しかし推進会議からは、「前文」がない、「障害のある女性」の項目がなく、地域で生活する権利の明記がないなどの意見が出ました。そして、そのまま4月22日に閣議決定されました。およそ抜本改正とはほど遠く、「1年間の討議は何だったのか」という悲痛な声も聞かれました。私たちは障害者の権利条約批准のこの機会を逃さず、障害者がごく普通の生活を送れるレールが敷かれたと後々評価されるような障害者制度の確立を強く求めます。
このほか点字図書館の4割に迫りつつある指定管理者制度についての実態解明、数年来開業者も施術所も減少傾向にある三療業の立て直し、高齢化社会での盲老人の喜びに満ちた生活保障、そして総務省が提言する点字や音声による選挙公報の拡大を制度として確立するなど、日盲社協が解決しなければならない課題は山積しています。
私たちはそれぞれの施設の足場を固めつつ、視覚障害全体に係る問題を視野に入れて、手を携えて互いに励まし合い、豊かな社会を築くために働いていきましょう。
以上、宣言します。

平成23年6月24日
第59回全国盲人福祉施設大会
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

◆大会決議

一、選挙公報は、国民の基本的人権である参政権行使のための重要な情報源である。「公職選挙法」でも国政等の選挙で発行が義務づけられており、視覚障害者等のために発行される点字版・音声版も制度として位置づけられた選挙公報として発行されることを強く要望する。
一、点字教科書や点字図書の出版に亜鉛板は欠かせない。現在、東日本大震災の影響で、亜鉛板の確保が大変不安定になっている。また、点字出版所の点字製版機や点字印刷機を製造する業者が日本で1社となり、細い命綱に頼っている状況である。視覚障害者の知る権利と学ぶ権利を保障するため、今後とも原材料と製造機械が安定的に供給されるよう、国の支援を要望する。
一、障害者自立支援法の一部改正により視覚障害者等に同行援護が創設され、それが円滑に運用できるよう、重点支援である代読・代筆支援の養成研修の実施を国が強力に推し進めるとともに、その支援を強化・充実させるため、情報提供施設に専門職員の増員を要望する。
一、被災された視覚障害者に対して、長期に亘る適切な情報保障やコミュニケーション支援を継続するよう都道府県に要請されたい。また、地方公共団体に対して「災害時における安否確認」が迅速・正確・円滑に行われるよう、個人情報保護条例の規定を適切に解釈・運用し、支援者と情報の共有を図るよう指導することを要望する。
一、より質の高い盲導犬を育てるため、公共交通機関や公共施設等における盲導犬訓練士による候補犬の訓練実施に関して、盲導犬に準ずる扱いとしていただけるように要望する。
一、視覚障害者が自立した生活を行うための基礎となる白杖歩行、点字、パソコンなどの情報機器の活用、調理などの指導にあたっては感覚機能障害である視覚障害ゆえの個別対応が必須である。しかし、自立支援法で定められた人員配置基準は、機能訓練事業を行う実際の現場とはかけ離れており、現在の報酬体系では施設運営の継続ができず、視覚障害者のための社会復帰のシステムが崩れようとしている。
このため自立支援法後の新制度ではサービスを提供する施設運営が安定し、個別支援の必要な視覚障害者に対して十分な支援が行える制度設計を要望する。
また、新制度施行までは、現在行われている基金事業を継続するなど、施設の運営維持ができるような対策を要望する。
一、盲人ホームについて、あはき業に特化した障害福祉サービス(就労支援事業)として明確に位置づけ、安定的な運営が可能となるよう運営費補助金の増額を要望する。
一、養護盲老人ホームの入所要件の改善を要望する。
理由として平成12年3月の厚生省局長通知による視覚障害者とは身障手帳1・2級の所持者と限定していることの変更及び昭和38年7月公布の老人福祉法施行令による入所希望者や同一生計者に市町村民税の所得割の額がないことの撤廃。
一、日常生活用具の助成金の取り扱いについて地域(各市町村)格差の全廃を要請する。
平成23年6月24日
第59回全国盲人福祉施設大会
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

