日盲社協通信 平成24年(2012年)11月号(通巻65号)

日盲社協通信 平成24年(2012年)11月号(通巻65号)
編集人:福山博   発行人:髙橋秀治
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/

もくじ

節目の年を生かそう
理事長 髙橋 秀治

皆様お変わりなくご活躍のことと拝察します。おかげ様で本部事務局も、抱えきれないほどの課題を抱えながら、一つ一つ大事に対応するよう頑張っております。
今年は珍しく大きな施設が歴史的な節目を迎えました。まず5月には、世界で唯一 点字週刊新聞を発行している『点字毎日』が創設90周年を迎えました。そして、同じ大阪市内の日本ライトハウスが11月に、や はり創立90周年に到達しました。二施設とも情報提供に大きな実績を誇っているのが特徴です。
『点字毎日』誕生は次のようです。大阪毎日新聞社5代目社長の本山彦一氏(1853~1932年)が、「日本盲界の父」と言われる好本督氏(1878~1973年)の提言を受けて、毎日新聞社の中に点字週刊新聞発行を決断し、当時の大阪毎日新聞社(現・毎日新聞大阪本社)の新社屋(大阪市北区堂島、現在の堂島アバンザ)落成記念事業の一環として、1922年(大正11年)5月11日に『点字毎日』を創刊したといわれています。
日本ライトハウスが創設されたのは、点字図書館を始めた1933年(昭和8年)だと漠然と思っていましたが、ライトハウスの 資料を見たところ、1922年(大正11年)で あることがわかりました。
創業者岩橋武夫先生が折からのエスペラントブームを受けて『点字日エス辞典』刊行のため、自宅に「点字文明協会」を設けて製作発行を手がけたことをもって創業としたと記録されています。
一つの事業が始まる時は、それぞれに奥深いドラマがあったようです。
ところで、こうした大きな節目に立ち会うことができる職員はどんな気持ちでしょうか。10年、20年よりは50年の方が重いし、 80年、90年よりは100年の方がずっと光ります。それは、たまたまそのような節目に 立ち会った職員の巡り合わせでしかありま せんが、それぞれにその時々の感慨がある 筈です。今年90年を祝った人が、果たして 100年目も立ち会えるかは誰もわからないわけですから。
さて、実は日盲社協も来年創設60周年を迎えます。10年前の50周年は東京の市ヶ谷で天皇・皇后両陛下をお迎えして祝いました。今回はその再現は望めませんが、祝う意味は十分ありそうです。
現在、理事会の下に実行委員会(長岡雄一委員長)を設け具体的な検討に入っています。障害者の権利条約批准が検討される中で、福祉制度が大きく揺らいでいます。障害者施設の現状を確認し、未来をどう切り開いて行くか、そのあたりを皆様にじっくり意見交換をお願いして、これからの活動につないでいきたいものです。

還暦後に望むさらなる英知と団結力
常務理事・事務局長 岩上義則

2013年(平成25年)は、日盲社協が還暦を迎える年にあたる。そのため、創立60周年の式典と祝賀会に向けてのプランが着々と進行中であるが、概略を「事務局だより」で紹介するのでそれを参照されたい。
日盲社協が産声をあげた1952年(昭和27 年)当初の会員施設数は32だったと記録されているから、200有余の大所帯に成長した今日の姿は驚きであり感慨深いものがある。
しかもその頃は、点字図書館や点字出版所がまだまだ少なかったうえに、リハビリテーション・盲人ホーム・盲導犬・用具などの施設は皆無に等しかったのだから、60年間の福祉発展の目覚ましさと歴史の重みをしみじみと感じさせられる。
ただ、会員施設の増加と多様化は活況を呈しているように見える反面、法人がめざす方向や施設間の連携をかなり難しくしているのも確かなことである。それについても触れたいが、歴史の成果と今後の課題を優先して書かせていただくことにする。
昭和20年代は戦後処理と敗戦の混乱から脱し切れていない時期であり、いわば障害者福祉も夜明け前だったのである。しかしながら、国自体が復興に苦しんでいる中で、福祉の闇を切り裂こうとするいくつものうねりが見られたことは敬意に値することであり、今日の繁栄の基を築いた先人の努力に心からの謝意を表したい。
その一つとして誕生したのが日盲社協であるが、施設間の親睦を図りつつ、当面する課題に取り組む団体として徐々に力をつけていった。一方では他団体と協調・連携して点字図書の価格差補償の実現や日常生活用具の指定などに寄与し、他方では独自の事業として研修活動の充実、点字サインのJIS化、選挙情報の提供など、視覚障害者の情報提供や生活向上に大きな成果を挙げてきた。
そのような歴史の中で、昨年、永年の念願だった自前の城「日盲社協会館」の建設を果たして拠点づくりがかなったのは、特筆に値する快挙であろう。
さて、肝心なのは、これからどうするのかである。5部会の課題は永遠であっても、新しいニーズと期待にいかにして取り組め かが当法人の成否を決める。
時代の流れは施設福祉から地域福祉への転換にある。施設が持つ専門性と設備を、地域で暮らす視覚障害者の生活につなげていかなければ、真の視覚障害者の暮らしやすさは実現しない気がする。
地域の施設を孤独な障害者が気軽に利用できる方策は何か。施設利用者が減少していく現状と視覚障害者が外出の手段とチャンスを待ち望んでいる実体が明らかなのだから、そこに魅力のある利用課目の用意、外出サポートの確立という方法論の鍵が見えてくる。
拠点づくりを成し遂げた日盲社協の知恵の出しどころはまさにこれに尽きると言ってよかろう。

