第1章 視覚障害者のIT利用の現状

第2章 視覚障害者の就労現場でのIT活用

第3章 在宅雇用への道筋

第4章 視覚障害者雇用に向けての助言

第5章 調査の評価と分析

まとめ

第4章 視覚障害者雇用に向けての助言

 この章では、視覚障害者を雇用するに当たって、雇用主や直属の上司の皆様に考慮していただきたい点について記載する。

4-1 雇用主から視覚障害者に求めるべきこと

(1) 戦力としての視覚障害者雇用

「障害者雇用」はよく企業の「社会貢献」と言われることがある。

しかし、「社会貢献」や「社会的弱者への配慮」といった考えだけでは、視覚障害者の雇用には重大な問題が予想される。

なぜなら基本的には企業は「利益」を生み出すことを目的としており、その上に「社会貢献」なども成り立っているからである。

視覚障害者雇用が「社会貢献」ではなく、企業の戦力となるように、視覚障害者に対して、求めるべきことを、明らかにしておくことが重要となる。

社会貢献的障害者雇用は企業に取って、様々な問題を生じさせることがある。

人事部側が問題がないと考えても、実際に受け入れる現場ではいろいろな感情を持つはずである。

障害者を「戦力」として正しく理解して受け入れる職場もあれば、「社会貢献だからしかたがない」という考えで受け入れる職場もあるに違いない。

全社の考え方が基礎となって業務が遂行されてこそ長期的且つ発展的な雇用関係が構築できる。

後者の感情がベースに存在すると、「荷物をしょわされた」という考えが起きないとも限らない。

(2) 視覚障害者の意識

一方、視覚障害者自身もいろいろなタイプがあり、様々なことを考える。

これは、職場側にもいろいろな考え方があるのと同様で、就職をして「視覚障害」というハンディを超えて、一労働者として職務を遂行する最大限の努力をする場合と、「企業は弱者に対し手をさしのべるのが当たり前、まして、仕事も同じである」といった障害を盾に取った甘えに基づく考えである。

前者の姿勢を持った視覚障害者は職場の中でいずれは受け入れられ、周りとのコミュニケーションも取れるようになるが、後者はかなりの問題であり、これを修正しない限り、行く末は職場環境の悪化や雇用関係の破綻につながる。

景気が良く「障害者雇用は社会貢献だ」と言っていられるうちは問題は表面化しないかもしれないが、今の時代は、健常者自分の身がいつどうなるのかわからない厳しい時代といえる。

その時に業務に対して積極的とはいえない障害者がその職場にいたのでは、その職場の雰囲気は悪くなり、職場と障害者の関係は難しいものとなる。

しかし、人事部側ではその内情まで理解することは難しく、現場でも「障害者が仕事をしない」と言った直接的な表現をすることには勇気がいることだと思われる。

つまり、障害者自信の固有の問題があったとしても、「障害者差別」と思われるのが怖くて、誰も本当のことは言えないからである。

このような関係では仕事が円滑に進むはずがない。

このような場合、障害者自身も職場に行くことがストレスとなり、その職場に対する「障害者への理解がない」と言ったような新たなマイナス意識を生み出し、複雑な問題に発展して行くことが予想される。

このような状況にならないように、雇用主から視覚障害者に対して、最初から言うべきことを言う必要がある。

(3) 最初に確認すべきこと

一番目として、視覚障害者を雇用する上での企業の考えをきっちり本人に理解してもらうことが重要である。

「障害者雇用」という形式であるが、あくまでも給与は労働の代償として支払う物で、その人なりのベストを尽くした「結果」が評価の対象であるということである。

この「結果」には、採用した視覚障害者の専門的な能力を生かしたことによる「直接的な評価」と、視覚障害者がきっちりと仕事をすることにより、周りの健常者に見えない「プラス効果」をもたらすという二つの点が上げられる。

これを本人に正しく理解させることこそ、障害者雇用がうまくいくかどうかの分かれ道になって行くことになる。

「健常者」も「視覚障害者」も一人の人間としては対等である。

しかしながら、一般的には「健常者の社会」で「視覚障害者」は不自由をし、何も言えないことが多い。

つまり、視覚障害者から見た場合には、常に「健常者は障害を理解してくれない存在」であり、またそのように思いこんでいるのが多くの現状だからである。

しかし、就職をしてしまうと、この立場は逆転する。

直接視覚障害者に対して「仕事のミスの指摘」などができるだろうか?