東京都視覚障害者生活支援センターの今 ~就労移行支援の状況~
自立支援課長 長岡雄一

昨年の4月から、センターは、機能訓練と就労移行支援を提供する事業所として新たに出発したことは、以前お知らせしたとおりです。そこで、今回は、センターが新たに取り組んだ就労移行支援の現状について、お伝えすることにします。
就労移行支援の定員は10名。就労移行のみを行う場合には、この定員では十分ではありませんが、センターは多機能事業所として機能訓練も実施しているため、この数で認められている訳です。現在、登録されている利用者は15名。毎日、ほぼ定員を満たした状況で運営されています。
対象とする利用者は、まず、パソコンを利用した事務処理を可能とし、一般企業に事務職として就職することを希望されている方。また、三療の資格を有し、主として、ヘルスキーパーとして、企業で就労することを希望されている方。さらには、現在就労中だが、今後就労を継続していくために、パソコンのスキルアップを必要としている方等様々ですが、どの利用希望者の方に対しても、主に、パソコンのスキルを上げていくことを目的とした訓練を実施します。ここで言うスキルとは、就労の場で利用できるものでなければ意味がありません。
さらに、コミュニケーションを上手にとるための手段や、ビジネスマナー等についても、訓練を行っています。これは一昨年、事業を開始する前に、センター修了生で、現在、一般企業で事務職やヘルスキーパーとして働いている方に対して実施したアンケートで、就労にあたっては、他者とのコミュニケーションや会社でのマナーが重要であることが浮き彫りにされたことによります。
また、20年以上にわたって生活訓練を実施してきたノウハウを生かし、就労移行支援事業の中でも、歩行や点字、化粧などの日常生活訓練を実施し、総合的に就労を支援する体制を整えています。
1年目の昨年は、利用者もなかなか集まらずに苦労しましたが、今年は、前述しましたように、定員以上の方が登録されるようになりました。人が多いということは、集団の力も働くのか、訓練そのものも、非常に活性化してきました。また、集団の中でお互いが伸びていこうとする意欲も芽生えた様子で、両者が相まって、事業も良い方向へと進み始めました。
秋は、就職活動が活発化する時期ですが、今年は、すでに5人の方が就職を決められました。もちろん、就職はセンターだけの力で成し遂げられるものではなく、ハローワークや地域の就労支援センター、そして民間の人材登録会社をフル活用しています。そうした機関との日頃の関係作りは必須であることを、頭では理解していても、今年のように実感として理解できることは、我々としては初めての経験であり、また喜びです。
しかし、実際には、ここで浮かれてはいられません。障害者の就職事情は、決して好転している訳ではなく、この状況下で、少しでも多くの利用者の就労が実現するためには、まだ、足りないものがあるのではと、感じ始めています。それが、何であるかを早く見つけ出していくことが、喫緊の課題です。

誌上慶祝会
日盲社協の関係者で、多年の業績が高く評価され、各賞を受賞された方々をご紹介して(順不同)、ここに深甚なる慶祝の意を表します。

◆岩井和彦氏に鳥居賞、田代安子氏に鳥居伊都賞

故鳥居篤治郎先生遺徳顕彰会(田尻彰代表)は、京都ライトハウスの創設者・鳥居篤治郎氏と同氏夫人・伊都氏の遺徳をしのび、視覚障害者福祉に貢献した人をたたえる第29回鳥居賞に岩井和彦氏(62歳・奈良市)、第15回鳥居伊都賞に田代安子氏(67歳・福岡市)を選びました。
伝達式は9月9日、京都市北区の京都ライトハウスで行われ、それぞれに賞状と記念品・副賞が贈られました。
岩井氏は、受賞当時日本ライトハウス常務理事で、長年にわたり視覚障害者への情報提供サービスの向上に取り組み、情報提供ネットワークシステム「サピエ」の立ち上げに多大な貢献をされました。
一方、田代氏は、福岡県点字図書館長や日本盲人会連合副会長などを歴任した田代浩司氏を妻として支え、自らも職に就いて視覚障害者福祉の充実に尽力した業績が高く評価されました。