障害者虐待防止法施行に思う
社会福祉法人山口県盲人福祉協会理事長 舛尾政美

10月1日から障害者虐待防止法が施行された。ちょうどこれに合わせるかのように当協会に1つの問題が発生した。
光明園の入所者Aさんは80歳を超える高齢者で北九州に息子夫婦と同居していたが、視覚障害があり下関市で20年以上マッサージ業を営んでいた。5年ほど前に妻が病気になり息子と同居したが通帳を預かった息子が預金を勝手に引き出すようになった。Aさんは息子に通帳返却を求めたが息子はそれに応じない。Aさんは市の相談室の弁護士に相談した。弁護士は通帳の再発行を勧めた。そこでAさんは金融機関に再発行の手続きをしたが、金融機関はそのことを息子に伝えたので、息子はこれに反対を唱えたため事は進まなかった。
それだけに止まらずAさんは暴力を受けるやら、電話を使えなくされるやらで、一人で家出をすることを考え行動を起こした。しかし家出をしてうろうろしているところを発見され、家に連れ戻された。
先月再びAさんは家出を実行した。当協会を頼って下関駅まで決死の覚悟で来たという。下関駅からの連絡を受けて私共は下関駅で本人と会い、そのまま光明園に同行した。翌日私は息子にAさんを光明園に預かっている事を知らせた。数日後息子がAさんを訪ねて光明園に来た。Aさんと息子と私共は話をした。息子は家に帰るように勧めたが本人は光明園で世話をしてもらい たい、帰らないと言った。最後に息子も本人の言うことに同意し帰宅した。
その2週間後、息子と娘が行政書士なるものを伴って光明園に来た。私共は関係職員と共に本人を交え一行と話し合いを始めた。一行は始めから息子の家に戻るように迫り「帰れ」「帰らない」と押し問答になり険悪な状態になった。やむなく園長は110番通報という手段を取った。間もなく警官が6名到着した。警官はその場にいた一人一人に話を聞いた。私共は本人の意思を尊重し息子たちを散開させるよう求めた。しかし、一行は聞き入れず約5時間にわたって「家に帰れ」「帰らない」の押し問答が続いた。警察は17時を過ぎた頃、さらに刑事を3名増員して息子たちの散開を求めた。3名の増員が功を奏したものか、ようやく息子たちは園から出て行った。
今後も家族はAさんを家に連れ戻そうと同じような事を繰り返すであろうが園としてはあくまでも本人の意思によりA さんが園で生活出来るように全力で支援したいと考えている。私としてはこのケースは障害者虐待防止法に例示されている擁護者による虐待に該当すると考えている。こうした例は春光苑においてもこれまで時々見られた事で、全国ではかなりの数に及んで いるであろうと思われる。「利用者、入所者の人間らしい尊厳ある存在の回復を目指す」が法人の基本的な考えである。これが 私達のいわば旗である。今こそいよいよこの旗をより高く掲げなければと思う。

日盲社協に集うボランティア活動について
常務理事 髙橋秀夫

コスモスが雨に打たれてうなだれ、 銀杏の実は転がり落ちて雨の滴をうけ独特な匂いを放している仲秋です。
18日と19日に第38回全国視覚障害者情報提供施設大会(愛知・名古屋大会)が名古屋駅近くのウィンクあいちで開催されました。経費削減下にあっても、不可欠な研修となれば派遣もやむを得ないと判断したのでしょうか、211名の参加者数となり、会場は熱気に包まれました。
全視情協の石川准理事長は挨拶の中で、ボランティアの点訳・音訳図書製作支援に感謝しつつ、情報収集活動の手立てとして「自炊(書籍や雑誌をイメージスキャナー等でパソコンに取り入れ、デジタルデータに変換する行為)」を利用しているとの話題提供がありました。自炊を支援する人は、無償・有償どちらのボランティアかは知りませんが、ニーズに応えるために悪戦苦闘の日々でしょう。
日頃、無償ボランティアにご支援をいただいているせいか、「有償ボランティア」と称される活動形態を耳にすると違和感を覚えます。なぜなら、ボランティアは無償で奉仕活動を行う者というイメージが浮かぶからでしょう。有償ボランティアの言辞は、1980年代に財政支出の抑制への圧力があり、通常のホームヘルパーを自治体が雇用できなくなったために、最低賃金以下の金銭的報酬が支払われる制度として導入されて誕生しました。
今日では、ボランティアに支払われる実費弁償は交通費実費の支給を指し、無償ボランティアとしての認識です。謝礼金の場合は、支給内容が不明確で解釈としては「労働」の対価と受け取られる可能性が高いと考えられます。いくら最低賃金以下でも月額が 5万円~7万円の手取りになるとパートの賃金と同額になってしまいます。ボランティアの言辞付与に疑問が付きませんか。
1970年代はボランティアを「される側」の立場で、障害者運動が立ち上がり、「する側」と対等になるためには「無償」ではなく、行政が経済的に保障すれば(「有償ボランティアとして」)対等な「友達」関係を目指せるとの運動がありました。このことは有償にしなくても、お互いに尊重しあうことによって関係が結ばれ、そこに個々の生命も存在することに気がつけばよかったのです。
日盲社協に所属する施設は、それぞれのミッションに基づき、視覚障害者のために、福祉サービスの質を確保する働きのために存在すると設立当初から考えています。ですからミッションを理解して集まるボランティアは恒久的に「目に見えぬ報酬」を求めて歩んでほしい、「良き活動を残す」ことの喜びを感じてほしい、どのような社会を目指すのかを一緒に考えていってほしいと願っています。

身体障害者補助犬法施行から10年
公益財団法人 日本盲導犬協会 常勤理事 吉川 明

身体障害者補助犬法成立から10年が経過し、法律の浸透はどの程度進んだのか、また社会の中で盲導犬の受け入れはスムーズに行われているのか? 改めて考えてみた時、盲導犬の育成現場からは様々な課題が見えてくる。
実際に視覚障害者の方が盲導犬歩行という選択肢を考える際、「犬と暮らし行動することで面倒や不便が生じはしないか」と躊躇されることがある。ひとつの命を責任もって預かることに大きな負荷を感じることは当然のことであるが、それだけではなく、「本当に犬を連れて社会の中で活動できるのか」といった根源的な不安から盲導犬使用を諦める方も少なくない。こと日本の社会においては、盲導犬を使用する視覚障害者はまだまだ特別な存在であり、ユーザーが自然体でいるということはなかなか難しいかもしれない。盲導犬と一緒にいる風景が「当たり前」になった時はじめて、真の意味で法律が浸透したと言えるであろう。
補助犬法成立から10年となる今年4月25日国際盲導犬の日には、大勢の盲導犬ユーザーと共に「渋谷ハチ公盲導犬パレード」を行い、補助犬への理解と法律の社会周知を呼びかけた。しかしその帰り道、ユーザー仲間で食事をして帰ろうと評判のパスタ店に入った途端受け入れ拒否にあってしまったという、落ちがついた。こうした実際の受け入れ拒否事例においては、犬を入れるか否かの議論が先に立って、そこにいる「人」を拒否してよいのか? という所まで思いいたっていないケースが多い。補助犬法は、犬の入店について定めたものではなく、補助犬と共に行動する身体障害者のアクセス権を保障したものであることを今一 度理解する必要がある。言いかえれば、補助犬を拒否することは、根源的には犬の問題ではなく、障害者差別につながっている、 と言える。
一方、盲導犬育成現場においても、社会の理解が進まないことによって訓練に影響がでている。盲導犬で認められている電車乗降や駅構内での歩行が訓練犬では認められておらず、乗車を断わられたり、煩雑な手続きが必要であるなど、ベストのタイミングで訓練を実施できない場合がある。こうした問題点について、現在育成団体全体で打開策を提案し、訓練犬も補助犬法が適用されるよう、厚生労働省へ申し入れをおこなっている。良質な盲導犬を育成するためには、効率的な訓練の実現が必須である。 これを社会がサポートすることは、差別を無くし視覚障害者の自立に貢献することに他ならない。
盲導犬育成現場においては、視覚障害者の方が安心して盲導犬を選択できる社会が醸成されるよう、子供時代からの教育など地道な啓発活動を続ける一方、ユーザー自身はもちろん社会も納得できるよう良質な盲導犬の育成が必要不可欠となる。社会の理解と良質な盲導犬の育成、その両方があってはじめて視覚障害者の方の真の社会参加が可能となる。