おそらく「障害を持っているのだからしかたがない」といった感情になるのではなかろうか。

これが長く続いて行くと、健常者側は「仕事を頼んでも手がかかる」といった感情に変わってくることになる。

つまり、健常者が強く視覚障害者が弱いという立場ではなく、障害者に対して物が怖くて言えない健常者は弱くなり、何でも言う障害者が強くなってくるわけである。

企業側から雇用の考えを説明することにより、結果として、視覚障害者が、直接的であれ、間接的であれ、企業目的達成のための戦力として扱われているという自覚が生じ、視覚障害者自身のモラール(やる気)を向上させ、そのことが、他の従業員のモラールをも、向上させる。

その結果として、モラールの向上のスパイラルといった良好な職場環境が実現するのではなかろうか。

(4) 業務適応は自己責任

二番目として、本人の能力やその能力の業務への適応は本人自身の問題であるという点である。

これは一般的には当たり前のことであるが、視覚障害者雇用という立場ではやはり難しい問題の一つと言える。

ある意味、最初から「弱者」を採用している訳であり、どこまで「能力」を求めて良いのかの程度が計りにくいからである。

仕事は現在その人が持っている能力や技術だけでできるものは少ないと言える。

入社後、会社の業務内容や営業品目を覚えるなどといった追加の知識が必要となる。

健常者であれば、雑用をさせながら、徐々にこれらの知識を高めて行くことが可能だが、視覚障害者の場合には、「自然に覚える」という形態は向いているとは言えない。

視覚障害者に対し、実際に雑用をやらせながら自然にこれらの業務や製品知識などを高めさせていくことは難しい。

よって、個別の社内教育をできる範囲で行うべきではあるが、それと同時に、本人の責任を自覚させるような工夫が必要である。

基本的には、視覚障害者に対しては最初から具体的な業務内容を決めて取り組ませることが望ましい。

この時、本人のIT能力ではなく、業務に対する知識が課題となってくる。

この「業務知識の習得」は障害があるなしではなく、本来その人の仕事に対する姿勢の問題であり、視覚障害者に対し、「自己スキルアップ」、「業務への適応」は障害とは別の問題と位置づけ、自ら職場の従業員達と積極的にコミュニケーションを取り、自分で解決することが求められると指摘することが重要である。

これを認識させないと、本人が能力不足はすべて「会社の責任」と思いこむ危険性がある。

(5) まとめ

就職はその職場で働く「スタートライン」に立ったに過ぎない。しかし、障害者の多くはこの「スタートライン」を自分は評価されたという「ゴールライン」と勘違いしてしまう場合が少なくない。

健常者であれ、障害者であれ、企業が戦力として処遇しているのなら、自らの能力を磨かなければ企業における存在意義は消滅するのは当然の結果である。

上記の二つの点を明確にすることにより、障害者自身の「甘え」がなくなり、現場への適応、コミュニケーションにも良い結果をもたらすはずである。

人はつい、自分に甘くなる。

まして、障害を持っていれば、「これは目が見えないのだから、自分の責任ではない」このように考えてしまうものである。

このような考えを起こさせてしまった時点で、周りとのコミュニケーションはうまくいかなくなり、その修正は非常に難しいものとなるだろう。

「できない」ということを障害者自身がどのように明確にし、周りの理解を得ると同時に自らも最大限の努力をして協調していけるのかが非常に大切なことである。

(荒川 明宏)

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4-2 視覚障害者の限界

視覚障害者はITを用いることにより、様々なことが可能となった。

しかし、すべてが可能となり、障害を克服し、健常者と同じ環境で、同じ早さで行える訳ではない。

ここでは「視覚障害者の限界」について説明する。

(1) ハンディの考察

誰でも簡単に試すことができる、「視覚障害の不自由な点」を考えて見よう。

例えば、事務机が一つ目の前にあったとする。

その机の上には何も乗っていない。

その机のどこかに10円玉を1枚置く。

この10円玉を探して見るという単純なものである。

目が見えていればそれは何でもないことで、難しいことも何もないはずである。

それでは、目を閉じて10円玉を探して見よう。

では、目を閉じた状態で別な人に10円玉を置いてもらい、同じことをして見よう。

見えない状態で歩行をする訳ではないので、ただ、単純に手で机の上を触って探すことができる。

危険なこともないので、誰でも試すことができる。

10円玉は簡単に見つけることができただろうか?

この机の上にコップやノートなどを置いて、同じことを試して見よう。

いずれも時間をかけて、順番に机の端から端まで触って行けば必ず見つけることができ、難しい事は何もない。

しかし、10円玉を手に取るまでの時間を比較して見よう。

目で見て取るときと、手で探すときといったいどれくらいの時間差があっただろうか?

これが視覚障害者に取っては仕事をする上での「見えない」というハンディ」つまり「壁」となる。決してできない訳ではないが、「時間がかかってしまうという「ハンディ」である。

一般入試や資格試験などはこのハンディを考慮して、通常1.5倍の試験時間を取っている。

このことを理解した上で、実際に仕事ではどのような限界があるか、どのような仕事が視覚障害者には苦手なのかを考えて見よう。

(2)環境の変化による効率性の低下

「視覚障害」は環境の変化に対する順応性が悪いと言われる。

先の10円玉の例でいうと、何も置かれていない所からコップやノートなど、障害物を置くことにより、今までとは少し違った探し方が必要となる。

しかし、この問題はなれること、つまり時間が解決してくれる。

例を挙げて考えて見よう。

視覚障害者の社員Aさんがいたとする。

このAさんの仕事は、インターネットを使って各新聞記事を読み、そのAさんの職場に取って参考になる点、ライバル会社の情報などをレポートにまとめ、同僚に情報提供している業務をしていたとしよう。