◆斯波千秋氏に点毎文化賞

毎日新聞社(朝比奈豊社長)は、視覚障害者の文化や教育、福祉の向上に貢献した個人や団体を表彰する第48回点字毎日文化賞受賞者に、先駆的な視覚障害者作業所の開設と白杖作りなどを通して視覚障害者福祉に努めてきた特定非営利活動法人六星の理事長・斯波千秋氏(61歳・静岡県浜松市)を選びました。
斯波氏は、1996年に浜松市に全国でも珍しい視覚障害者を中心とした小規模作業所「ウイズ」を開設し、白杖作りや点字印刷、農作業など幅広く手がけています。
また、スリランカで視覚障害者支援事業を行うほか、留学生らへの白杖作り指導に取り組むなど、生活に根ざした視覚障害者支援活動と国際貢献の姿勢が高く評価されました。
表彰式は10月21日、毎日新聞東京本社で行われ、本賞(盾)ならびに副賞の中村京太郎賞(置き時計)と日盲委奨励賞が贈られました。

◆酒井久江氏にHKサリバン賞

東京ヘレン・ケラー協会(三浦拓也理事長)は、視覚障害者支援に功績があった人を表彰する第19回ヘレンケラー・サリバン賞の受賞者に、全国盲老人福祉施設連絡協議会(全盲老連)常務理事・事務局長の酒井久江氏(69歳・東京都青梅市)を選びました。
酒井氏は銀行勤務を経て、1968年に聖明福祉協会に就職。業務と並行して全盲老連(現在51法人・79施設加盟)の運営にかかわり、職員定数の増員を国に働きかけて実現するなど、盲老人の福祉向上に尽力されました。また、欧米の先進的な盲老人ホームを視察して国内に紹介するなど、国際的な交流も推進しました。
贈賞式は10月4日東京ヘレン・ケラー協会ホールで開催され、本賞(賞状)と副賞として、ヘレン・ケラー女史直筆のサインを刻印したクリスタルトロフィーが贈られました。

◆竹下義樹氏に本間一夫文化賞

日本点字図書館(田中徹二理事長)は10月7日、日本点字図書館を設立した本間氏を記念し、視覚障害者の文化の向上に関する分野で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する第8回本間一夫文化賞の受賞者に、点字受験で初めて司法試験に合格した弁護士の竹下義樹氏(60歳・京都市)を選びました。
竹下氏は中学3年生の時に視力を失い、大学卒業後、司法試験の点字受験の実現に奔走する一方、1981年に最初の合格者となりました。1994年に独立し、高齢者・障害者の権利擁護や犯罪被害者の支援活動に取り組んでいます。
表彰式は、11月10日に日本点字図書館で行われました。