10周年記念シンポジウム

身体障害者の生活を支える補助犬を、公共施設や飲食店が受け入れることを義務づけた「身体障害者補助犬法」が本年5月22日、成立から10年を迎えた。そこで、超党派で組織する身体障害者補助犬を推進する議員の会が中心となって、同日、衆議院第一議員会館にて、「身体障害者補助犬法成立10周年記念シンポジウム」が開催され、補助犬の育成団体とユーザー、国会議員や厚労省担当職員等160名に交じり、補助犬31頭も参加した。この催しの背景には、2002年に補助犬法が成立して10年経った今も、いまだに飲食店や医療機関での「同伴拒否」がなくならない現状がある。そこで補助犬の育成団体とユーザーが一堂に会し、改めてこの10年を振り返り、一般社会に情報提供し、新たな一歩を踏み出す契機とするためのもの。
盲導犬はある程度社会的認知も進んで、「仕事中の盲導犬に声をかけたり、触ってはいけない」ということは浸透してきたが、そのために「視覚障害者にも声をかけてはいけない」と誤解されている面もある。これは賢い犬が、目が見えない人を道案内していると誤解している人が多いためだ。盲導犬は通行人や自転車などをよけて歩くが、道順を覚えているのはあくまで視覚障害者。このため盲導犬を連れていても道に迷うことがあり、声をかけてほしい場合もあるが、まだ、そこまで理解は進んでいない。
さらに理解が及んでいないのは、杖の代わりとなって起立を助けたり、手の代わりとなって物を取ったり、ドアを開けたりする介助犬や、生活の音に反応して聴覚障害者に知らせる聴導犬だ。介助犬は全国に60頭、聴導犬は40頭と、1,067頭もいる盲導犬と比べても圧倒的に少ない。また、ラブラドールやゴールデン・レトリバーといった中型犬に犬種が限られる盲導犬と違って、介助犬には一部雑種が使われ、聴導犬の多くは小型の雑種であるためペットと見分けがつかない。このため飲食店等における入店拒否が後を絶たないのだ。
聴導犬を連れている聴覚障害者は、「なぜペットを連れて、ここに来たの」などと盛んに話しかけられるが、何と言われているかわからないし、また、説明できないのでとても困っているという。 ところで、補助犬の病院等への立ち入りについては衛生面から制限されることが多いが、公衆衛生学の専門医による、「補助犬 より人間の方がよほど不潔、人が普通に立ち入れるところはまったく問題ない」との発言には、目から鱗が落ちた思いだった。(『日盲社協通信』編集部)

和歌山市で第60回全国盲人福祉施設大会

日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)は6月21・22の両日、全国から二百数十人の関係者を集め、和歌山駅に隣接するホテルグランヴィア和歌山において、「第60回 全国盲人福祉施設大会」を開催しました。
今大会は、髙橋秀治理事長が就任して最初の大会でしたが、子息がガンで病状が悪化したため、やむを得ず理事長欠席という非常事態となりました。そこで、事務局長を兼務する岩上義則常務理事を中心に、舛尾政美・髙橋秀夫両常務理事が急遽任務を分担・代行して、事なきを得ました。
初日の6月21日は午後から、まず「障害者総合支援法とサービスの費用負担を考える — 5部会全体で福祉の未来にスクラムを組む」をテーマに、3時間かけて意欲的に研修会を行いました。
ようこそ和歌山へ。
冒頭に「障害者総合福祉法が実現しなかった事情と今後」と題して、弁護士でもある竹下義樹日本盲人会連合(日盲連) 会長が「障害者権利条約」から説き起こして、自身が弁護団長の障害者自立支援法違憲訴訟団と国との基本合意があるにも拘わらず、なぜ障害当事者団体の願いを踏みにじるような形で障害者総合支援法が成立したのかを、45分間熱を込めて講演しました。
それに補足する形で、日本ライトハウスの木塚泰弘理事長が、「人権の上に尊厳がある」と解説を加えました。
次いで、「障害者サービスと利用負担」と題して、日本点字図書館の田中徹二理事長が45分間にわたり、図書館法を引き合いに出して「サピエ図書館は無料であるべきだ」との持論を展開しました。
それに対して、岩手県立視聴覚障がい者情報センターの佐賀善司氏は、「サピエ図書館にアクセスして、ダウンロードしながら逐次再生するストリーミングまでは無料にすべきだと思います。しかし、そっくりダウンロードすると、そのコンテンツを所有できるので、その場合は、本を買うのと同様に有料化していいのではないでしょうか」とコメントしました。
その後の質疑応答では、会場から「障害者総合福祉法が実現しなかったのは、日盲連の見通しが甘すぎたからではないか」との痛烈な批判が出ました。
これに対して竹下会長は、「日盲連への批判はこれからも続けて欲しい」と前置きしながら、「障害者総合福祉法施行までのつなぎ法が、一昨年(2010年)12月に可決 ・成立しましたが、これがなければ同行援護は実現しませんでした。つなぎ法が成立していなかったら、障害者総合福祉法が成立する見通しでもあったのでしょうか」と反論。生々しい政府による障害者団体の切り崩しや訴訟団内部での激しい議論などがあったことなども交えながら、極めて理路整然とした論理で、日盲連の現実的判断に対する理解を求めました。
研修会の後は、点字出版、情報サービス、自立支援施設、生活施設、盲人用具の5つの事業部会に分かれて会議を行った後、夕刻から交流会が賑やかに行われました。
交流会では、岩上事務局長の肝いりで、研修会でコメントした佐賀氏が飛び入り出演して、各種のハーモニカを駆使した超絶技巧の演奏を楽しいトークとともに披露し、「来年も出てくれ!」とのアンコールを受けていました。
2日目の6月22日午前9時からは、「介護保険の現状とこれから」と題して厚労省高齢者支援課の懸上忠寿課長補佐が、1時間半の講演を行いました。
続いて開かれた式典では、ボランティアと永年勤続職員の表彰、援護功労者への感謝状贈呈が行われました。
続いて「大会アピール」を和歌山県視覚障害者福祉協会副会長の北口豊氏が、「大会決議」を(株)ラビット代表取締役の荒川明宏氏(盲人用具副部会長)が読み上げ、 満場一致で採択されました。
その後、厚労省、和歌山県、和歌山市長、和歌山県社協、日盲連、全視情協理事長等による来賓祝辞が行われました。市長の祝辞では「ご紹介いただきました和歌山市長の大橋建一でございます。代理ではなくて本物でございます」との挨拶に、会場は大爆笑に包まれました。
続いて市長は、かつて毎日新聞に勤めていた頃の先輩がこの大会に参加しているので、昨夜、交流会が終わる頃、その先輩と1時間半ほど旧交をあたため、東日本大震災の後で、被災した障害者を捜し出すのが個人情報保護法が壁となり難しかったこと。点字離れが進んで、点字出版所が苦況に立っていること。中途失明者によるあはき離れで、視覚障害者のあはき養成施設も 経営が困難になっている現状などを聞いたことなどを、ご自身の母親がかつて点訳奉仕者であったことなども引き合いに出しながら語りました。
その後、自宅に帰りくつろいでいると深夜0時43分、洪水警報が発令されたこと。道路が冠水しており、いつもと違う道を車高の高い消防署の車で市役所に向かい、そのまま朝を迎えたことなどをご自身の言葉で語り、参加者の共感を得ていました。
最後に特産の新ショウガを使った炭酸飲料「生姜丸しぼり和歌山ジンジャーエール」の宣伝をちゃっかり行って挨拶を締めくくり、盛大な拍手を受けました。
式典の締めくくりでは、舛尾常務理事が「来年日盲社協は60周年を迎えます。節目の大会は東京で開催する不文律がありますので、来年の61回大会は東京で開催します」 と宣言して、正午ちょっと過ぎに閉幕しました。