このAさんの仕事に取って、一番困ることはなんだろうか?それは毎日見ている新聞などのホームページのレイアウトの変更である。

机の上の例で言えば、障害物と10円玉をいつも同じ所に置けば、10円玉を手に取る時間もどんどん短縮される。

最終的には机の上を触らずに、直接その付近に手を持って行き、いきなり手に取ることが可能になる。

次に、なれた所で、何も言わずに今度はその10円玉を10センチ移動してみよう。

僅か10センチの違いでも探すのには時間がかかってしまい、場合によっては端から端まで探さなければならなくなる。

このAさんの仕事では、必要な情報はどこを見れば良いのか、日常業務でなれているので、普段は「目が見えない」ということをあまり意識せずに業務をこなすことができる。

しかし、「ホームページのレイアウト変更」という、ちょっとした変化で、今までのなれは通用せず、また自分なりに一からなれて行く必要があり、また元の状態の戻ってしまい、効率の良い業務ができるようになるためには少し時間がかかってしまうこととなる。

見えている人に取っては10円玉の10センチの移動やレイアウト変更は全く意識することもなく、「そう言えば変わったのかなあ」という程度の些細なことであろう。

しかし、視覚障害者にとってはこれは大きなできごとなのである。

(3) グラフィカル処理やイメージ処理の限界

ITを用いた業務であっても、視覚障害者が克服できない問題がある。

それは、グラフィカル処理、イメージ処理などである。

「パソコンを使って「文字」を書くことは可能であるが、「絵」を書くことは残念ながら視覚障害者にはできない。

また、文に絵を組み合わせて、「良いイメージの物を作成する」と行った業務も現実的に難しいものがある。

以前視覚障害者は「コンピュータ・プログラマ」として多くの人が就職をしたことがある。

また、それは「視覚障害者の仕事」として、かなり定着した。

しかし、最近ではこの「コンピュータ・プログラマ」としての就職は困難になりつつある。

その原因は幾つかあるが、その中の最も大きな要因として、「グラフィカル処理」が上げられる。

昔のコンピュータまたは端末は「絵」はなく、文字だけが書かれていた物であった。

ところが現在では、「Windows」の画面に代表されるように、「絵」で表現するのが一般的となっている。

この「絵」を作ることができないため、また、この「絵」を使って開発をしなければならなくなったために、「コンピュータ・プログラマ」での就職は難しくなった。

視覚障害者は「知的業務」にはハンディがなく、「コンピュータ・プログラマ」のような仕事は本来向いている。

また、現在は「IT技術者の不足」という現状があるため、視覚障害者も「IT業務」に携わるのが理想といえる。しかし、この「グラフィカル処理」が残念ながらハードルとなっている。

視覚障害者は「ホームページ作成」や「報告書作成」などの業務を行うことは十分に可能であるが、実際にその業務を与えるときにはこの「グラフィカル処理」に配慮する必要がある。

上記のことからも推察できるが、内容のみを視覚障害者に作成させ、後から別な人がレイアウトなどを付けるといった業務の分担は、視覚障害者の業務効率を大幅に向上させることになる。

(4)情報取得の時間の制約

ITの利用により、視覚障害者に取っての情報不足もある程度解消されてきた。

ホームページからの情報取得や電子化された情報を音声で聞くことにより可能になった訳である。

しかし、「見る」と「聞く」では決定的な大きな違いがある。

それは「机の上の例」の話に置き換えて見ると、「どこに何があるのかすぐにわからない」という点である。

目で見れば、自分の目的とする情報がこのページに書かれているのかどうかはあまり時間をかけずに判断することができる。

しかし、これを耳で聞く場合にはそう簡単ではない。

そのページに書かれている情報を音声で聞いてから初めて、必要な情報があったかどうかが理解できるからである。

このように、内容を理解するためには、健常者に比べて時間がかかってしまうというのが実情と言える。

また、電子化されている情報であっても、音声読み上げでは理解するのが難しいものがある。

例えば、「テレビ番組表」がその代表例として上げられる。これは現在インターネットで簡単に見ることができ、もちろん視覚障害者も音声化ソフトなどを用いることにより、ページの内容を音声で読ませることができる。