◆新旧理事長と2施設に社会貢献賞

社会貢献支援財団(日下公人会長)は、9月8日、広く社会の各分野において、社会と人々の安寧と幸福のために尽くし顕著な功績を挙げた個人・団体を表彰する今年度の社会貢献者表彰に、視覚障害者関連では、日盲社協前理事長茂木幹央氏(75歳・埼玉県深谷市)、日盲社協理事長高橋秀治氏(68歳・東京都町田市)、社会福祉法人視覚障害者支援総合センター(高橋実理事長)、特定非営利活動法人六星(斯波千秋理事長)の2名・2団体を選びました。
それぞれの受賞理由は以下の通りです。
茂木氏(日本失明者協会理事長)は、3歳で失明し盲学校卒業後、苦労の末点字受験により大学に入学。卒業後、国立東京視力障害センターに勤務。その後、自治体や団体等の協力を得て、盲老人施設のない埼玉県に初めて、養護盲老人ホームひとみ園を昭和54年に完成させます。以来35年、視覚障害者の就労施設や身体障害者のためのケアホームなど9種の社会福祉事業を営み、利用者245名と職員133名を擁し、地域福祉を支えています。
高橋氏(ロゴス点字図書館館長)は、点字出版一筋に情熱を注ぎ、常に点字の重要性と視覚障害者の読書の権利を守り、バリアフリーの普及に取り組んで、視覚障害者への一般社会の理解を深める活動を推進してきました。公共施設における点字表示をJIS化し、点字選挙公報全文発行への実現、点字図書給付事業の改善など約48年にわたって活動を続けてこられました。
視覚障害者支援総合センター(東京都杉並区)は、視覚障害者のための大学の門戸開放、学習支援や卒業後の就労促進を主な目的に昭和62年に結成。その後、奨学生制度を創設し300人を越える奨学生を支援してきました。また、点字教科書等を発行するかたわら、点訳者養成の講座を毎年開催し、正確な点訳を迅速に盲学生に届ける仕組みを発展させました。社会福祉法人認可後、就労訓練施設を開設し平成14年までに地方公務員や民間企業に29人を送り出しています。
六星(静岡県浜松市)は、盲人福祉研究会斯波千秋代表を中心に組織され、平成8年に浜松市半田町に視覚障害者中心の小規模授産所を、平成18年には市内の蜆塚にも開設し、現在、両作業所合わせて48人の利用者と職員11人を擁し、白杖の開発製造と点字印刷の作業を通し、視覚障害者の生活の質の向上や自立を促進してきました。また中途視覚障害者の社会復帰や盲重復障害者の社会参加を支援するとともに平成15年には、スリランカに支所を開設するなど、活動を広げています。
表彰式は、11月21日に東京都千代田区の帝国ホテルで行われます。

◆塙保己一賞大賞は茂木幹央氏、貢献賞は国際視覚障害者援護協会へ

埼玉県は10月7日、障害がありながらも不屈の精神により社会的に顕著な活躍をしてきた障害者を表彰する第5回塙保己一賞大賞に、日本盲人社会福祉施設協議会の前理事長で、社会福祉法人日本失明者協会理事長の茂木幹央氏(75歳・埼玉県深谷市)、障害者の支援者や貢献者を対象とする貢献賞には、社会福祉法人国際視覚障害者援護協会を選んだと発表しました。
茂木氏は、埼玉県で初の養護盲老人ホームを開園し、運営する養護盲老人ホームに本格的な演劇ホールを設置して、全国盲人演劇祭を開催するなど、文化芸術分野でも視覚障害者福祉の充実を図りました。また、全国220の施設や点字図書館などが加盟する日本盲人社会福祉施設協議会の理事長として、全国の盲人福祉施設をリードし、視覚障害者福祉の発展充実に努めたことが高く評価されました。
国際視覚障害者援護協会(石渡博明理事長・東京都板橋区)は、昭和46年に日本に留学中の視覚障害者4名によって設立された国際盲人クラブを前身に、昭和56年に奨学制度を創設しました。昭和57年からほぼ毎年、教育環境に恵まれない発展途上諸国の若い視覚障害者に、日本で理療の施術やIT技術などを勉学する機会を提供してきており、これまでにアジアを中心に17か国から72名の留学生を受け入れ、留学生は、その後、母国で障害者福祉を高め、指導者として活躍しています。
表彰式は、12月17日(土)、塙保己一の生家に近い本庄市児玉文化会館セルディで行われます。