アピール

日本盲人社会福祉施設協議会が日本ライトハウスの創設者である岩橋武夫先生の提唱により、1953年(昭和28年)に結成されてから来年で60周年を迎えます。創設にあたり、岩橋先生はその目的を“日本盲人会連合と車の両輪のごとく相互に助け合いつつ、各施設間の連絡融和を図り、盲人文化の向上と盲人福祉の達成に貢献する”と高らかに謳い上げました。当初32施設だった加盟団体は半世紀を越える活動を経て、世界に類を見ない5部会200余団体に上る組織へと発展し、今日も創設時の理想を掲げ て活動を展開しています。
日盲社協の創設には、1949年(昭和24年)の身体障害者福祉法と、1951年(昭和26年)の社会福祉事業法という今日の社会福祉の基盤となる法制度の成立がありました。ところが、現在、国が今後の障害者福祉の柱として成立を図っている「障害者総合支援法案」は、2年2ヶ月にわたる白熱した議論を経て、昨年8月、国内を代表する障害当事者らで作る「総合福祉部会」が「骨格提言」を策定したにもかかわらず、「障害者自立支援法」の焼き直しに過ぎず、大きな失望と反対を招いています。同法案は、 難病者など対象者の拡大や「重度視覚障害者の同行援護」が盛り込まれるなど評価される面もありますが、「障害程度区分」「支給の決定」「就労の促進」といった実質的な課題は、附則に3年以内に決定するとして先延ばしにされてしまいました。日盲社協は当事者団体と連携して、残された課題が少しでも是正されるように、全力を尽くさなければなりません。
また、視覚障害者の生活・職業・情報等、あらゆる課題に関わる点字出版、情報サービス、自立支援、生活施設、盲人用具の各部会では、上記の障害者総合支援法に対する「総合福祉部会」の「骨格提言」の実現をはじめ、東日本大震災で露呈した災害時における視覚障害者への情報提供体制の整備、選挙公報の法的義務化の実現、同行援護と国による代読・代筆支援の養成研修の実施、盲導犬訓練の環境改善と盲人ホームへの支援、養護盲老人ホームへの入所要件の改善、日常生活用具助成における地域格差の撤廃などを求めていますが、こうした個別の課題についても改善を実現しなければなりません。
結成60周年を控えた今こそ、日盲社協加盟施設は改めて結成時の初心に立ち返り、多種多様な視覚障害者福祉施設が一致協力して、視覚障害者福祉の充実発展に努め、全国の視覚障害者一人一人の自立と社会参加の実現に向けて全力を尽くすことを誓います。
以上、宣言します。

平成24年6月22日
第60回全国盲人福祉施設大会
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

大会決議

1.一般の選挙公報は、国政等の選挙において公職選挙法でその発行が義務付けられていますが、視覚障害者には、「選挙のお知らせ」のレベルの発行に止まっています。 選挙公報は、国民の基本的人権としての参政権行使のために、また、知る権利を保障するものとして極めて重要な情報源であると認識しています。ゆえに、点字版・音声版「選挙のお知らせ」を「選挙公報」として発行するよう強く要望します。
1.録音図書製作機がデジタル化の進展を背景に目覚ましい発展を遂げているのに対して、点字図書製作機器の開発が大きく立ち遅れているのが現状です。加えて、従来の点字製版機や印刷機は、メンテナンスさえままならない危機的状況にあります。一 方では、点字教科書、各種点字図書、選挙公報等、点字でなければならない発行物が多く存在しています。そこで、これらを安定・供給するために、点字製作機器の開発費の予算化と当面の危機を切り抜けるための保守・管理費を点字出版施設に補助されるよう強く要望します。
1.災害時における視覚障害者の支援を迅速に行うため、「施設機能強化推進費」の総合防災対策強化事業内容を見直していただきたいと思います。そして、視覚障害者情報提供施設が福祉避難拠点として活動できるよう、施設機能強化推進費の大幅な増額など、必要な予算措置を講じていただきますよう要望します。
1.視覚障害者の知る権利を保障し、個人情報が保護されるよう、視覚障害者情報提供施設の陣容を高める必要があります。そこで、情報提供施設の設置・運営基準を改正し、適切かつ迅速に情報提供(代筆・代読サービス)ができるスキルを有する『情報支援員』を配置(増員)していただくよう要望します。
1.養護盲老人ホームの入所要件の改善を要望します。
1.同行援護事業の充実を要望します。
1.新制度において、情報障害とされる視覚障害者の障害程度区分(障害支援区分) が、障害者総合福祉法の骨格提言に示されているような、障害者のニーズを反映した区分として、適正に判定されることを要望します。
1.より質の高い盲導犬を育てるため、候補犬の訓練活動においても公共交通機関や公共施設等で、盲動犬訓練士が訓練活動を実施できるよう「盲導犬に準ずる扱い」をしていただきたいと思います。また、補助犬使用者の公共施設等の利用がスムーズにできるよう、一般社会への身体障害者補助犬法の一層の周知を要望します。