しかし、表になっているので、中身だけを順番に読み上げられても、実際に必要な項目が、横軸、縦軸のどこに位置しているのかを理解することは大変困難である。

つまり、この番組は「何時から何時まで放送されるのか」と行った重要なことはわからないことになる。

結局音声で読むからと行って視覚障害者がわかるかどうかは別問題となる訳である。

最近ヘルスキーパー業務で、視覚障害者もグループウエアを使って、予約管理などをしてほしいと要望されることがある。

「ITの現状」で紹介したように、ある環境が整えば、この「予約管理」も音声で操作することは可能である。

しかし、「テレビ番組表」の例で上げたように、「表」を瞬時に理解することは困難と言える。

電話で来た予約に対して、パソコンを操作しながらその時間が空いているのかどうかといった判断は単純なことであるが、視覚障害者が苦手とする業務の一つといえる。

このように、「スピード」を要求される仕事については、どの程度対応できるのかは十分考慮する必要がある。

これは、本人の能力といった問題ではなく、「視覚障害」という「障害」のために共通の問題と言えるからである。

(5)単独歩行

就職を希望する視覚障害者は単独歩行には問題がない。

視覚障害者を採用する場合、「通勤途中事故などは起きないだろうか」と行ったことを心配するケースが多々ある。

しかし、これは職場までの歩行訓練の実施などにより、安全に歩行することが可能である。

しかし、この単独歩行は普段行き来する所でのみ通用する。

例え同じフロアーであっても、はじめて別な部署に行く場合などは誰か周りの人のヘルプを必要とすることがある。

ただ、これも何度か繰り返すうちに、特別な訓練をうけなくても、単独で移動できるようになる場合が多い。

(6) まとめ

「視覚に障害を持つことにより、様々なハンディがある。

しかし、このハンディを列挙したのでは実際に仕事も生活も成り立たない。

必要なことはこの「できないこと」に対して視覚障害者自身が何とかしようとする積極的な努力や工夫である。

「道がわからないから歩かない」のではなく、「道がわからなくても周りの人に聞いて行く」、この気持ちが大切と言える。

周りから視覚障害者に対して配慮をすることよりもむしろ、本当に困る点を本人の口から訴えさせる雰囲気を作ることが職場での業務連携を正常に保ち、視覚障害者本人の仕事をうまく進めさせていくポイントである。

また、このコミュニケーションにより、「視覚障害者の限界」も変わってくるはずである。

(荒川 明宏)

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4-3 視覚障害者の可能性

視覚障害者は目が見えないあるいは見えにくい。

視覚障害者の特性は元来それだけである。

個々の個人を観察すれば、もちろんほかにもいろいろな個性や特徴があり、それらは視覚障害による特性ではないかと考えられる面も多々あるであろう。

しかし、それらは、人間関係や社会環境がゆえに築かれてきた個性や特徴であり、職場においてはその人に対して適切な対応をすることにより、その人の個性や特徴を業務遂行の上でプラスになるように導くことができるに違いない。

このような観点から、ここでは、視覚障害者を職業人として育て、業務遂行において最大の可能性を引き出す方法について検討して見たい。

(1) 限界を考慮した業務分担

前項でも述べられているように、視覚障害者にはその特性、つまり、目が見えないあるいは見えにくいという特性からくる限界がある。

視覚障害者の業務範囲を定めて指示するとき、この限界を考慮した与え方がまた逆に可能性を引き出す与え方にもなる。

前項からの繰り返しになるが、文章をまとめるのが得意な視覚障害者を雇ったならば、報告書や企画書を作成させる際、最終的な完成品を全て一人で作ることを求めないのも適切な方法の一つである。

文章作成部分のみを担当させて、それに対して画像を差し込んだりレイアウトを見栄えの良いものに調整するといった作業は、別の従業員に分担させるようにすれば、その視覚障害者の文章力はさらに向上し、短時間のうちに内容のある文書をどんどん完成させる人材になるかも知れない。

ただ、上記の例の場合、視力やITスキルの程度によっては、画像対応やレイアウト調整にもあまり負担を感じない視覚障害者もあるかも知れない。

その意味で、一度は本人の自己評価を聞いて、できそうならばやらせて見るのも良い。

しかし、この場合、できたとしても業務効率上仕事の流れの中に組み込むことができないと判断したときには、きっぱりとその業務からははずすべきである。

(2) 平等な関係と対等な関係

人間は誰しも他人と平等な関係でありたいと思う。

だが、もしもこの「平等」という言葉が職場において同じ方法で仕事をこなすことを意味しているのであれば、視覚障害者の従業員にとって大変不利な職場風土といえる。

そのような風土があれば、視覚障害者は無理をしてでもほかの目の見える従業員と同じ仕事を同じ方法でこなそうと考え、弱い視力をさらに落としたり長時間労働をしたりということにつながる恐れがある。

このような」無理をする」努力は、一人の前向きな従業員の姿勢として評価することはできるが、それをそのままにしてしまう上司や職場の管理者は全く評価できない。

本来、会社は利益を上げるために従業員を雇用しているのであり、その意味からも、効率の悪い仕事を無理をして行っている状態を放置してはならない。

その業務を効率よく行えるような環境整備、つまり、IT機器の導入や業務分担の変更などを配慮し、ほかの従業員とは異なる業務分担や作業スタイルで仕事をこなしていくことを本人及び周りの従業員に周知・理解させていく必要がある。

このような、異なるやり方や個別の業務分担ではあるが、結果として会社に対して同等の経済的貢献をするということを目指す風土は、「平等」という言葉よりもむしろ「対等」という言葉の方が適切なように思う。