◆田中徹二氏に経済産業大臣表彰

日本点字図書館の田中徹二理事長(76歳・東京都練馬区)は、10月17日、経済産業大臣表彰を受けました。
これは、視覚障害者用誘導ブロック(点字ブロック)の突起の形状、寸法、配列について、日本工業規格(JIS)原案作成の場面で、田中氏が視覚障害当事者の立場から貴重な役割を果たしたことが、高く評価されたためです。
1953年度から続く同表彰で、障害当事者が選ばれたのは初めてのことです。
国内では、アクセシブルデザイン分野のJISが複数生まれてきたほか、日本の働きかけがISO(国際標準化機構)の取り組みにもつながっています。

「第二回 情報機器等の支援者講習会」報告
社会福祉法人岐阜アソシア視覚障害者生活情報センターぎふ 山田智直
日時:平成23年8月3日(水)~5日(金)
場所:じゅうろくプラザ(岐阜市橋本町1-10-11)
参加者:26団体35名

◆講義内容

講義1「視覚障害者のWindows 7操作法」 日本ライトハウス 岡田 弥氏
講義2「スクリーンリーダーの比較」(有)アットイーズ 西村 浩生氏
講義3「視覚障害者のOffice 2010操作法」日本盲人職能開発センター 北林 裕氏
講義4「情報機器」日本点字図書館 渡辺 明氏
講義5「スクリーンリーダーとサピエ図書館 その1」日本ライトハウス 松本 一寛氏
講義6「スクリーンリーダーとサピエ図書館 その2」日本ライトハウス 松本 一寛氏
講義7「ロービジョンへの対応」日本ライトハウス 岡田 弥氏
講義8「情報交換」
今回の講習では、サポートの現場において避けては通ることのできなくなってきた「Windows 7」「Office 2010」「サピエ」を新しく取り上げた。実際にはそれ以外の初歩的なことやSKYPEなどのサポートもあるようだが、これから否応なく新しいシステムに移行しなければならない現状からこのような講義内容となった。
また、受講者全員とはいかなかったが、24台のパソコンにWindows 7、Office 2010、ネット環境を整えた形で準備した。今回はこれらの機器等を全てレンタル会社でまかなったが、費用の面で負担だったことと、同じ環境を構築するのに時間がかかったことが今後の課題として残った。

◆今後の課題

情報交換から、どの施設でも予算的に職員を派遣することが大変困難である。また、今回の震災で情報が遮断されてしまい、視覚障害者が情報を入手するのに大変苦労していることなどの対策が課題として上げられた。
なお、この講習会は、(財)JKAの補助金を受けて開催しました。

点字指導員講習会報告
点字指導員研修委員会委員長 大澤剛

8月24日から26日まで、東京の戸山サンライズを会場に、「平成23年度点字指導員講習会」を開催しました。今年は、点字指導員有資格者対象のフォローアップ研修でした。全国から130名余の人々が受講してくださいました。
研修内容は、次のようなものでした。
初日の午後からは、「視覚障害者情報総合ネットワーク サピエ」、「図書製作支援システムとBESX」についての二つの講義を行い、点字の世界でもなくてはならない「サピエ」についての知識を学びました。あわせて、サピエの開発の一環で作られた、新しい点字編集システムについても学習しました。
2日目は、「点字校正技術」、「中途視覚障害者への点字導入プログラム」、「点訳のてびき」の三つの講義を行いました。
また、2日目の午後の3時間ほどを使い、点訳の重要なテーマとなる点字表記について、白熱した講義が行われました。事前に受講者から集めた点訳に関する質問を中心に、熱心に受講していただきました。
最終日は、「点字サインと触図」、「点字教科書の実際」について、最新動向をふまえて、講師のお二人にお話いただきました。
今年は気候不順のため、講習会の3日間にもゲリラ豪雨があり、一部影響がありましたが、無事に終了することができました。
なお、この講習会は、(財)JKAの補助金を受けて開催しました。