平成24年6月22日
第60回全国盲人福祉施設大会
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

誌上慶祝会

笹川吉彦氏の叙勲を寿ぐ 日本盲人会連合副会長 時任基清

笹川吉彦会長の叙勲、旭日小綬章受賞、誠におめでとうございます。
日本盲人会連合(日盲連)組織団体全会員、東京都盲人福祉協会(都盲協)全会員と共に、心からのお祝いを申し上げます。
前・日盲連会長、現・都盲協会長笹川吉彦氏は平成24年春の叙勲において旭日小綬章を受けられました。
氏のご功績は今さら申し上げることもないほどながら、視覚障害者をはじめとする障害者福祉運動に長年月、己を無にして尽力されました。
氏は高校生時代事故により失明され、福岡県立福岡盲学校で鍼灸マッサージの技術を身につけ、東京で開業し患者の病苦除去に尽くされました。
その一方、都盲協青年部長・理事・副会長・事務局長・会長として気が遠くなるほどの長期間、「ミスター都盲協」と言われる大活躍をされました。
都盲協が東京ヘレン・ケラー協会内から移転し、世田谷区松原に事務所を置き、その後の大努力により新宿区高田馬場の現会館、さらにはその新館建設を果たされました。
その後日盲連会長にも就任され、高田馬場の老旧社屋から新宿区西早稲田の現会館建設にも成功されました。
また、政府の法人改革に当たり、非常な困難を克服され、都盲協を公益社団法人に位置付けることにも成功されました。
氏は鋭い感性に加えて該博な知識を武器に、会員に向ける日頃の温顔とは打って変わった厳しい態度で、障害者福祉を阻む相手に立ち向かう姿は、気を飲まれるような勇ましさであります。
日盲連会長時代は、対東京都の運動に合わせて、国における諸審議会、委員会等々のメンバーとして、寸秒を惜しむように飛びまわり「あの多忙で、お身体は大丈夫か」と周囲を心配させるほどでありました。
氏は昭和8年12月2日生まれで、今年79歳を迎えられます。同じ歳の私・時任が申すのも妙な話ながら、くれぐれもご健康に注意され、一層の馬力で盲人福祉に尽力して頂くことをお願いし、お祈りしてお祝いの言葉と致します。

本間昭雄先生に鳥居賞

故鳥居篤治郎先生遺徳顕彰会(田尻彰代表)は、京都ライトハウスの創設者鳥居篤治郎氏の遺徳をしのび、視覚障害者福祉に貢献した人をたたえる第30回鳥居賞に本間昭雄社会福祉法人聖明福祉協会理事長・日 盲社協名誉会長(83歳・東京都青梅市)を選びました。
伝達式は9月10日、京都市北区の京都ライトハウスで行われ、賞状と記念品・副賞が贈られました。
本間先生については、すでに皆様よくご存じのとおり、20歳で失明して独学で点字を学び、1955年に聖明福祉協会を設立し、視覚障害者宅への家庭訪問事業などを経て、1964年盲養護老人ホームを設立。全国盲老人福祉施設連絡協議会会長、日盲社協理事長などを歴任されています。
とくに、パイオニアとして視覚障害高齢者の福祉向上に尽力され、1984年に点字毎日文化賞、1999年に勲五等瑞宝章を受賞しておられます。

塩谷治氏に点字毎日文化賞

毎日新聞社(朝比奈豊社長)は、視覚障害者の文化や教育、福祉の向上に貢献した個人や団体を表彰する第49回点字毎 日文化賞受賞者に、視覚と聴覚の両方に障害がある「盲ろう者」の組織づくりや通訳・介助者の育成などを通じて、その福祉発展に尽力した社会福祉法人全国盲ろう者協会前・事務局長の塩谷治氏(68 歳・東京都板橋区)を選びました。
塩谷氏は現在の筑波大学附属視覚特別支援学校(附属盲)教諭として約30年間、視覚障害教育に尽力されました。
とくに同校在学中に盲ろうとなった福島智氏(現・東京大学教授)の支援態勢整備に奔走され、盲ろう者として全国初となる同氏の大学入学を後押しして、福祉のはざまに置かれていた盲ろう者支援の重要性を強く訴え続けてこられました。
附属盲退職後は、全国盲ろう者協会事務局長に転じて、盲ろう者の実態把握や各地の当事者組織設立への支援、通訳・介助者の育成に取り組みました。その成果が、全都道府県による通訳・介助者の育成・派遣事業の実施などにつながりました。
表彰式は11月7日、毎日新聞東京本社で行われ、本賞(盾)ならびに副賞の中村京太郎賞(置き時計)と日本盲人福祉委員会奨励賞(30万円)が贈られました。

浅川智恵子博士に本間一夫文化賞

日本点字図書館(田中徹二理事長)は10月5日、日本点字図書館を設立した本間一夫先生を記念し、視覚障害者の文化の向上に関する分野で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する第9回本間一夫文化賞の受賞者に、日本IBM東京基礎研究所の研究員、浅川智恵子博士(53歳・神奈川県横浜市)を選びました。
14歳で視力を失った浅川さんは1982年追手門学院大学英文科を卒業。1984年日本ライトハウス情報処理学科を修了して、日本IBMに入社。
1997年ウェブに簡単にアクセスできるホームページ読み上げソフト「IBMホームページリーダー」を開発。
2004年、東京大学工学博士。
2009年、米IBMは、同社技術者の最高職位である「IBMフェロー」に浅川博士を任命しました。

望月優氏に近藤正秋賞 河合純一氏に片岡好亀賞

名古屋ライトハウスの愛盲報恩会(近藤正臣代表)は、9月16日、名古屋ライトハウスの創設者近藤正秋先生を記念し、視覚障害者で地域団体活動や就労、経済、政治等の分野で活躍し、著しい功績のある人を顕彰する第7回近藤正秋賞に(株)アメディア代表取締役社長の望月優氏(54歳・東京都中野区)、同じく名古屋ライトハウスの創設者片岡好亀先生を記念し、視覚障害者の福祉、教育、文化、スポーツ等の分野で活躍し、視覚障害者で社会的進歩のために著しい功績のある人を顕彰する第7回片 岡好亀賞に河合純一氏(37歳・静岡県浜松市)を選びました。
望月優氏は、視覚障害起業家の先達として、視覚障害者向けシステムの開発普及を目的に(株)アメディアを設立して事業化することにより、視覚障害者の読書環境を飛躍的に進展させました。活字読み上げソフト「ヨメール」にて、1997年度日経優秀製品・サービス賞を受賞。
日盲社協の元・盲人用具部会長としてもお馴染みの方です。
河合純一氏は、筑波大学附属盲学校高等部在学中の17歳の時にバルセロナパラリンピックに出場。以来、今年のロンドンまでパラリンピック6大会に連続出場し、金メダル5個、銀メダル10個、銅メダル6個を獲得して大活躍しました。