やり方は違っても同等の経済的価値を生み出すことを奨励する「対等な関係」を基本とする職場風土は、視覚障害者の可能性を大きく引き出す基盤となるであろう。

(3) 可能性を引き出す秘結

記の考察から、視覚障害者の業務遂行上での可能性を引き出す秘結として、以下の点を上げたい。

1. IT環境整備

まず、IT環境の整備は視覚障害者の業務遂行の効率を上げるために必須である。

最近は、視覚障害者が使えるという観点からも、新たなIT技術に対応した機器やソフトウェアがぞくぞくと登場している。

これら機器やソフトウェアの選定に当たっては、本人や紹介してくれた学校やリハビリテーション関係者の意見をよく聞いて整えるのが良い。

同じ機能を持つ機器やソフトウェアでも、本人の慣れやこれまで受けてきた訓練の内容により、その時点での作業効率が大きく異なることもあるからだ。

ただし、本人がこれらIT機器やソフトウェアに関して特に主張しない場合には、会社側でよく調査して、期待する業務にもっとも適したIT環境を整備する必要がある。

2. 職場での本人の位置付けの確立

他の従業員と同じ仕事を同じスタイルでこなす必要はない。だが、会社に対して同程度の貢献をする必要はある。

このような風土での本人の位置付けを行うべきであろう。これは、職場の同僚達にそのように理解させるのみならず、本人にも同様に理解させる必要がある。

本人は、就職直後はほかの従業員と同じ仕事を同じやり方でこなすことが一つの目標のように感じるのが一般的である。よって、やり方が違っても良いという点は本人にも伝える必要がある。

ただし、ここで一つ課題を指摘しておこう。

「やり方が違っても良い」ということのみを強調すると、視覚障害者本人のわがままを助長する危険性がある。

あくまでも「やり方は違っても良いが、成果はほかの人たちと同じだけ上げてもらわなくては困る」というスタンスを堅持すべきである。

業務スタイルの独自性と成果の同等はいつもセットでなければならない。

3. 適切な業務分担

上記の風土から、目の見える従業員同士での業務分担とはまた異なる形での分担が模索される。

会社の利益という観点から言えば、一人一人で別々に作業している状態よりも、二人が連携したときにはより良質で多くの仕事をこなせれば良いわけである。

そのためにはどのような役割分担が良いのか、視覚障害者をチームに受け入れた場合には、柔軟に思考すべきである。

なお、この件に関しては、また項を改めて考察する。

4. 効率の上がらない業務は与えない

上記のこととも関連するが、本人が行ったのでは効率の上がらない業務は与えるべきではない。

いくらできると言っても、同僚が行えば1時間でできる作業を、視覚障害者が行った場合には3時間かかるとすれば、会社としては2時間も無駄にする。

むしろ、その3時間を視覚障害者本人が得意な業務の時間に当てた方が、会社の利益にもなるし本人の可能性を大きく伸ばすことにもつながる。

人は誰しも得意な作業を続ければ、どんどん効率を上げ、可能性をさらに発展させる。

視覚障害者は目が見えないあるいは見えにくいことによって、何でも屋にはなりにくい。

得意な分野を徹底的に追求させることによってその人の可能性を伸ばし、スペシャリストとして育てて欲しい。

(4) 活躍の実例

この項の最後に、本人の可能性を十二分に発揮して活躍している視覚障害者の実例を少しだけ列挙しておこう。

  1. 電算システム管理者として働くAさん
    C社は従業員数250名を越す小売業を営む会社。
    全盲のAさんはその電算管理システムの責任者で、同社の販売と経理に関わるデータベースを全て管理している。
    AさんなしにはC社はなりたたない。
  2. ITコンサルタントとして活躍するBさん
    IT関係のコンサルティングを行っているA社に勤めるBさんは強度弱視。
    ホームページのユニバーサル・デザインについて深い知識を有し、A社にとってなくてはならない存在。
  3. 営業マンに情報提供をするEさん
    D社に勤める全盲のEさんは、メルマガを編集し、自社の営業マン達に直接メール送信している。
    Eさんが収集し、発信する情報が、D社の営業戦略の基盤を強固にしている。
  4. 翻訳者として働くFさん
    Fさんはある通信社で外電として流れてくる英文のニュースをほとんどリアルタイムに日本語に翻訳している。
    そのベースには、最適なIT機器の導入と業務の結果に対して厳しくチェックする職場風土がある。

(望月 優)

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4-4 適切な設備投資

(1)はじめに

視覚障害者の就労を、効率的かつ、安全に遂行するためには、当該障害の特性に適合したサポートが不可欠である。

そのサポートには、大別すると、人的サポートと物的サポートがある。

ここでは、物的サポートのうち雇用主の行う障害補償のための設備投資について述べる。

ここで、視覚障害補償のための設備投資とは、主に、雇用側が行う視覚に障害のアル従業員をサポートする目的で実施される物的環境整備のことを意味するものとする。

すなわち、いかなる物的環境整備を実施すれば、視覚障害者の能力を余すことなく発揮させ、組織の戦力として有効に機能させることができるかということである。

本節では、サポートの局面を、業務上のコミュニケーションと移動に限定して、どのような環境整備が必要かを検討する。

これは、業務の態様にかかわらず、必要不可欠な部分であるからである。

また、あくまでこの環境整備は、雇用主が実施するものであり、各組織の態様によって多少の差はあるが、その環境整備に当てることのできる支出学には制限があり、制約的である。