自立支援施設部会から
自立支援施設部会長 山下文明

自立支援施設部会は、自立訓練施設、生活支援施設、盲導犬等の訓練施設、あんま・はり・きゅう師の養成施設、盲人ホーム、視覚障害者を中心にした就労支援系施設の47施設が参加しています。
平成12年の社会福祉法(旧社会福祉事業法)の制定に始まるいわゆる「社会福祉基礎構造改革」から10年以上になりますが、この間、平成15年4月の「支援費制度」の施行、平成18年の「障害者自立支援法」の施行と度重なる制度変更、事業再編にさらされ、施設・利用者ともその対応に多くの労力を費やしてきました。
今年度だけでも障害者基本法の改正、8月の障がい者総合福祉法の骨格提言、10月からは重度視覚障害者を対象にした同行援護サービスの開始など多くの変化、改革の動きがありました。
自立支援施設部会の多くの会員施設はこれらの変化に直接的に影響を受ける事業がほとんどです。これからの動きにおいても、廃止の決まっている障害者自立支援法への事業移行をしていない施設も多い中、これに代わる「障がい者総合福祉法」の議論が平成25年8月施行に向けて進んでいます。
施設の根拠法として、旧法(身体障害者福祉法等)と障害者自立支援法の二つが混在する中、さらに新しい法律の論議が進んでいます。大変異様な状態というほかありません。
このような中で私たち自立支援施設部会では、それぞれの事業種別に対応した委員会として、盲導犬・補助犬等の訓練を行う「盲導犬等訓練委員会」、あんま・はり・きゅう師の養成施設とその実施指導の場である盲人ホームの「盲人ホーム等委員会」、視覚障害者を中心とした授産施設・就労継続支援・就労移行支援などの「就労支援委員会」、生活訓練・自立訓練・移動支援・同行援護・居宅介護等の事業を行う「生活訓練等委員会」を設け、研修会等を通じ、個別の事業の現状と課題の整理、方向性の議論、制度改革等の最新情報の共有を行い、会員間のネットワークを強化しています。
障害者制度改革が着々と進む中、視覚障害者の生活面、就労面に直接的に福祉サービスを提供する「現場」の施設として、利用者の様々なほんとうの声が聞こえる場として、あらためて私たちの施設の価値と意義を確認・評価し、新しい価値を生み出し事業の活性化に取り組んでいかなければなりません。

「点字技能師を国家資格へ」の夢の実現に向けて
日本点字技能師協会理事長 込山光廣

21世紀の幕開けとともに、第1回点字技能検定試験は華々しいスタートをきった。18歳以上なら、誰でも受けられるということで、点訳者・点字使用者の間で注目を集め、受験申込者は600名を超えた。しかし、合格率が3%台だったこと、実技― 点字技能(校正問題、点字化問題)試験は点字器(点字タイプライターも可)で解答しなければならないことなどが理由と思われるが、受験者が毎年減り続け、100名を切るようになってしまった。
一方、第5回試験からは厚生労働大臣が認定する日盲社協の社内資格となり、第9回試験からは一部合格(学科か実技かどちらかに合格すれば、3年間はその試験を免除する)制度が導入された。また、点字指導員認定講習会については、点字技能師は優先的(推薦状なし、事前の課題文なし)に受講できるメリットも得た。にもかかわらず、受験者数はまだ三桁を回復していない。
2004年から3年間、私たちも協力して、視覚障害者支援総合センターは、点字技能師の資格をアピールすることと点字技能検定試験の事前準備として「チャレンジ講習会」を開催した。2007年からは、それを私たちが引き継ぐ形で「チャレンジ」を実施している。昨年からは実技(点字技能)の模擬試験を本試験と同じ形で行い、受講者からは高い評価を得ている。
現在、点字技能検定試験は東京・大阪の2会場で実施されている。多くの点字技能師の誕生を期待するならば、まず受験者を増やさなければならない。それには受験しやすさ、とくに試験会場へのアクセスの良さが決め手になると私たちは考える。そこで、思い切って今年は「チャレンジ」を3ヵ所で開催した。
その結果、九州・福岡では39名、北海道・札幌では36名、京都では28名、合わせて103名の方に受講していただいた。その際実施したアンケートによると、点字技能師について初めて知った、あるいは名前だけは聞いたことがある、と答えた人が意外と多く、残念ながら点字技能師の認知度は必ずしも高くはないことがわかった。また、「試験会場が近ければ受験してみたい」という声が少なからずあった。模擬試験では本番さながら、会場に受講者の熱気が溢れていたという。
私は、全国どこにいても、点訳・点字に関わる人々が点字技能検定試験を受験できる日が来ることを望むものである。その第一歩として、年ごとに場所を変えて、東京・大阪とともにその地で試験を行えないものだろうか。まず来年は、「チャレンジ」で開拓した、ある程度受験者数が予測できる福岡か札幌を第3の会場として試験を実施できないか、検討願いたい。
「量は質に転化する」という。質の高い多くの点字技能師の存在は、点字を「唯一の文字」とする視覚障害者の情報・生活環境の改善に寄与し、文化の豊かさを創り出すに違いない。