塙賞貢献賞に東京ヘレン・ケラー協会

埼玉県は11月9日、第6回塙保己一賞貢献賞に東京へレン・ケラー協会を選んだと発表しました。受賞理由は、①多くの鍼灸マッサージ師を養成した。②点字図書館や点字出版事業で視覚障害者の社会参加に貢献。③視覚障害音楽家の登竜門「へレン・ケラー記念音楽コンクール」の長年にわたる運営。④ネパールにおける視覚障害児童・生徒への支援等が評価されました。
表彰式は12月15日(土)、本庄市児玉文化会館セルディで行われます。

「第三回 情報機器等の支援者講習会」報告
社会福祉法人岐阜アソシア
視覚障害者生活情報センターぎふ 山田智直

日時:平成24年8月8日(水)~10日(金)
会場:じゅうろくプラザ(岐阜市橋本町)
参加者:23団体30名
講義内容
講義1「視覚障害者とパソコン」視覚障害者生活情報センターぎふ 山田智直
講義2「パソコンの使い方 — 導入から 基礎」 日本ライトハウス情報文化センター 松本一寛
講義3「サピエとデイジーオンラインサービス」 日本ライトハウス情報文化センター 松本一寛
講義4「パソコンの教え方 — 初心者にわかりやすい指導法」日本ライトハウス情報文化センター 岡田弥
講義5「ワークショップ 指導実技」
講義6「パソコンサポートの実例」名古屋ライトハウス名古屋盲人情報文化センター 星野史充
講義7「情報機器活用事例 — iPhone、iPadの場合」 品川博之
今まで2回の講習では実技を中心に行ってきたが、今回の講習では、使い方、教え方など、どのような方法で、ということを中心に行った。また、ワークショップでは指導実技を実施して、その場その場に応じた対応について助言をした。その他にも、昨年に引き続きDAISYオンラインには欠かせないリンクポケット、それに昨今話題のiPhoneを使っての実技指導も行った。
リンクポケットは利用者にはある程度広まっているものの、施設側ではあまり広がっていない状況で、実際に設定をしてみると、音声だけでの使用にとまどう受講生が多く見受けられた。iPhoneは、視覚障害者に実際に使い得るものか半信半疑であったが、視覚障害講師の説明と実際に使っている状況をみて、さらに自分で使ってみてかなりの手応えがあるように思われた。
今後の課題
視覚障害者の間でもスマートフォンのような携帯端末が普及しつつある中、今回のiPhoneの講習はタイムリーなものとなった。ただ、機器レンタルの面で、事務処理や費用が大きな負担となった。来年度も講習を実施するとなると、スマートフォンはかなりのウエイトを占めてくると思われるので、予算の確保が重要になってくる。

点字指導員講習会報告
点字指導員研修委員会委員長 大澤剛

本事業は、財団法人JKAの補助金を受けて実施しました。
8月29日から31日まで、大阪市の山西記念福祉会館を会場に、「平成24年度点字指導員講習会」を行いました。今年は、点字指導員認定講習会でした。
全国から150名余の申し込みがありましたが、そのうち課題審査に合格した74名が受講しました。
研修内容は、次のようなものでした。
初日の午後からは、「災害時における情報提供施設の役割」と題して、東日本大震災の経験から災害弱者と言われている視覚障害者を支援するためにはどうすればよいかを学びました。また、二つ目の講義では、日本点字委員会の最新の動きについて学び、医学用語などの点字表記について学習しました。
2日目は、「パソコン点訳と図書製作」、「点字校正技術」、「点訳のてびき」の三つの講義を行いました。午後には、3時間ほどを使い、点訳の重要なテーマとなる点字表記について、このほど出版された『点訳の手引き』の指導者向けテキストの使用法を中心に、鋭い質問も出て、白熱した講義が行われました。
最終日は、「点字指導技法」、「難読語の調査法」について、点字指導員としての指導法のポイントや、難読語の調査の仕方について講義を行いました。最終日の午後は、点字指導員の認定試験を行い、受講者は熱心に校正課題に挑戦していました。
今年は、天候にも恵まれ、充実した講習会となりました。支えてくださったスタッフをはじめ、講習会に参加してくださった皆様に感謝申し上げます。

自立支援施設部会の現状課題と部会組織の方向性について
自立支援施設部会長 山下文明

自立支援施設部会は視覚障害当事者へ直接的に福祉サービスを提供する機能を持つ事業及び施設(居宅介護サービス、自立訓練サービス、就労支援サービス、盲導犬等訓練施設、あん摩・はり・きゅう師の養成施設、盲人ホーム)を部会員としています。
部会では事業種別ごとに委員会を設け、福祉施策の改正動向や各施設の取組状況など、最新情報の共有と課題整理を中心に活動を行ってきました。平成12年から始まる社会福祉基礎構造改革の大きなうねりの中、特に障害分野では、平成15年からの支援費制度の導入から障害者自立支援法の施行と障害者総合支援法への移行経緯は大変めまぐるしいものがありました。この間の改革は利用者主体の福祉サービスの再編と社会の一員としての利用者が有効的、機能的に利用できる地域福祉サービス提供体制の構築を促しましたが、同時に法人、施設、事業体の意識変革や体質改善と組織強化を迫るものでした。
こうした中、現状における自立支援施設部会各委員会では、次のような視点、課題が挙げられています。
■盲人ホーム委員会(盲人ホーム)
・事業活性化(顧客増加)のための方策
・利用者への教育、訓練機能を強化する必要性
・障害者自立支援法(障害者総合支援法)への移行など、経営安定化のための方策
・日盲連加盟盲人ホームとの情報共有と連携
■生活訓練委員会(自立訓練、移動支援、居宅介護などの事業)
・新法(障害者総合支援法、障害者虐待防止法)及び報酬改定(減収)への対応
・事業活性化(利用稼働率アップ)のための方策
■就労支援委員会(就労継続支援、就労移行支援事業)
・新法(障害者総合支援法、障害者優先調達推進法、障害者虐待防止法)及び報酬改定(減収)への対応
・事業活性化(利用稼働率アップ)のための方策
・障害者総合支援法における国による就労支援のあり方議論の動向について
■盲導犬等訓練委員会(盲導犬訓練施設、補助犬施設)
・候補犬の公共交通機関での扱いについて
以上のように、事業内容、機能、目的、根拠法も少しずつ異なる施設のなかで直面する課題も少しずつ異なっています。また、現状においては、障害者権利条約の批准を目指した法律や制度の改革改正が進んでいる最中でもあります。地域や社会が私たちに求める期待のハードルがだんだんと高くなる中、自立支援施設部会の方向性を考えるにあたり会員施設がこうした改革方向を見極め法律や制度改正に柔軟に対応し事業の活性化を実現するための部会機能として
▶それぞれの事業の根拠法に基づく課題整理と社会への発信、行政への働きかけ
▶事業種別委員会の独自性の確保と活動
があげられます。将来的には部会の再編も視野に入れながら、みなさまのご意見をいただきながら部会機能の強化と活性化を目指していきます。