そこで、本節では、上記制約を考慮に入れ、以下検討する。

(2)業務上のコミュニケーションについての環境整備

ここでは、当委員会の実施したアンケートの回答結果を踏まえて、環境整備の現状と、あるべき姿を、検討する。

視覚障害者は、業務上のコミュニケーションにおける文書の作成及びその読みの局面において、障害の程度により、その内容には差はあるが、何らかの補償が、必要である。

その補償に、もっとも有効に機能するものが、ITである(詳細については、第1章を参照のこと)。

そのうち、特に、スクリーンリーダーは、視覚障害者の、文書作成と、その読みに画期的に貢献した。

すなわち、スクリーンリーダーは、まったくディスプレイに表示された文字を読むことのできない視覚障害者に、文書作成、Eメール、インターネットをある程度実施可能な環境をもたらしたのである。

アンケートにおいても、文書のやり取り、日常業務の連絡等には、このスクリーンリーダーを使用した結果によるEメール、文書作成が実施されており、ある程度の満足を得ている。

ただ、アンケートにおいて、会議資料の提供において、相対的に、視覚障害者の満足感は少ないという結果がうかがわれた。

これは、会議中に使用する資料として通常の活字文書がほとんどである事に起因するものと思われる。

特に、企業勤務者においては、「点字文書による会議資料の提供あり」という回答は、1件のみであり、点字プリンタにより、点訳文書は、作成されていないのが実情である。

ここが、現状なのではないか。すなわち、スクリーンリーダー等のソフトウエアによる環境整備は、比較的予算において許容しやすいが、点字プリンタ等は、許容が難しいのではないかと思われる。

では、IT環境整備のための初期支出学の総額は、具体的には、どの程度なのであろうか。

視覚障害者を雇用している雇用主へのアンケートによると、50万円以上が、11社、、50万円未満20万円以上が、6社、20万円未満が、3社、初期投資額0が4社であった。

支出内容は具体的には不明であるが、50万円以上が、約4割、50万円未満が、6割ということになる。

これは、初めて視覚障害者を雇用しようとされている企業にとって、アル朱の指針になるものである。

すなわち、視覚障害者雇用の実績のある企業が、視覚障害者を雇用することによる効果と、そのコストを比較衡量した結果の意思決定に基づくものであるからだ。

初期投資において、この環境整備に関する意思決定を行う際には、雇用主側は、視覚障害者にとって、どのようなものが必要であるかという情報を、適切に把握しなければならない。

このためには、視覚障害者本人からの聴取やリハビリテーション施設、職業訓練施設、教育機関等からの情報収拾が必要である。

特に、視覚障害者本人からの聴取は、障害の程度によって個別性があるということ、聴取と同時に、雇用側の事情をも説明できること等の理由により、重要である。

ここで、視覚障害者本人も、必要なものを具体的に、できればその金額をも含めて、提示する必要がある。

すなわち、どのようなものが、どうして必要か、それはいくらか刈るのかを、明確に情報提供することにより、雇用主側の理解を得られ、業務遂行にとってより良い環境が創出できるからである。

そして、このプロセスを経て、環境整備の意思決定において、重要な要素である効果の評価をも同時に行い、IT環境整備投資額を決定する。

この決定による環境整備が視覚障害者の満足を得られるものであれば、適切な投資がなされたといえる。

なぜなら、その投資は、雇用主側から見ても、適切な意思決定プロセスを経ており、経済的合理性が満足されているからである。

このことは、ITが急速な進歩を遂げている現在において、初期投資においてのみ限定されることではなく、その後の環境整備においても、該当するものである。

初期投資威光の環境整備においては、すでに、視覚障害者の業務遂行の実績を、雇用主側は把握している。

これは、視覚障害者雇用による効果の評価に強く影響し、結局、環境整備の許容額2影響する。

換言すれば、適切な環境整備は、視覚障害者の実績如何にかかっているという側面もあるということである。

一方、前述の意思決定プロセスにおいて、雇用主は、視覚障害者雇用による効果の評価にあたって、視覚障害者の業務遂行自体から直接得られる効果のみではなく、他の従業員に対するプラス効果をも、その評価対象とすべきである。

ここに、視覚障害者雇用の特性があるのである。

(3) 移動についての環境整備

初めて視覚障害者を雇用する企業にとっては、「通勤は、どのようにするのか。」「社内での移動は、どうするのか。」といったような不安を持つのは、当然のことであろう。

視覚障害者にとって、特定の場所から、特定の場所への移動は、まったく見えない場合であっても、適切な歩行訓練を行えば、多少の個人差はあるであろうが、十分に可能である。ただ、その移動を安全かつスムーズに実行ならしめるには、環境整備が望まれる。