盲人用具部会活動報告
株式会社ラビット代表取締役 荒川明宏

用具部会では日盲社協全国大会にあわせて、地元の視覚障害者協会ご協力のもと展示会を開催しています。今年は6月24日金曜日に、静岡市で開催しました。
当日は用具部会員の半数以上の業者が出展する活気のあるものとなりました。用具部会は点字ブロックや誘導システムなど日常インフラ、細かな日常生活用品、DAISY関連、IT関連と様々なメンバーから構成されています。そのため、展示品も多岐にわたっています。地元の視覚障害者からも大変喜ばれ、とても意味のある展示会を開催することができました。そのため、このような展示会を数多くおこなって欲しいという声も一部にあるようです。しかし、現状では、全国大会が開催される地元の視覚障害者協会の協力が得られた場合にのみ用具部会の展示会を開催しています。
11月1日から三日間、「第6回サイトワールド」が開催されます。用具部会主催ではありませんが、サイトワールドの実行委員には用具部会メンバーが多く含まれています。実行委員会は、今年2月から毎月会合を開き、出展企業の募集、イベントの準備、小間の配置など様々な準備を行ってきました。そのため、用具部会としての活動より、サイトワールドの準備に追われてしまう部分があります。
日盲社協用具部会をもっと知ってもらうため、サイトワールドには用具部会として2ブース出展します。この2ブースは、用具部会メンバーの共同の出展と、用具部会の活動などを紹介しています。
部会としてどのような活動をすべきかというテーマで最近何度か話し合いを持っています。まだまだ部会内での意見が出つくしていない部分があり、実際の活動の方向性などが打ち出せていないところがあるのが用具部会の現状です。今後も部会の中で引き続き、話し合いを続け、日盲社協用具部会として、実績のあるような活動ができるよう、進めて行く予定です。

日盲社協事務局だより

◆次期全国大会は和歌山市で開催

次期開催は、当初福島県点字図書館を主管に準備を進めておりましたが、未曾有の大震災と原発事故により開催困難となりました。そこで、急遽ご無理をお願いして、和歌山点字図書館に主管施設を引き受けていただいた次第です。会員施設の皆様も、このような事情をご賢察の上、開催に向けてより一層のご支援・ご協力をお願いいたします。
開催日と会場等は次の通りです。
開催日:平成24年6月21日(木)~6月22日(金)
主管施設:和歌山点字図書館
〒640-8034 和歌山市駿河町35番地
TEL:073-423-2665 FAX:073-428-0515

会場・宿舎:ホテルグランヴィア和歌山
〒640-8342和歌山市友田町5-18
TEL:073-425-3333 FAX:073-422-1871

◆新規会員施設

①広島市視覚障害者福祉協会点字製作部は、平成23年7月1日付で点字出版部会へ入会しました。
②公益財団法人日本補助犬協会は、平成23年7月1日付で自立支援施設部会へ入会しました。