点字出版の土台が危ない!
点字出版部会長 田中正和

数年前、点字出版界に衝撃が走った。 1907年に国産で初の点字製版機を製作し、質の高い点字用具や機器を数多く製造してこられた会社が廃業されたのだ。その結果、物づくりを自認するわが国ではあるが、点字製版機や点字印刷機を製造する会社が、全国で1社だけになってしまったのだ。その1社にもしものことがあればどうなるのか、たいへん危ない状況に点字出版界は立たされることになった。
さて、紙に印刷された点字は指の滑りがよく、長時間読んでも疲れないし、快適に読書ができると言われてきた。各点字出版所では、プロの技の見せ所として点訳・製版・印刷・製本にこだわり、図書製作に心血を注いできた。
そして、熟練者が活躍したその世界にも、時代の流れが押し寄せてきた。今やパソコン点訳一色となり、自動製版機や高速の点字プリンタが登場し、図も描けるソフトや点字プリンタが開発された。さらに、情報ネットワークには桁外れの点訳図書がアップされ、これまでの点字出版のスタイルでは太刀打ちできない状況となってきた。また、点字広報誌等の印刷部数も大幅に減少しており、あの手この手の知恵を絞ってはいるが、なかなか厳しい状況である。
こうした中、自動製版機や点字印刷機の需要も先細りしており、冒頭で述べたような廃業につながったのではと思われる。1社となってしまった製造業者に話を伺ったところ、事業を継続する展望が持てない、早く納品してしまうと仕事がなくなってしまう、修理等の依頼はくるが予算がないのかついでに来てくれというケースが多くなっている、などということだった。事業を継続してもらう打開策として、保守契約を結ぶことで即時対応の体制整備も含めてある程度見通しが立てられるかなという話をしている。
点字出版所は、日本の点字が制定されて120年あまりの中でたいへん重要な役割を担ってきた。最近では、点字サインのJIS規格の制定に貢献したり、2004年の参院選の際に選挙情報支援プロジェクトを日本盲人会連合と共同で立ち上げ、県レベルでわずか4分の1程度でしか提供されてこなかった「点字選挙公報」を、今日ではほぼ全県で配布されるという状況を切り拓いてきた。また、100年あまりの点字文化は、視覚障害者と社会に大きな変革をもたらし、視覚障害者の社会進出や社会参加が飛躍的に進んだ。今日、点字文化を支えてきた基盤に深刻な危機が迫っている。どう乗り越えて行けばよいのか、各施設の努力だけでは手が及ばないところに来ている。
国にはそうした状況をしっかり認識していただき、早急な対策を講じていただく必要がある。例えば、自動製版機や点字印刷機が国の責任で安定的に供給されるようにしていただくこと、機器の整備に必要な助成金を創設していただくこと、保守契約等を結ぶための事業助成金を創設していただくことなどが望まれる。

<新会員施設紹介>瀬をはやみ、岩にせかるる滝川の– 日盲連が再加入 —
社会福祉法人日本盲人会連合情報部長 大橋由昌

社会福祉法人日本盲人会連合(略称、日盲連)は、視覚障害者の社会への完全参加と平等の実現に向けて、1948年(昭和23年)に全国都道府県・指定都市の視覚障害者団体の連合体として結成されました。以来、一貫して視覚障害者自らが主体的・組織的に運動を展開し、加盟団体に対する連絡および助成を行うとともに、国や地方自治体などへ視覚障害者の福祉向上を求める活動を展開してきました。全国都道府県・指定都市における61団体、会員5万人を擁する視覚障害者自身によるわが国最大の組織であり、毎年、その年の運動方針を決議する全国盲人福祉大会を開催するほか、課題ごとに全国盲青年・盲女性研修大会、全国盲人音楽家福祉大会を実施しています。文化活動では、全国盲人文芸大会などを毎年開催。その他、スポーツの普及および振興にも取組み、グランドソフトボール(盲人野球)などの大会も主催しています。
こうした運動団体の性格を持つ一方、社会福祉法人としての点字図書館、点字出版所、録音製作所、そして用具購買所などを運営しています。点字図書館は登録利用者数4千人で、集書方針としてあはき業者向けの蔵書製作に力を注いでいるところです。点字出版所は、厚生労働省の委託で『ワールドナウ』や『点字「厚生」』に代表される定期刊行物などを制作。録音製作所は、自治体の『広報』ディジー版の作成をはじめ、インターネットの『声のひろば』や音声版『日盲連アワー』などの定期刊行物を制作・提供しています。
また、本会の会長は、全盲の弁護士として知られる竹下義樹です。わが国の障害分野の近未来のあり方を検討する「障害者政策委員会」の委員のひとりであることは、ここに記すまでもないでしょう。
この4月より新会長の下、発進したばかりの本会の新たな動きの一環として、情報部が平成24年7月1日付で、日盲社協(情報サービス部会)に再加入した次第です。
指定管理者制度の固定化や福祉予算の抑制、さらには東日本大震災の発生など、福祉環境は厳しさを増しています。今後、本会組織のより一層の活性化を図るとともに、皆様方のご理解を賜り、盲人福祉の向上のために手を携えていければよいと願っています。崇徳院の歌ではありませんが、両会とも故岩橋武夫氏が初代会長でありますので、「われても末に、あはむとぞ思ふ」ということになるでしょうか。