具体的には、経費のかかる設備としては、音声案内つきエレベータや誘導ブロックの設置、あるいは建物付属設備の改良を伴うものがある。

一方、エレベータの階数ボタン横への点字表示、各執務室のルームナンバーの点字表示などは、きわめて軽微な支出のみで実施できる。

後者の場合は、社屋を賃借している場合は、オーナーへの許可申請等の問題は生じるが、それ以外は、さほど問題なく実現できると思われる。

そして、その効果は、視覚障害者にとっては、その支出額の軽微さからは、考えられないほど多大なものなのである。

また、前者の建物等への改良を要するものについては、いくつか難しい問題が存在する。

それは、いずれも工事が必要であるという事、さらに、それが賃借形態であれば、企業自体の意思決定の枠外の問題となる事からである。

すなわち、改良工事が不可欠であり、相対的には支出額は、多大となろう。

また、その改良工事は、どのように行うのか、つまり、1部の改良でよいか、全面的な取替えとなるのか等の検討が必要である。

さらに、社屋が賃借の場合は、当該企業の意思決定のみでは何ら実行はできず、あくまでも、オーナーへの要請を通じて実行するしかない。

移動のための環境整備の意思決定は、前述したIT環境の場合と同様に、基本的には、コストと効果の比較衡量によって行われるが、それに加えて、上記の実行性に関する検討が加わる。

短期的には困難であっても、長期的には実行可能な場合は存在すると思う。

例えば、社屋の前面リニューアル計画に基づく回収と同時に音声機能を敷設するとか、賃借契約の更新時に、オーナーへ要請するとかである。

雇用主側が、視覚障害者のニーズを認識して、合理的と判断していれば、いずれ、解決できる問題であろう。

結局、ここにおいても、雇用主側と視覚障害者本人の、密なるコミュニケーションが前提となる。

(4)むすび

上記で検討した、適切な環境整備を実行することにより、視覚障害者は、その業務を、安全に、かつスムーズに実行することが可能となる。それは、当然に、人的なサポートを得ることによって、さらに効果的に機能する。

適切な環境整備がなされた場合、視覚障害者自体の業務を、直接的に効率化するばかりでなく、視覚障害者に対する雇用主側の姿勢が認識できることにより、視覚障害者のモラールを向上させる側面も見逃せない。

そして、このことは、視覚障害者のみではなく、他の従業員のモラールにも効果的に作用する。

すなわち、他の従業員が視覚障害者の高いモラールの基での業務遂行に触れることにより、自らのモラールが高まるという側面と、音声案内付きエレベータ等の敷設により、雇用主側の視覚障害者への取り組み方が他の従業員にも理解できることにより、モラールの向上に機能する側面である。

適切な環境整備は、以上のような良好な職場環境をもたらし、組織目的の達成に直接的にも、間接的にも効果をあげ、もって視覚障害者の当該組織における戦力としての存在意義を、確固たるものとする。

これは、視覚障害者の長期的雇用と、視覚障害者雇用の機会拡大につながるものである。

また、障害者雇用のための環境整備に対する公的助成としては、第一種及び第二種障害者作業施設設置等助成金があり、各地の雇用促進協会において実施されている。

公共職業安定所所長の意見書が必要であるが、助成要件等を充たせば、一定の限度額の下、支出額の3分の2を助成される。

この制度の利用も、環境整備の促進に有効である。

(大橋克巳)

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4-5 人的協力と業務分担

これまでにも述べてきたように、視覚障害者には目の見えるワーカーとは別の観点から手助けが必要な場合がある。また、独力でできても効率がよくない場面もある。

ここでは、これらの視覚障害者の特性に対応する良い手段を考察して見る。

(1) 事務職と文字処理

視覚に障害がある者が働く上での一番のウイークポイントは文字処理、特に紙ベースの書類の処理全般である。

具体的に言えば、仕事上、目を通す必要がある様々な紙ベースの書類の読み下し、あらかじめ提携が決まっている領収書、仕事上使用して発生した伝票、その他仕事で必要な様々な定型書類への書き下しなどであり、これら一般事務職においては当然のごとくこなしている一連のルーティーンワークの中にも困難な場面が出てくる。

もともと、IT機器が全く利用できなかった30年前であれば、これらの文字処理場面では、全面的に誰か見える人のサポートを受ける必要があった。

現在は、ITの利用により、そのうちの多くの場面を視覚障害者が独力でこなせるようになってきている。

IT機器の利用はこれまでにも述べてきたように、工夫次第で様々なルーティーンワークに取り込んでいくことが可能である。

IT機器を仕事のどのような場面で有効利用するかを考慮して仕事の流れを構築していくならば、事務職のルーティーンワークの大半はこなしていけるということもお分かりいただけたと思う。