◆退会会員施設

①名古屋市鶴舞中央図書館点字文庫は、平成23年3月31日付で情報サービス部会から退会しました。
②湘南希望の郷は、平成23年3月31日付で自立支援施設部会から退会しました。
③(株)川口メタルワークは、平成23年10月31日付で盲人用具部会から退会しました。
④京都府立視力障害者福祉センターは、平成23年3月31日付で自立支援施設部会から退会しました。

◆名称変更

①情報サービス部会の「徳山点字図書館」は、平成23年3月8日付で「周南視覚障害者図書館」に名称を変更しました。

◆所属部会変更

①すこやか食生活協会は、平成23年10月1日付で点字出版部会から情報サービス部会へ移籍しました。

◆図書のご案内

日盲社協情報サービス部会は、東京都民共済生活協同組合の助成を得て、新刊書・松井純子著『ひとりでできる家庭料理~五感で調理するレシピ集~』を、11月中を目処に読書工房から出版する予定です。
松井純子氏は、故松井新二郎先生ご子息の夫人で、日本点字図書館のテープ雑誌「ホームライフ」の料理番組の担当者として、よく知られています。
内容は、季節・素材・調理法・国別・その他に分類された100種ほどのレシピのほか、「調理に関する参考資料」として、献立の基本、調理上の判断目安、基本の計量、野菜の下ごしらえ、野菜の切り方・肉の切り方、香辛料(スパイス)の基本、基本の料理用語などを盛り込んでいます。B5版272ページ、点字版・音声版の発行も予定しています。

編集後記

6月23日正午、全国盲人福祉施設大会が終わった直後、気になる噂を聞きました。
同日の午後に開催される理事会・評議員会で、「茂木理事長が退任される」というのです。「そんな馬鹿な!」と思う間もなく、それが事実であることが判明し、後任の理事長は、旧知の高橋秀治氏に決まりました。
そこで、私が編集する『点字ジャーナル』で、インタビューを申し込んだところ、「いいよ。いいよ。自分で書くから」と迷惑そうに敬遠された末、「新しい峠道を歩む」という、悲壮感漂う一文を草して下さいました。
高橋氏は、かつて東京ヘレン・ケラー協会に勤務されていたことがあり、編集課長と『点字ジャーナル』編集長を兼任されておられました。私とは15年間ほど重なっており、同氏は大先輩で文字通りご指導・ご鞭撻いただいた間柄です。
悲壮な一文の中で、同氏は「静岡での全国大会終了後、茂木理事長が健康上の理由から辞意を表明され、その後任に私が選ばれてしまった。施設の規模、人材の厚さからいっても私の出る幕ではないが、憂鬱な思いでお受けすることにした」と述べられています。
これを本音だと思った私は、「裏方のような仕事で、人手がいるときは声をかけてください。職員を数人派遣することも可能です」とメールしました。
すると折り返し、「ぜひお願いします。もう少しよく考えて、何をしていただくか決めます。地獄で仏とは、このことです」というメールが届きました。
数日後、「他に手伝いはいらない、あなたひとりでいいから広報委員長を引き受けてくれないかな。これまで私が引き受けてきたが、忙しくてやりきれないんだよ。要するに年2回『日盲社協通信』を編集して、予算内で発行してくれればいいから。いやあ、助かったよ」という電話がありました。
こんな経緯があり、藪から棒ですが、本号から私の編集で『日盲社協通信』をお届けすることになった次第です。
前任者でもある高橋理事長には、一応ご相談はしたものの、時間がなくて泥縄式に執筆依頼をせざるを得ず、関係者にはご心配をおかけしたのではないかと思います。今後の編集・発行に関しては、諸先輩方のお知恵を拝借して、徐々に体制を整えていきたいと考えておりますので、ご支援・ご協力のほどよろしくお願いします。
次号は平成24(2012)年3月を目処に発行する予定です。(福山博)

情報提供のお願い

本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長の福山博(fukuyama@thka.jp)宛、メールでどしどしお送りください。お待ちしております。

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