日本盲人福祉センター情報部
〒169-8664 東京都新宿区西早稲田2-18-2
TEL:03-3200-0011(代)
FAX:03-3200-7755

<新会員施設紹介>
社会福祉法人 山口県盲人福祉協会 鍼灸マッサージ治療所 光明園

今年の9月1日に自立支援施設部会に入会しました鍼灸マッサージ治療所 光明園は、社会福祉法人山口県盲人福祉協会が、昨年11月1日、就労継続支援事業として開所しました。
いわゆる盲人ホームである鍼灸マッサージ治療所光明園は、入所者の「人間らしい尊厳ある存在の回復を目指す」ことを、法人の基本理念とし、山口県下関市の中央に位置する向洋町の丘の上に鉄筋コンクリート3階建ての一際目立つ存在としてその姿を見せています。
一昨年8月、建設会社の寮を土地と合わせて約1億円で買い取って、約8千万円をかけて改修しました。1階は事務室を始め食堂や厨房、浴室そして治療室が4室など、2階と3階はそれぞれ居室が10室、さらに隣接して約40㎡の会議室と70㎡余りの訓練室が続いています。
定員は県との話し合いで開所時は10名余とし、開所後2年の間に20名を確保することになりました。
施術料は1回千円とし、局所治療を主に行うこととして、地元業者との競合を避けるよう申し合わせています。
現在の登録者は13名で、そのうち9名が通園者で、常時、光明園で生活している者は4名です。
光明園の事業は9時半から15時までとなっており、園で生活している者はグループホームや、それに準じた付帯事業の利用者となって、そうした事業を利用しながら、光明園の休日には、法人が経営するデイセンターの事業を利用したり、法人が経営する同行援護事業を利用しながら自由で安全な生活を楽しんでいます。
今後の課題としましては、これまでの月平均100名の利用者をさらに上げるために、保険治療を取り入れることや、下関市が行っているマッサージの補助事業などを取り入れることが必要と考え、準備を進めています。

社会福祉法人山口県盲人福祉協会
鍼灸マッサージ治療所 光明園
施設長:舛尾孝江
〒750-0041 山口県下関市向洋町3丁目7番5号
TEL:083-223-3577
FAX:083-250-8597

日盲社協事務局だより

次期全国大会は東京で開催

次期大会は、創立60周年の節目の年にあたりますので、主管は日盲社協事務局とし、東京で開催します。
開催日と会場等は次の通りです。
開催日:平成25年9月9日(月)~9月10日(火)

主管施設:日盲社協事務局
〒110-0016 東京都台東区台東3-1-6
TEL:03-6240-1452 FAX:03-6240-1352

会場・宿舎:ホテルグランドヒル市ヶ谷
〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町4-1
TEL:03-3268-0111
E-mail:info@ghi.gr.jp

日程
▶9月9日(月)
12:00~13:00 受付
13:00~13:15 開会式・オリエンテーション
13:20~14:30 記念講演
14:45~16:00 創立60周年記念式典
16:00~17:00 (受賞ボランティア懇親会)
17:10~19:30 創立60周年記念祝賀会

▶9月10日(火)
07:00~08:30 (朝食)
09:00~10:30 事業部会(5部会)
10:45~12:45 全体会

新規会員施設

①日本盲人福祉センター情報部は、平成24年7月1日付で情報サービス部会へ入会しました。
②鍼灸マッサージ治療所 光明園は、平成24年9月1日付で自立支援施設部会へ入会しました。

退会施設

①横浜訓盲院は、平成24年4月1日付で自立支援施設部会から退会しました。

住所変更施設

①特定非営利活動法人日本点字技能師協会 理事長 中山 敬
〒420-0803
静岡県静岡市葵区千代田1-7-16
TEL・FAX:054-247-8840
※理事長も込山光廣氏より中山敬氏に変更になりました。

②社会福祉法人 大分県盲人協会 大分県点字図書館 館長 冨森 寿弘
〒870-0043
大分県大分市中島東1-2-28
TEL:097-538-0399 FAX:097-538-0537

③株式会社アメディア 社長 望月優
〒176-0011
東京都練馬区豊玉上1-15-6
第10秋山ビル1階
TEL:03-6915-8597 FAX:03-3994-7177

④株式会社ジェイ・ティー・アール 社長 岡村原正
〒335-0022 埼玉県戸田市上戸田4-13-18
TEL:048-452-8898 FAX:048-452-8924

編集後記

前号『日盲社協通信』Vol.64に掲載された、東京都視覚障害者生活支援センターの中村亮氏による「ホームからの転落事故をどう防ぐか」を読んで、日本ライトハウス点字情報技術センター所長の福井哲也さんから、とても前向きな感想が届きましたので、要旨をご紹介します。
ホーム転落事故にあわない最善の策は、ホームを独りで歩かないことだが、面倒で、時間が余計にかかり、手引きに慣れていない駅員に当たるか知れず、「大きなデメリット」があるに同感です。
そして、独りでホームを安全に歩く3つのポイント、①歩く距離を短く、②スピードをおとして、③おかしいと思ったら動かず援助を依頼するに加えて、④として「過去の事故の事例をできるだけ知り、今、自分は具体的にどんなふうに転落事故を起こすかもしれないかを頭に描きながら歩く」を追加したらと提案しています。ただ単に「気をつけて歩けと言われても、どう気をつけたらいいのかわからないので、具体的にどんなふうに事故になるかイメージできるようにしたい」というのです。
とても具体的で、全文掲載したかったのですが、誌面がつきました。
次いで、神奈川県ライトセンターを経由して本誌を愛読している個人の読者の方からのご意見です。
「編集後記に、メールで意見などお寄せくださいとありますが、メールのできない人もたくさんいます。点字の手紙や電話も受け付けられるようにお願いします」。
本誌は日盲社協の機関誌ですが、それにもかかわらず個人の読者がおられることは大変ありがたく、編集者冥利につきます。しかし、あくまでも対象読者は、加盟施設の役職員です。現在、加盟施設のいずれもが、事務簡略化のために、業務でEメールを多用しているので、本誌でも「メールでお送り下さい」とお願いした次第です。しかし、だからといって、点字の手紙を無視するわけではありません。実際にこの方の手紙は点字によるものです。本誌の機関誌としての性格を認識してご理解ください。
また、「点字版の表紙に製版・印刷所の記載をお願いします」というご要望もいただきました。この件に対しては、その旨担当の点字出版所に伝え、ぜひ実現したいと考えております。
ホームページ上に『日盲社協通信』の点字データを載せて欲しいというご要望は、紙媒体を大事にしたいのでお断りします。
最後に、自立支援施設部会の盲導犬等委員会の課題であり、大会決議にもある「候補犬の公共交通機関での取り扱い」について、これを認める方向で厚労省が検討に入ったと、10月30日付で共同通信が報じました。これは期待できそうです。
次号は2013年(平成25年)4月を目処に発行する予定です。(福山博)

情報提供のお願い

本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長の福山博(fukuyama@thka.jp)宛、メールでどしどしお送りください。お待ちしております。

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