しかし、特に事務職という専門性の問われない職種に従事する視覚障害者の場合はIT機器の有効利用だけでは、職務が完結しないことが考えられる。

そこで、不可欠なのが職場での人的協力である。IT機器の活用と併合して人的協力を仕事のどの場面で取り入れていけるかが、仕事の完成度、職域の幅の拡大につながるキーポイントになるであろう。

(2) 企画立案

一つ、取引先に対する企画書の作成を例にとって、どのような人的協力や業務分担を行えば良いのか考察してみよう。

  1. 企画検討
    企画内容を熟慮・検討する。
  2. 書き起こし
    検討した内容を自分にとってわかりやすい形で書き起こす。
    全盲者の場合には、点字板や点字電子手帳を用いて、点字としていったん考えをまとめることもある。
  3. 文書作成
    書き起こした内容を、今度は人が読んでも理解できる形式のデータ、つまりテキストファイル、ワード・ファイル、エクセル・ファイルまたはHTMLファイルなどに書き起こす。
    この作業はパソコンで行う。
  4. データベース化
    作成した文書を、共有ネットワークに上げ、社内データベースに組み込む。
    社内LANの端末として視覚障害者のパソコンも接続されていれば、独力で行える。
  5. 企画書作成
    上記の文書を、レイアウトの体裁を整え、必要な個所に必要な図表や絵または写真などを織り込んで、取引先に提示できる企画書に仕上げる。

上の業務の流れのうち、1.から4.までは、IT環境が整備されていれば、間違いなく独力でできる作業である。

問題は5.である。

どの程度の体裁が要求されるのか、絵や写真を織り込む必要があるのかなど、書類の性質によって、あるいは視覚障害者といってもその視力の程度やITスキルのレベルはどの程度なのか等の要素によって、これを独力でこなせるかどうかが決まってくる。

しかしながら、業務としてこの作業を位置付けたとき、その青果物の質と作業効率が当然問われる。

この観点から考えると、たとえ全盲のスタッフでこれを独力でこなせる者がいたとしても、5.の部分は目の見えるスタッフに協力または業務分担させることをお勧めする。

もしもその全盲スタッフが非常に企画力のある人手あり、文章力にも長けているとすれば、自ら5.を行う間に、もう一つの価値のある企画を立案するに違いない。

(3) 自然な協力

視覚障害者はご存知の通り、根っからの情報障害が仕事を行う上で大きな障害になっている。

今まで社会経験、職場経験が豊富で突然視力を失った方と、生まれつき視覚障害を持つ方とは少々個人差はあるにせよ、仕事に必要な情報を普段からいかに取り込んでいくかは業務の出来不出来を大きく左右することにつながる。

例えば、商品の営業を行うとき、営業先に自力で行くことは十分にできるとしても、その場で資料を見ながら説明するということができないので、商品知識や、その他その職種に関連する知識は前もって下調べして点字などでメモしていくか、頭に入れておかなければならない。

そういった立場に立たされたときは、即対処出来ない視覚障害者はどうしても不利な状況におかれてしまうのである。

これら業務遂行に対するデメリットの解消はどのようにすれば良いのだろうか。

まずは、本人が日ごろからインターネットなどを活用して必要情報を取り入れる努力をするということが必須である。

それに加えて、本人の障害を考慮して、回りの同僚達が有益だと思われる情報を言葉を返して提供する、もしくは、その仕事に関連する書籍やHPのアドレスを紹介するなどの行為も、視覚障害者スタッフの作業効率を高める手助けとなる。

特に事務職の場合には、大きな企画を一人でこなすということはあまりなく、グループで取り組むのが普通であろう。

このような場合、その仕事にかかわるメンバーは、日ごろから視覚障害スタッフに対する情報提供を自然な形で仕事の一部としてこなしていく協力体制が確立していれば、その部署全体の効率も大幅に上がる。

ただし、どんなことについての情報が必要か、どんな場面での協力が欲しいかなどについては、一般的に晴眼者には理解されにくいので、視覚障害者本人は、周りの人達に対する適切な働きかけを常に行うことが重要であり、そのようなことのできる職場風土を確立するための心配りも雇用主または職場上司にとって必要なことである。

(4) 業務分担としての位置付け

上にも述べたように、視覚障害ゆえにできない部分あるいはできても効率の上がらない部分に関しては、業務分担として別のスタッフが負う仕組みを作ることがもっとも好ましい。

なぜならば、効率の上がらない業務をほかのスタッフに分担してもらうことによって自分の専門業務の効率を上げることができ、会社に対しての貢献を実感できるからである。

貢献を実感できればやる気がますます盛り上がる。

やる気が高まればさらに生産性が向上するといった具合に、良い方向に回転し始めるからである。

視覚障害者が活躍できる適切な業務分担と、上記3項で述べた自然な形での協力がマッチしたとき、その視覚障害者自身の作業効率はもとより、その彼または彼女を含む職場全体の業務もきわめてスムーズに流れ、効率の良いものになっていくことは間違いない。

(堤 由紀子、望月 優)

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